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社説 Archive

衣料品不況の総合通販、家具・インテリアに勝機も

 顧客との結びつきが強い総合通販各社は、ユーザーの声を反映することで商品力を高められる家具・インテリア領域にこれまで以上に力を注いではどうか。

 「花形」とも言えるファッションカテゴリーは昨今、安価かつ投入頻度の高いファストファッションブランドや、「ゾゾタウン」に代表される圧倒的な品ぞろえと利便性などに強みを持つファッションECモールに押されて苦戦を強いられるケースが少なくない。また、トレンドの変化が早いファッション商材は常に一発勝負のようなリスクがつきまとう。その点、家具・インテリア領域は総合通販が得意な商品の改善・改良が生きやすく、顧客へのインタビューや座談会といった従来型のつながりに加え、ECの普及で商品レビューにもヒントが多く、翌シーズンの商品開発に反映させることで、毎年のようにブラッシュアップできるメリットがある。

 一方で、一般的に服よりも購入頻度が低かったり、配送面の課題や、リアル店舗を持たない通販企業が比較的に高額な商材を通販チャネルで購入してもらうには工夫が不可欠で、これまでにないような発信力、提案力も必要になりそう。そんな中、新しい取り組みとして注目されるのが、ディノス・セシールが10月2日に始めた家具・インテリアのレンタルサービス「フレクト」だ。ディノス事業で販売する家具を対象に、初めに販売価格の15%分の申込金と毎月3・5%分のレンタル料を徴収して希望者に最大3年間、家具を貸し出すもので、2年を越えた顧客は追加金なしにそのまま購入するか、申込金を返却してもらった上でレンタルをやめるかを選択できる仕組み。高額な家具の購入をレンタルという形で敷居を下げ、顧客は商品の良さや特徴を確かめながら購入を検討できるメリットがある。

 千趣会はMD改革の一環としてライフスタイル系商材を大幅に拡大する方針を打ち出しており、近く大阪・堀江にインテリアショップを開設する。詳細は明らかではないが、当該カテゴリーを強化する上で顧客とのリアルな接点が必要と判断したようで、インテリアショップは"実感・体感型"店舗として展開。インテリアの相談窓口を設けたり、購入する前に家具の配置などをシミュレーションできるVRも体験できるようにする。

 また、通販モールと家具・インテリアの小売りがタッグを組むケースも出てきた。ロコンドは9月26日、大塚家具が第一弾の出店者として参画する家具の通販サイト「ロコンドホーム」をオープンしたほか、セブン&アイも11月下旬にグループ外企業の商品を扱う「オムニモール」を新設し、中核ショップとしてニトリが出店する。

 坪効率などの観点から百貨店を中心に家具売り場が縮小する中、面積の制限を受けない通販チャネルは成長可能な領域と見られるだけに、独自商材に磨きをかけるとともに、斬新な売り方や見せ方に挑んでほしいものだ。

国交省の総合物流大綱、EC市場拡大見据えた内容を

 ヤマト運輸が4月24日から当日の再配達依頼の締め切り時間を変更した。テレビや一般紙でも、その話題が大きく取り上げられた。これまでの顧客志向のサービスのレベルが引き下げられることや、一方で再配達削減に向けた宅配ロッカー・ボックスの取り組みが活発になっていることなどが報道され、広く一般に関心が持たれる話題となっている。

 ヤマト運輸が人手不足などに伴い従業員の労働環境の改善に取り組む意向を示したことに端を発し、宅配便や物流が大きくクローズアップされるようになっている。人手不足はネット販売の拡大が大きな要因とされ、多頻度小口の荷物が大幅に増え、便利な宅配便サービスが今まで通り提供できなくなる可能性もあることから、消費者へも大きく影響する問題と捉えられている。

 トラックドライバーの人材不足は以前から懸念されていた。ドライバーの高齢化、そして若者の自動車離れなどに伴うドライバーのなり手の不足について、国土交通省などの会合で課題として取り上げることが多々あった。

 その流れから、一昨年には国交省が再配達削減に向け検討会を立ち上げ、再配達削減のための方策をまとめた。宅配ロッカーや顧客とのコミュニケーションの頻度を多くすることなどで再配達を回避していこうとの内容。しかし、宅配ロッカーは既に本格的な設置が始まって1年近くになるが、設置数もまだ十分と言えず、また宅配便1社だけでなく複数の宅配便会社の荷物が受け取れるオープン化の進展が遅れている。

 その一方でネット販売の市場拡大は一層拡大を続けている。経済産業省が発表した2016年の日本国内におけるBtoCのネット販売の市場規模は、15兆1000億円で前年と比べ9・9%増加している。市場規模が1割増えていることから、その商品を届けるための宅配便も同様に増加していることだろう。

 7月に策定を予定している2017~20年度に適用する物流施策「総合物流大綱」では、人手不足やネット販売の拡大などを要因として物流が麻痺しかねない状況を重要課題のひとつとして掲げ、物流の維持と確保を大きなテーマとしている。大綱の内容を討議する有識者検討会では、宅配便が国民の"ライフライン"との表現が頻繁に使われており、その表現を大綱の要所に加えるべきとの意見も聞かれた。

 ただし、総合物流大綱は宅配便という物流の一部に対する施策を取り決めるものでなく、より広い物流全体の今後の物流施策の提言のため消極的だ。経産省調査による16年のEC化率は5・43%(前年比0・68ポイント増)と高まり、小売や商取引で重要なものとなっている。20年度までの4年間の施策を取り上げる大綱であるなら、今後のネット販売市場を見据えた施策にも重点を置くべきだろう。宅配便のドライバー不足への対処はもちろん、物流センターで庫内作業する人材の不足にも対応しネット販売市場を後押しする内容を盛り込んでもらいたい。

市場縮小招く過剰規制に反対

 機能性表示食品制度の施行以降、消費者庁が大ナタを振るっている。健康増進法ではトクホに対する初勧告や取り消し処分、景表法でもトクホやアイケア関連の健康食品に初の処分が行われた。確かに健食の"表示解禁"は監視強化と両輪で進めるべき面もある。だが、新制度は導入わずか2年。ヒット商品も少なく、市場の評価は定まっていない。成長戦略としての側面を軽視して規制強化が先行すれば、逆に市場の縮小を招く。

 ライオンのトクホに関する健増法の「勧告」は業界に衝撃を与えた。国の許可を得たトクホですら例外ではなくなったからだ。

 日本サプリメントは、健増法に基づきトクホの取り消しを受けた。大きく報道され、社会的制裁を受けた。事業の存続すら危ぶまれる状況。だが、消費者庁は容赦なく景表法による処分で追い打ちをかけた。課徴金命令が科される可能性もある。

 健食に対する景表法の処分といえばダイエットが中心だった。だが、最近では、初めてアイケア関連の健食に適用された。機能性表示食品制度の導入を受け、今後は、目や関節に対する機能をうたう健食に対する監視も強まってくるだろう。

 景表法は14年末、都道府県にも措置権限が与えられ、国は昨年、課徴金制度を導入した。一方の健増法は、第4次一括法の施行とともに、執行権限が地方自治体に移譲された。保健所が新たな規制当局として台頭し、監視の網は広がっている。それぞれ運用が一段格上げになった形だ。

 ただ、トクホに対する「勧告」には、過剰規制との声がある。法律上の建てつけは、あくまで"行政指導"であるにもかかわらず、社名は公表され、社会的制裁効果はかつての景表法と変わらないためだ。そもそも国が許可したものでもある。

 保健所による健増法の運用も明らかにバラつきがある。都内をみても大手代理店や民放キー局が集中する「港区」の運用が群を抜く。管内の事業者に対する指導が基本であるためだが、不公平感が強い。

 莫とした"健康イメージ"を前に改善を求める指摘にとまどう事業者も多い。健増法の誇大表示の禁止規定は、「著しい誤認」を排除するもの。消費者庁は「著しい」の意味を説明するが、各自治体の担当者で認識は一致していないのではないか。「指導」は「処分」より"運用の壁"が低い。裁量の入り込む余地も大きい。早急な是正が必要だ。

 事業者も認識を改める必要はある。景表法は、その目的がかつての「公正競争の阻害」から「消費者の商品選択の阻害」を排除するものに変わった。規制緩和で新制度ができ、健食市場は「調整期」に入った。これまで通りの表現が通用しないことは認識する必要がある。

 ただ、消費者庁の役割はなにも執行だけではない。新制度を中心に消費者教育を進める役割もある。消費者教育がままならない中で国民の健康に対応する各制度が乱立し、その違いを認識する消費者は少ない。インパクトの強い処分など規制強化が続けば、新制度の成否にも悪影響を及ぼしかねない。慎重な法運用が求められる。

労働環境対策も差別化を

 今号の読者投票による「2016年の通販業界10大ニュース」を見ると、今年も通販業界に関わる様々な出来事が起きたことが分かる。どれも今後の通販業界に影響を与えそうな出来事で注目されるが、通販業界のみならず今年あった出来事として印象深かったことの1つは電通社員の過労自殺問題だ。これを契機に日本企業における"働き方"に関わる諸問題がクローズアップされた。最近では社員に違法な長時間労働などを強いる企業に対し、是正勧告を矢継ぎ早に行うなど行政も本腰を入れて対策に乗り出しており、社会の目が労働問題により厳しくなってきている。無論、通販企業とっても他人事ではない。これまで労働環境対策を後回しにし、なし崩し的に従業員に長期労働を強いてきた企業であるならば早急な対応が必要だろう。

 しかし、労働環境の対策・整備は行政や世間から増す監視の目の厳しさに対応せんがために行なうべきわけでない。社会的変化に対応した労働環境を整備できなければ、企業は働き手、それも長期にわたって会社に利益をもたらしてくれ得る優秀な働き手を確保することが今後、困難になるからだ。働き手の数が多い時代は何とでもなったろうが、生産人口が減少し始めた今後はこれまでのようにはいくまい。優秀な人材の獲得はもちろんのこと、そうした人材を退社させず、長期にわたり働いてもらえるための準備も必要だ。

 それには働きに見合う報酬面はもちろんだが、従業員のワークライフバランスを考えた施策が必要だろう。従業員の生活を圧迫する残業を極力、なくすための対策なども講じるべきだろうし、産休・育休制度を"普通"に利用できるようにすることも必須だ。時短勤務への対応も必要だろう。また、"育児"だけでなく、"介護"にも対応した制度も考慮すべきだ。老若男女問わず、限られた優秀な人材を獲得していくには様々な準備が欠かせまい。

 すでに通販実施企業の中でも労働環境の整備に向けて動き出している企業も多い。例えばジャパネットたかたでは来年1月から原則、午後8時半を超える残業を禁止し、また、週2回は残業自体を禁止する試みを実施する。そのために人員体制やシステムやツールにきちんと投資をして、無理なく実現できるような環境を整えるという。仮想モールを運営するヤフーでは10月から新幹線通勤を導入。通勤時間が2時間以上に従業員を対象に上限15万円まで支給することで静岡や新白河、越後湯沢からの新幹線通勤も可能になる。従業員の生活水準向上を支援する狙いのほか、育児や介護の問題のための離職を防ぐ考えもあるようだ。また某外資系通販企業では家族同様の存在である"ペット"が病気などの際に、休暇がとれる制度を設けている。

 労働環境の整備はすべての企業がこれから先、避けて通ることはできない。避ければ人材は集まらず、会社は成り立たなくなる。そうであればいかに先んじて対策に乗り出し、費用対効果の高い施策を考えて展開し、競合と差別化を図っていけるかも企業にとって1つの重要な戦略と捉えるべきだ。本腰を入れて対応に臨むべき時はすでにきている。

宅配ロッカーオープン化急げ

 国土交通省が今年になり省内で設置した生産性革命本部は、経済成長の実現を目指し社会資本や観光、ぶつ雨竜などの施策を総合的に推進することを目的にし、現在13のプロジェクトに取り組んでいる。通販業界に関連性が高い物流分野も含まれ、ドライバー不足などを打開する取り組みに期待が寄せられている。

 その物流分野に関するプロジェクトの「オールジャパンで取り組む『物流生産性革命』の推進」は、2020年度までに物流事業の労働生産性を2割アップすることを目標としている。トラックの積載率が41%に低下していたり、宅配便の再配達の割合が2割に達しているなど、物流分野にはさまざまな非効率が発生している状況だが、このような非効率を改善し生産性を向上して将来の労働力不足を克服する必要があるためだ。

 8月31日開催の3回目の会合では、13のプロジェクトの現状が報告された。物流の効率改善の最新の事例として、9月10日にスタートした東京メトロ、東武鉄道、ヤマト運輸、日本郵便、佐川急便の5社が地下鉄車両で宅配便を輸送・配送サービスのために取り組み始める実証実験、来年3月にヤマト運輸とDeNAの自動運転による宅配便のオンデマンド配送の実験計画について触れ、担当者からはドライバー不足や宅配便の再配達削減に期待できる取り組みとの説明があった。

 物流関連については、「暮らし向上物流」と銘打ち、その事例として「受け取りやすい宅配便」を目指すとの目標が4月の第2回会合で既に取り上げられている。それは今後設置する宅配ロッカーは、全ての宅配便事業者が利用可能なオープン型ロッカーとすることを目標とするとされた。国土交通省が昨年6月に立ち上げた「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」で3回にわたり議論したことが、宅配ロッカー事業を推進することになった。その結果、今年に入り、ヤマト運輸や日本郵便が宅配ロッカーの設置を加速している。

 ただ、現状は両社の宅配ロッカーともオープン化を実現していない。それぞれの宅配便だけを取り扱うだけにとどまり、他社の宅配便を受け取ることはできない。他社の準備も必要であろうし、両社の経営戦略上の狙いもあるだろう。しかし、1年前の検討会でオープン化が有効との見解に至ったことを考慮すると、もう少し迅速に進めていくべきではないだろうか。

 ネット販売市場の拡大により宅配便の物量がさらに増え、またドライバー不足も今後一層深刻化していく待ったなしの状況だ。20年度に確実に目標を達成するためには早期の対策が必要である。宅配ロッカーは各社とも20年度前後の設置目標を掲げているが、その数は合計6000台程度にも達し、実際に達成されれば宅配の再配達率は大幅に低下することは間違いないだろう。

 通販顧客などの利便性向上につながる宅配ロッカーは稼働率をアップすることが事業運営において不可欠なことだ。国土交通省には宅配ロッカーオープン化の推進役としての役割をもっと発揮するべきだ。

標的型攻撃への対策講じよ

 ジェイティービー(JTB)子会社であるi.JTBのサーバーに外部からの不正アクセスがあり、約793万人分の個人情報が流出した可能性があることが分かった。ネット販売を手掛ける通販企業にとっても無関係な事件ではないだけに、最悪の事態を想定した上で万全のセキュリティー対策を講じる必要がある。

 JTBの発表によれば、今年3月15日に、取引先を装ったメールの添付ファイルをオペレーターが開いたことで、i.JTBのパソコンがウイルスに感染。その後、内部から外部への不審な通信が複数確認されたため調査したところ、サーバー内に、外部からの不正侵入者が作成・削除したデータファイルがあることを確認した。外部の専門会社と共同でウイルスを駆除、データファイルを復元し分析したところ、データファイルには約793万人分の個人情報が含まれていたことが分かった。

 今回の事件で使われた手口は標的型メール攻撃と呼ばれるもので、日本年金機構の加入者情報流出事件でも同様の手口が使われていた。どちらもメールに添付されたファイルを開いたことで、ウイルスに感染した。報道によれば、今回のケースでは取り引きのある航空会社系列の販売会社からの業務連絡を装ったメールだったという。また、i.JTBではこうした攻撃に備えた訓練を行っていたものの、ウイルス感染を防ぐことはできなかった。

 ネット販売企業は、今回の事件を他山の石としなければならない。ファイルを開いたことがウイルス感染の直接の原因となったのは言うまでもない。なりすましメールを見抜くことは非常に重要だ。送信元のメールアドレスは簡単に偽装できるため、不審なメールが来た場合、それがヘッダー(メールの通信経路などの情報)と一致しているかを確認しなければならない。今回の事件では、こうした理解が社内にあったかどうかが問題になる。

 ネット販売企業でいえば、サポート用メールアドレスに対し、消費者を装いウイルスを添付したメールを送りつけるといったケースは十分考えられる。そのため、なりすましメールへの対策を早急に練る必要がある。場合によっては、なりすましメールを自動的に弾くためのフィルタリングシステムの導入も必要だろう。

 ただ、人為的なミスは起こりうるだけに、ウイルスに感染してしまった場合の対策も重要だ。報道によると、今回の事件では、3月19日にはセキュリティー会社から不正アクセスに関する指摘があったにも関わらず、外部との通信遮断作業が完了したのは25日であり、その間に外部からの不正侵入者が個人情報を含むデータファイルを作成していた。そのため「対応が遅かったのではないか」との声も出ている。

 ネット販売企業は、不正アクセスを受けた際に、どのような対処をすべきか、きちんとマニュアル化する必要があろう。対応の遅れが最悪の事態を招き、ブランド失墜につながる恐れがあるからだ。「狙われるのはJTBのような大手だけ」という甘い考えは捨て、「どんな企業でも情報流出の危険はある」という認識のもと、対策を講じるべきだ。

配送サービスの強化は冷静に

 衣料品店「ユニクロ」を展開するするファーストリテイリングが今秋をメドにネット販売商品の翌日配送を全国で実施する。今春に新設した東京・有明の大型物流センターを含む全国の物流拠点に、業務提携を結ぶコンサルティング大手のアクセンチュアなどと共同開発した新システムを導入して発送業務を効率化、これまで首都圏や関西圏など一部でのみ対応していた翌日配送を基本的に全国でできるようにするという。

 「ユニクロ」にはこうした試みの実施で多額のコストが発生することになるはずだが、それだけの価値もありそうだ。通販ビジネスにとって配送サービスは非常に重要なファクターであり、特に配送スピードについては消費行動を決定づける一要素になり得る。顧客の利便性アップはもちろんだが、アマゾンが展開してきた即時配送などにより、消費者には「通販商品はすぐ来るのが当たり前」という考え方が定着しつつあり、いたずらに配送時間がかかれば「不満」に直結しかねず、ビジネス上のリスクにもなり得るかもしれないという見方もあるためだ。

 実際に大手ネット販売実施企業はこぞって物流面の強化に踏み切っており、すでに翌日配送はもちろん、当日配送も珍しくはなくなってきている。そしてさらにその先の試みとして家電量販店のヨドバシカメラの通販サイトで実施する6時間以内配送や先に挙げたアマゾンでは従来から実施してきた当日配送とは別に、都心など一部地域限定ながら1時間以内で配送するスピード宅配サービスを昨秋から実施している。

 競合との差別化や顧客への利便性向上という点で今後も各社間で配送サービス競争が激化していきそうだが、一方で冷静に配送サービスの在り方について見直してみる必要もあるのではないか。消費者庁が6月9日に公表した「平成27年度の消費者意識基本調査」によると即時配送の利用時の意識について、回答者の5・4%が「追加料金がかかっても利用したい」、32・8%が「品目や状況で使い分けたい」、60・8%が「追加料金がかかるなら受け取らなくてもよい」とした。すでに4割弱がお金を支払ってでも即時配送を望んでいるとみるか、6割は即時配送は必要なしと見ているとするか。この調査結果をどのように見るのかによって異なってくるが、端的に言えば消費者の多くは通販商品の配達の速さに事業者が思うほど魅力を感じていなのではないか。

 無論、無料であれば早く来ることに越したことはないのだろうが、それよりも指定した時間に確実に届けたり、注文した商品をまとめて受け取れるよう配送したり、配達後、処理に困る過剰な梱包を減らすなど基本を突き詰めることもまた、利便性向上につながるのではないか。過剰な配送スピードの追及はさして顧客から望まれていないばかりか、コスト負担増で事業者自身の首を絞めることにはなりかねない。皆が全方位的に強化できるわけではあるまい。商材や顧客層、事業規模、資金力など各社ごとにすべきこと、最適な形は異なるはず。配送サービスをどのような方向性で強化していくか。冷静な経営判断が求められそうだ。

ネット販売健全化目指し連携せよ

有名通販サイトに見せかけるなどして消費者から注文を受け、実際には商品を発送せずに、クレジットカード情報や代金をだまし取る「偽サイト」や、空き家を受け取り先にしての不正注文などが社会問題となっている。ネット販売の健全化を進めるためには、公的機関や他業界との連携が必要だ。

 楽天ではこのほど、仮想モール「楽天市場」で取り組む安心・安全対策を公表した。偽サイト対策は、ユーザーが検索しそうなワードを入力し、人力で該当するかどうかを確認。こうしたサイトのアドレスを検索サイトに申告し、検索サイトから排除するほか、セキュリティベンダーに情報を提供する。ベンダーが対策すれば、ユーザーが仮に当該サイトのリンクをクリックしてもブロックされる。こうした対策が奏功し、今年に入ってからは偽サイトが検索結果に現れなくなってきたという。

 不正なカード情報によるなりすまし購入については、受け取らせないような工夫を行っている。送付先住所を名寄せし、不特定多数のユーザーが注文した商品が1カ所に集まるようなら不正な取り引きと判断、出荷を止めるよう店舗に通告している。近年は空き家での受け取りが目立っていることから、大手不動産情報サービス「ホームズ」から空き家情報が受け取れるよう連携を進めている。この事例が示すように、一企業だけで犯罪者からの攻撃を防ぐのは難しくなっているのが実情だ。関連業界と情報交換し、対策を進めていく必要があろう。

 また、犯罪者の動きも把握する必要がある。楽天によれば、以前はブランド品やデジタルカメラ、ゲーム機といった高額商品が不正注文されるケースが多かったものの、最近目立つのは化粧品や健康食品、青汁、粉ミルク、目薬といった比較的単価の低い商品。これは、国内で換金すると足がつきやすいため、海外で転売すれば数倍になる人気商品を狙っているためだ。ネット販売企業は安全対策に目を配り、必要とあれば公的機関や他業界との連携を進めることで、反社会的勢力がつけ入る隙をなくさなければならない。

 そのため、関連する商品を扱っている通販サイトでも、十分な対策を進める必要がある。楽天が行っている商品配送の防止以外にも、3Dセキュアのような本人認証サービスの導入、さらには過去の取引情報などに基づいた属性・行動分析による不正取引の判定など、重層的な対策を導入しなければならない。

 ネット販売を利用するユーザーが正しい知識を身に付けることも重要だ。最近は、セキュリティーコードや3Dセキュアのパスワードを入力させ、盗み取る偽サイトも増えており非常に危険だ。こうした危険性を周知するとともに、個人情報を通販サイトに入力する場合は、URLや記載内容を慎重に確認する、といったことを習慣づける必要がある。また、ID・パスワードをサイトごとに使い分けることも重要だ。

 ただ、こうした啓蒙活動はネット販売企業だけでできるものではない。ユーザーのリテラシーを高めるためにはどうするべきか、社会全体で議論していく必要がある。

ヤフーは実効ある不良店対策を考えよ

 ヤフーが運営する仮想モール「ヤフーショッピング」が快進撃を続けている。「eコマース革命」を称して、無料で出店できるようにした2013年のビジネスモデルの変更以降、順調に出店者と取扱商品数を伸ばし、現状ではそれぞれ約38万店、約2億点にまで達し、店舗数・商品数でみれば国内最大規模の仮想モールとなった。また、流通総額も出店数・店舗数の拡大や多額の広告宣伝費の投入によるポイントのバラマキやテレビCMを連動させた大規模キャンペーンの効果などが奏功。子会社のアスクルの通販サイトとの合計の流通総額は直近四半期(10~12月)ベースで前年同期比約5割増と好調に推移している。今後も効果が実証されたポイント増量や大型販促キャンペーンなどを軸に攻めの戦略を継続し、さらなる拡大を進めていく模様だ。
 
 順調なヤフーショッピングだが、その根底を揺るがしかねない問題も顕在化しつつある。不良店舗の跋扈だ。商品の出荷体制や顧客対応が非常に悪い店舗が散見されるほか、たちの悪いケースでは消費者から商品の購入代金をだまし取る詐欺行為におよぶ輩もいる。直近ではすでにヤフーショッピングから退店処分を受けているが、今年1月まで出店していた「ヒロタストアー」が相場よりも安価な値付けでユーザーを集め、代金をだまし取る詐欺行為を行っていたことが分かっている。

 無論、ヤフーでも悪質な詐欺行為を含めた不良店を野放しにしているわけでない。運営する日本最大規模のネット競売サービス「ヤフオク!」などで培った不正検知の技術やノウハウなどを応用してモール内パトロールなどを強化している。詐欺行為を行うような悪質店舗も早期に発見し、退店処分を行うなど一定の対策は行っている。特に今年からはユーザーからの評価が低い店舗の商品について、モール内の商品検索の検索結果順位を大きく下げたり、退店基準を現行よりも厳しいものにしていくことで、不良店対策に本腰を入れていくようだ。
 
 ヤフーが本腰を入れて取り組むという不良店対策に文句をつけるつもりはないが、本来であれば「怪しげな店舗は始めから出店させない」こと、つまり出店審査の強化がまずすべきことではないか。実際問題として、他の大手仮想モールの出店を断られたり、退店処分を受けた事業者がヤフーショッピングに出店しているという事実がある。これら店舗はヤフーショッピングでも不良店となる可能性は高い。

 もちろん、ヤフーショッピングは出店料無料で店を増やし、店舗からの広告収入を稼ぐモデルである。そのため、出店のハードルを上げることは成長の源泉を摘むことになるわけで、簡単なことではないことは分かる。が、有事の際の迅速な対処も当然、大切だが、日々の大小の有事を早期に潰していくには限界があるはずで入り口でも一定のハードルは必要なのではないか。入り口は緩いまま、事後対応を強化するという対策が確実に機能するのであれば言うことはないが、そうでなかった場合、モール全体の、ひいてはEC市場全体の信用問題につながってくる可能性もある。ヤフーの対策の実効性を注視していきたい。

日用品EC巡る攻防戦の行方は

 日用品のネット通販を巡る各社の攻防戦がし烈となってきた。これまでもGMSが運営するネットスーパーや大手仮想モール・商社のグループ会社が手がける通販サイト、そしてネット販売市場の巨人であるアマゾンなどが品ぞろえや価格面、配送サービスを競い、顧客獲得競争を繰り広げてきたがここに来て各社が大きな次の一手を打ち始めている。

 まずアマゾンが9月から食品や日用雑貨を"ばら売り"する「Amazonパントリー」を開始した。同社は今夏にも日用品の特売ページ「ヤスイイね」をスタートさせており、日用品のネット販売の強化を図っている。一方、ヤフーとアスクルが展開する日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」も攻勢を強めている。今夏から使い勝手を向上させたスマートフォン用アプリ「ロハコアプリ」を投入した後、9月下旬から初のテレビCMの放映をスタート。CM経由で一気に通販サイトへの集客やアプリのダウンロード数を増やし、新規顧客開拓を進め、売上規模の拡大を図っていく狙いだ。

 一方、リアルでの日用品の販売では強大なシェアを誇るGMS大手も日用品ECの強化に向けて新たな手を打ってきている。セブン&アイ・ホールディングスは11月1日から展開するコンビニエンスストアとネット販売との連携を強化したオムニチャネルサービス「omni7(オムニセブン)」を開始すると発表し、競合のネット専業社にはない店舗網を活用した戦略を軸に日用品を含むネット販売事業を推進していく考えのようだ。DeNAと協働して運営する西友の通販サイト「SEIYUドットコム」でも9月29日から購入商品を自宅以外で受け取れる「セルフピックアップサービス」を本格化させる。首都圏で受け取りロッカーの設置店舗を拡大するほか、店頭のカウンターでの引き渡しをスタートさせる施策を進めている。

 楽天の子会社のケンコーコムは「楽天市場」内で日用品や食品を販売する「楽天24」を軸に楽天市場ユーザーを取り込んで規模拡大を加速させる。また、住友商事グループの爽快ドラッグは複数の仮想モールへの出店する多店舗出店施策を推進する。昨年11月には仮想モール「ポンパレモール」に出店。また、仮想モールでの専門店の多店化にも取り組んでおり、以前から「ヤフーショッピング」「楽天市場」で展開するペット関連商品のペット店に加え、8月中旬に飲料のドリンク店を開設するなど攻勢を強めている。

 アマゾンやGMS、仮想モール以外の勢力も日用品ECを強化し始めている。例えば家電量販店のヨドバシカメラも速配や品ぞろえ、価格面などを直実に強化。「和製アマゾン」として対アマゾンの大本命と見る向きもある。このほか、大手ドラッグストアなども今後、攻勢を強めていくと見られる。ネット販売が人々の生活に浸透したことで今後、ネットで日用品を購入する時代が当たり前になるはず。今、このジャンルのシェアを獲得できればその恩恵は計り知れない。その金脈の獲得を巡って、今後も各社が様々な施策を打っていくと見られる。日用品ECを制する事業者はどこか。注目される。

消費者団体は存在価値を示せ

機能性表示食品制度の開始により、健康食品の機能性表示に関する考え方は180度変わった。これまであいまいな「イメージ訴求」だったが、新制度では届け出た「機能性表示(届出表示)」以上のことを表示してはならない。従来の健食より安全性や機能性の根拠をきちんと持つことが必要になり、その内容も公開されるなど開かれた制度になったはずだ。だが、それでも消費者団体は健食が嫌いらしい。明確な根拠も持たず、2兆円もの市場を無視して制度廃止にすら言及する団体もある。消費者団体は、まず自らの存在価値を明確にすべきだ。

 消費者庁は今年8月、機能性表示食品として受理したリコムの「蹴脂粒」を巡り浮上していた安全性問題に対し、「問題は認められない」との見解を示した。制度上、求められている安全性評価をクリアしているためだ。体内における働きを巡るメカニズムの問題が解決したわけではなく、今後改めてこの問題が浮上しないとは限らない。とはいえ、一旦は問題が決着したが、これに反発するのが一部の消費者団体だ。「制度の欠陥を如実に示すもの」とし、制度の見直し、さらには廃止すら要求しかねない団体もある。

 制度は、企業が自己責任で届出を行い、事後的なチェックのもとで運用する。このため、行政や消費者団体、学術界が届出情報を精査し、疑義があれば声を上げること自体、歓迎すべきだ。だが、2兆円もの市場が存在する中で、その大半が企業の広告宣伝による効果が招いたまやかしだと決めつけるのは乱暴だ。

 消費者団体は、かつて「イメージ訴求」の健食のみで市場が形成されていた時代にはこれを強く批判した。新制度は、科学的根拠に基づき、表示も届け出た範囲に限られるなど、従来の健食より厳しく、表示も明確だ。にもかかわらず、業界サイドと制度改善を前向きに検討する姿勢はみられない。そもそも、消費者団体が本来担うべき「消費者教育」の面では目立った活動は見えてこない。

 消費者委員会の調査によると、現在、日本国内には2400超もの消費者団体が存在するという。このうち、広域に活動するのが166、県域・市町村単位のものが2200超。だが、その多くは「意識の高い少数の消費者」で組織される傾向があるという。一般消費者は所属せずとも活動による消費者利益を享受できるため、会員獲得や、活動の継続が課題になっている。

 一方、海外の場合、消費者団体自らが大衆への情報発信を積極的に行っており、情報誌の発行などで消費者の商品選択を支援するなどしている。定期購読者が850万人に上る媒体もあり、消費者が欲する情報、収益基盤、一般消費者を代表する正統性を自ら獲得している。国内でも一時期、同様の活動を目指す団体もあったが、結局は頓挫した。このため、「情報」「資金」「正統性」を行政に依存しているのが実態だ。

 消費者志向の経営が求められる中、企業と消費者団体の関係は必ずしも対立構造ではない。消費者団体は、閉ざされた世界で主義主張を語るのではなく、大衆や企業を理解するところから始めるべきだ。

通販各社は物流リスクに備えよ

ネット販売チャネルを中心に通販市場の拡大が続く中、ドライバー不足や宅配の再配達問題など、通販とは切っても切れない物流業界の課題が顕在化している。ここにきて、とくに一都三県を中心に大型物流センターの需給バランスもタイトになっているようだが、物流面の安定なくして通販市場の成長は成り立たないだけに、通販企業はこれまで以上に物流関連の動向に注視する必要がありそうだ。

 国土交通省は今年6月、通販の荷物を中心とした宅配便の取扱個数の増加とともに、受取人不在などによる再配達が全体の20%近くに上っていることを問題視して「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」の第一回会合を開催し、通販企業や宅配事業者などの関係業界が連携して再配達の削減に取り組むことが確認された。その後、楽天とヤマトホールディングが連携し、今夏から楽天市場で注文した商品をファミリーマートやサークルKサンクスなど、ヤマト運輸と契約した全国約2万店のコンビニで受け取れるサービスがスタートするなど具体的な動きが出てきており、他の大手通販も当事者意識を持つべきであろう。

 一方で、総合不動産サービスを手がけるジョーンズラングラサールが6月にまとめた物流施設の需要予測レポートによると、ネット販売市場の拡大によって2020年までに国内で約660万平方メートルの物流施設がネット販売事業者用に必要とする。とくに、即日・当日配送といったクイックデリバリーのニーズの高まりから1都3県を中心とする関東では年間約50万平方メートルが必要と試算している。これに対し、関東における過去10年の大型先進物流施設の平均年間供給量は約58万平方メートルで、20年までこの水準が続くと供給の大半はEC市場に吸収されて全体の需給がひっ迫し、賃料上昇の要因になると指摘する。

 開発業者側も、需要拡大をにらんで外資を中心とした物流施設開発企業に加え、最近では住宅・建設大手や不動産大手なども大型倉庫の開発・運営に力を入れてきている。とは言え、大手のネット販売事業者は大量の商品をストックできる大型で近代的な物流施設を求めるケースが多く、また、効率化の観点から小中規模の倉庫から出て大型拠点に集約する事例も増えており、とくに好立地の東京23区や神奈川東部、埼玉南部、東京湾岸は開発適地が不足しているようだ。

 こうした情勢下、既存施設を有効利用する動きもある。日本郵便は各地の郵便局の空きスペースや、郵便局ネットワークの再編に伴う新築で倉庫スペースの拡大を進める計画で、今年5月に完成した埼玉県内の東京北部郵便局は約8000平方メートルの倉庫スペースを設けているほか、今後2~3年をかけて全国で延床面積4万平方メートルまで増やして通販企業を支援できる体制を目指している。

 通販企業にとっては配送面だけでなく、好立地な物流拠点の確保や賃料の動向などは事業を拡大する上での重要項目になってくるだけに、従来以上に物流のリスクを意識した戦略立案が必要になってきそうだ。

通販各社はサービス力を磨け

増税後の消費の冷え込みに加え、円安に起因する商品原価の上昇などが通販企業の業績を直撃し、その影響が長引いている。とくに総合通販は増税直後で大きく落ち込んだ昨年4~6月期の業績と比べても、今年の4~6月期の本業で大きく好転した企業はほとんどないのが実情だ。こうした時期だからこそ、通販各社は新規顧客の獲得に向けていま一度、通販利用のハードルを下げる努力が必要と言えそう。

 人口減少が見込まれる中、消費の多様性は広がっており、通販チャネルを選んでもらうにはサービス力、利便性を徹底的に高めることが大事になる。通販の主力カテゴリーであるアパレル商材は、その場で試着できるリアル店舗とは異なり、サイズに対する不安が通販の弱点ではあるものの、商品の見せ方(情報量)や返品対応、テクノロジーの活用などで消費者が抱える不安の払拭に努める企業が増えている。

 見せ方については、従来のサイズガイド表や購入者のレビューだけでなく、アイテム別の丈感を身長別に数パターン表示することで、見た目を気にする消費者の助けとしている。ただ、有店舗企業も通販チャネルの弱点を補うべくサイズ感の問題に向き合っており、カジュアルウエアを展開するコーエンは身長の異なるモデルがそれぞれSサイズとMサイズなどを着用した画像を掲載して着用感をイメージしやすくする取り組みを、サイズ展開の多いメンズ商材から着手し始めている。

 返品対応では、靴とファッションの通販サイトを運営するロコンドが30日間の返品無料期間を設けることで、とくに靴を通販で購入したことのない消費者の獲得に成功しているほか、テクノロジー面では仮想試着ツールを活用する事例が出てきている。例えば、ディノス・セシールは、通販サイトで購入したい商品と手持ちの服のイラストを重ね合せてサイズの差が分かるスウェーデン発のサービス「バーチャサイズ」を「ディノスオンラインショップ」に導入している。また、楽天は7月13日に英国でバーチャル試着サービスを提供するフィッツミー社を買収。同社は自分の体形やサイズを入力することで商品を試着した際のイメージ画像が確認できたり、画面上でさまざまなサイズの服を着せ替えられるサービスを展開しており、同サービスが「楽天市場」の店舗に実装されれば、仮想試着の認知度や利用率が一気に高まることも期待される。

 一方、婦人服通販のドゥクラッセは4月から、正午までに電話で注文を受け、裾上げや着丈詰めした服を最短で翌日に届けるサービスを開始した。同社では配送拠点に専任者が常駐し、ライン化された仕組みでお直し作業を行うことで一律390円という業界の4分の1程度の料金で提供する。

 サイズ感の問題以外では、急に必要になることが多い礼服の即日配送や、後払い決済、コンビニ受け取りなど、消費者の細かいニーズに応えていくことが大切で、通販業界の物差しではなく、小売業全体の基準で高いサービス力を持つことが、今後の生き残りに欠かせない要素となりそう。

アパレルECは襟を正せ

 ファッション通販サイト「グレイル」を運営するGioの代表取締役、塚原大輝容疑者が6月30日、大阪府警に不正競争防止法の疑いで逮捕された。容疑は、他社ブランドの衣料品を意図的に模倣して販売したというもの。ネット販売企業のコンプライアンスに対する意識の低さを露呈した事件といえそうだ。

 Gioを告訴したマッシュスタイルラボによると、同社が手がける人気ブランド「スナイデル」と「リリーブラウン」の商品と同一デザインの模倣品をGioが継続的に販売しているとして、当該商品の販売停止を再三申し入れていたものの、Gio側からは何の応答もなく販売を継続していたため、知的財産を守るためにも刑事告訴に踏み切り、30日付けで大阪府警が逮捕したという。

 グレイルは、若年女性向けに低価格な衣料品やファッション雑貨を販売する通販サイトで、トリンドル玲奈さんや藤井リナさんといった人気モデルをサイトやテレビCMなどに起用して急成長。若い世代への知名度はかなり高かった。

 「デザインの模倣」が刑事事件となったケースは非常に珍しい。一部報道によれば、Gioにはデザイナーがおらず、スナイデルの商品でサンプルを作り発注をかけていたことが証拠となり、逮捕に至ったという。デザイナーがいなかったのが本当だとすれば、「模倣を前提」とした事業構造となっていたわけだ。「本家」よりも圧倒的に安い価格で提供できるのも当然。マッシュ社の告訴は、「不当な商売を許さない」という強い意思のあらわれと言えるだろう。

 アパレル業界にとって、「デザインの模倣」は切り離せない問題だ。今回はGioがマッシュ社の警告を無視したことで逮捕につながったわけだが、「どこの会社でもやっているから大丈夫」(業界筋)という意識があったのではないか。

 価格比較のしやすいネット販売において、「安値」は大きな武器。有名ブランドに似せた商品を、本家の数分の1という価格で売れば、例え「真似している」と分かっていたとしても、飛びつく消費者は多い。Gio以外にも同様のやり方で商売していたアパレルネット販売企業は、少なからずあることが予想されるだけに、マッシュ社の告訴は業界に一石を投じるものとなるだろう。

 今回の事件は、ネット販売企業のコンプライアンスに対する意識の低さをあらわしたものともいえる。Gioは2014年8月期には約69億円を売り上げていたとみられる大手ネット販売企業だ。急速に拡大していたものの、規模に見合うだけの体制が整っておらず、売り上げを優先するあまり、コンプライアンス意識に欠けていたのではないか。

 ただ、こうした「商品の模倣」はネット販売に限った話とはいえない。当然、カタログ通販や実店舗を運営するアパレル企業にも関わりのある問題だ。今回のGioほどモラルを欠いてはないとしても、安易に他社の「売れ筋」を真似て売り出した会社はあるはずだ。模倣は根深い問題だけに、各社は襟を正す必要があろう。健全な市場の発展は、コンプライアンス意識を皆が持ってこそということを自覚すべきだ。

〝モラトリアム産業〟から脱せよ

健康食品産業は転換期にある。政府は規制改革により、健食の機能性表示を解禁し、「機能性表示食品」を作った。自らの責任で根拠さえ持てば、機能を表示してもよいという存在価値が与えられたのだ。届出は、仮にそれが疑義を呈されるものであったとしても、自ら研究をまとめ、国民に開示する企業姿勢そのものが、従来の健食をただ売る企業より評価されるだろう。健食はいわばモラトリアム産業と言える時代を終え、より"中身"が問われることになる。

 市場は今後、二極化することになる。「イメージ」訴求による従来の健食市場と、明確な機能性表示で訴求する新市場だ。

 それぞれ、一長一短がある。「機能性表示食品」は、機能表示できる反面、その内容は届出表示の範囲に限られる。決められた範囲内で広告するトクホや医薬品に近づく印象だ。そうなると、これまでのように"元気の源"のような訴求はできない。届出表示を超えて、アンチエイジングを標ぼうすることになるからだ。個別の商品単位では、ターゲットとなる市場は限定されるかもしれない。

 健食はその点で自由だ。「明日への活力」をうたって顧客になりたい自分を想像させてもいいし、「スムーズな毎日」でひざの痛みがない生活シーンをイメージさせてもよい。幅広いターゲットに訴求することも可能だ。ただ、規制は厳しくなる。すでに「機能○○食品」など誤解を生むような食品への指導は行われているし、ダイエット食品に対する監視も厳しくなっている。

 どちらに軸足を置くか、企業によって判断は分かれるだろう。新制度は、製品の臨床試験で機能を評価すれば、独自の表示ができる旨味がある。ただ、研究レビューによる評価では、他社と表示が重なる。表示範囲は制約されるのに差別化できないでは、コストのみ増えるとの判断もあるかもしれない。

 今の届出の状況をみると、これまで受理されたのは43商品。いずれその数はトクホを抜くことになるだろう。一方で、中小の活用はあまりに少ない。ナショナルメーカーの多くは活用に動くが、中堅どころで受理された通販企業は八幡物産のみ。全体でも14社に留まる。特にこれまで市場をけん引してきた九州勢は、沈黙を守っている。すでに届出を行っているかもしれないが、九州勢はキューサイを除く100億円超の企業のいずれも受理に至っていない。

 これまで、健食は制約が少ない中で、クリエイティブの巧みさや顧客サービスの充実、"国民の健康への寄与"などと大上段に構えた理念の放つ輝きが訴求力を生んできた。

 だが、すでに市場は1兆円を越える。今後も健食を売る選択肢自体は残るだろう。ただ、食品安全委員会は6月から健食の安全性に関する議論をはじめ、その存在価値の根本に迫ろうとしている。数年前なら一部の急進的な消費者団体の主張とあしらえた"流通禁止論"も、いずれ笑えなくなる時代がくるかもしれない。規制改革で産業化への道は開かれた。が、長すぎたモラトリアム期間は終わりを告げ、健食を売る責任と根拠の真贋が問われる時代がきたことを意識する必要がある。

通販各社は安全体制を確認せよ

日本年金機構の加入者情報流出事件が大きな波紋を呼んでいる。報道によれば、職員宛てに送られてきたメールに添付されていたファイルを開いたことでウイルスに感染し、情報が流出したとみられる。こうした事件は、インターネットにつながった端末で個人情報を扱うのであれば、どの企業や組織でも起こりうるだけに、ネット販売実施企業もしっかりとした対策を練るべきだ。

 今回の事件では、職員が安易にメールに添付されたファイルを開いたことが問題とする向きもある。ただ、メールの送信者やタイトル、メールアドレスを偽装するなど、攻撃側の手口が巧妙化しているのも事実で、仮に年金機構のセキュリティー体制や職員の意識に問題があったにせよ、一組織の失態として片付けてしまうのは危険だろう。こうした事故は、インターネットにつながった端末で個人情報を扱っている以上、どの企業でも起こりうることを肝に銘じなければならない。

 また、年金機構だけではなく、日本の他の官公庁や大企業がいわゆる「標的型攻撃メール」により、サイバー攻撃を受けているとも言われている。ネット販売企業にしても、大量の個人情報を扱っている以上、攻撃者の標的とされる可能性は十分にある。クレジットカード情報はもちろん、サイトのIDやパスワードも、他サイトでも使い回しているユーザーが多いだけに、利用価値は十分にあるからだ。特に中小通販企業の場合、セキュリティー対策が甘いことが多く、攻撃者がそれを承知している可能性は高い。

 標的型攻撃メールについては、明らかに出所が怪しいメールは誰も開かないだろうが、攻撃者も工夫しており、社員が「業務に関係がある」と誤認すれば添付ファイルをクリックする恐れはある。サポート用のメールアドレスに、消費者を装ってウイルスを添付したメールを送りつけるケースもありうるだろう。

 まずは、現在のセキュリティー体制に問題がないかをもう一度確認する必要がある。重要なのは、添付ファイルのあるメールに対してどうすべきか社内や部署で意思統一すること、そしてウイルスの可能性がある添付ファイルを開いてしまった場合、どう対処すべきかを決めておくことだ。「事故は起こりうるもの」という考えに基づいたセキュリティー体制の構築が求められる。サイト運営や個人情報の管理を外部に委託している場合もあるが、事故が起きれば自社の責任は免れない。委託先のセキュリティー体制を把握し、問題がないかどうかを再確認しなければならない。

 また、年金機構のケースでは、事故後の対応の遅れも指摘されている。流出が起きた場合、どういった措置を取るべきなのか、マニュアル化しておくなどの対策をしておくべきではないか。

 セキュリティー関連の事件が相次ぐ中、消費者の意識も高まっており、通販企業は今まで以上に安全管理に注意を払う必要がある。「不正アクセスを受けない安全なサイトを構築する」ことが重要なのは当然だが、最悪の事態を想定したリスク管理が肝要だ。

大胆かつ慎重に中国に挑め

 中国の大手仮想モールが相次いで日本企業の出店誘致を強化している。6月1日には中国でシェア2位の大手ネット販売サイトを運営する京東集団が中国の越境仮想モール「京東全球購」内に日本製品専門の販売サイトを開設し、通常は支払いが必要となる出店料とプラットフォーム使用料を早期出店者には1年間無料とする優遇措置も用意して国内のEC事業者に対して、大々的な誘致を始めた。すでに爽快ドラッグなどの大手EC事業者の参加も取り付けたようで、年内には1000社を超える出店を目指すと鼻息も荒い。

 中国最大手の仮想モール「天猫」などを運営するアリババグループもヤフーと組んで、今夏をメドに日本企業の出店促進を強化する。これまでも独自に日本企業に出店を促してきたようだが、ソフトバンクという同じ筆頭株主を持ち、関係の深いヤフーを介し、効率的に中国でも人気の高い優れた商品を製造、販売する日本企業の出店を促したい考え。対象企業にはアリババが運営する中国国内の仮想モール「天猫」「天猫国際」に通常の10分の1程度と安価に出店できたり、出店後に無料広告などで集客支援などが受けられる優遇プランを展開していく模様だ。

 こうした動きの背景には中国国内での競争激化があるようだ。中国ECで首位のアリババグループの昨年度の流通総額は約50兆円と凄まじい規模まで成長しているが、2番手の京東集団も直販と仮想モール事業を組み合わせた「アマゾンモデル」で着実に流通総額を伸ばしている模様。さらに中国で人気のチャットアプリの運営者に資本参加するなど首位への対抗策を築きつつある。激化する競争の中、中国でも品質への信頼性の高さなどから人気の日本製品を、しかも中国でも問題となっている模造品を心配することなく、確実に正規品を販売する日本企業を多く出店させることで競合との差別化が図れる。そしてこれにより流通総額拡大にもつながり得ることから各社ともここに来て日本へのアプローチを積極化させているようだ。

 日本企業にとっても中国という巨大なマーケットは魅力的だ。人口減などで確実に国内マーケットはシュリンクしていく中、否応なしに通販事業を含む小売り事業者は海外へと目を向けて行かざるを得ない。無論、成長著しい東南アジアのマーケットも魅力的だが、やはり、世界第2位の経済規模を有する中国市場には参入しやすい状況が整ってきているのであれば挑戦する価値はある。

 とは言え、数年前の中国進出ブームでは意気揚々と日本の有力通販事業者が中国に参戦をしたものの、中国企業とのし烈な競争や商習慣の違いなどから、食い込むことができず、多くがすぐに撤退。結局、儲かったのは「中国、中国」と煽った一部の支援会社だけという讃嘆たる状況になったことも忘れてはならない。飛び込む勇気は必要だが、飛び込んだ後には慎重さと緻密さも必要だ。かつてのように日本での成功体験に惑わされず、当該市場に根差した戦略がなくてはならない。それなくしては数年前と同じ轍を踏むことになりかねない。各社には大胆かつ慎重に巨大マーケットに挑んで欲しい。

価格以外のサービス力を高めよ

この1年、消費増税後の消費の冷え込みや円安に伴う商品原価の上昇、運賃の値上げ基調など逆風が吹き荒れたが、通販企業は収益力の改善や事業拡大に向けていま一度、価格以外のサービス力を高めることで競合との差別化を図るべきだろう。

 昨今は「オムニチャネル化」の流れもあって、あらゆるチャネルを駆使していつでもどこでも商品を購入できたり、受け取れる仕組みを構築しようとする事例が増えているが、通販専業にとっては多数の店舗を展開したり、実店舗を持つ大手小売と提携している企業は一握りにすぎず、現時点では消費者が通販利用の際に感じる不安を払拭し、購入のハードルを下げるために知恵を絞ることが、いままで以上に必要と言えそう。

 これまでも総合通販を中心に古い家具を無料で引き取るサービスや、宅配型で衣服や布団をクリーニングして次のシーズンまで保管するサービスなどを、専門業者と提携することでサービスメニューに加え、新商品の購入につなげる取り組みがあったが、ここにきてアフターサービスの強化やお直し品の即日配送などに乗り出す企業も出てきている。

 カタログハウスは昨年10月、これまで3年間だった購入商品の無料修理期間を5年間に延長。無料修理期間を小売業界でトップ水準に引き上げることで商品や価格以外の"購入後の安心"で差別化を図る。通常、通販企業を含む小売各社の場合、無料修理期間は3年の場合や5年でも有料のことが多かったり、低価格商品は対象外とすることもあるようだが、同社では商品金額に関係なく、繊維製品や消耗品以外の全品目で5年間の無料修理に対応する。

 ジャパネットたかたも今年3月から、家電の長期保証サービスを始めた。ヤマトホールディングスのグループ企業が手がける家電製品向け延長保証サービスのスキームを活用。顧客がジャパネットたかたで家電を購入する際、「ジャパネット長期保証」に加入するとメーカー保証期間を延長して購入日から5年間、自然故障に関して無償修理サービスが受けられる仕組みとした。保証料はかかるものの、アフターサービスを強化することで顧客が安心して商品を購入できる環境を整えた。

 ドゥクラッセは4月から、裾上げや着丈詰めした服を注文日の最短翌日に届けるサービスを始めた。同社は4年前に1センチ単位でのトップスの丈詰めやボトムスの裾上げをサービス化。年間2万3000枚のお直しを実施しているが、今回、午前9時から正午までの電話注文分を翌日配送に対応することで年間5万1000枚のお直しを目標とする。費用は一律390円で、配送拠点に専門人員を常駐させライン化された仕組みで商品のスムーズな移動とお直し作業のコスト削減を図ることで業界の4分の1という料金に抑えた。

 簡単にサービス化できる事例とは異なり、これらの取り組みにはバックヤードの改革や専門人員の補充などコストと時間がかかるが、商品面での差別化が難しい昨今、通販業界だけでなく小売全体でみても高いサービス力を身につけることは、オムニチャネル時代においても大きな武器になりそうだ。

総合通販は企業価値の向上目指せ

 大手総合通販企業を取り巻く環境が厳しさを増している。ニッセンホールディングス(HD)の前期決算は最終赤字が85億円まで拡大したほか、売上高も実質的には減収となる厳しい内容だった。また、先ごろ発表されたフェリシモとスクロールの通期決算は、ともに最終赤字を計上する結果となった。各企業にとって、今年は将来の存続に向けた正念場となりそうだ。

 ネット販売市場が拡大する一方で、近年は従来型のカタログを中心とした総合通販企業は苦戦。既存顧客のネットへの移行こそ進んでいるものの、新規顧客を開拓できない状況が続いており、市場における存在感が低下している。こうした中で、ニッセンHDはセブン&アイグループの傘下に入った。さらに、千趣会がJフロントリテイリングと資本業務提携を締結。業界をけん引してきた大手2社のこうした動きは、総合通販企業を取り巻く環境が厳しい状況であることを如実に示している。

 近年は、流通形態の多様化が進むとともに、消費者の商品購入パターンも多様化。さまざまなメディアやチャネルで欲しい商品を選び、購入することが当たり前となる中で、これまで以上のスピード感をもって商品戦略や価格訴求を打ち出す必要があるが、オムニチャネル化が進む中で、体力に劣る総合通販企業が遅れを取っている感は否めない。千趣会やニッセンHDが有店舗の大手小売企業と連携したのは必然といえる。

 とはいえ、ニッセンHDにおいてオムニチャネルの成功事例がなかなか聞こえてこないように、違う業態の企業同士が連携したからといって、すぐにシナジーを生み出すのは難しいのが実情といえる。総合通販企業にとって、有店舗小売企業との連携も可能性の1つではあることは間違いなかろうし、新たな業態開発へ期待もされるが、それだけが解とはいえないのではないか。

 総合通販企業にとって本業である通販を取り巻く環境は厳しい。回復しない消費や円安による原価上昇、さらには用紙代高騰や運賃の値上げも追い打ちをかけている。加えて、消費者が通販に求めるサービス水準が向上しており、その対応も求められている。

 それでは、総合通販企業は生き残るためにどうすべきか。小売が厳しいとすれば、一つ考えられるのは、蓄積してきたノウハウやインフラの活用だろう。スクロールは、子会社で通販支援事業のスクロール360を中核として一気通貫のソリューションを提供するビジネスモデルを推進すると表明。フェリシモでも「リソースを外部企業に開放するビジネスコラボレーション事業」を新規事業として展開するとしている。こうした分野も競争は厳しいが、これまでの経験や成功事例が活かせるだけに一日の長がある。

 もちろん、商品力強化やニッチなジャンルへの特化で存在感を増す
手法もある。経営の安定を図るためには他企業との提携は選択肢となろうが、そのためにも必要なのは企業価値の向上であろう。市場における存在感を高め、唯一無二の存在にならなければ、今後の存続は難しくなる。

新表示制度の「本質」を歪めるな

「機能性表示食品」制度で第一弾となる商品が出そろった。トクホにない機能をうたうものもあり、「企業の自己責任」で運用される制度で、表示の自由度が高まることが期待される。トクホでお馴染みの成分を使う企業もあり、審査を経ない制度の活用で、迅速な商品化も可能になる。ただ、一方で制度の本質を歪めかねない行政の運用に企業の不満の声も聞かれる。「届出制」が、実質的に「許可制」に近い形で運用されていることだ。

 制度の根幹は、企業の自己責任による表示だ。安全性や機能性に関する所定の内容を自ら評価して届け出る「事前届出制」が基本。事前届出としたのも販売までの60日間、業界内外の監視に晒されることを前提としたものだ。消費者庁の役割は、届出内容を"形式的"にチェックするにとどまる。

 4月の開始からこれまでの届出件数は104件。8商品の受理に要した期間は約2週間だ。消費者庁の板東久美子長官は、受理に時間を要する理由を「(形式的な)修正の依頼、確認のため」と会見で話している。

 届出に必要な書類は膨大だ。形式的なチェックで最低限、「書類不備」を確認するだけでも大変な労力であることは想像できる。実際、今回、受理された企業の中にも、評価に影響は及ぼさないが、事後にケアレスミスが発覚したものもある。

 ただ、これら受理された企業と同時期にすでに届出を行いながら、いまだ不受理の企業の中には、単なる「書類不備」を超え、「内容不備」に踏み込んだ指摘を受けている節のある企業も複数あるとみられる。機能性表現の内容に関するものだ。

 消費者庁が直接、機能性表現を指摘している様子は今のところない。だが、表示内容と科学的根拠のかい離から、"科学的根拠が十分であるか"という視点から確認しているとみられる。遠回しに"その根拠でこの表現は本当に大丈夫か"と、伝えるものだ。消費者庁は「審査でないため表現ぶりを直すことはなく、形式的な確認を行うだけ」とする。だが、確認された企業の中には、表現を指摘されたと感じる企業もある。

 これまで例のない新しい制度であるため、消費者庁の慎重な舵取りも理解できる。届出内容が、業界内外のさまざまな識者の目に晒されることを考え、堅い運用で順調な船出を目指しているのだろう。むしろ、「がんが治る」など明らかな違反は明確に指摘するべきでもある。

 だが、制度の基本は、あくまで「企業の自己責任」による届出制。水面下の運用では、他社の表現や根拠に対する判断を参考にできず、境界がどこにあるか推察できない。制度に否定的な消費者団体や学識経験者の批判に晒される面があるかもしれないが、そこで揉まれてこそ企業の対応力が高まる。安倍首相は、企業の自己責任による制度で機能性表示を解禁し、中小にも門戸を開くと語った。前例に学べる素地があるからこそ中小が学び、活用企業の幅も広がる。合否判定のように、水面下で受理不受理に一喜一憂する運用ではバランスを欠き、「届出制」は形骸化する。消費者庁は最低限の運用に努めるべきだ。

百貨店通販は自家需要に挑め

 百貨店各社のネット販売事業は中元・歳暮といったギフト商材の構成比が依然として高く、次の成長フェーズに向けては、遅れているファッションアイテムなどの強化が急務と言えそうだ。

 日本百貨店協会がまとめた「2014年版百貨店eビジネス白書」によると、13年の百貨店25社のネット販売売上高合計は前年比13・2%増の310億4656万円となり、過去5年間では一番の伸び率となったものの、各社の売り上げ規模に開きがあることもあって、1社平均では13億円弱と物足りない。また、売上高合計に占める「中元・歳暮などの商材」のシェアは69・4%で、依存度が高いことが分かる。

 最近でも、三越伊勢丹が昨年10月にNTTドコモが運営する通販サイト「dショッピング」内に食品や雑貨などを扱うギフト専門サイトを出店したほか、11月にもリクルートライフスタイルとの共同で総合ギフトサイトを開設するなど、百貨店各社は中元・歳暮やパーソナルギフトといった百貨店店頭の強みが生かせるカテゴリーを強化する傾向が強く、一般的にネット販売市場での成長が見込まれている衣料品分野での成功事例はほとんどないと言えそう。

 ただ、美術品では大丸松坂屋百貨店が昨年10月にオークションサイト「楽天オークション」を通じて絵画の販売を始めたほか、三越伊勢丹も今年1月、三越日本橋本店としてネットオークションの「ヤフオク!」に出店し、限られたユーザーだけが入札できる 「メンバーズオークション」に参加している。本命のファッションカテゴリーでも、三越伊勢丹が昨年4月に紳士服のネット専任バイヤーを初めて配置し、ウェブのシーズン性に合わせてバイイングを行える体制を整えた。また、大丸松坂屋百貨店店はネットで注文したファッションアイテムを自宅か大丸と松坂屋の対象店舗で受け取れるサービス「クリック&コレクト」を13年11月にアパレル大手のワールドと組んでスタートしたが、昨年春にはシステムを内製化。ワールド以外のブランドも参画できるようにし、サービスの対象は婦人服だけでなくファッション雑貨や紳士服に広げるなど利便性を高めている。

 さらに、新たな手法を用いたファッションECの強化策としては、昨年12月に近鉄百貨店が衣料品ネット販売専業のマガシークと組んでファッション通販サイト「ハルカススタイル」をオープンしている。同サイトはマガシークの自社通販サイトと商品情報や在庫を共有しているため、ひとつの在庫をどちらのサイトでも販売できるのが特徴だ。新サイトでは、近鉄百貨店の店頭で扱うブランドの3倍以上がそろうことから、売り上げだけでなく、ネット先行型で新規取引先ブランドの開拓につながる可能性もありそうだ。

 百貨店各社にとって、中元・歳暮は一大商戦であり、かつECとの親和性も高いことから引き続きネット販売ビジネスの主要商材であることに変わりはないであろうが、ギフトの伸びが頭打ちとなる前に、衣料品などEC利用のメーンである自家需要をとり込むことが、持続的な成長には欠かせない条件となりそう。

業界団体は役割の重さ自覚を

「機能性表示食品制度」(新制度)が始まった。企業の約7割が活用の意向を示しており、制度の浸透で健食業界の底上げ、市場の再浮上が期待される。一方、新制度で企業に求められる機能性評価のレベルは高い。安全性や品質の担保など、規制強化の側面もある。企業努力も当然ながら、中小企業を含めた制度活用を促すため、健康食品に関連する業界団体が果たす役割は大きい。

 新制度を巡り、通販支援を行う事業者や健食関連メディア、業界団体のイベントが活況だ。その評価はここで行わないが、複数のイベントにおける主催者と参加者の質疑の応酬から、新制度に対する理解には企業間で相当なギャップがあると感じる。企業の対応力に差がある中、制度を悪用したり、過失により法に抵触する表示を行う企業が現れることは容易に想像できる。業界団体がいかに自浄作用を持ち、一方でまじめに取り組む企業を支えることができるか、健全な制度運用の重要なファクターになるだろう。

 日本通信販売協会(JADMA)は、新制度のガイドライン解説書を発刊する。また、届出情報に基づく商品のモニタリングも行う。

 米国では、機能性表示制度の導入後、市場が拡大した一方、健食に否定的なメディアのネガティブな報道が相次いだ。こうした前例を参考に、いち早く自主規制の取り組みを打ち出したJADMAに期待したい。

 一方、日本健康・栄養食品協会(日健栄協)は、研究レビューによる機能性評価のコンサルティングに力を入れる。専門の試験受託機関には、数千万円の売り上げが見込める臨床試験に意欲を示しても、金にならない研究レビューに消極的ところも多いという。その意味で、中小の制度活用を促す事業は業界の底上げにつながるだろう。

 ただ、その利用価格は疑問が残る。日健栄協にレビューを依頼した場合のコストは300万円。妥当なコストは諸説あるが、レビュー経験を持つ大学教授など複数の有識者は100万円以下と想定している。300万円はあまりに法外といえる。制度活用に対する投資回収を踏まえて商品化することを考えると、中小企業は二の足を踏むかもしれず、これでは中小の支援も建前に終わる。研究レビューの適正価格を知らない企業相手の商売は控えるべきだし、そもそも適正なコストがどの程度か示すのも業界団体の役割だ。

 日健栄協は、休刊していた学術情報誌も復刊。ジャーナルビジネスにも参入する。新制度に浮き足立つが、ビジネスへの意欲ばかり目につくのは、健食業界最大規模の団体としてバランスを欠いてはいないか。

 これまで例のない制度であるため、国は安全な運用でスムーズな導入をめざす。ただ対象成分の範囲など改善を求める声もあり、業界はまず信頼を勝ち得、制度改革につなげていく必要がある。将来的なサプリメント法の制定を見据え団体間の連携を密にし、日健栄協も乱立する業界団体をまとめていくことが必要になる。新制度が価値ある制度となるか、これからが正念場なのだ。業界団体は、新制度において自らが果たす役割を自覚すべきだ。

アマゾンよ、立場を自覚せよ

 アマゾンジャパンの関連会社の派遣社員が愛知県警に書類送検されたと一部報道が伝えた。同社が運営する通販サイト内で仮想モール機能「マーケットプレイ ス」を活用した出品者により出品された児童ポルノ写真集の販売を手助けしていた児童買春・ポルノ禁止法違反(販売ほう助)の疑いである。無論、責められる べき対象は当該写真集の出品者であろう。業界関係者からも「少し気の毒。見せしめ的な要素も強いのでは」との声も聞こえてくる。しかし、一方では「アマゾ ンは自らの立場を自覚すべき」との声も少なくない。

 アマゾンジャパンはネット販売市場の拡大とともに売上高を拡大させ、直近決算の売上高は8000億円超まで成長した。無論、日本のBtoCネット販売の事 業者の中では断トツの首位である。近年ではこれまで作り上げた集客力や高い機能などを有したメガサイトを他社に提供する「マーケットプレイス」の利用者拡 大に本格的に乗り出している。企業である以上、営利を追い求めていくことは当然だ。しかし、その前に先ほどの声のように、自らの立場を自覚すべきではない か。

 アマゾンは先の児童ポルノ写真集に関連した家宅捜索後、ネット上の有害情報や違法情報の排除に取り組んでいるセーファーインターネット協会(SIA)の賛 助会員となり、同協会から提供を受ける違法商品情報を元にサイト内のチェック強化や顧客が不適切な商品を電子メールで通報できる専用窓口の設置など違法商 品排除強化策を実施したという。その取り組み自体を否定するものではないが、同社ほどの規模を持つ事業者がその程度の準備すらしていなかったという事実に は驚愕せざるを得ない。しかも自社による直販というある程度制御できるビジネスの領域外の、ある意味でリスクもある外部事業者による出品ビジネスの拡大に 力を注いでいる最中にも関わらずである。これでは事業拡大への投資は惜しまないのに、企業コンプライアンスはおざなりなのかと揶揄されても仕方あるまい。

 同社が自覚しているか否かは別としても世間は業界トップの売上高を有するアマゾンをネット販売事業者の代表として認識している。そして"代表者"という立 場は、常に責任が付きまとう。誤った行いをすれば、世間および行政から厳しい目を向けられ、消費動向や規制強化など業界全体に大きな悪影響を及ぼす。アマ ゾンは常に業界トップであることの立場と責任を自覚し、より自制的な管理体制を整えるべきだ。

 加えて、今後は自らが主導的な立場でネット販売市場にとって有益となる施策を行っていくべきだ。先人たちを作り上げた通販市場に乗っかりこれまで業績を伸 ばして最大手にまでなった同社は今度は自ら率先して市場の健全化を図っていく責務がある。これまでは業界の健全化などに対する取り組みに名を連ねることは ほぼ皆無であったが、そうしたスタンスは今後は改めるべきだ。市場の健全化は同市場のすべてのプレイヤーの成長を後押しすることは間違いない。もちろん、 自らの今後の成長にもつながるはずだ。アマゾンの今後に期待したい。

「健康食品JAS」騒動に学べ

食品の新たな機能性表示制度が始まろうとしているが、健康食品業界はいまだ一枚岩ではない。業界団体の乱立は今なお解決しない問題だが、一部の関係者のスタンドプレーが目立つのもこの業界の特徴だ。象徴的なのが「健康食品JAS」を巡る一連の報道が招いた混乱だろう。そこには、業界が長年抱えてきた問題の一端も垣間見える。

 「健食JAS」の問題は、農林水産省の補助事業から始まった。食品トレーサビリティシステム標準化推進協議会が2年間に渡り計約2000万円の補助金を交付され、"いわゆる健食"を含む食品表示のガイドラインを検討してきた。だが、業界紙「ヘルスライフビジネス」がJAS規格化に道筋をつけるものと報じたために混乱が広がった。報道を受けて農水省は業界紙に抗議。2月に行われた説明会では、農水省幹部が「報道ですごいものができると誤解した方に迷惑をかけた」と、先行報道の問題を指摘した。

 ただ、悪いのは業界紙だけだろうか。そもそも2年という歳月をかけ、2000万円もの費用を投じた事業に中身はあったか。説明会では、協議会がガイドで求める情報開示項目に「有用成分等の名称、含有量」「品質・衛生管理の方法」「消費者対応部門の連絡先」をあげた。多くは、現状の法規制の順守や、自主的な品質管理基準であるGMPをなぞるもの。出席者からは「中身がない」と、落胆の声も聞かれた。

 協議会は、2013年に調査事業を、昨年に検討会を設置してガイドを検討してきたという。調査では、国内外の視察や店頭商品の表示調査、企業の販促資料の確認を実施。海外視察は検討委員2人がアメリカ、ドイツ、韓国を視察。各国の表示サンプルや商品目録などを作成したという。検討会は昨年7月から5回開催。補助金はこれら表示サンプルの収集や海外視察、検討委員への謝金に消えた。

 それでも協議会は「3項目しかないが重要なもの。どう活用するか。各社ばらばらではいけない」と力説する。だが、一方の現実は、つくっても運用する主体がないということだ。3月のガイド公表で補助事業は終わり、ガイドの推進母体も「一緒にやってくれるところがあれば」と説明するにとどめる。助成した農水省、協議会の見通しの甘さはお粗末と言わざるを得ない。

 この2年間に健食業界は大きく動いた。安倍首相の成長戦略スピーチに始まり、新制度の検討に多くの関係者が心血を注いだ。説明会で示したガイド案など、業界の専門家が本気になればひと月でまとまりそうな内容でもある。これでは何のための事業かと思われても仕方がない。

 健食市場の規模は一兆円を越えている。昔のように一部の利害関係者だけの思惑で動かせる業界ではない。業界は一枚岩ではないが、新制度の検討の中ではさまざまな背景を持つ各団体の連携もみられた。農水省の補助事業も参加者が独りよがりにならず、業界全体の合意を望めば別の落とし所を見出せたはずだ。価値ある自主規制の実行で市場の発展を図るため、一連の騒動に事業者も学ばなければならない。

百貨店通販は時代の先取りを

日本における通販の歴史を振り返ると、百貨店が担ってきた役割の大きさが分かる。いまでこそ、ネット対応の遅れなどから後手に回ることの多い百貨店の通販だが、オムニチャネル時代の生き残りに向けては、他の小売りに先駆けて新しい価値を提供してきた強い百貨店の姿に期待したい。

 今年、高島屋の通販は第二次大戦後の再スタートから65年を迎えた。元々、同社が通販部門を開設したのは1899年で、遠方に住む顧客の利便性を考慮して発足した「地方係」が通販のスタート。昭和初期(1930年代)には通販事業を強化し、旧満州にもカタログを配布していた。第二次大戦中に通販事業は中断するが、51年に再開。その後、電話やテレビの普及に伴って71年には本格的なテレビ通販を初めて放映したほか、90年にはロバの会と協力して視聴覚障害者に向けたテープによる音声カタログ通販を開始するなど、抜群の知名度と信用力を武器にさまざまな通販チャネルを開拓し、多くの消費者にアプローチしてきた。

 同社に限らず、昨今は既存のカタログ顧客の高齢化などから百貨店の通販は苦戦。ネット販売チャネルも依然として得意の中元や歳暮といった儀礼ギフトへの依存度が高く、EC市場で成長が見込まれるファッション商材や食品宅配などの分野では、百貨店で成功しているケースはほとんどないのが現状と言える。

 ネット強化やオムニチャネル時代を見据えた動きとしては、12年6月に高島屋がファッションEC専業のセレクトスクエアを子会社化し、通販サイトのフロントやバックヤード業務のノウハウを吸収したほか、同社の属社長を高島屋本体のオムニ化推進の旗振り役に任命した。三越伊勢丹ホールディングスも13年4月に、日本トイザらスやジュピターショップチャンネルでEC部門を立ち上げた中島氏を招へいしてウェブ事業の強化を打ち出している。

 最近では、そごう・西武が昨年11月に誕生した商業施設、グランツリー武蔵小杉に小規模店を開設。小型店の品ぞろえを補完する目的で始めた「ご試着サービス」は、消費者が気になる商品をウェブ上で予約し、小型店に設置した専用フィッティングルームで試着できるようにした。また、大型店とライブ中継を結び、専用ルームのテレビ越しに商品を見ながら接客が受けられる「ライブショッピングサービス」も展開する。

 松屋銀座は、商業施設を商品の受け取り拠点として活用するウェブサービス「tabモール」にスタート時の昨年11月に参画した。松屋銀座3階に専用の受け取りカウンターと試着室を設け、婦人服や靴、バッグなどの取り寄せに対応。店頭で取り扱いのないブランドや商材にも対応することで品ぞろえの拡充と新客開拓につなげたい考えのようだ。

 オムニチャネル時代には、消費者に新しい価値を提供できない小売りの生き残りは難しくなる。古くから通販を展開する大手百貨店はカタログと店頭、通販サイトの各売り場で顧客年齢層が異なるなどの事情もあるだろうが、時代を先取りしてきた百貨店らしい"攻めの一手"に期待したい。

配送の顧客満足度を高めよ

 楽天が日本郵便と連携し、都内の郵便局などに仮想モール「楽天市場」で購入した商品受け取り用のロッカーを設けるほか、楽天独自でも全国にこうしたロッカーを設けることが分かった。近年は注文当日の配送サービスが広がるなど、商品を届けるまでのスピード競争が加熱していたが、通販事業者は「受け取り」に関する多様なニーズを取り込むための工夫が求められそうだ。

 日本郵便が都内の郵便局など約30カ所に設置を予定している「ゆうパック」用ロッカーを楽天が活用し、サービスを開始する。楽天市場の利用者は、商品を購入した際に、配送方法として希望するロッカーを選択できる。また、楽天でも独自に宅配ロッカー「楽天BOX」を設置する。ターミナル駅などを中心に、全国で50カ所程度に設ける予定。こうしたロッカーを利用することで、利用者は注文した商品を通勤や通学の途中で受け取ることができる。

 楽天では昨年、大阪府などで宅配ロッカーの実験運用を実施。同社の三木谷浩史社長は「大変好評だった」とする。最近は注文から配達までのリードタイムが短縮しているが、一人暮らしの人など、宅配では受け取れる時間が限られているユーザーは多い。そういった意味では、ユーザーの受け取りに関する要望にきめ細かく対応していくことは他社との差別化につながるといえよう。

 コンビニエンスストアで商品が受け取とれるサービスも普及しているが、「顔が分かる状況で住所や名前などを他人に見られたくない」という若い女性は多いようだ。楽天では、ターミナル駅などでの商品受け取りに一定以上のニーズがあるとみて、宅配ロッカーの全国展開を決めたものとみられる。

 また、有店舗企業の間では、店頭受取りサービスの活用が広がっている。セブン&アイ・ホールディングスでは、「セブンネットショッピング」購入書籍を対象にした「セブン―イレブン」店頭受け取りキャンペーンを実施し、新規顧客の獲得効果などで期間中の書籍受注件数が前年の約2倍となるなど成果をあげている。同社では通勤・通学など、顧客に都合の良い店舗でいつでも商品を受け取れるという環境を定着させる狙いだ。さらに、ヨドバシカメラでは店頭での24時間受け取りサービスを一部店舗で行っている。店舗が開いていない時間帯でも商品を受け取れるというもので、ターミナル駅に近い店舗で実施しているだけに、会社員らにとっては使いやすいサービスとなっている。

 オムニチャネルが進展する中で、配送も選択肢が多様化している。今後は配送のリードタイムを重視するユーザーだけではなく、「いつでもどこでも受け取りたい」というユーザーも増えてくるはずだ。自社サイトを強化したい通販事業者もこうしたニーズに対応する必要がある。もちろん、宅配ロッカーや、手厚い店舗受け取りサービスをすぐに始めるのは困難だ。とはいえ、配送関連の品質はリピーター獲得に大きく影響するだけに、納期短縮はもちろん、指定日配達の無料化といった施策を進めることで、顧客満足度を高める必要がありそうだ。

消費者から「安心感」得られるサイト運営を

 2014年は例年以上にセキュリティーに関する問題がクローズアップされた1年と言えるのではないか。ベネッセコーポレーションの個人情報流出という大事件はもちろんのこと、「パスワードリスト攻撃」による相次ぐ不正ログイン、さらには有名通販サイトに見せかけて消費者から代金をだまし取る「偽サイト」の手口も巧妙化。消費者は"安全"に対して敏感になっている。

 こうした中で11月には、衣料品販売のリデアの運営する通販サイトが不正アクセスを受け、2万2544件のクレジットカード情報が流出したことが分かった。カード番号、有効期限のほか、セキュリティーコードが流出したもので、カードが不正利用される事態となっている。

 本来、加盟店によるセキュリティーコードの保存は禁止されている。利用者がその都度入力するから安全が保たれているのであり、コードの流出は言語道断。リデアでは「カード情報は当社のサーバーで保存しない仕組みを採用していたが、サイトを構築する際に手違いがあり、セキュリティーコードも含めすべて残っていた」と説明、詳細は現在調査中という。また、侵入原因はSQLインジェクション攻撃によるウェブアプリケーションのアカウントの不正取得としているが、同攻撃は以前から頻繁に使われている。ネット販売企業は、定期的なぜい弱性診断により、システムの実装上の不備を見付けて是正することが必要だろう。

 ネット販売企業にとって、自社サイトの強化は重要な課題だ。しかし、こうした事件がたびたび起きれば、消費者の間には「良く知らないサイトに個人情報を入力するのは怖い」というためらいが生まれてしまう。いまだにカード番号と有効期限のみせ購入できるサイトもあるだけに、そういった不安は当然だ。アマゾンや楽天市場の流通額が伸びている要因の一つは「大手なら」という安心感だろう。規模の大きくない企業の場合、消費者から信頼されるためにも「安心して利用してもらう」ための取り組みは重要課題といえる。

 消費者から見えにくい運用部分での取り組みだけではなく、例えばカード情報を保持せず、それをサイトに明記したり、決済手段を増やしたりといった施策は効果があるだろう。あるいは「3Dセキュア」を導入したり、サイトのパスワードは「ランダムな英数字と記号の組み合わせ」を必須にしたりといった取り組みも必要ではないか。こうした施策は購入率を下げる懸念がある。とはいえ、「個人情報を入力する」ためのハードルを下げて、サイトを利用してもらわなければ何も始まらない。

 また、今年は通信を暗号化するシステム「OpenSSL」のぜい弱性発覚といったニュースもあったが、「自社のサイトが該当するのか」や「行った対策」などの素早い公表も顧客から安心感を得られるはずだ。

 楽天では「安心・安全なショッピング環境づくりへの取り組み」として、ユーザー補償や決済システムの強化などを進めているが、こうした動きは今後も強まっていくはず。ネット販売企業はこれに対応し、「消費者から選ばれる」通販サイトを目指す必要がある。

通販各社は景表法と向き合え

 衆院解散に伴う参院の閉会で「すわ廃案か」という通販事業者からの"淡い期待"もむなしく改正景品表示法が11月19日、参議院本会議で可決・成立した。再来年の春にも施行される見通しだ。施行後は不当表示で措置命令を受けた事業者には課徴金が科されることになる。通販事業者はこれまで以上に、広告表現には慎重を期す必要があろう。なぜなら、課徴金として支払う額は不当表示とされた広告で過去3年分の売り上げに3%を掛けて算出されるため、例えば1商品の売上額が大きい単品通販会社などで仮に主力商品の広告表現が「不当表示」と断じられた場合、莫大な課徴金額となる可能性もあり、下手をすれば一度の"表現ミス"で企業の存続が危うくなるケースも出てくるためだ。

 無論、メーカーやベンダーに騙される形で不当な広告表示をしてしまい、結果的に不当表示とされ、措置命令を受けたような場合や販売業者が顧客に自主的に返金した場合は課徴金は免れたり減額されることになる。だが、そのためには事業者が景表法を順守するための管理体制の整備や必要な措置を講じておく必要があるわけで、しかも、そうした体制作りを消費者庁側が認めなければ、結局は課徴金を科されることになる。その体制作りも小規模事業者にとってはそう簡単なものではなさそうで、いずれにせよ軽くはない"負担"がのしかかってくることに変わりはなくやっかいである。

 この課徴金制度を盛り込んだ今回の改正法は外食業界による一連の食品メニューの不当表示の問題から端を発して改正向けて議論が始まったものだが、当初から通販業界を含む小売業界の企業や団体からは「確認犯的に誇大広告を繰り返す悪徳業者への抑止力という意味では確かに一定の効果を発揮することになるかもしれないが、それ以上に通販企業を含む一般のまっとうな事業者の広告宣伝活動を委縮させるだけであり、むしろデメリットの方が大きい」と反対する意見が少なくなかった。課徴金など科されなくとも社名公表を伴う措置命令はまっとうな通販企業にとっては顧客からの信用を失いかねない強烈なダメージをもたらすわけで、それだけで事足りるはずであろう。反対の声が多いにも関わらず、"消費者の保護"という美名のもとに一部の意見が力を持ち、この無用で無駄な規制を盛り込んだ法案が成立してしまったことは非常に遺憾だ。一部の悪質業者の規制のために、全体に網をかける役所然としたやり方には怒りすら覚える。

 しかしながら、すでに決まってしまい、施行される以上は受ける悪影響を最小限で食い止める努力が必要となろう。これを機に景表法について改めて学び、見つめ直すためのよい機会とすべきではないか。課徴金導入に先立って今年12月にはより行政の監視指導体制を強化すべく、都道府県知事に対して景品表示法に基づく措置命令権限が付与されるなどの改正法が施行され、通販事業者にとって景表法はすでにこれまで以上に存在感のある法律になっており、景表法との向き合い方を考える必要があろう。通販各社には腹を括った対応と姿勢が求められそうだ。

企業コンセプトを再認識せよ

1955年11月に設立した千趣会が来年に創設60周年を迎える。企業が長く存続するための要因としては技術や組織、企業風土など幾つか考えられるが、同社の場合、その原動力となっているのは、"女性を笑顔にする"という創業当時からの思想に基づき、愚直に女性を笑顔にするための商品・サービスを提供し続けてきたことだろう。

 千趣会のルーツは、創作こけしにしおりを添えて販売する職域の頒布会になる。当時は、終戦から10年が経過した時期だが、まだ、生活の潤いが乏しい時代だった。その中で、女性の気持ちを和ませる創作こけしは支持を集め、生産が追い付かないほど爆発的に売れたという。この創作こけしのヒットが後に続く事業の礎となり、同時に商品・サービスの提供を通じ女性を笑顔にするという自らの存在意義を決定づけたわけだ。1976年に開始したカタログ通販も、女性に流行の先端をいくファッションの提案することを狙ったもので、現在の千趣会を支える基盤となっている。

 時代の流れとともに、経営環境は変化する。千趣会においても、雇用形態の多様化に伴う職域頒布会の縮小、次いで基幹事業となったカタログ通販がネット販売へのシフトが進むなど、主役となる事業は移り変わっている。その中にあっても、同社は常に"女性を笑顔にする"という視点で商品・サービスを提供し続けてきた。軸足がぶれることなく、絶えず女性の生活シーンを見続けてきたことが女性の繊細なニーズを読み取る力、さらにニーズに応えるための商品・サービスの開発力を高め、それが女性顧客の支持を集める源泉となってきたわけだ。累計1500万人に達する顧客データベースのほとんどを女性が占め、昨年の年間購入者数404万人のうち95%が女性だったということもその表れと言えるだろう。

 また、千趣会は今期に入り保育園運営事業と飲食店事業に参入している。一見、主力の通販事業からは遠い事業のようにも思えるが、前者は小さな子供を持ち働くことが難しい女性の支援、後者は働く女性が1人で食事をできる場が少ないことに配慮した支援策として乗り出したもので、働く女性の悩みを解消し笑顔にするという企業コンセプトに基づくものだ。

 市場が成熟し生活環境の変化が進む中、女性のニーズはモノだけではなくコトにも及ぶ。「ウーマン・スマイル・カンパニー」の企業ビジョンを掲げる同社としても、多様化する女性のニーズに対応することは不可欠になる。11月5日、都内で開催されたプレス向けのPRイベントで田邉社長は、「当社を通販事業者、あるいはEC事業者と思われているかも知れないが、(女性を支援し笑顔にする)世の中で唯一無二の企業だと思っている」と語ったが、これも物販だけにとどまらず、女性を笑顔にしていくという考え方を表したものだろう。

 企業コンセプトをしっかりと認識し、それに基づいた施策を実践する。これは、新興、老舗の別に限らず通販・ネット販売事業者に共通した重要なテーマのはずだ。

共通ポイントとの争いを注視せよ

共通ポイントを巡って各勢力間でのシェア争いが激化している。これまでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下の「Tポイント」と三菱商事系の「Ponta(ポンタ)」が先行していたが、楽天が10月1日に共通ポイントサービスに参戦し、「Rポイントカード」を開始した。近年では"ポイント"による販促力や新規開拓効果などを高めるべく、ニッセンやネットプライスなど自社ポイントを共通ポイントに切り替える通販企業も出てきているが今後もそうした事例は増えそうだ。通販企業は共通ポイントのシェア争いの行方を注視していく必要がありそうだ。

 共通ポイントの"強さ"の指標の1つとなるのは「会員数」と「加盟店数」となるが、新たに参戦した「Rポイント」は楽天が展開するポイントサービス「楽天スーパーポイント」が基盤となっており、すでに楽天会員の約9400万人が「会員数」と同義ともいえ、一定数の利用者をすでに確保していると言える。

 また、加盟店数も仮想モール「楽天市場」の出店者約4万2000店という存在に加え、今回、リアル店舗も多数参画し、スタート時点ではサークルKサンクス、J・フロントリテイリングなど12社・団体が加盟店となり、合計約1万2600店の実店舗でも使用可能となった。「Rポイント」の場合、加盟店は自社ポイントとの併用も認めており、また、「1業種1企業」といった縛りもない。さらに「楽天の持つビッグデータには圧倒的なパワーがある。プライバシーを侵害しない範囲で、パーソナライズされたマーケティングサービスを提供していく。楽天のメールマガジン購読者やアプリ利用者は多く、セールなどを通知する能力は他のポイントサービスより優れているのでは」(三木谷会長兼社長)とし、加盟店には"縛り"を強めず、また、マーケティングデータの付与、販促手段の提供というメリットでさらにその版図拡大を図る考えだ。

 とは言え、先行者の牙城は固い。「Tポイント」の直近1年間で利用実績があり、かつ複数枚の「Tカード」保有者の重複分を除いたアクティブ・ユニーク会員数はすでに5000万人を突破。加盟店数もネットではヤフーなど、リアルではファミリーマートやTSUTAYA、変わったところでは地域の商店街なども導入しており、ネットとリアル合計で23万店超まで拡大、先行メリットも相まって生活に密着した幅広い分野で利用可能な共通ポイントの地位を確かなものにしている。「ポンタ」もすでに会員数は6000万人を超え、加盟店もローソンやゲオ、そして来春にもリクルートグループのポイントが統合される見込みで着実に勢力を伸ばしている。

 オムニチャネル時代を迎え、通販企業もカタログ、ネット、店舗など各販路を複合的に考えた販売戦略が必要となるが、その際、共通ポイントはチャネル間をつなぐ1つの手段になり得る可能性を秘める。ポイントの効果性向上も含め、今後、自社ポイントを廃し、共通ポイントに切り替える通販事業者が増えそうだが、どの勢力に乗るべきか。慎重な見極めが必要となりそうだ。

成長企業の強さの本質を学べ

 この数年の間、衣料品ネット販売専業が大手企業に買収されるケースが相次いだが、大手が持つ緻密なマーケティング手法などを学び、実践することで業績回復や再成長へのきっかけをつかむケースも出てきており、"良縁"であれば新たな一歩を踏み出す勇気も必要かもしれない。

 衣料品のネット販売市場では、「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが商品取扱高ベースで2014年3月期に1000億円を超えるなど他社を大きく引き離しているが、同じく上場組だったマガシークとスタイライフは再浮上へのきっかけをつかもうとしている。13年3月にNTTドコモのグループに入ったマガシークは、14年3月期の売上高が前年比18・2%増の112億円強となり、100億円の壁を初めて突破した。ドコモと共同で新しい通販サイト「dファッション」を13年10月にオープンし、ネット購入に慣れていない消費者やキャリア決済で買い物をしたいユーザーの獲得に成功。既存の「マガシーク」サイトでは少ない男性客も開拓できているようだ。

 スタイライフは12年5月に楽天が筆頭株主となり、13年9月には同社の100%子会社となった。完全子会社化に伴いスタイライフは決算期を変更したが、変則9カ月の前期決算と今第1四半期の実績を合わせると前年比15%程度伸長した。同社は、「楽天市場」内のファッション専門サイト「楽天ブランドアベニュー(RBA)」に「スタイライフ」の屋号で出店しているが、「スタイライフ」本店で取り引きのあるブランドの95%が「RBA」にも参加。客層の異なる売り場で多くのブランドを販売できたことが成長の一因になった。また、「RBA」では各ブランドの世界観を崩さずに販売できる売り場ページを設けた結果、「スタイライフ」経由で販売したブランドよりも売り上げが3割程度伸びたとする。

 マガシークとスタイライフの両社に共通するのは、親会社のマーケティング手法をしっかりと実践した点で、マガシークでは「科学的に数字を分析し、結果だけでなくプロセスを重視した」(井上直也社長)とし、スタイライフも「楽天流のドリルダウンした細かいKPI評価をマーケティングにとり入れた」(松山奨副社長)とする。両社の買収話が浮上した際、取引先ブランドの多くが資本力を背景にしたプロモーション強化などで「マガシーク」や「スタイライフ」の認知度が高まることを期待していた。ただ、蓋を開けると大型販促こそなかったものの、企業として着実に成長していくための土台作りやマーケティング手法の移植が優先されたからこそ、それらが顧客分析や商品政策などに結び付いたとも言えそうだ。

 衣料品のネット販売市場は成長期から成熟期に移りつつある大事な局面を迎えており、このタイミングで売り場を増やして通販のライトユーザーや新しい客層を獲得することは戦略的にも大きな意味を持つと見られる。昨今は衣料品ネット販売以外の領域でも通販企業を狙い撃ちにしたアライアンスや買収案件が増えている。良縁ばかりではないだろうが、成長企業の強さの本質を知ることは企業経営のプラスになりそうだ。

健食大手は後進に範を示せ

来春から健康食品を含む食品の新たな機能性表示制度が始まる。一定のハードルはあるものの、健食に新たなカテゴリが整備されたことは大きな前進だ。健食を扱う事業者は、新制度の下、健食を産業として確立していく意識を持たなければならない。業界をけん引する大手には、今以上にリーディングカンパニーとしての自覚が求められる。

 健食は、専業企業、食品や医薬品など本業を別に持つ大手からの参入企業、健食に商機を見出した新興企業の混在が際立つ業界だ。そうした背景からくるものか、中には、健食産業の発展に対する当事者意識の欠けた企業もいる。法令遵守に対する意識が低さや、社内体制の未整備からか、特に、新興企業による景品表示法や薬事法違反も後を絶たない。

 その一義的な責任は、処分や摘発を受けた企業にある。だが、これら企業が起こした事件を、その企業だけの問題と捉えるのは間違いだ。

 最近では、プロポリスを販売していたシャブロンや、機能水を販売していたエーイーエムが薬事法違反で摘発を受けた。いずれも「ガン」など重い疾病への効果をうたったことに加え、その広告手法が問題視された。「商品」とセットで効果をうたうと薬事法違反になるため、シャブロンでは健康情報誌の「広告ページ」では法令を遵守し、数枚隔てた「健康情報ページ」で効果をうたった。エーイーエムも「販売サイト」では法令を守り、検索誘導した「体験談サイト」で効果に言及した。ただ、似たような手法で「商品」と「健康情報」をリンクし、消費者にリーチする手法は、大手にもみられる。

 リンクする以外にも「※(注釈)」を使った広告手法は一般化している。例えば、関節に訴求するある広告では「軟骨成分」というコピーと共に、「※サメ軟骨から抽出した成分」といった注釈が小さく書かれている。機能ではなく、成分の説明で逃げているおり、法律上の判断も微妙だ。

 今回、新制度で業界は身体の部位の表示を行う権利を得た。だが、こうした広告を見ていると、何のために部位表示を勝ち取ったのかと思う。遠回しな表現ながら、すでに部位表示は行われているのだ。

 健食の位置づけが明確でない中でいかに表現するか、イメージをかきたてる表現の豊かさには磨かれたマーケティング力の素晴らしさもある。表示制度の不備が遅れていたことも背景にある。だが一方で、こうした表現が暗黙のルールを作り、後に続く中小や新興企業の判断基準となってきた側面がないとはいえない。景表法や薬事法の表示規制において、行政がきちんとした研究開発や法務部署を持ち、対応力をある大手に迫るのは難しい。割を食うのは体制が不十分な中小や新興企業だ。

 新制度では、機能性の科学的根拠や、これに付随する表示を巡り、運用面でさまざまな問題が起きるだろう。健食大手は中小や新興企業に範を示し、生じた問題が一部のアウトサイダーによるものと断言できるよう業界をけん引しなければならない。でなければ新制度の下でも、これを悪用する事業者に引きずられ、健食産業の確立が遅れることになる。

通販企業は二次流通に取り組め

通販企業は衣料品を販売するだけでなく、古着の回収や販売といった「二次流通」にも積極的に取り組むべきだ。企業の社会的責任が当たり前のように求められる中で、他業態の大手小売りに比べて通販企業の二次流通に対する取り組みは必ずしも十分とは言えないであろう。CSRの観点からは食品の廃棄問題と同様に衣料品の廃棄問題も深刻化しており、年間約100万トンの衣類が焼却処分されているというデータもある。販促面でも、例えば大型家具などを販売する通販企業は商品を届ける際に不用品を引き取ることで新品の購入を後押しする手法が一般的になっているが、服についても昨今の住宅事情もあってクローゼットに空きスペースを作るためにも、古着の引き取りなどは必要と言えそうだ。

 衣料品メーンの大手小売りは古着の回収に積極的で、ファストファッションのH&Mは実店舗全店に古着回収ボックスを設置。自社商品に限らず、服であれば穴が開いていたり、シミがあっても受け付ける。状態の良いものは古着として世界各地で販売され、状態の悪い古着は他の布製品に加工されたり、繊維としてリサイクルされて車の制振材などに生まれ変わるようだ。ユニクロは自社商品に限定して全商品を対象に店舗で引き取り、難民や災害時の救援衣料などに役立てているという。

 大手通販企業では、以前からカタログハウスが繊維リサイクル業のナカノを通じ、衣類だけでなくカーテンや毛布なども引き取っている。最近では、中古ブランド品や古着の買い取り、販売を手がける企業と組み、宅配キットで顧客から不用になったブランド品などを引き取って、査定と買い取りはリユース企業が行い、通販会社は買取額に応じて次回の買い物に使えるポイントやオンラインクーポンを顧客に付与する取り組みが増えつつある。千趣会は昨年8月にコメ兵と提携してブランド品の買い取りサービス「うるらく」をスタートしたほか、今年7月にはディノス・セシールも「ディノス」事業で中古ブランド品の販売・買取サイト「ブランディア」と連携を始めた。衣料品ネット販売専業では、以前からマガシークがリサイクルショップ運営のトレジャー・ファクトリーと提携してファッション商材の買い取りサービスを展開している。

 一方、服の二次流通をビジネスチャンスととらえ、一歩踏み込んだのが衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイだ。11年6月にオークションサイト運営のクラウンジュエルを完全子会社化し、通販サイト内に人気ブランドを中心に扱う古着専門店「ゾゾユーズド」を開設して古着の買い取りと販売を開始。「ゾゾユーズド」は14年3月期に約23億円を売り上げ、今期は40億円を計画するなど好調を維持しているようだ。

 最近では一部の通販会社もリユース企業と組んで古着の回収や買い取りを始めているが、日本通信販売協会が公表している会員企業150社の売上高調査において、13年度の「衣料品」売上高は全体の約22%を占める主力商材であることからも、二次流通にはさらに積極的にかかわっていく必要がありそうだ。

通販企業はコスト認識改めよ

 通販市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数が増加を続けている。国土交通省がこのほどまとめた「平成25年度(2013年度)宅配便取扱実績」によると、同年度における宅配便の取扱個数は前年比3・1%増の36億3700万個となった。商品の配送を担う宅配便は、通販には欠かせない存在であり、これまで互いの市場を支え合いながら成長を続けてきた。国交省の調査もこれを改めて認識させるものと言え、今後も両者の関係性が継続されることが望まれる。だが、そのためには、通販事業者と宅配便事業者双方が顧客のニーズや状況の変化に対応した適切な配送サービスのあり方というものを考えていかなければなるまい。

 通販事業者と宅配便事業者の関係を考えた場合、避けて通れないのは、やはり契約運賃の問題だ。

 通販事業者にとって、宅配便の運賃は配送コストであり、安いことに越したことはない。一方の宅配便事業者にとっても増加を続ける通販関連の荷物は魅力的で、通販荷主を獲得するため、多少の無理をしても契約運賃の引き下げに応じてきた。同様の構図は他の業種・業態にも見られるものだが、どちらか一方に過度な負荷が掛かり続ければ、いずれ亀裂が生じる。昨今、相次いでいる宅配便事業者の法人顧客に対する契約運賃の引き上げ要請は、これに当てはまるものだろう。

 通販を中心とした荷主を獲得するため、一時、宅配便事業者の間で契約運賃設定の引き下げ競争の様相を呈したが、結局は採算性で行き詰まり、運賃の引き上げを要請せざるを得なくなったわけだ。通販事業者からすれば、宅配便事業者間の行き過ぎたシェア争いのツケを回されたと見る向きもあるだろうが、通販事業者側が仕掛けた"送料無料"や"当日配送"といった商品配送の急速なトレンドの変化と採算性の関係性なども考えねばなるまい。

 特に、"送料無料"の表示については、以前から宅配便事業者の間で「消費者に誤った認識を与える」という声が上がっていた。これには実際に発生しているコスト負担の問題があるが、宅配便事業者側がさらに懸念しているのは、"送料無料"という言葉が一人歩きをすることで消費者の間に送料はタダという認識が広がり、そのしわ寄せが及んでくることだ。

 6月に閣議決定した「総合物流大綱」で"送料無料"に関する内容が盛り込まれたのも、宅配便を含む物流業界側の危機感を反映したものと言える。適切な裏付けのもとに顧客の送料を負担する施策自体は、否定するものではないが、通販事業者側もコスト負担や表示のあり方などを再考する余地はあろう。

 通販商品の配送を取り巻く環境は変化しており、物流業界全体で深刻化している慢性的な人手不足の問題や宅配便事業者側の競争状況、多様化する顧客のニーズに対応するための投資の必要性などを勘案すると、契約運賃がダウントレンドに大きく振れるとは考えにくい。通販事業者はその前提で配送コストを捉え、宅配便事業者側と連携しながら物流業務の効率化や付加価値の高い配送サービスの提供を目指すべきだろう。

健食産業、自ら「創る」意識を

健康食品の新たな機能性表示を巡り、厚生労働省が身体の部位に言及する表示など「構造機能表示」を認める意向を示した。これまで薬事法規制から機能を表現することが叶わなかった健食業界にとって、その「権利」を掴むことができたのは、新制度の検討の中で最も大きな成果と言える。ただ、「権利」を得るには「義務」を果たす必要があることを事業者は忘れてはならない。

 新制度の導入により、行政は、科学的根拠が不明確な"いわゆる健康食品"との区別を明確にしようと考えている。そのため、新制度では、健食の安全性確保や機能性評価に一定のハードルを設けている。ただ、その条件には、機能性に関する研究計画の事前登録に使う「UMIN臨床試験登録システム」の活用や、関連文献の総合的な評価を行う「システマティック・レビュー」による評価など、健食企業にとってなじみの薄いものも少なくない。

 国際的にも、機能性を適切に、客観的に評価するには、医薬品評価に用いるような統計的手法、考えを参考にするしかないのは分かる。ただ、健食は医薬品と根本からその役割が異なる。利用目的も違えば、利用者の食生活など生活習慣によっても"効き方"は変わる。医薬品に近い評価を加える妥当性の判断は難しいが、医薬品の理論をそのまま持ち込むことは適当ではないだろう。

 とはいえ、行政にとっても今回、「構造機能表示」の是非を巡る姿勢を軟化させたことは、大きな決断と言えるものだ。事業者もその譲歩の意味を理解し、科学的根拠や製造面で求められる要求に応えていく努力が必要だ。これまで長きに渡り健食があいまいな位置づけに置かれ、"鬼子"と言わしめてきたのは、なにも行政が一つの産業として認め、法的整備や産業振興に目を向けなかったことだけが原因ではないからだ。

 新興の事業者の中には健食を"売れる商品"と捉え、健食を扱うにあたって当然持つべき知識や責任を製造元に丸投げし、売りが先行する企業もある。本業が別にある大手メーカーにとっても、自らの新規事業分野の開拓のみを目的に、健食産業の抱える課題や将来に関心が薄いところはある。業界団体が乱立し、一枚岩となれないのも互いの利益を優先してきた一つの表れ。どこか他力本願で市場の形成を誰かに任せてきたことが、健食産業の地位確立を遅らせていた一面はある。業界側にもその原因の一端はあったと言える。

 今回、健食は機能性表示という長年の悲願の達成にあと少しのところまできている。しかし、これまでと同じ姿勢では、今後の市場の発展はありえない。健食の役割について企業と行政、消費者の間で共通の認識を形成し、法的整備を求めていくなど積み残しの課題はまだある。これら産業の存在意義は、新制度をきっかけに、科学的根拠や製品管理に真摯に取り組み、自らの手で獲得していくもの。健食産業が抱える大きなテーマに業界の一員として自ら取り組む姿勢を示さなければ、健食産業の地位を向上させていくことはできない。事業者は、健食産業がようやくその入口に立ったことを再認識する必要がある。

楽天は営業体制を見直せ

本紙では5月、楽天の仮想モール「楽天市場」に現在出店、過去に出店していた企業を対象に、「楽天のECコンサルタントから不当表示の提案があったか否か」についてアンケートを実施した。その結果、53店舗が楽天社員から不当表示の提案を受けていた疑いのあることが分かった。こうした回答がすべて仮に事実であれば不当表示の提案が組織的に行われていた疑いがあると言われても仕方あるまい。楽天はこうした疑念を生じさせないためにも、改めて二重価格問題の再調査と社員の管理・教育を徹底すべきではないか。

 楽天は4月、同社ECコンサルタントが、不当な二重価格を設定するように楽天市場出店者に指示していたと一部報道機関が伝えことを受けて、出店者への調査を実施した。その結果、不当な二重価格の「提案」を行ったECコンサルは、対象となる661名のうち18名、当該社員がこうした提案を行った店舗は合計28店舗だったと公表していた。しかし、本紙調査では不当表示の提案を受けた店舗数が倍近くに達した。

 数字が乖離した理由として考えられるのは回答者を明らかにする「記名式」という楽天の調査方法ではなかろうか。実際、匿名を前提に実施した本紙調査では異なる結果となっており、また、本紙調査に回答した店舗からは「記名調査なので回答することによる不利益を恐れた」という声が少からず聞かれた。楽天は、自分たちの調査が必ずしも事実を正確に把握できていない可能性があることを認識すべきではないか。

 そして、不当表示に関する楽天社員の関与についても再度、見直す必要があるのでないか。楽天は先の調査で、対象となる社員18人の所属と提案の時期などにばらつきがあること、ECコンサルタントへのヒアリング調査からも組織的な指示があったことを示す事実がないと判断したという。しかし、今回の本紙調査の回答を分析する限り、そうとも言い切れない可能性もある。

 例えばある店舗は、楽天が店舗向けに実施した無料セミナーで不当表示の提案を受けたという。「(不当表示をしている店舗は)良く売れているため、まねて販売するように教えられた」というものだ。また、「通常販売しているページのコピーを作り、定価を上げてセールに参加してほしい」という趣旨のアドバイスがあったという回答が複数店舗からあり、組織的な提案も疑われる。

 これらが仮に事実であれば不当な二重価格表示を「テクニック」として店舗に推奨していたことを示唆するものではないか。楽天の調査でどのような事例が「不当表示の提案」として認定されたのかは不明だが、こうした声が挙がっている以上、ECコンサルタントの営業実態を精査し、公表すべきであろう。

 楽天は今回の問題の幕引きを図るべく、不当な二重価格を防止するための施策を打ち出しているが、本紙調査では「楽天の事後処理や対応」に関する店舗からの不満が聞かれ、「過剰規制」ではないかとの指摘もある。店舗に負担を求めるような規制を強化する前に、楽天は組織や営業体制に問題がなかったか、いま一度総括すべきではあるまいか。

景表法の課徴金導入はやめよ

 消費者委員会の景品表示法への課徴金導入に関する専門調査会が5月28日に公表した「とりまとめ案」にはがっかりだ。そもそも景表法への課徴金導入、特に不実証広告への導入については通販事業者の営業活動の萎縮を招きかねず、そうした事業者の実情を把握していないメンバーのみで議論が進む「導入ありきの議論」については危惧してきた。これについては5月初旬に日本通信販売協会も意見表明を行っているが、今回の「とりまとめ案」でも不当表示(優良・有利誤認)だけでなく不実証広告に関しても課徴金の対象にすべきとした。ただ拙速に結論付ける話の進め方は到底、納得できない。繰り返すが、課徴金の導入は通販事業者のビジネス活動を委縮させるだけであり、抑止効果などのメリットよりも弊害の方が大きい。調査会は現実に目を向け、実情に即した議論を進めるべきだ。

 「とりまとめ案」は確かに評価できる部分もある。例えば、課徴金については措置命令とは別とし、効能・効果に関する合理的根拠の資料などが一定期間内に提出されなかった場合に課すものとすべきだとしている。加えて、取引業者の虚偽の説明などを信じ、意図的でなく結果として不当表示に至ったケースなどの場合は「一定の注意義務」を果たしていると判断されれば、課徴金を徴収しない例外も認める方向性も考えられるとした。さらに課徴金の納付命令後も裁判で争うことができるというような規定を設けるべきだとも指摘している。これらについては一定の評価はできよう。ただし、これらについても最悪、景表法に課徴金が導入された場合の最低限のセーフティーネットであるだけだ。また、表示の根拠が合理的であるか否か、注意義務を果たしていたか否かの判断を行うのは所詮は行政サイドであり、ブラックボックスだ。また、裁判で課徴金処分を争えるようにするというが、現実問題として目を付けられれば、やっかいな存在である行政サイドに戦いを挑む無謀な事業者がどれだけいるというのだろうか。

 景表法への課徴金導入には改めて反対だ。繰り返しになるが、確認犯的に誇大広告を繰り返す悪徳業者への抑止力という意味では確かに一定の効果を発揮することになるかもしれないが、それ以上に通販企業を含む一般のまっとうな事業者の広告宣伝活動を委縮させるだけであり、むしろデメリットの方が大きい。課徴金の導入を実現するべく、様々な"特例"を設けたところで、多くの事業者は景表法に課徴金が導入されれば「萎縮」してしまう。金額によっては事業継続が困難になる可能性があるからだ。そうなれば表示を厳密にチェックする作業を強いられ、多額のコストが発生するなどし、成長分野であった通販市場の失墜を招きかねないのではないか。

 行政の本来的な役割は過度な規制を課すことではなく、事業者のビジネス活動を後押しし、国内事業を拡大させることではないか。不当表示被害への対応も別段、課徴金が導入されずとも、まっとうな事業者であればすでに返品返金を行っている。少なくとも現段階で景表法への課徴金導入は差し控えるべきだ。

衣料品モールは独自性磨け

本紙は4月中旬に有力アパレル6社のネット販売担当者を招いて座談会を開催した。その中で、大手資本によるファッション通販モールの買収が相次いで以降の市場環境や、ファッション通販モールに期待することなどを聞いたところ、既存モールへの不満は予想以上に強く、「独自色を打ち出せないモールは存在意義がなくなる」との意見や、各モールのビジネスモデルが同じことを指摘した上で、「外資の買い取り型モールの参入に期待する」といった声までも聞こえており、モール運営者は危機感を持ってコンテンツやサービス面はもちろん、品ぞろえなどについてももっと独自色を打ち出していくべきだ。

 1~2年でアライアンスの効果を最大限に出すことは難しいかもしれないが、スタートトゥデイが運営する通販モール「ゾゾタウン」の商品取扱高が2014年3月期に1000億円の大台を突破したのに対し、大手資本のグループに入ったモール各社はその10分の1程度、もしくはそれ以下の規模にとどまっており、現時点でその差は縮まっていない。大手資本へのグループ入りが発表された当初は、積極的な広告展開によるモールの認知向上や、親会社が抱える顧客の流入などを期待したアパレル企業もあったが、「実際には期待外れだった」との声も聞かれた。

 これまで、アパレル各社はさまざまなファッション通販モールに積極的に出店することでネット販売比率を高めてきたが、いまは在庫分散化による売り逃しを避けようと、ネット販売用の在庫を自社の倉庫で一括管理し、データで引き当てる仕組みを構築してきている。つまり、商品が1点でも残っていればデータ連携するすべてのモールで販売が可能になり、売れ行きの悪いモールに在庫が貯まるというリスクが解消できるわけだ。モールの倉庫に商品を預けなくてよくなると、結果的にどこのモールも品ぞろえが似てくることになり、各モールの独自性はさらに出しづらくなる可能性もある。

 また、アパレル各社は実店舗という武器を活用し、オムニチャネル化戦略のもとで自社通販サイトの強化に本腰を入れており、試着したい消費者ニーズに応えるためにネット販売用の在庫を店頭へ供給するケースも増えてきそうだ。これまでアパレル各社は、ネット販売市場では先行するモールへの卸を中心に売り上げを作ってきたが、在庫一元化や店頭連動の取り組みなどで巻き返しを図ってくることは間違いない。

 もちろん、アパレル企業が運営する通販サイトは自社が手がけるブランドだけを扱う場合がほとんどのため、ウインドーショッピングのように数多くのブランドをチェックしたり、ブランドをまたいで買いたいユーザーにはモールの優位性が発揮できる。また、「ゾゾタウン」ではTポイントやヤフーポイントが、「スタイライフ」も楽天スーパーポイントが利用できるといった利便性もあるが、ブランド側から供給先として選ばれ続けるためには、特定ジャンルの品ぞろえ強化や買い取り販売への挑戦、各種データの提供など競合モールにはない特色を出すことも必要になろう。

"課徴金"の導入は危険だ

消費者委員会の専門調査会で景品表示法が禁じる不当表示に課徴金制度を導入しようと議論が進んでいる。4月に入り、「不当表示の抑止を目的に課徴金の必要性が高い」とし、対象範囲を優良誤認と有利誤認とするなどとした中間整理を行い、4月22日開催の9回目の会合では不実証広告への課徴金適用時の方法論について話し合いが始まるなど、あたかも景表法への課徴金導入がすでに決定したかのような方向性で話は進んでいるようだ。しかし、やはり景表法への課徴金導入は極めて危険であり、改めて反対したい。悪質な事業者だけでなく、まっとうな小売り事業者にも甚大なダメージを与える可能性があるからだ。

 これまで本紙で繰り返し述べてきたが、不当表示とされた過去の通販実施企業の景表法違反事例を見ていくと、通販事業者だけの責任とは必ずしも言えない"理不尽な処分"が散見される。こうした理不尽さを抱えたままで行政処分を受けた企業が課徴金まで徴収されるというのは納得がいかない。

 例えば革製品の原産国の不当表示を巡って複数の通販企業に景表法違反とされた数年前の事例では、商品供給元が取引先の通販企業に対して、当該製品を製造しているとされる国内の工場を案内し、国産と信用させていたようだが、実際には海外で製造された輸入品であった。この際、虚偽の説明を行った商品供給元の説明を信じて当該商品を「日本製」と謳い、販売した通販企業などだけに排除命令が下された。

 大手通販事業者の景表法違反事例ではメーカーに「塩ビ」を使用しない仕様発注を行い、財布などを製造していたが、実際には塩ビが使用されていることが判明した。初めは指示通りの素材で製造されていたが、のちに海外の製造者が勝手に使用する素材を変更したようだ。当該企業は自主的に返品や交換を行ったが、のちに景表法違反とされ、排除命令が下された。

 これらの事例は通販企業だけに責任があるとは言えまい。前者のケースでは工場視察まで行なわせ、販社に国産と信じ込ませる偽装工作を行った商品供給元には何らお咎めはなく、鵜呑みにした販社の責任とされた。後者でも仕様を勝手に変更したのは製造元だ。一度、仕様通りに製造し、検査をクリアした商品に対して、何度も素材などのチェックは通常は行わない。それで管理体制が甘いと言われるともはや「小売り」は製造小売でなければ商売ができないということになってしまう。

 こうした理不尽な景表法違反に伴う行政処分の事例はこれまで多々、散見されてきた。課徴金は専門調査会での議論の通り、悪質業者の確信犯的な不当表示の抑止に効果を発揮することになるだろうが、まっとうな通販企業にも理不尽な不当表示は起こり得ることも考慮すべきではないか。そうした場合、課徴金を課すのは重すぎる罰ではなかろうか。課徴金の適用を悪質なものに限定するなどの裁量も盛り込むようだが、"悪質さの定義"を決めるのもこれまで理不尽な処分を下してきた行政である。非常に危険な景表法への課徴金導入に改めて反対したい。

健全成長視点で運賃を考えろ

ヤマト運輸が通販などの法人荷主に対し、「宅急便」契約運賃の見直しを要望している。これまで実質1個いくらの設定となっていた契約運賃を厳密に荷物のサイズ別に収受しようというもので、荷主側からすると運賃負担が増えることになる。宅配便大手では、日本郵便と佐川急便が法人荷主に対し、採算性の改善を理由に大規模な契約運賃の引き上げ交渉を行い、通販事業者の間でも宅配便事業者を乗り換える動きが見られた。さらに最大手のヤマト運輸が契約運賃体系の見直しに乗り出したことに対し、通販事業者側も困惑しているようだ。

 宅配便事業者間の行き過ぎたシェア争いのツケが荷主に回される。昨今の大手宅配便事業者による運賃引き上げの動きをこう捉える通販事業者は少なくないだろう。確かに、これまでの大手宅配便事業者の動きをみると、安い運賃単価で通販の法人荷主を獲得しようとする傾向が顕著だった。通販事業者側からすれば、もともと無理のある契約運賃を設定し、利益が出ないから引き上げますと言われても困るというのが本音であり、混乱を招くような宅配便事業者の動きに対し厳しい見方もある。

 だが、通販・ネット販売を中心に宅配便の取扱数量が増え続ける中、サービス品質を維持していくことを考えると、宅配便事業者側も体制の整備が必要で、運賃も含めた商品配送のあり方を再考しなければならない時期に差し掛かっているのも確かだ。ヤマト運輸のサイズ別契約運賃収受の要請を個社の採算改善のためと捉える向きもあるが、通販関連の荷物の増加に伴い深刻化するであろう課題への対処を念頭に置いていることも勘案せねばなるまい。

 特に、宅配便も含めた輸送業界では、人員の確保が共通した課題となっており、車両はあっても動かす人員が手配できないという事態も起きている。これはすぐに解決できる問題ではなく、荷物の増加に対し限られたリソースの中で確実に作業をこなすためには、事前に荷主から出される荷物の情報を把握し、機器や人員を手配することが必要になる。その中で、今後、特に重要となるのがサイズの把握だ。例えば、同じ幹線輸送のトラックなど荷物のサイズによって積載できる荷物の数量は異なるため、サイズを把握できなければ実際の対応能力を見誤り、繁忙期の業務に混乱をきたす恐れもある。これは、通販事業者にとっても好ましい状況ではないだろう。

 ヤマト運輸では、今回のサイズ別運賃収受打診を起点に、法人荷主にサイズ別契約運賃の見積を提示しながら、荷物の大きさに関係なく一律に最も小さいサイズの運賃を適用しているケースなどで荷物のサイズが把握できていない状況を解消し、さらにサイズに応じた本来の運賃収受をもとに荷物の増加に対応した投資を行うとする。通販事業者側からするとコストアップ要因となることは確かだが、通販を中心に荷物が増え続ける中、宅配便事業者側の負担だけで配送品質を維持するのにも限界がある。今後も通販市場の成長が見込まれるが、その健全性を保つという視点を持ちながら運賃負担のあり方を考える必要もあろう。

「権威」の利用には節度を

企業の薬事法違反事件に絡み、神奈川県警が商品の効能を紹介する記事を書いた教授を書類送検した。県警が学術界の萎縮効果を狙ったのならばやり過ぎであると感じる面もある。ただ、健康食品の新たな機能性表示制度をにらみ更なる機能性研究が欠かせない中、企業と学識経験者の付き合い方には節度も必要だ。

 神奈川県警は2月、"がん細胞が死滅する"などと標ぼうし、プロポリスを含有する健康食品を通販していたシャブロンの社長を薬事法違反で逮捕した。これに絡み、3月にはプロポリスの効能を紹介する記事を医療系無料雑誌や商品パンフレットに書いた教授を書類送検した。

 県警による薬事法違反の摘発には意図があると考えるのが普通だ。11年にもキトサンコーワの薬事法違反事件に絡み、関連本を出版していた現代書林の元社長を、販売ほう助罪を初適用して逮捕した。販売会社を取り巻く周辺事業者への抑止効果を狙ったのだろうが、起訴段階では嫌疑が薬事法違反(未承認医薬品の広告の禁止)に直され、判決も無罪。だが、ほう助罪の初適用や逮捕自体のインパクトを伝える報道が、周辺事業者に注意を促す効果はあった。

 今回も、県警は教授の書類送検を匿名で発表したが、一般紙では実名で報道されている。多数の著書を持ち、メディア露出もある著名な学者であり、学術界に与える衝撃は大きい。なぜ書類送検で済ませたかは分からないが、実名報道を見越し、インパクトを狙ったとの見方もある。この事件を機に、健食から距離を置く学識経験者が増えるかもしれない。

 とはいえ、企業も学識経験者との付き合い方には注意が必要だろう。中には、その関係が怪しげなものもあるためだ。

 企業が共同研究などで関係する教授の出演する番組のスポンサーになったり、寄附講座を提供するケースはたまにある。ある教授は、健食の研究会発起人としてたびたび名前が挙がるが、健食通販大手の資金提供を受け、寄附講座も開設している。何らかの便宜供与があるとすれば、その研究成果も適正な環境下で得られた結果と判断されにくいだろう。

 昨年10月には、日本臨床栄養学会で要職にある教授が、サン・クロレラとの共同研究の成果を示す広告に登場したこともあった。これを受けて適格消費者団体の京都消費者契約ネットワークが教授に抗議。サン・クロレラの折込チラシを巡り、差止請求訴訟に発展している。この教授も別の健食通販大手の研究活動に参加している有名な教授だった。

 健食は、複合成分である場合が多く、未知の部分も多い。製品の発売後も継続的な研究が必要だ。健食の新たな表示制度の下、企業は自らの責任で機能性の根拠となる科学的根拠も蓄積していかなければならない。そこには、大学の研究機関や学識経験者の協力は欠かせないものだ。

 だが、新制度の下で客観的な機能性の評価が求められる中、企業は"権威"の扱いに注意しなければならない。消費者が、学識経験者の推薦など権威を拠り所とする面もあるが、利益相反により研究の倫理性が損なわれれば、企業の信頼を揺るがすリスクにもなる。

捨てる覚悟と挑む姿勢を

 スマートデバイスの登場などで消費者の生活様式や購買行動が多様化している中、小売業にも「古いものを捨てる覚悟」と「新しい市場を生み出す力」のバランス感覚が必要になってきている。この両面を持ち合せた通販企業のひとつが通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイだろう。

 同社は衣料品のネット販売で存在感を発揮するが、元々は輸入CDとレコードのカタログ通販で事業をスタートし、紙媒体をオンライン化した2000年にカタログ販売をキッパリとやめている。同社は「捨て上手なだけ」(前澤友作社長)とするが、それも時代の流れや将来性を感じ取ってのことで、オンライン化によって生まれた利益で服の仕入れを開始し、いまの「ゾゾタウン」の礎とした。最近では、ネット販売実施企業にとって集客施策、リピート施策の常套手段でもあるリスティング広告やポイントキャンペーンをやめるなど、捨て上手、やめ上手な面は変わらない。

 いま、そのスタートトゥデイがもっとも力を注ぐ事業のひとつが昨年10月にスタートしたスマホアプリの新サービス「ウェア」だ。同アプリは実店舗で服のバーコードを読み込んで通販サイトに誘導する機能を持つため、店頭の"ショールーミング化"を嫌うデベロッパーの反発を受けてスキャン機能が使える店舗はいまだに少ない。ただ、同社が考えるオムニチャネル戦略の本質は「リアル店舗と通販サイトが敵対するのではなく、互いの強みを生かして力を合わせ、ファッションやオシャレを楽しむ人をひとりでも増やし、ファッション業界全体のマーケット拡大を目指すこと」と前澤社長は言う。消費者からすれば、ショールーミングや(ネットから実店舗に送客する)"ウェブルーミング"といったキーワードは重要なことではないというわけだ。

 実際、デベロッパーの意思とは反対に、「ウェア」アプリのダウンロード数は今年2月下旬に100万件に達した。一般の消費者はもちろん、アパレル店頭のスタッフもファッション商材の着こなし方を発信するツールとして活用しているし、服好きの消費者がコーディネートを軸に交流する姿が明らかになっており、1月の月間利用者は240万人、コーディネート投稿件数は25万件に拡大している。商品の情報に触れる機会が増えれば増えるほど消費者の購買意欲が喚起されるという好例でもあり、アプリを経由した「ゾゾタウン」の商品取扱高は月1億円を突破したという。

 通販市場全体では、新規参入の手軽さやデバイスの多様化などから今後もネット販売の比重が一段と高まることが予想され、消費者に支持されない媒体、売り場はスタートトゥデイのようにキッパリとやめなければならない時期が来るかもしれない。また、通販会社自体が実店舗を構えたり、有店舗企業と組んでオムニチャネル戦略に乗り出すケースも増えるだろうが、そのときは単なる利便性の追求や消費者の奪い合いではなく、新しい市場を生み出すという気概や覚悟がなければ、消費者はついて来ないであろう。

"次代の経営者"にエールを

これまで通販市場をけん引してきた主だった通販企業のトップの世代交代が進みつつある。昨年末にはジャパネットたかたの髙田明社長が2年後をメドに社長を退き、その後は長男で副社長の高田旭人氏に社長職を引き継ぐ考えを示した。また、すでに老舗通販企業でもトップの子息などの後継者がすでに責任ある立場でそれぞれの会社のビジネスをけん引する担い手となっている。いかに偉大な創業者や経営者であっても、いずれかの時期に後継者に引き継ぎを行わねばならないのは自然の摂理である。次代の経営者には偉大な先代の資産を継承しつつ、気負わずに新たな独自を道を見つけ、さらに規模を拡大させ、未来の通販市場をけん引してもらいたいと切に願う。

 とは言え、強烈な個性とカリスマを備えて、事業をけん引してきた創業者からバトンを受け継ぐことは容易なことではないだろう。例えば、意思決定1つとっても、それまではひとりのカリスマが、事業運営における様々な重要事項を最終的には決めてきたわけだ。当該企業の事業を創造し、いくつもの困難を切り開いていった経験や実績もあり、説得力や求心力があるわけで、物事はスムーズに決定していた。ただ、それは創業者だからこそ成立することと言え、誰もができることではない。このことはバトンを引き継ぐ後継者自身が痛いほど理解しているはずだろう。

 だからこそ、すでに創業者から手を離れた通販企業などは、商社や銀行などから外部の優秀な人材を招聘し、従来の「個人」から「組織」による企業運営へと転換を目指した。当然の選択肢と言えようが、しかし、問題なのはそうして個人経営から組織経営に移行した通販企業が、必ずしも更なる成長を遂げているかと言えば、そうとは言い切れないことだ。これは某大手総合通販企業などの近年の状況を見れば明らかだろう。

 確かに組織はスムーズに回せるようになり、緻密なマーケティングも、効率よい商品開発も可能になったかも知れない。しかし、そこにはかつて創業者が経営していた時代にはあった「色」が失われているからなのではないか。「色」とは言い換えれば、創業者の「個性」だ。強烈な個性が販売する商品を決め、訴求力のある見せ方を考え、この個性に共感した消費者が当該企業を支持し、その結果として当該企業は成長を遂げてきたわけだ。

 個人経営から脱却し、組織による経営に移行することは悪いことではない。むしろ、当然の流れだと言えよう。とは言え、その過程で「個性」を失ってしまえば、当該企業の魅力は急激に色あせ、顧客離れを誘発しかねない。ある種、感覚的とも言えるカリスマが残した、目に見えない、しかし、最も重要な資産を、新体制でどう継承し、新しい形として昇華させることができるか。2年後に社長を継承することになるジャパネットたかたの髙田旭副社長は創業者のやり方やノウハウを組織や仕組みに変え、"再現"できる試みを進めており、この安定した土台の上で、新たな自らの「色」を作りそうとしているようだ。偉大な創業者の後を継ぐ次代の経営者にエールを贈りたい。

通販市場の潮目の変化捉えよ

2015年は通販市場に迫るパラダイムシフトがさらに加速する。本紙調査による14年度の通販市場は約9%増の5兆6440億円と拡大傾向が続く。だが、増税による消費の冷え込みや円安に伴う収益性の悪化、大手流通の攻勢がメーカー機能を持つ通販の脅威となり、周辺企業を含め取り巻く環境は厳しさが増している。来春には健康食品の「機能性表示食品」制度が始まるが、一方で昨年は景品表示法の大幅改正もあった。景表法は課徴金の導入も控えている。厳しい競争環境にありながら、難しい舵取りを迫られる。

 「機能性表示食品」制度の開始は、健食を扱う通販企業にとって朗報だ。薬事法との関係で機能を表示できない健食は、科学的根拠を持てば「健康な関節の維持に」など身体の部位に関する機能を表示できるようになる。イメージ広告に頼らざるを得なかった通販各社は、消費者に適切な情報を提供でき、消費者選択に資する制度となることが期待される。

 ただ、懸念もある。新制度の諮問を受けた消費者委員会は、制度の導入によって科学的根拠のない「いわゆる健康食品」の存在が浮き彫りになり、その淘汰が進むことを期待していることだ。このため消費者庁に監視・執行体制の充実を図ることを求め、継続的に行政を監視していく考えも示した。

 悪質な業者の排除は必要だ。ただ、大転換となる今回の制度は、十分、慎重に議論され、設計された。医薬品を例に機能を発揮する成分の特定を条件とするなど、複数の成分が複合的に作用して機能を発揮する健食にあって厳しい制約も企業側は呑んだ。まず、消費者目線を重視して制度の導入が第一であり、その上で信頼を勝ち得て制度改革につなげると思えばこそのことだろう。

 成分の特定を思えば、新制度を活用できる健食は多くなく、「いわゆる健食」として残る商品もある。根拠を充実させる過程にあるこれら健食を見境なく取り上げ、「いわゆる健食」と断じるべきではない。新制度が第2次安倍内閣の成長戦略の一環として検討が始まったことも忘れてはならない。

 景品表示法の改正も市場に大きな影響を与える。地方への措置権限や不実証広告規制の移譲、近い将来には課徴金制度も導入される。消費者庁では景表法の執行を担う表示対策課、中でも食品表示を担当する「食品表示対策室」が大幅な定員増を要求している。消費者庁は新制度導入に際しどう動くのか。

 景表法違反は、大手マスコミが報じるため、消費者に注意を促す効果が高い。一方で、業界全体に是正を促す効果も発揮する。ここ数年、健食では中小への適用が続く景表法だが、新制度を前の引き締めを狙い、「一罰百戒」の観点から業界に影響力のある大手を狙う可能性もある。成長戦略を掲げる政府と、法運用の実務を握り、批判を受けない形での安定した制度導入を狙う官僚の思惑は必ずしも一致しない。行政の"思惑"が先行するような運用はあってはならないが、企業も注意が必要だ。通販業界の勢力図を書き換えるに十分な制度改革だが、潮目の変化を捉えた企業にとっては好機ともなる。

通販各社は次代の競争に備えよ

通販新聞がこのほど行った「第61回通販・通教売上高ランキング」調査では、上位300社の合計売上高は前回調査比6・5%増の5兆1183億円となった。今回の調査でも、依然、アマゾンが6200億円でトップを快走し続け、未だ様々な事業者がネット販売に参入している状況をみても、ネット販売が通販市場の拡大をけん引している形だ。この流れは2014年も続くと見られ、ネット販売が日常の生活に密着した商品購入チャネルとして地位を確立することになりそうだ。

 これまでネット販売市場は、順調に拡大を続けてきた。その意味では、消費者から商品を購入する場として認知されていることは間違いない。だが、以前の利用ニーズは、どちらかというと趣味嗜好的な要素が強く、日常の生活基盤とまで言いえる存在にはなり切れていなかった。

 だが、GMSや食品スーパーがネットスーパー、ネット販売の展開に力を入れ始めたことなどもあり、この1、2年で食品や日用雑貨などをネットで購入する土壌が徐々に整備されてきた。ネット系でもヤフーとアスクルが食品、日用雑貨を扱う「ロハコ」の展開を始めるなど、日常の買回り品をネットで購入するスタイルが定着しようとしている。

 14年は、この流れがさらに進むと見られるが、そのけん引役となりそうなのは一般用医薬品を足掛かりとしたドラッグストアなどのネット販売参入だろう。13年1月に第1、2類医薬品のネット販売を一律に禁止する省令は違法とする最高裁判決が出て以降、家電量販店系通販サイトやネット専業販売事業者で医薬品の販売を開始する動きが見られた。一方で、医薬品ネット販売のルールが整備されるまで、ネット販売参入を見合わせる事業者も少なくなかったが、先の臨時国会で一般用医薬品の販売ルールを盛り込む薬事法及び薬剤師法の改正法が成立しており、施行が見込まれる14年春以降、ドラッグストアを中心に医薬品ネット販売への参入が活発化するはずだ。

 こうした新規プレーヤーの参入は、ネット販売市場の拡大に寄与するものだが、特に、医薬品や日用雑貨などをメーン商材とするドラッグストアの本格的な参入は、日常生活に密着したチャネルとしてのネット販売の存在感を高めることにもなろう。

 さらに、日常生活に密着したチャネルとしてネット販売を一般化させる要因となりそうなのが有力小売事業者の間で広がるオムニチャネルの施策だろう。この一環として13年12月、セブン&アイ・ホールディングスがニッセンホールディングスの買収を発表し話題となったが、実店舗や通販サイト、カタログなどあらゆるチャネルを統合し、その全てで同じ購買経験を提供するオムニチャネルの施策が定着すれば、顧客のネットとリアルの意識的な壁が取り払われ、さらにネット販売が日常的に使われる可能性も考えられる。

 今後ネット販売は、日常の生活基盤という新たなステージに向け一層の成長が見込まれるが、この流れが進むにつれ、新規参入事業者や他チャネルとの競合も激化する。既存の通販・ネット販売各社は、次代の競争に備える必要があるだろう。

ニッセン買収が示す現実

ニッセンホールディングス(HD)がセブン&アイ・ホールディングス(HD)の子会社となる。セブン&アイグループではTOB(株式公開買い付け)を実施するとともに、第三者割当増資を引き受ける予定で、買収額は最大で約177億円となる。通販業界を長く支えてきたトップランナーである、ニッセンが流通最大手の子会社になるという事態は重く、今後の再編が加速しそうだ。

 ニッセン買収の目的について、セブン&アイHDの村田紀敏社長は「あらゆる販売チャネルを連携させた『オムニチャネル』を目指すために必要だった」などと説明した。ネット販売の進展は、これまで通販とは縁のなかった小売りやメーカーなどの参入を促進し、その結果として店舗と通販の「壁」がなくなる、つまりボーダレス時代が到来した。

 セブン&アイグループではこれまで、子会社を通じてネット販売を手がけてきたが、以前は強みのあった書籍販売でもアマゾンに大きく水を空けられているのが実情だ。オムニチャネル化を進めるためにもネットの強化は必要不可欠であり、そのために通販のノウハウを持つニッセンをグループに加えたとみられる。

 一方、ニッセンHDの今期業績は、シャディ関連3社を連結したことで増収にはなるものの、最終赤字に転落する見込みだ。同社では中間決算発表時に、カタログ発行時期と販売する商品の「ズレ」やネット限定商品の投入が思うように進まなかったことなどを業績不振の要因として挙げているが、これはカタログを主な販売チャネルとしてきた総合通販企業の限界を示したものといえる。

 同社では、カタログの配布を前提とした年間の販促計画を見直し、ネット販売を「主」、カタログを「従」に位置付けるなど、媒体戦略の大幅な変更を打ち出していた。ただ、競合がひしめく中、ネットで存在感を出すには、商品力やサービス力の向上は必須となる。そのためにも、流通最大手からの資金調達は欠かせないということだろう。

 総合通販企業はこの10年あまり、カタログからネット販売への移行を進めてきた。だが、既存の顧客が注文する媒体こそネットに移っているものの、ネットからの新規顧客獲得はうまくいっていないのが実情といえる。現に、ネット化が進むにつれて売り上げを落とす企業が大半だ。総合通販企業はこれまで、衣料品や家具などで「値ごろ感」を打ち出すて店舗への優位性を保ってきた。ところが、SPA(製造小売業)の発展はこうした優位性を完全に失わせてしまった。さらには流通形態の多様化が進むとともに、消費者の商品購入パターンも多様化。さまざまなメディアやチャネルで欲しい商品を選び、購入することが当たり前となる中で、総合通販が消費者から「選ばれる」のが難しくなったわけだ。

 今回の買収劇は、従来型の総合通販企業の限界を如実に示したものといえる。このままでは同様の企業がまた出てくるだろう。ネット販売では、サービスレベルにおいてアマゾンジャパンや楽天などの大手に対抗するのは難しいだけに、各企業は生き残りをかけて、新たな収益源を見出す必要がある。

不当表示撲滅に取り組め

「楽天市場」の「楽天日本一セール」において、不当な二重価格表示を行った疑いのある店舗が含まれていた問題で11月11日、楽天は17店舗が審査を経ることなく元値を大幅に引き上げ、不当な価格表示により商品を出品していたことを明らかにした。また、3店舗が審査に通っていながら、事実上の不当表示を行っていたことも認めた。楽天は消費者の信頼を失いかねない不当表示を排除する仕組みを構築すべきだ。

 楽天によると、審査を経ないで不当な価格表示をしていたのが17店。大きく報じられたシュークリームのほか、スルメイカ、ダイコンの計3店については「新規登録された商品で過去の比較できる元値がなかった場合や、以前からその元値が表示されており、元値の不当な引き上げとセール前の審査で認定できなかった事例」(楽天市場事業PR推進グループ)としている。ただ、卸元が1個260円で販売しているシュークリームを、小売りが1個1200円で販売するとは考えにくい。報道によれば、審査を通った3店への処分はないようだが、果たして消費者は納得するのか。そもそも、新規登録された商品に「通常価格」が存在することが不自然であり、もう少し慎重に対応すべきではなかったか。

 本紙では今年6月から楽天市場における「二重価格表示」問題を取り上げてきた。楽天では本紙の問い合わせに対し「出店者には適切な販売活動をするよう調査・働きかけをしている」「問題が発覚した場合には厳正な対処を断行している」などと回答してきた。「日本一セール」での不当表示が大手マスコミで取り上げられたことで調査を実施した形だが、今に始まった問題ではないのだ。今回のセールでも公式サイトで紹介された、タイムセール商品に不当表示の疑いがあることが本紙調査で分かっている。セールの「顔」ともいうべき商品に不当表示の疑いがあるのでは、楽天がこれまで行ってきた対策の実効性を疑わざるをえない。

 最大の責任が不当表示を行う業者にあるのはもちろんだ。とはいえ、こうした形で楽天市場がやり玉に挙げられると、ネット販売自体の信頼性が損なわれかねず、法を守っている事業者の活動にも影響が出かねない。現に、一般用医薬品のインターネット販売に関する薬事法改正案問題で、甘利経済再生担当相が今回の不当表示問題を引き合いに出したという報道があった。「ネット販売に規制をかけるな」という真っ当な主張まで色眼鏡をかけて見られてしまう恐れがある、ということを楽天や三木谷氏は自覚すべきだ。

 また、楽天は有効な再発防止策を講じるとともに、今後のセールについても見直すべきではないか。在庫処分などを除けば「普段の半額以下」などという商品を店舗がたくさん用意するのは難しい。表示に対する消費者の目が厳しくなることは確実で、これまでのやり方では店舗が参加しにくくなることも考えられる。

 ただ、こうした不当表示は楽天だけの問題ではない。ネット販売黎明期から続いている問題ともいえる。業者の意識改善はもちろんのこと、「見て見ぬふり」をせず、業界全体で対策に取り組むべきだ。

今後もJADMAの貢献に期待

当時の主要通販実施企業たちが通販の社会的信用の低さなどを憂い、通販市場全体の社会的地位向上を目指して立ち上げた日本通信販売協会(JADMA)が設立30周年を迎えた。JADMAがこれまで通販市場の発展に果たしてきた功績は大きい。通販がまだ世間から認知を受けていない黎明期から、先人たちが自らの手足を縛り、自主規制を行いながら、市場・企業の適正化や健全化を促し行政の過剰な介入を未然に防ぎ、また、活発な会員企業間での情報やノウハウの共有などにより現在の通販市場を作りあげてきたわけだが、この中核的な役割を果たしてきたのがJADMAであり、その功績は誰もが認めるところだろう。

 この30年間で通販市場は大きくその姿を変え、また、市場規模も格段に拡大した。そうした市場の発展・拡大はJADMAを中心に、その会員である通販企業が懸命に通販市場の信頼性や地位向上などの市場環境の整備を進めてきたことの上に成り立っていることは間違いない。そのベースがあったからこそ、例えば、今や通販を席巻するインターネットに代表される新しいメディアによる通信販売もスムーズに消費者に受け入れられ、また、急激に世の中に浸透できたわけで、飛ぶ鳥を落とす勢いのネット通販企業もJADMAや通販業界の先人たちの恩恵を受けていることは忘れてはならない。

 これまで通販市場の発展や市場整備に多大なる貢献を果たしてきたJADAMAだが、この先の30年に向けて、同団体が今後、果たすべきことや求められる役割とは何なのだろうか。通販市場は30年前と比較して複雑化している。通販にとって「売り場」となるメディア、また市場を構成する事業者も既存通販企業はもちろん、ネット通販専業者や有店舗小売業者、メーカーなど多様化している。かつて通販企業はある程度、利害や求めるものが一致しており、JADMAとしてはその統一された業界利益の代表として、進むべき道を決めることができたわけだ。

 しかし、現在では通販メディアも事業者の立場もそれぞれ多様化し、当然のことながら、同じ通販事業者であっても「求めるもの」が大きく異なる。企業間の利害もしかりだが、今後の市場発展のためには、業界団体として「通販の社会的責任」なども考えていく必要があるだろう。また、業界特有の「媒体制作」や「物流」といった技術を後世まで伝え業界全体の発展に寄与する役割も求められそうだ。アウトサイダーも含めた広告表現の適正化の努力を一層強める必要もあろう。過度な規制が生じそうな場合には業界団体として行政と渡り合い、交渉力を発揮し、危機を未然に食い止める役割も一層求められるだろう。

 多様化する要求・要望をどう受け止め、どう形にしていくのかJADMAはこれまで以上に難しい舵取りが求められそうだ。しかし、だからこそ通販市場の利益代表団体として今後もJADMAが通販市場になくてはならない存在であるわけで、その重責を背負い、適切に通販市場が進むべき方向を示し、現在、そして未来の会員社とともにこの先30年も通販市場発展に貢献して欲しい。

通販各社の増税時負担なくせ

来年4月1日からスタート予定とされる消費増税を踏まえ、その対応と準備を始める通販事業者が増えてきたが、混乱が広がっているようだ。通販では受注から配送までにタイムラグがあるわけだが、こうした通販特有の事情から起因して例えば税率が変わる新年度間際の注文について旧税率と新税率のどちらを顧客に負担してもらうべきか、など具体的な問題についてどう対処すればよいかわからないためだ。10月1日から施行される消費税転嫁対策特別措置法に合わせて、増税時の禁止事項などの指針が関連各省庁から公表されたものの、先のような対処に迷う問題については行政サイドから何ら指針はない。

 本来であれば、通販市場の業界団体たるJADMAが一定の指針を示すべきだろう、との声もある。ただ、現実問題としてカタログ、ネット系の通販専業社やメーカーや百貨店などの兼業社など様々な企業が、様々な商材を扱う通販では各社によって立場が異なりすぎ統一ルールを示すことは難しいわけだ。要は通販事業者は少ない情報を勘案しながら、自分自身で増税時の諸問題を解決していくほかないということになる。

 では、各社はどう対処していくのだろうか。例えば、先の「新年度間際の注文の処理」について言えば、恐らくこのまま行くと多くの通販事業者は、商品配送日が本来であれば顧客から新税率を徴収することになる新年度、つまり4月1日以降となる場合でも「3月31までの注文」に関しては旧税率のまま、販売することになりそうだ。無論、「年度内の注文でも配送が新年度になってしまう場合は新税率を徴収します」などときちんと顧客に説明し、実際にそうすれば事業者の負担はないし、消費税の本来的な趣旨にも合致する。ただ、実際には「実店舗のように年度内は旧税率が適用されると顧客は思い込んでいることが多く、納得してくれないだろう」とする通販事業者は多く、無用な混乱を恐れたり、増税前の駆け込み需要の獲得を狙い攻勢をかける店舗小売事業者を前にそうも言っていられないだろう。

 そうなると、アップした税率分は通販事業者が負担することになる。日商1億円規模の通販企業の場合、仮に新税率が8%だとすると、増えた3%分、1日300万円程度を負担することになる。速配ができない企業の場合、新年度を前にした数日間にわたって差額を負担し続けることにもなりかねない。莫大な金額ではないとは言え、本来は負担する必要のないコストで釈然としない思いを持つ事業者は多いはずだ。

 こうした問題は消費税導入時や税率を3%から5%に変更した時から変わっていない。通販市場が拡大し、成長市場となっていることなども踏まえ、行政は通常の小売業とは異なる通信販売という業態からくる特有の問題も考慮し、適切な指針や有効的な経過措置を出すべきだ。また、通販事業者が増税時に無駄な負担をしなくてもよいように、行政サイドでも消費者への適切な周知を徹底・強化すべきだ。あと何度、税率が変更されるか現状では不明だが毎度、通販事業者がこうした混乱や負担を強いられるのは御免である。

アマゾンの一人勝ち防げ

通販新聞社が2013年7月に実施した「第60回通販・通教売上高ランキング調査」によると、上位300社の合計売上高は前年同期調査から5・9%増加し、5兆1425億5900万円となった。ただ、内訳を見ると必ずしも手放しで喜ぶわけにはいかない。アマゾンジャパンの増収額が全体の増収額の多くを占めているからだ。

 今回の300社売上高は、前年同期調査から約2883億円増となった。一方、アマゾンジャパンの増収額は1400億円(ただし、前年同期調査の売上高は本紙推定だった)。増収分の実に半分以上を占めているわけだ。これに伴い、市場全体に占めるアマゾンの売上高比率も増加。前年同期調査では、上位300社売上高に占めるアマゾンジャパンの売上高は約9・9%だったが、今回調査では約12%まで増えている。

 書籍やCD・DVDでダントツの売上高を誇るのはもちろん、家電でも「関連商品の売上高は1000億円を超えている」(業界関係者)との声もあり、これが事実なら同分野でもトップということになる。衣料品はまだそこまで大きな数字ではないとみられるが、このジャンルも強化を進めており、「アマゾン一人勝ち」という状況も見えてきた。

 アマゾンが市場を牽引する一方で、伸び悩みが続いているのが従来型のカタログ通販企業だ。ニッセンホールディングスが7月26日に発表した2013年6月中間決算では、シャディ関連3社を連結したことで増収にはなったものの、最終赤字に転落した。通販のニッセンでは新規顧客獲得を中心に販促費用を抑制したが、想定以上に稼働客数が減少。カタログ発行時期と販売する商品の「ズレ」やネット限定商品の投入が思うように進まなかったことなどが加わり、売り上げが伸び悩んだ。

 こうした状況を受けて、ニッセンHDでは大幅な媒体戦略の転換を打ち出した。カタログの配布を前提とした年間の販促計画を見直し、ネット販売を「主」、カタログを「従」に位置づけるというものだ。

 確かに、前述した「ズレ」は近年カタログ通販企業にとって深刻な問題となっている。これをなくすには、カタログの配布頻度を増やすとともに、季節感のある商品を随時ネットで販売できるようにする商品開発体制を構築するのが一番だろう。

 ただ、競合がひしめく中、ネットで存在感を出すには、商品力やサービス力の向上は必須。同社では商品・サービス品質の向上により顧客満足度を上げる「QSC活動」を進めており、効果が出ているとしているものの、リピート購入増には結びついていないのが実情だ。ネットを主としながら稼働客数を増やすには、送料無料や当日配送など、ネットでもトップレベルのサービス力を備える必要があるのではないか。

 もちろん、最大の課題はネットで売れる商品を開発することだ。さらには、利益率の高い単品通販事業の強化なども重要になりそう。媒体戦略の大幅な変更は、稼働客数の減少につながる恐れもあるが、生き残りに向けた改革は不可欠だ。アマゾンの一人勝ちを防ぐためにも、従来型通販企業の挑戦に期待したい。

化粧品被害症例の早期把握を

化粧品の老舗大手、カネボウ化粧品の製品自主回収は、化粧品販売を巡るリスクを再認識させるものだ。今回、カネボウが回収を決めて以降の対応には評価の声も少なくない。ただ、回収より約2年前に顧客から"肌が白くまだらになる"という症例の端緒を得ながら、回収まで時間を要したことには課題を残す。早期の症例把握を可能にする被害情報収集に向けたスキームの構築はカネボウに限らず、全ての化粧品販売事業者にとって喫緊の課題といえる。

 カネボウでは、消費者相談窓口や販売店から寄せられた情報をデータベースで一元管理。研究部門への報告や原因究明を判断するものは、「肌トラブル」に、その後のフォローを必要としないものは「相談」に分類していた。にもかかわらず2011年、顧客から寄せられた白斑に関する相談を見過ごした理由を、「医師が皮膚疾患の一つである『尋常性白斑』と診断。化粧品との因果関係を指摘しなかったため、『相談』に分類された」と、カネボウは話している。

 しかし11年以降、回収までに寄せられた症例は39件に上る。中には医師が白斑と診断したものも12例あった。白斑との関連の可能性がゼロとは言えない美白剤を扱いながら、なぜ皮膚科医の指摘を受けるまで調査に乗り出せなかったか。放置し続けたことは「皮膚疾患であるため化粧品との因果関係はないと判断した」という説明で納得できるものではない。情報の処理方法や顧客窓口のスタッフの対応力に何らかの問題があったと考えざるを得ない。

 考えられるのは、十分な安全性試験を行い、国の承認を得た医薬部外品に対する過信があったということだ。本来、他社が用いない独自成分であればより注意が必要になる。が、化粧品や部外品はそもそも「人体への作用が緩和なもの」と理解されてもいる。"白斑などあり得ない"との思い込みが因果関係を否定し、発見を遅らせたのかもしれない。

 カネボウが吸い上げた情報をどのように管理していたかは「ノウハウで公表できない」としているため、詳細は分からない。ただ、収集した情報から見えてくる分析結果は、「製品別」「成分別」「トラブル別」などデータベースの分類項目一つとっても異なってくる。原因とされる有効成分「ロドデノール」は複数製品に配合されており、製品別の分析ではその有害性は把握しにくいだろう。

 ここ数年、大規模の自主回収が相次いでいる背景について、ある事業者は、市場への新規参入が増え、競争が激化する中で、美白やアンチエイジングといった分野で効果感を求めた差別化競争が激しくなっている点を挙げる。他社にはない、効果の強い成分を追求することが、今回の事態を招いたというものだ。

 そうであればなおのこと、これまでの常識ではなく、市場の変化に合わせた情報収集の仕組み、判断基準が必要になる。今回の事例を教訓に各事業者は、さまざまな角度から情報を分析できる仕組みとなっているか、見直す必要があるだろう。また、顧客対応窓口とは別に、研究部門や品質管理部門が客観的かつ定期的にチェックする仕組みとなっているか、再確認する必要もある。

慎重派団体の動きを注視せよ

一般用医薬品ネット販売を解禁する内容を盛り込む成長戦略が閣議決定されてから、およそ3週間が経過した。これに基づき、厚生労働省が新たに検討会を立ち上げ、具体的な医薬品ネット販売のルール作りに入る予定だが、この閣議決定に不満を持つ薬業など医薬品ネット販売慎重派の関係団体が、ルール作りへの影響力を狙い、今後、政治などへの働き掛けを強めることも予想される。

 今回、閣議決定された成長戦略については、日本薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会など安全性を軽視したものなどとして遺憾の意を表明している。各団体は、厚生労働省の「一般用医薬品のネット販売等の新たなルールに関する検討会」に委員として参画し医薬品ネット販売に懐疑的な見方をしていたが、同検討会の結論を頭越しにしたような閣議決定への反発は強い。

 だが、今年1月に、省令で一律に医薬品ネット販売を禁止するのは違法とする最高裁判決が出されたこと、消費者の間でネット販売が一般的な買物手段となり利用が拡大していること、さらに規制改革会議や産業競争力会議の議論の方向性などを考えれば、医薬品ネット販売解禁の流れにあることは予想できたはずだ。

 むしろ、慎重派の団体は、検討会の場で不毛なネットと対面の優劣論を持ち出し、安全確保策など本来議論すべき事案に使う時間を浪費したことを反省すべきだろう。

 一方で、慎重派団体の中には、政府が打ち出した医薬品ネット販売解禁の方針を参院選に向けたパフォーマンスと捉える向きもあり、選挙後に流れが変わると見て、巻き返しをうかがう動きも見られる。

 その一例と言えるのは、独自のガイドラインを策定し、会員企業への医薬品ネット販売の自粛要請を解除した日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の動きだろう。同ガイドラインは、法的要件や安全性確保など27項目の基準から成り、全ての基準を満たした会員企業の通販サイトにJACDSが「適合店マーク」を付与する。これは、先の厚労省のルール検討会で"なりすましサイト"の峻別策として浮上した認証マーク制度を意識したものと言え、今後の医薬品ネット販売のルール作りで存在感を示すためのモデルケースとする考えがあるようだ。

 さらに注意を要するのは、ガイドラインの策定と合わせて設置した医薬品ネット販売対策本部だ。同対策本部では、「適合店マーク」取得企業や購入者からの問い合わせ対応、トラブル仲裁などを行う一方、医薬品ネット販売のトラブル情報を収集し、専門家がネット販売との因果関係を検証、ネット上のフォーラムで公開することも視野に入れる。会員、非会員企業の別、自社および他社の問題に関わらず幅広く情報を受け付けることを考えた場合、情報の裏付けをしっかりと取って対応しなければ、密告のはけ口にもなりかねないが、これも今後の医薬品ネット販売ルールの検討で、情報面から影響力を持たせること狙ったもののようだ。

 医薬品ネット販売のルール作りがあらぬ方向に進まぬよう、ネット販売推進派の事業者も慎重派団体の動きを注視すべきだ。

既存通販企業の奮起に期待

宅配水事業などを行うナックが化粧品通販のJIMOSを買収する。ナックは新たな収益源を獲得すべく、既存ビジネスで培った販売網や顧客基盤を活用した通販に本腰を入れていく考えで、その一環として今回の買収に踏み切ったようだ。これまで通販を主戦場に化粧品を展開してきたJIMOSを通販とは"畑違い"となる訪問販売を行う企業が買収した点について、そのシナジー効果などを疑問視する声もあるようだが、"畑違い"の企業、つまり通販とは無縁だったアウトサイダーによる通販企業の買収はもはや珍しいことでは決してない。

 直近では韓国生活用品大手のLG生活健康が昨冬に買収した化粧品通販の銀座ステファニー化粧品に続き、今年1月には健食通販のエバーライフの全株式を取得し、子会社した。精密機器メーカーのノーリツ鋼機も昨秋に買収したシニア向け情報誌や通販事業を展開する、いきいきに続き、昨年末には老舗通販の全国通販およびジャパンホームショッピングサービス、全通など全国通販グループ7社を買収した。また、買収ではないが、コールセンター大手のトランスコスモスが破たんした総通の通販事業「日本直販」を今冬に買い取った。目立つ事例ではGMS大手のイオンが出資先のテレビ通販会社を完全子会社化。NTTドコモも09年にテレビ通販大手のオークローンマーケティングを子会社したことを皮切りに昨年7月にはタワーレコードを連結子会社化し、昨年8月には食材宅配のらでぃっしゅぼーやを買収、さらに今年に入り、ファッション通販サイトを運営するマガシークを買収している。

 インターネットの普及や各種デバイスの進化、物流網の発達により、いまや流通形態は多様化しており、消費者の商品購入パターンもまた多様化している。要は様々なメディアやチャネルで欲しい商品を選び、購入することが当たり前となり定着化してきているわけだ。そんな中で、メーカーや有店舗小売事業者、訪問販売事業者なども通販チャネルに興味や関心を抱くのは当然のことと言える。そのため、自社で通販サイトなどを立ち上げて通販ビジネスを開始する企業は増加傾向にあったわけだが、多くは「とりあえず立ち上げた通販サイトで既存商品を売ってみよう」というような、いわば片手間の通販と言えるものだった。

 しかし、いよいよ本格的に人々の消費行動が多様化して、小売り企業やメーカーも含めて企業側が本当の意味でマルチチャネル化、オムニチャネル化を進めなければ、生き残っていけない時代に突入した今、ゼロベースで通販ビジネスを立ち上げるよりも、長らく続く不況などで体力が落ち、「買いやすくなった」通販企業を買収し、一気に通販に必要な商材や人材、組織といった「通販の器」を取得し、短期間に通販チャネルを確立しようと考える企業は恐らく多いはずで、今後もアウトサイダーによる通販企業の買収劇は増えるだろう。この先、通販市場を構成するプレイヤーの顔ぶれは大きく変化していくかもしれない。新規参入で新たな風を期待する一方、やはり既存通販企業の一層の奮起も期待したい。

健食は規制改革が必要だ

規制改革会議で検討が進む健康食品の表示規制改革が現実味を帯びてきた。先日、ヒアリングに参加した日本通信販売協会(JADMA)をはじめ業界団体のプレゼンテーションも素晴らしいものだった。説得力をもって改革の必要性を論じた各団体に敬意を表したい。委員の多くも改革に賛同しており、業界はかつてない好機を迎えていると言える。だが、消費者庁は改革の流れに否定的な見解を示してもいる。消費者庁は監視強化のみでは消費者利益を担保できないことを認めるべきだ。

 JADMAは、業界総意だけでなく、消費者利益の観点から制度の必要性に言及した点が素晴らしかった。事業者に対する問い合わせは、商品の機能性に関するものが最も多く、消費者の「知る権利」「選択できる権利」を担保すべきとした。

 このような実態を指摘できたのも、「サプリメント登録制度」を通じ、事業者の実態把握に臨んでいたからだろう。昔から情報提供できないジレンマは多くの事業者が抱えていたが、データとして集約されてはいなかった。10年末、消費者庁が健食表示の検討会を終えた後にその経験を活かして制度を導入した。健食を巡る規制は流動的であり、将来のいずれかのタイミングで再び議題に上がることが想像できたからだ。これを見据え、目に見える実績を積み上げてきた功績は大きい。

 健康産業協議会のプレゼンも説得力があった。制度の国際比較を通じ、"枠組み"としては整備されながら、実態として国内制度は不十分な点が多々あることを指摘。海外に比べ、栄養関連の研究が遅れていることにも言及した。近年のヒトが介入した栄養関連論文数は米国の約1500件に対し、日本は200弱。論文著者の所属機関の順位も欧米が大半を占め、日本の研究機関は46位に初めて名を連ねる。栄養学を学びたくても研究者を養成する機関は質、量ともに圧倒的に不足している。

 だが、これを受けてもなお、消費者庁は現行規制を妥当とし、改革に否定的なスタンスを崩さなかった。

 見解の背景にあるのは、米国における制度運用の実態だ。米国にはFDA(食品医薬品局)の許可を得ず、科学的根拠を前提に企業が任意で届出を行い、企業責任で自由度の高い表現が行える「ダイエタリーサプリメント」がある。これを一例に、届出制であることに加え、安全性や有効性の指針に強制力がなく、FDAの監視体制が不十分であることが米国内で指摘されているとした。

 だが、監視体制の未熟さはむしろ行政側の問題であり、米国制度の課題をもって国内制度の維持を論じるのもおかしい。制度整備と監視体制は車の両輪であり、双方の充実を進めるべきものでもあるからだ。

 一部の消費者団体のように、健食の存在自体認めないなら理由を説明すればいい。だが健食は2兆円もの市場が厳然と存在し、海外では定義も定められている。にもかかわらず、これを無視し続けるのであれば、それこそなんのための消費者庁か。消費者庁には、あいまいな範疇に置かれる健食に明確な位置づけを与える責任がある。それが消費者利益を叶える庁の本懐ではないか。

健食の表示規制"改革"に備えよ

政府の規制改革会議で「健康食品の機能性表示の容認」が検討課題になり、健食の規制改革が大きく進もうとしている。会議傘下の「健康・医療ワーキンググループ」に参加する委員の多くは、この提言に賛同しているとみられ、6月をめどに政府がまとめる成長戦略に「表示容認」が盛り込まれる可能性は高い。ただ、提言の本質は「規制緩和」ではなく「規制改革」だ。表示制度の整備は、事業活動にもより厳しさを求めるものであることを忘れてはならない。

 健食を巡る今の規制環境は複雑だ。「表示容認」が提言される一方、消費者庁では食品表示課と表示対策課で組織する「食品表示担当班」を組織。広告の監視強化を進めようとしている。ただ、監視強化と制度整備は車の両輪と言えるもの。相克を成すものではない。一方で監視体制を整備することは、歓迎すべきことと捉えるべきだ。

 それだけでなく、健食の表示規制を巡る検討に際し、過去にこれほど肯定的な条件が揃ったことはない。安倍晋三首相の諮問機関として強力な意思決定権を持つ規制改革会議で議論されることに加え、健食業界の自主規制が実を結びつつあるタイミングでもあるためだ。

 かつて健食業界では、法制化に向けた運動体である「エグゼクティブ会議」が政治的アプローチで制度化を試みたがうまくいかなかった。業界団体が乱立し、主張が異なる状況に行政や政治家が「業界の総意が見えない」と匙を投げたためだ。

 だが、今の状況は異なる。日本健康・栄養食品協会や日本健康食品規格協会は、製品の品質確保を図るための「GMP(適正製造規範)認証」を地道に展開。GMP認定工場も今では2団体で100を超えた。日本通信販売協会は、「サプリメント登録制度」を導入。製品登録を健康被害、事故発生時の押さえとするだけでなく、事業者の安全性確認や広告表示のチェック体制を調査することで、事業者による取り組みの底上げを図っている。このような地に足のついた活動で実績を積み重ねてきたことは、業界外の有識者や消費者団体にも理解を得られるものだろう。

 ただ、機能性表示の本来の目的は、消費者選択に資する制度を確立することにある。これまで少なからず、広告の巧みさが他社との差別化要因となってきた健食業界だが、表示制度化は事業活動にも一定の制限をもたらすものになるだろう。極端な話、科学的根拠が十分でない製品は、「効果がない」ことも表示しなければいけなくなるかもしれない。表示の適正化だけでなく、安全性や品質も安易なイメージではなく、より本物志向になるはずだ。

 「規制改革」は、事業者により厳しさを求めるものになるかもしれない。ただ、定義もなく、表示制度もない業界のままでは、いかがわしさの残る従来のイメージを払拭することは叶わず、いつまでも社会的認知を得ることはできない。そのようなままでは、将来的な健食市場の拡大も望めないのは明らかだ。

 事業者は、表示だけでなく、安全性や品質のチェック体制を整備し、「規制改革」がもたらす新たな市場への備えとする必要がある。

ルール議論の前提を認識せよ

省令による第1、第2類医薬品の通販・ネット販売を一律に禁止することは違法とする最高裁判決を受け、厚生労働省が設置した「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」で医薬品通販・ネット販売のルール作りに向けた検討作業が始まった。これまで行われた2回行の会合では、医薬品ネット販売に慎重な薬業や医療関連団体の委員から、違法な偽造医薬品の問題など、本来議論すべき正規の販売許可を取得した事業者による一般用医薬品の通販・ネット販売のあり方とは関係のない発言が出されている。同検討会においては、最高裁判決の主旨に基づき、論点を絞った議論と早期のルール作りの方向性を出すことが求められるところであり、本筋から外れた話を引き合いに出し、議論の拡散を招くようなことは避けるべきだろう。

 どのようにすれば、副作用リスクを軽減し消費者が安全に医薬品通販・ネット販売を利用できるのか。この部分で、推進派のネット販売関連委員と慎重派の意見の対立はあってもいい。より多角的に意見を出し合った方が、しっかりとしたルール作りの方向性を示すことが期待できるためだ。だが、これまでの会合で慎重派委員から出された意見は、ルール検討会で本来議論すべき内容とはズレがあり、暗にネットを危険視するかのようなものが少なくない。

 特に、目立ったのは違法な偽造医薬品に関する内容で、2月27日に開催された第2回会合では、日本医師会の中川俊男副会長がこの問題に触れ、「ネット販売自体が諸悪の根源」と指摘。ネットがあるから偽造薬も売られているとの考えを示し、偽装医薬品ネット販売の問題もセットで議論すべきとした。

 だが、ルール検討会で議論すべき対象は、正規の販売許可を得た事業者による一般用医薬品の通販・ネット販売であり、法を無視した確信犯的な輩の話とは次元が違う。偽造医薬品の問題を引き合いに出し、一般用医薬品の通販・ネット販売に縛りをかける考えなのかも知れないが、そうしたアウトローは、厳しく取り締まり法執行で対応すべきものである。それで不足なのであれば、別の検討会を設けて議論をすればいい。そもそも、アウトローの存在が全うに一般用医薬品の通販・ネット販売を行おうとする事業者を規制するための立法事実となり得るのかを考えねばなるまい。

 このほかにも慎重派委員からは、省令で一律に一般用医薬品通販・ネット販売を禁止したことが問題であり、薬事法の条文に対面の原則に関する文言を入れれば済むとする意見や、ルール検討会は薬事法改正のためのものではないのかといった発言が出されたが、これらは、最高裁判決で触れている立法過程や憲法の問題を軽視し、初会合で確認された検討会の議論の進め方や目的を取り違えたものと言わざるを得ない。

 今回の検討会は、最高裁判決をもとに設置されたものであり、違法と判断された一般用医薬品の通販・ネット販売のルールのあり方を検討するためのものである。慎重派委員は、この前提を認識した上で議論に参加すべきだ。

大手の寡占化に打ち手示せ

米アマゾン・ドット・コムが公表した資料によると、日本における2012年12月期の売上高は、前期比18・6%増の78億ドルだった。資料では直近3年間の売上高が示されているが、2010年11月から開始した恒常的な送料無料化の効果などにより、新規顧客獲得と既存顧客の購入回数の増加につながり、順調に売上高を拡大させていることが分かる。一方、楽天の12年12月期における国内EC流通総額は、前期比15・3%増の1兆4460億円だった。大手事業者の売り上げ拡大に拍車がかかる中で、既存の通販事業者は早急に生き残りに向けた施策を打つ必要がある。

 アマゾンの公表した売上高は、直販分など、アマゾンジャパンとしての売上高とみられる。アマゾンマーケットプレイスなど、アマゾンのサイトに出店・出品する他社の売上分を含んだ流通総額は、関係筋によると日本円で1兆円を超えているもようだ。

 国内企業では、楽天の「楽天市場」の流通総額も1兆円を突破している。オークションやチケット販売、ダウンロードなども含めた、12年12月期における国内EC流通総額は1兆5000億円近くに達した。

 両社の流通総額は大きな伸びを見せており、日本のネット販売市場の成長を上回るペースとみられる。つまり、大手による市場の寡占化が進んでいることが明白になったわけだ。

 アマゾンが近年、日本で売り上げを大きく伸ばしている理由として考えられるのは、送料無料化の恒常化と取り扱い品目の拡大だ。どちらも新規顧客の取り込みとリピート購入の増加に貢献しているのは間違いない。さらには、家電製品やゲーム・CD・DVDなどでは値引きによる攻勢もかけており、競合企業にとっては大きな脅威となっている。また、楽天も「品揃えの拡充」「翌日配送サービスの向上」「大型セールイベント」を楽天市場の増収要因として挙げている。「品揃え」「配送関連サービスの充実」「値引き販売」がポイントになっていることが分かる。

 既存の事業者も手をこまぬいているわけにはいかない。例えばヨドバシカメラは、2月から書籍の取り扱いを開始した。送料は無料で、首都圏や全国の主要都市など、一部地域では注文当日の配送にも対応する。同社では一昨年から送料無料に対応しているほか、当日配送の地域拡充にも力を入れており、商材拡大でアマゾンに対抗する形だ。

 もちろん、こうしたサービス拡充は、大手企業だからこそ実現できる面があるのは確かだ。多くの事業者にとっては、商材をむやみに増やす必要はないし、当日配送にあまり需要がない商材もある。とはいえ、各社の配送関連のサービスレベルはここ1年で格段に上がっており、注文当日中の出荷や翌日配送への対応は考慮する必要があろう。

 サービス競争の加熱にどう対応するか。追いつくべく努力するのか、あるいは価格で対抗するか。もしくは独自商材や大手であまり扱わない商材を強化するのか。ネットで商品を販売する事業者は早めに答えを出す必要があろう。

薬事法リスクへの対応を

健康食品の薬事法違反を巡り、警察が芋づる式に周辺事業者を摘発するケースが増えている。通販会社の販売していた健食の"バイブル本"を製作した出版社が摘発されたケースや、健食の企画開発を行った企業が摘発されたケースなどだ。健食通販への新規参入が増える中、熟練した健食製造の技術を持つOEM事業者が販売支援を目的に、販売会社の事業に深く関与することも多くなっている。警察のそのような動きが活発化する中、健食業界に身を置く事業者にはより慎重さが求められる。
 
 2011年、神奈川県警は「ガンが治る」などとうたい健食通販を展開していたキトサンコーワの摘発に絡み、その関連本を出版していた現代書林の元役員らを逮捕した。同年には警視庁も痩身効果を標ぼうしていた健食通販のH・A・Lの摘発を巡り、同社製品の製造を行っていたシーバイオ研究所の元役員を逮捕している。現代書林の薬事法違反事件は公判中だが、シーバイオ研究所には昨年、罰金100万円、商品を企画した元役員には罰金100万円と懲役8カ月(執行猶予3年)の有罪判決が下された。

 両事件からは販売会社だけでなく、これに深く関与した周辺事業者も含め諸悪の根源を絶とうとする警察の強い意志を感じる。現代書林に法的制裁が下されるかは判決を待つことになるが、悪質な販売行為を行う事業者の摘発は健食業界にとっても歓迎すべきことだろう。

 一方で、悪質事業者の薬事法違反が後を絶たない背景の一端には、その量刑の軽さがあるかもしれない。

 薬事法上の広告違反の刑罰は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」。過去の刑事事件を見ても、その多くは執行猶予付き判決が多い。前出のシーバイオ研究所元役員も執行猶予3年、H・A・Lの経営者だった被告は罰金200万円と懲役1年6カ月(執行猶予5年)だった。11年5月、「背が伸びる」とうたう健食を販売して逮捕された日本新光製薬元社長の場合などは、2年間で6億円超も売り上げたにも関わらず、法人と個人で計100万円の略式命令で済んでしまった。

 薬事法の最高刑は7年以下の懲役。だが、健食の販売行為でこの罪に問われることはなく、他の違反行為とのバランスから広告違反が今の刑罰となっているのは仕方のない面もある。安易な厳罰化は、違反事実の認定により厳密さを求め、警察による捜査をより困難にするかもしれない。ただ、現状の刑罰は悪質事業者にとって、その重さより犯罪で得られる利益が大きいと捉えられても仕方のないものだ。高齢化社会の到来で健康維持に対する社会的ニーズが高まる中、健食産業は環境整備が必要とされる市場でもある。

 一方で、いまだに健食に定義がない事実にも目を向ける必要がある。罰則強化の検討は、健食に明確な位置づけを与えることや、事業者自身による自主規制の可能性を含め進めなければ意味のないものでもあるためだ。健食産業が社会の一端を担う産業となりつつある中、販売事業者、これを支援する周辺事業者にも、より高い法令順守の意識が求められている。

バイブル商法を撲滅せよ

健康食品通販のキトサンコーワと、その関連本を出版していた現代書林の薬事法違反事件の公判が始まった。事件は、書籍を介し健食を販促する、いわゆる"バイブル商法"を巡るもの。無論、人の心理につけ込んで利益を上げるような販売行為が許されるわけもなく、事業者に法的、社会的制裁が下るのは当然のことだ。ただ、健全な販売を心がける事業者であっても市場の競争激化の中で広告表現がエスカレートしていくことがある。最近でもバイブル商法ではないが、これに類するような販売行為はみられる。事業者は広告表現に細心の注意を払う必要がある。

 現代書林は2001年、キトサンコーワから委託される形で書籍を制作。書籍中で「ガンが治る」などとうたい、キトサンコーワはこれを商品の販促に利用していた。

 常識的に考えて「ガンが治る」というのは荒唐無稽な話だが、疾病を抱える本人や家族はこうした話に飛びついてしまうこともある。逮捕当時、神奈川県警も「藁にもすがる思いの人間が飛びつく内容で非常に悪質」と怒りを露わにしていたが、警察がバイブル商法に厳しい姿勢で臨むという強いメッセージを発信したことは評価できるものだろう。

 一方で、事件を巡っては警察や検察の対応に疑問が残る部分もある。県警は当初、書籍出版が薬事法上の「販売ほう助」にあたるとして現代書林関係者を逮捕。だが、起訴事実では書店での販売が「広告」にあたると嫌疑を切り替えてきたためだ。

 理由は、当初の嫌疑では公判を維持できないと考えたためとみられる。現代書林は03年の健康増進法改正でバイブル本に関する留意事項が加わると編集方針を変更。社内規定を設け、連絡先が掲載されたページを切り取るなどして対応した。それでも、キトサンコーワがその後も販促物として使っていたため「販売ほう助」に問われた。ただ、出版自体は10年近く前の話。現代書林の主体的な関与を立証するのは難しく、逮捕後に、09年以降、書店で8冊を陳列・販売した行為を「広告」とみなした。

 事業者は摘発を受けることで社会的信用を失い、事業存続すら危ぶまれる事態に追い込まれる。当初から社会的制裁を狙っていたのであれば、薬事法を運用する立場としてあってはならないことであり、その職掌を超えるものだろう。県警にはより慎重な捜査を求めたい。

 とはいえ、キトサンコーワの行為を知らなかったとしても、現代書林には出版社として責任の一端があることは免れない。嫌疑を変えてでも追及しようとする警察、検察の姿勢には、バイブル商法の撲滅を図ろうとする強い意志も感じる。

 最近では書籍に替わり、漫画などより分かりやすい形で健食の機能の説明を試みる事業者も増えてきた。多くは成分や健食素材の機能性に留めることで法の網を掻い潜っている。ただ、商品とセットで展開すれば、広告と受け取られても仕方がないもの。そうしたバイブルまがいの販売行為にもメスが入る可能性がある。健全な市場発展のためにも、事業者は今回の事件を戒めに、バイブル商法、これに類する販売行為に自浄作用を働かせるべきだ。

サービス品質に独自価値を

化粧品通販事業者を取り巻く市場環境が厳しい。いくつもの"脅威"が存在するためだ。制度品大手の通販参入や、資本力を持つ異業種大手の化粧品通販参入はその一つだろう。ここ数年をみてもロート製薬や富士フイルムの台頭で市場の勢力図は変化してきた。これら大手の成功に続けと、多くの異業種も化粧品通販に参入している。いずれも独自技術や素材を活かした「オリジナルブランド」が強みだ。ただ、製品の独自価値のみで優位性を保つことも難しくなっている。リテーラーによるサービスレベルの向上、新業態開発などもう一つの脅威が存在するためだ。通販事業者は、サービスレベルにおいてもこれらリテーラーに負けない仕組みを構築する必要がある。

 「オリジナル商品を提供するメーカーといえど、リテーラーによる価格破壊、競争の波に巻き込まれる可能性は十分ある。メーカーは独自価値をより研ぎ澄ませない限り埋没する」。オルビスの町田恒雄社長は、物流再構築に際し、こうメーカーとしての危機意識を語っている。もはや「オリジナルブランド」という独自価値のみで他社優位性を発揮することが難しくなっている市場環境の厳しさを印象づけるものだ。

 かつて、制度品メーカーによる寡占的市場だった化粧品業界は、通販やドラッグストアなど流通の多様化により、その勢力図が変化してきた。富士フイルムの「アスタリフト」は通販で、ロート製薬の「肌ラボ」はドラッグストアを中心に顧客の支持を得て急成長を果たしてきた。昨年から今年にかけても異業種からの化粧品通販参入が相次いでいる。サントリーウエルネスは、新ブランド「F.A.G.E.(エファージュ)」を立ち上げ、第一三共ヘルスケアや江崎グリコなど有力メーカーも化粧品通販に参入している。

 一方で、リテーラーの動きも活発化している。楽天やアマゾンなどネット専業企業は、送料無料化や配送リードタイムの迅速化などでサービスレベルを向上させてきた。イオングループのコスメームや三越伊勢丹ホールディングス、住商ドラッグストアーズは、百貨店市場でのみ手にすることのできた国内外のラグジュアリー化粧品を新業態のセレクトショップで扱い始めている。いずれも自宅近郊や仕事帰りにラグジュアリー化粧品を手にできる"身近さ"を売りにしたものだ。

 通販は、女性の社会進出や出産・育児など生活環境の変化、購買行動の変化に順応できたことで成長してきた側面がある。スマートフォンなど新たなデバイスの登場やリテーラーの戦略を分析する中、オルビスではこうした顧客の購買行動が新たな局面を迎えていると捉え、「関東・関西主要都市における当日配送・全国翌日配送」というサービスレベルが必要と判断したのだろう。

 顧客の感覚をどう捉えるか、それは個々の事業者の判断に委ねられている。ただ、女性が仕事帰りやネット上で商品を購入する際、受注から決済、配送に至る場面で顧客の要望に応えるサービスレベルを維持できなければ、通販という業態もいつしか顧客から遠い存在となってしまうはずだ。

総通破たんは対岸の火事ではない

 テレビショッピングの草分け的な存在であった総通の破たん劇は通販業界だけでなく、広く報道され、世間から注目された。一部で伝えられている通り、不正な経理操作による粉飾決算があったとすれば、企業として批判を免れまい。しかし、一方で総通が通販業界で果たしてきた功績は大きい。昭和36年にペン習字の通信教育で創業し、約10年後に通販事業をスタート。その後、「日本直販」というブランド名でテレビやラジオ、新聞で通販を広く展開し、通販という業態を世間に広め、認知させた同社の功績は疑う余地はあるまい。今後、スポンサー企業に名乗りを上げたトランスコスモスの支援の下、きちんと、みそぎを済ませて、同社には再生の道を歩んでもらいたい。

 一方で、今回の総通の破たんは多くの通販企業にとって「対岸の火事」ではないように思う。総通の破たんの理由は先の粉飾決算や一部で言われているデリバティブ取引の失敗による損失などもあろうかと思うが、やはり最大の理由は、端的に言えば、時代に即した効果的な打ち手を打てなかったということに尽きるだろう。商品政策しかり、媒体選定しかり、経営戦略しかりだ。最盛期には年商500億円まで導いた「過去の成功体験」を忘れることができず、抜本的な打ち手ができずマイナーチェンジに終始し、後手後手に回ったものと考えられる。そうでなければ、今回のような破たんに追い込まれることはなかっただろう。

 無論、過去の手法や戦略をすべて否定するものではない。先人たちが残した戦略や手法の中には今もって色あせないものも多々ある。とは言え、やはりどんなに優れた手法や戦略も時代の変化に合わせて、これらもいずれ変化していくことは道理だろう。消費者の思考や行動の変化。通販媒体となるメディアの変化、強力な競合となり得る新規参入事業者も次々に登場してくるであろう。また、消費者保護という美名の下、通販を取り巻く規制や行政介入は今後もさらに強化されていくかも知れない。そして、大きな流れとして、少子高齢化により消費者の絶対数は減っていく。こうした社会の変化はいかんともし難い「現実」である。「現実」を前に「言い訳」や「逃げ口上」を述べても何も意味がなく、対応できなければ淘汰されるだけであろう。

 社会の変化で業績が悪化していくのであれば生き残るために、その変化に合わせて、柔軟にビジネスモデルや戦略を組み替え、その都度、時代に即した成長モデルを模索していくほかない。実際に老舗であっても好調な企業や健闘している企業の多くは過去にとらわれることなく、挑戦をし続けており、「不況」「デフレ」「規制」など「何かのせい」にはせず、戦略はそれぞれ異なるが、巧みに社会の変化を読み、その変化に対応する効果的な戦略を立て、即座にそれらを実行しているように思う。現在は好調な企業もこの先、未来永劫、保障があるわけではない。時代や社会の変化に合わせて、常に変化し続けることができる通販事業者こそがこの先も生き残っていけるはずでそれこそが通販市場発展につながるはずだ。

消費者委の健食議論は不毛

消費者委員会で10月から健康食品の表示や広告規制に関する審議が始まった。健康増進法をはじめとする法執行力や安全性確保に向けた規制、機能性表示のあり方を検討するものだ。年内に建議の提出を目指す。だが、消費者委における審議は、これまで再三に渡り議論されてきた内容の繰り返しに思える。専門家による審議でない点、その内容はむしろ劣化していると言えるかもしれない。消費者委は、審議を専門家の手に委ねて継続することを早々に決断すべきだ。

 いっそのこと、ヒアリングに呼ばれた関係団体の代表者が集まって議論した方が良いのではないか、と思う。消費者委の健食を巡る制度整備に向けた審議のことだ。

 10月30日に行われた第2回会合までにヒアリングに呼ばれた団体は、主婦連合会などの消費者団体、日本医師会や日本薬剤師会などの職能団体、日本健康・栄養食品協会など業界団体。これに関係省庁の担当者などから健食規制の現状について話を聞いた。

 各団体の主張から導き出された問題意識は、過剰摂取や医薬品との相互作用など健康被害を巡る問題、安全性確保に向けた問題、消費者への情報提供のあり方の検討など。すでに過去の議論で問題提起されたものばかりだ。

 消費者庁の創設以降、健食を巡る議論が行われたのは「健康食品の表示に関する検討会」(2009年11月~10年8月)が初めてだ。以降、検討会の論点整理を受けて第1次消費者委員会(09年9月~11年8月)が中間報告をまとめ、第2次消費者委員会(11年8月~)がこれを引き継いでいる。過去2回の検討でヒアリングに招かれた主だった顔ぶれは今回と同じ。その都度、消費者団体、職能団体、業界団体の代表者らは、同様の主張を繰り返してきた。都合3回、似たようなヒアリングが行われていることになる。

 「健康食品の表示に関する検討会」は、審議を行ったメンバーが業界関係者や健食に詳しい学識経験者などの専門家。これに消費者団体や弁護士が加わったことでバランスが取れていた。だが、消費者委は、あらゆる消費者問題について"消費者目線"で捉え審議することを目的とする組織。扱うテーマも幅広く、全員が健食の専門家、というわけにはいかない。このため、ヒアリングした団体が体験談やイメージ広告が悪いと言えばこれに賛同し、届出制が必要と言えばこれになびく。一夜漬けで健食を巡る問題を学び議論しているに等しく、大所から問題を捉えきれていない。このため毎回、各論の議論に終始している。消費者委の顔ぶれが変わるたびに専門知識を持つ各団体が健食を巡る問題を一から解説し、議論を続けることこそ、行政コストの無駄ではないか。

 専門家でない消費者委は、表示規制の具体的な手法や実現性について、無理やり結論を出すべきではない。検討会と同様の視点で議論しても、導き出される結論はこれに劣るものにしかなり得ないためだ。消費者委は、消費者にとって健食の表示制度が必要なのか否か、シンプルなテーマに絞って答えを出すべきだ。

「No.1」は消費者が選ぶものだ

今年8月、ディーエイチシー(DHC)が「『利用している(利用したい)機能性食品メーカー』第1位に選ばれました」との文言を使い、新聞広告を掲載したことは、業界内外に波紋を広げた。調査元の許諾を得ずに調査結果を引用し、同業他社の社名を実名でランキング掲載したためだ。一方で、今回の広告問題は通販事業者に"ナンバーワン表示"のあり方を改めて問うものではないだろうか。DHCのケースは異例だが、昨今、ナンバーワン表示の広告への利用が増えているためだ。

 DHCにしてみれば、これまで使ってきたナンバーワン表示の訴求力が弱くなっていることへの焦りがあったのかもしれない。かつて健康食品で売上高1位の時代もあったが、今では健康食品事業単体で売上高1位を強調することはできない。そんな中「利用している(利用したい)機能性食品メーカー第1位」という調査結果を広告に利用しない手はないと考えたのだろう。だが、調査の妥当性や同業他社への配慮、消費者の誤認を招く可能性をしん酌したとは考えにくい。

 広告に同業他社は「品位に欠ける」と不快感を示し、調査元の民間企業は「トップブランドの企業行動として倫理的に問題」と指摘。消費者団体は「本当に人気があると誤認する可能性が高い」と懸念を示した。

 ただ、DHCのケースほどではないにしろ、通販事業者によるナンバーワン表示は一般化してもいる。多くは同業他社との比較を行わないなど、利用の仕方には広告慣習に対する配慮がみられる。ナンバーワン表示は、消費者に強い訴求力を持つマーケティング上の重要な要素。利用自体を否定するものではない。ただ、そこには一定の節度が必要ではないだろうか。

 「No.1」「第1位」など、強調を示す表示には2008年、公正取引委員会が景品表示法上の見解を示している。内容が客観的調査に基づいていること、調査結果を正確かつ適正に引用していることがポイントだ。表示の商品の範囲や、調査対象地域など地理的範囲、調査機関を明確にし、調査会社の名称など根拠の出典を表示することが必要になる。

 調査を助成した中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局が調査元を民間企業であると説明していることを踏まえれば、DHCの広告が調査結果を正確かつ適正に引用し、調査機関を明確にしていたかは判断が分かれるだろう。ただ、仮に法律に触れることがなかったとしても、その利用は、景表法が示すそもそもの趣旨に沿うものと言えるだろうか。

 ナンバーワン企業としての自負があり、真にナンバーワンに足る企業であるならば、それは自ら強調して主張するまでもないこと。妥当性が疑われる調査を根拠とせずとも、黙っていても消費者一人ひとりが選択するはずだ。その姿勢こそ、"業界最大手の責任"に足る資質だろう。

 通販事業者にとって広告は消費者との接点となる重要なツール。だからこそ、誤認を招く可能性に注意を払う必要がある。通販事業者はDHCを巡る広告問題を戒めに、法令順守を超えた広告倫理の重要性を再考する必要がある。

下請との関係性を再考せよ

 総合通販大手のニッセンが9月21日、公正取引委員会から「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)違反で勧告を受けた。衣料品や家具、雑貨などの製造を委託する下請業者に対し、支払代金の不当な減額や売れ残り在庫商品の返品などを行っていたというもので、同日までにニッセンは、当該下請業者156社に対し、不当に減額した代金など合計約4300万を返金したという。通販事業者の「下請法」違反事件は珍しいが、それだけにインパクトは強く通販業界全体のイメージへの影響も懸念される。ニッセンは、大手総合通販事業者としての立場を自覚し、猛省すべきだ。

 今回、ニッセンが公取委から指摘を受けた「下請法」違反行為は3点になる。公取委によれば、発注書面の作成・送付の事務手数料と称して一定料率を減額した代金を下請業者に支払っていた(4条1項3号「下請代金の減額の禁止」)ほか、売れ残りの在庫商品や受領後半年を経過した不良品の返品・引き取り(4条1項4号「返品の禁止」)をさせ、一部業者に対して返品の際の送料も負担させていた(4条2項3号「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」)という。いずれも下請業者との関係性を軽んじていたのではないかと疑われても仕方のない行為と言える。

 今回の問題に対しニッセンは、「現場レベルの問題であり、会社ぐるみで起こしたことではない」(広報企画チーム)とする。だが、企業間の取引の中で行われた行為である以上、単に現場レベルの問題で済まされるものではなく、全社的なコンプライアンスに対する意識、企業姿勢に帰結するものだろう。

 その意味でニッセンの対応は、脇が甘いといわざるを得ない。実際、事務手数料と称した支払代金の減額については、同社でも「下請けに限らず、全取引業者に対して、かなり以前から行なっていたもの」(同)としているが、これは「下請法」に抵触する不当な行為を長期にわたり見過ごしてきたことにほかならず、社内チェック体制に重大な問題があったことは明らかだ。また、返品の扱いについても、有店舗の小売業や他業種でもしばしば問題になる事案であり、下請業者と取引を行う上で、まず注意すべき事項だろう。

 通販の場合、「特定商取引法」や「景品表示法」、「健康増進法」など表示を中心に関連法規が多いが、事業規模が大きくなり取引先が増えれば、「下請法」はもとより「独占禁止法」などにも目を配らなければならなくなる。ニッセンでは、今回の不祥事を受け、社内研修やチェック体制を強化する考えを示しているが、単に仕組みを作るだけではなく、その適切な運用に向けたコンプライアンスに対する全社的な意識改革を図っていかなければなるまい。

 今回のニッセンの下請法違反事件に対し、他の通販事業者からは、従来からの価格戦略と絡め、下請業者との関係性を軽んじてきた結果ではないか推測する声も聞かれる。他の通販事業者も今回のニッセンの例を対岸の火事とするのではなく、ビジネスパートナーである下請業者との関係性と適切な取引のあり方を再度考えてみるべきだろう。

北陸支局は抗議の手を緩めるな

ディーエイチシー(DHC)が今年8月、新聞に掲載した広告が問題となっている。「誤解を生む」として、調査の引用を止めるよう要請した中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局の要請を振り切り、広告を掲載したためだ。広告を巡り、北陸支局は8月20日、DHCに抗議を行った。ただ一方で、支局には早期に事態収束を図ろうとする様子も窺える。事業者が不利益を被り、消費者を誤認させた責任を感じるならば、支局は抗議の手を緩めるべきではない。

 掲載に至る責任の一端は北陸支局にある。調査は「利用している(利用したい)機能性食品メーカー」を企業の実名入りで公表したもの。そのような調査に公的機関のお墨付きがついたとなれば、DHCが"使わない手はない"と思うのも想像に難くない。「ご迷惑をかけた」(北陸支局)と釈明すれば済む問題ではない。

 もちろん、DHCの倫理観が疑問視されるものでもあろう。同業他社の実名掲載は、日本の広告慣習にそぐわない。そもそも、こうした調査は、バイアスがかかる可能性を否定できないものでもある。たとえ法的な問題をクリアしても、先の調査のみで「ありがとうございます(中略)第1位に選ばれました」とあけすけに消費者に主張できるものではない。支局が不適切な調査であったことを伝えたにもかかわらず、掲載を強行した姿勢にも疑問を感じる。

 だが、その後の北陸支局の対応がなにやらおかしい。「(広告を巡る問題の)影響が大きくなることを危惧している。あまり記事掲載してほしくないのが心情」と、事態が拡大するのを好まず、収束を図ろうと見受けられるためだ。

 抗議内容も不可解な部分を残す。北陸支局は「訂正記事の掲載をお願いした」とする。ただ、一般的にDHCが新聞に"訂正記事"を掲載することはありえない。社告掲載を指すのか、さらに問うと「DHCから新聞社にお願いしていただく形で、手法は細かく申し上げていない」とする。着地点をどこに見出しているのか、判然としないのだ。形式的に抗議を行い、ほとぼりが冷めるのを待っているのであれば、それは何ら意味のない行為だろう。

 確かに、今回の広告で法的な責任を問うのは難しいかもしれない。景品表示法上の比較広告、特定商取引法上の虚偽誇大広告、著作権法上の引用にかかる問題は指摘されるものの、法律違反とは断じるのは難しい。広告に細心の注意を払い、周到に事業を展開してきたDHCのこと。掲載した広告が及ぼすであろう影響を考え、その法的見解まで意識を働かせていないはずはない。

 ただ、そうであっても北陸支局には最後まで抗議の手を緩めないでほしいと思う。支局はこれまで、健康食品が地域経済をけん引する成長性の高い分野の一つと捉え、支援を行ってきた。それが今回の騒動を受け、"鬼門"と避けて通るようになるのであれば、あまりに残念な帰結だ。責任を感じるのであれば、広告の問題を追及し続ける気概を見せてほしい。その姿勢こそが、消費者に今回の広告に潜む倫理的な問題に関する気づきを与え、広告に反発を覚えた企業に対する贖罪ともなるはずだ。

業界大手の責任とはなんぞや

 8月半ばに、DHCが全国に広く出稿した新聞広告を巡って、通販業界の内外から批判の声が噴出している。当該広告は全面2面分を使った見開きの広告で「ありがとうございます。DHCは、『利用している(利用したい)機能性食品メーカー』第1位に選ばれました。」という文言とともに、1位から42位までの機能性食品メーカーの企業名が入ったランキング表を掲載している。ちなみに1位は断トツで「DHC」となっている。

 こうした他社の実名を挙げたランキング表を自社広告に掲載する形は、健康食品業界ではあまり見受けられない。健康食品はその適用を受けないが、薬事法が適応される化粧品などの場合、「他社の製品のひぼう広告の制限」という広告基準があり、「製品の比較広告を行う場合、その対象製品は自社製品の範囲で行い、その対象製品の名称を明示した場合に限る」とされ、そうした形の広告はルール違反になる可能性が高いためだ。こうしたこともあり、健康食品でもそうした比較広告は見受けられない。加えて、互いにしのぎを削りあう競合とは言え、同じ業界でビジネスを行うもの同士の言わば仁義があり、無論、成分や価格などを比較するものは多々、見受けられるものの、「競合の実名をあげつらうような内容の広告はまずしないし、見たこともない」(某健食販売会社幹部)という。

 とは言え、当該広告への批判はそうした実名をあげつらう業界の仁義に反していることについてだけで噴出しているのではない。当該広告を見た消費者に誤認を与える可能性があるからだ。というのも、DHCの広告によると、このランキング表の作成に「主管」という形で携わったとされる「経済産業省管轄 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局」は当該ランキング表を含む調査結果の公表をすでに取りやめている。詳細は不明だが、以前はホームページ上で公開していた当該データをその後に、あえて削除したわけだから「公表に足らない何らかの理由」があったからのことだろう。

 同支局ではDHCが何らかの問題のある当該調査結果を広告で掲載しようという動きを把握し、掲載しないよう再三要請したようだ。DHCは何を思ったのかそれでも掲載を強行したという。

 実際には異なるが、公的機関が実施したと思われる調査に自社が断トツの1位となっていれば、広告に使用したくなる気持ちは分からないでもいない。ただし、掲載しないよう再三の要請を無視してまで掲載するというのは通常の、まして大手企業では有り得ない尋常ならざる行為だ。まして、「公表に足らない何らかの理由」を抱えている訳で、内容が適切でない可能性もあるわけだ。その場合は消費者に誤認を与える懸念も出てくる。

 DHCは当該広告の最後に「業界最大手の責任として―ここまでやるのが、DHC品質」という文言を残している。逆にDHCに問いたい。業界最大手の責任とは何ぞや。もはや何も求めはしないが、せめて通販業界の信頼を失う行為だけはしないようお願いしたい。

消費者庁は特保の将来像示せ

消費者庁は特定保健用食品(トクホ)制度をどうするつもりなのか。過去にはトクホの安全性や剤型を巡る問題が、最近では広告表示を巡る問題も起きた。だが、事の詳細や騒動拡大の要因が検証されることもなく、ただ、消費者のトクホに対する不安だけが膨れていく。国が許認可を与える制度である以上、その将来像をいかに描くか、その責任は消費者庁にある。主体性を発揮できなければ、消費者のトクホに対する信頼は失墜するばかりだ。

 ここ数年、トクホを巡る問題が相次いだ。2009年には、花王の「エコナクッキングオイル」を巡る安全性問題、10年には日清ファルマの「グルコバスター」を巡る剤型の問題が起きた。そして今年はサントリー食品インターナショナルの「黒烏龍茶」を巡る広告表示の問題だ。

 「エコナ」は、主婦連合会が強硬に一時販売停止を主張する一方、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会は「エコナ」がどの程度のリスクか把握した上で情報提供を求めるなど、消費者団体でも意見が割れた。消費者委員会でも企業出身の委員は「食品にはそもそもリスクがある」と慎重な議論を求めた。だが、消費者庁は消費者委に委員を送り込む主婦連側の主張に引きずられ、結果、企業イメージの毀損を懸念した花王が自ら幕引きを図った。

 「グルコバスター」を巡るトクホ審査も物議を醸した。消費者委は「形状がカプセル状であること」を理由にトクホとして認めなかった。医薬品と誤認する可能性があるからだ。だが、医薬品のみ認められた形状規制は01年にすでに撤廃。以後、食品や健食に使われている。にもかかわらず、消費者委は過去の議論と整合性の取れない問題をさして議論することもなく、いとも簡単に覆した。

 「黒烏龍茶」を巡る問題でも消費者委で「適切でないという怒りがとても大きい」とCMを非難した委員の意見が消費者委の総意となり、消費者庁の要望に至っている。

 これらのケースはいずれも一部の消費者団体や、消費者委の問題提起を鵜呑みにしたものばかり。消費者の意見を反映させる「消費者庁」とは名ばかりのもの。"消費者目線"を掲げる団体や委員に都合よく利用されているだけではないか。

 「エコナ」の場合、強硬な主張を繰り返した主婦連は05年から安全性を疑問視し、目の敵にしてきた。他のケースも、形状規制撤廃やCMを憎々しく思っていた消費者委の委員の強い執念を感じる。これを押し通すことができる委員に与えられた権力の大きさは想像に難くない。

 日本健康・栄養食品協会が調査した11年度のトクホ市場は6%減となり、約10年前の水準にまで落ち込んでいる。これまでトクホを非難してきた消費者団体や消費者委の委員は、これを"市場の冷え込みは消費者の支持低下の表れ"とでも評するつもりだろうか。だが、いずれの問題もその"危惧"ばかりが目立ち、深く検証が加えられてはいない。「エコナ」や「グルコバスター」「黒烏龍茶」の判断は正しかったのか。検証を加えなければ、この先も同様の問題は続き、消費者に資する制度とはなりえない。

消費者庁は説明責任果たせ

消費者庁が特定保健用食品(以下、トクホ)「黒烏龍茶」を販売するサントリー食品インターナショナルに、テレビCMの改善を求める文書を送った。CMで使われているある表現が「偏った食生活を助長する恐れがあり不適切」との理由からだ。だが、この改善要望はあまりに不可解だ。改善を求めた内容が、ということではない。問題となったCMが何法のどの部分に違反したものなのか、非常にあいまいなことがだ。違反の根拠を明確にせずに要望できるのであれば、消費者庁は"言葉狩り"との批判を免れない。

 問題のCMは、サントリー食品が、アニメ「笑ゥせぇるすまん」のキャラクターを使い展開しているものだ。キャラクターが「脂肪にドーン」と人指し指を突き出し、「食べながら脂肪対策」とのコピーと共に商品を紹介する。これにケチがついた。

 改善要望は、消費者委員会傘下の「新開発食品調査部会」での審議が契機となっている。CMについてある委員が「これを飲めば油ものを食べても大丈夫とか、そういう印象を受ける」「個人的な感想かもしれないが、適切でないという怒りがとても大きい」と発言。これに消費者庁食品表示課が「注意を促したい。この商品に限らず、『これさえ飲めば』というイメージのものが増えている」と応じ、要望に至った。

 今年3月には消費者庁が日本健康・栄養食品協会に「(トクホの広告の中に)あたかも『当該食品を使用すれば、バランスの取れた食生活を考慮しなくて良い』旨を示唆するような表現が用いられているものがある。許可文言を逸脱するので改善が望まれる」と部会から指摘があった旨を通達。協会が会員各社に周知する事態に発展した。

 だが、この改善要望は不可解と言わざるを得ない。先の審議の中で、消費者庁は健康増進法における誇大広告の判断基準を「消費者を著しく誤認させるようなもの」と説明している。特に、問い合わせや指摘が多く集まる案件を重視し、修正を求めているという。ただ、問題となったCMには「そういった意見は入ってきていない」(消費者庁)。さらに「脂肪にドーン」という表現には「個人の捉え方によって学術的に判断できない表現を行っているものは正直なところ判断しにくい」(同)とまで言い添えている。つまり、誇大と断じるに足る根拠を持ちえていなかったということだ。

 断っておくが、CMに意見のあった部会はそもそも、事業者から申請されたトクホの表示許可について議論する場で、許可後の宣伝手法を議論する場ではない。にもかかわらず、消費者庁は「審議されている先生方から意見を頂いたので注意を促したい」と要望に至った。

 だとすれば、自ら"個人的感想"と認める部会の委員の意見を端緒に、消費者庁が動いたことになる。消費者委員会とは、法を逸脱した要望を可能にするほどの力を持つものなのか。というより、それほどの権力を持たせて良いものなのか。それでは今後も委員が"おかしい"と強く主張すればまかり通ることになる。消費者庁は即刻、法的根拠の説明責任を果たす必要がある。

経営トップ自らリスクに臨め

悠香の「茶のしずく石けん」による小麦アレルギー発症問題と、ディーエイチシー(DHC)によるファンケルの特許侵害問題は程度の差こそあれ、根を同じくする問題だ。通販大手2社が招いた騒動は、各メディアに取り上げられ、ブランドイメージを深く傷つけることになった。だが、これに留まらず、「通販化粧品」に対する消費者の信用失墜すら招きかねないものだ。化粧品市場の飽和感が高まる中、通販化粧品は店頭市場との競争に勝ち抜いていかなければならない。ブランド価値を高める努力を尽くす一方、今後、業態の枠を超えた競争の勝敗を分かつ要諦となるのが「危機管理」だ。

 業界を揺るがした悠香の小麦アレルギー発症問題。6月に行われた日本通信販売協会の懇親会である通販大手元代表は「化粧品の危機管理は、もはや一担当部署が認識していれば済む問題ではなく、経営トップ自ら把握するべきこと」と語った。大半の製品を自社製造する同社だが、事後対応のあり方を再考する上で参考となる部分が多かったという。だが、製造をOEM事業者に委ねるケースが多い中小の通販事業者の場合、この問題は品質や安全性など製造上のリスクまで広範に及ぶ、より深刻な課題となるだろう。

 DHCの特許侵害問題も、見方を変えれば悠香の問題と同根の課題が潜んでいる。自社製造の製品でない場合、他社の有する知的財産に対しても疎くなりかねないためだ。

 本来、通販業界を代表し、後進に範を示すべき企業が侵した特許侵害は、消費者にコンプライアンスに対する認識の甘さを露呈させることになった。製品回収や健康被害に比べれば、特許侵害がブランドイメージに与える影響は小さい。だが、OEM事業者への丸投げが招いた結果だとすれば、このことはより大きな問題に結びつきかねないリスクを孕んでいる。品質や安全性、コンプライアンスに対処できる人材を育成し、OEM事業者といかに強固な信頼関係を築くかは課題になるだろう。

 通販業界全体にすらネガティブなイメージを与えかねない報道が続く一方、店頭市場では業態改革の試みが着実に進んでいる。三越伊勢丹ホールディングスはルミネに高級化粧品の専門店を出店し、イオンは外資系ブランドを含むセレクトショップ「コスメーム」を開店させた。ネットを媒介に顧客の購買行動が変わり、通販化粧品が「通販」という業態の特性を活かしにくくなる中、制度品大手によるネット販売参入も、いずれは脅威となるかもしれない。

 通販の強みといえば、対面販売でないからこそ培うことができた"接客力"だろう。最近も日本ブランド戦略研究所の行った顧客サポート評価でファンケルが1位を獲得し、オルビスもサービス産業生産性協議会が行う顧客満足度調査で1位を獲得。ヘルプデスク協会が行うコールセンターの格付け調査では両社が最高評価を得るなど、外部の評価がその実力を証明している。強みを活かすためにも、足元をすくいかねないリスクに敏感になる必要がある。危機管理に向けた各社の取り組みが、ひいては業界全体の信頼を高め、市場のシェア拡大を進めることにもなる。

高裁判決を真摯に受け止めよ

 第1、2類医薬品のネット販売を行う権利確認や医薬品ネット販売を規制する省令規定の無効・取り消しなどを求め、ケンコーコムとウェルネットが国(厚生労働省)を相手取り提起していた行政訴訟の控訴審で、東京高等裁判所は4月26日、1審判決の一部を取り消し、ケンコーコム側にネット販売を行う権利を認める逆転判決を下した。国側は5月9日に上告したが、弁護士など法律の専門家の間では、高裁判決は理にかなったもので、最高裁でも覆すのは難しいとの見方が少なくない。

 1審では、原告であるケンコーコム側の訴えを全て退けた。理由は、ネットは対面に劣るというものだ。ケンコーコム側はこの判決を不服として控訴したが、確かに、ネットが対面に劣ると判断した根拠は曖昧で、おかしな判決と言わざるを得ない。

 実際、医薬品販売制度を巡る過去の検討過程をみても、ネット販売を行う事業者が蚊帳の外に置かれ続け、ネットでの情報提供や販売手法などを十分に検証した形跡はない。また、事業者の経営に影響するような規制をかけるのであれば、相応の理由があってしかるべきだが、過去の医薬品の健康被害について見ても、ネットという販売手法に起因した事例は見当たらないのが実情だ。こうした状況を考えると、1審判決は、国の主張する優劣論を鵜呑みにしたものとしか言いようがない。

 これに対し控訴審では、高裁側が規制の必要性と合理性に焦点を当てる方針を提示し、ネット販売を一律に規制する省令規定は改正薬事法の委任範囲を超えた違法なもので、ケンコーコム側に医薬品ネット販売を行う権利があると認める判決を下した。表面的な優劣論ではなく、規制の必要性と合理性という本質的な部分に軸足を置いたこの高裁判決は当然の結果だろう。

 また、同判決では、医薬品ネット販売の利用者や、営業をしてきた事業者があることを勘案した規制による利益の侵害、規制の根拠となる事実の調査、合理的な規制方法の検討など立法過程にまで踏み込んで言及している。これは医薬品ネット販売規制の検討段階での問題を指摘したものだが、ある弁護士は、医薬品ネット販売だけでなく、行政が行う規制の在り方、安易な規制に釘を刺すメッセージが含まれているとする。

 医薬品ネット販売規制を巡る一連の経緯を辿ると、薬業団体などから"ネットは危ない"というレッテルを貼られた挙句、立法事実となる健康被害やネットでの情報提供方法などの十分な検証がないまま、時間切れの形で規制が導入されたが、この構図は医薬品ネット販売に限ったものではあるまい。特に成長著しいネット販売に対しては、懐疑的な見方をする既得権益者は少なからずいるはずで、今後、何か問題が生じた場合、イメージ先行の規制議論が浮上することも考えられる。その意味でも、検討経緯にまで踏み込み規制の在り方に言及した高裁判決は重いものだ。

 国側はすでに最高裁に上告したが、高裁判決を真摯に受け止め、消費者や事業者に不利益を与え続ける理不尽な医薬品ネット販売規制を早急に見直すべきだ。

化粧品"危機管理"を再考せよ

悠香の「茶のしずく石けん」による小麦アレルギー発症問題が今年4月、集団訴訟に発展した。全国で立ち上がった弁護団が一斉提訴で求めた損害賠償は70億円超。原告は500人超に上り、2次、3次と続く提訴で原告総数は1000人に達する見通しだ。2001年、化粧品の「全成分表示制度」が導入され、化粧品製造販売の責任主体が事業者に移って以降、誰もが化粧品にこれほどのリスクがあるとは考えなかったに違いない。悠香の問題はその認識を根底から覆し、通販事業者に改めて「危機管理」の重要性を問うものだ。

 制度品大手の担当者の一部には、悠香の問題を「ぽっと出の通販事業者が安直に化粧品販売に乗り出した結果」と見る者もいる。だが、問題は通販が持つ特性が招いたものではなく、化粧品業界全体で考えねばならない課題を示唆するものだろう。化粧品の安全性に関わるものだ。

 今回、小麦アレルギーは肌への浸透が想定される化粧水などではなく、肌表面で洗い流される「洗顔料」で起きた。昨今、化粧品各社は美容成分の浸透技術を競い合うが、その点、安全性をいかに担保するか、また、洗顔料における安全性試験のデザインの再考も必要だろう。

 また製造、販売事業者間で秘匿し合うことが通例となっている自社調達・開発の原料情報の扱いをどうするかも検討が必要だ。アレルギーの原因は「グルパール19S」という原料にあるとの見方が濃厚なためだ。

 これまで委託関係にある化粧品の製造、販売事業者間では、自社調達・開発の原料情報を開示しないことが慣習となっていた。自社調達の原料には、その製品の魅力を決定づける秘密が隠されていることが少なくないためだ。「グルパール」もその分子量の大きさが泡立ちが良いなど魅力的な機能を担保した反面、アレルギー発症のリスクを高めたとされる。悠香が原料情報をどこまで知っていたかは不明だが、訴訟では販売事業者だけでなく、原料の供給元、製造元も被告となった。非常に難しい問題だが、この点をいかに解決するべきか、考える必要がある。

 こうした議論になると、「全成分表示制度」が導入される以前、「化粧品原料基準」という規格で化粧品原料を国が管理していた時代の方がやりやすかったのではないか、とも思う。だが、「化粧品原料基準」は、原料の個性、ブランドの"らしさ"をなくし、コモディティ化を進行させる要因となっていたもの。回帰を望む事業者はいないだろう。

 全成分表示制度で自己責任が重くなる反面、事業者はオリジナリティのある、ユニークな商品設計が可能になった。このことが海外市場における国内ブランドの国際競争力を高め、既存大手が先行し、飽和状態にあった化粧品市場に通販各社が切り込む好機ともなった。

 だからこそ、悠香の問題に端を発した危機管理のあり方を、日本通信販売協会の「コスメティック部会」など業界全体で議論する必要がある。海外に目を向ける通販事業者が増える中、安全性に対する信頼を土台とした国際競争力を維持していく上でも、悠香の問題を風化させることがあってはならない。

モール運営者は順法を指導せよ

 東京都は4月3日、健食などを販売していた通販事業者4社の表示が不当であるとして、景品表示法に基づく改善を指示した。当該4社はメーカーや仕入先から合理的な根拠のない販促資料などを元に問題のある表示を作成していたという。体力のない中小事業者にメーカー等から提出された商品の資料についてエビデンスを取れ、というのは酷な話であり、指示の対象が通販事業者のみということについては別途、議論する必要がある。だが、問題の表示を見てみると例えば、「一度止まった身長が強制的に成長期に突入」など明らかに行き過ぎた表現であり、また、東京都によると、再三の注意があったにも関わらず、不当表示を繰り返していたということから悪質な確信犯的な違法行為と言われても仕方あるまい。

 こうした確信犯的に不当表示などを行う通販事業者は後を絶たない。このような状況をこのまま放置しておけば、行政や当局からの通販全体への規制や監視の強化につながり得るし、実際、すでにその厳しさは近年、増してきている。さらに怖いのは消費者の通販離れだ。出鱈目な表示が散見され、半ばそれがまかり通っているような怪しげな場所で商品を購入しようと思う人が減っていくのは自明の理である。通販市場が規制でがんじがらめとなり、顧客もいなくなり、衰退していくという危機的な状態に至る前に、何らかの手を打たねばなるまい。

 ただ、そこで難しいのは法知識の無知に起因するものなのか、確信犯なのかは別としても、違法行為を行う事業者の多くは日本通信販売協会(JADMA)などの業界団体に所属していないアウトサイダーであるということだ。無論、通販事業者の業界団体の役割としてJADMAには今後、非会員企業についてもカバーし、適切な対処が行える体制を構築するよう期待したいが、現実問題として現状では問題がありそうな事業者に接触し、遵法の周知徹底などを指導でき得る組織・団体が存在しないというのが実情である。

 しかし唯一、そこに一定の影響力を行使できるのが仮想モールの運営事業者だ。そうした事業者の多くは仮想モールに出店し、そこを主戦場としているところも多い。ここで商売ができなくなるのは死活問題といっても過言ではなく、その「売り場」を仕切るモール運営者の方針には従わざるを得ないからだ。つまり、モール運営事業者が「売り場」の管理者として、出店者である通販事業者に遵法などの指導を徹底すれば劇的に現状を改善できる可能性は高いわけだ。

 しかし、一部のモール運営者は今回のケースでも東京都から指摘を受け、当該事業者には出店停止措置を行なったが、問題の表示が改善された、としてわずかな期間で出店を再開させたようだ。いかにも甘すぎはしないだろうか。これでは「多少のやりすぎ」は流通総額拡大のために目を瞑るのか、と勘ぐられても仕方がない。いまやネット販売を含めた通販市場の有力事業者となった自分たちの行動・姿勢いかんで市場の将来に大きな影響を与えることをモール運営者はそろそろ認識すべきだ。

行政はトクホ再浮上の道開け

特定保健用食品(トクホ)市場の先細りに歯止めがかからない。日本健康・栄養食品協会が調査した2011年度の市場規模は約5200億円で、07年度の約6800億円をピークに減少に転じ、約10年前の水準にまで落ち込んでいる。トクホは09年末から約2年に渡り、消費者庁、消費者委員会で制度改革が議論された。だが、示された方針は消費者団体の強い反発もあり、規制強化一辺倒といえるものだった。市場の再浮上に向けた好要因が認められない中、このままではトクホ市場はますます冷え込むことになる。
 
 昨年、消費者委で行われた制度改革議論で導き出された結論は、トクホ許可に関わる審査の厳格化や、更新制の導入など規制強化に関わるもののみ。これに同調するように、今回調査でも11年のトクホ許可品目は前年を大きく下回った。

 消費者委の議論には、国際情勢に対する視点も皆無だった。EFSA(エフサ=欧州食品安全機関)では機能性表示の科学的根拠の評価を行ったが、日本でトクホを取得した大半の製品が、その根拠を認められなかった。中には、トクホ取得時より多くの試験データを添えた企業があったにもかかわらずだ。

 EFSAの評価に対しては、同国の業界団体や事業者から厳しすぎるとの声も挙がっており、海外と国内のトクホ制度を単純比較することはできない。だが、その評価を見ても、現行のトクホ制度が海外で通用する制度にはなり得ていないことは明らかだろう。

 2010年、日清ファルマがトクホ取得を目指した「グルコバスターカプセル」の評価結果でもトクホ市場に暗い影を落す"前例"が示された。「カプセル形状が医薬品との誤認を招く」との消費者委の判断からトクホの許可が下りなかったのだ。

 当時、「グルコバスター」に関する審議は最終段階まで来ており、厚生労働省のある担当官は公の場で「もうすぐカプセル状のトクホが誕生する」とまで発言していた。また、医薬品にのみ認められていた錠剤・カプセルの形状規制は01年に撤廃されており、食品への使用は決着済みの問題でもあった。にもかかわらず、消費者委は許可に待ったをかけた。

 トクホ許可品目は、未だに過去に許可を得たわずかな商品を除き、食品形態のものが大半を占めている。保健用途の拡大も期待できず、錠剤・カプセル状食品を中心に約1兆円超に達するとされる健康食品市場を取り込める素地がないままでは、市場の拡大など望むことはできない。

 こうした状況の中、野田佳彦首相は昨年12月、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する方針を表明した。仮にTPPが現実となって関税撤廃に進んだ場合、次は関税の後ろに控え、実質的に自由貿易の障壁となっている表示制度の規制緩和を求められる可能性が高い。

 米国は健食の安全性や機能性で日本より厳しい評価基準を持つ。これ照らせば、トクホ制度も海外諸国の言うがままに改革を迫られるかもしれない。トクホを含む健食の表示制度を消費者と国内事業者にとって利益あるものにするためにも、改めて制度改革を議論する必要がある。

JADMAは改革路線進めよ

 日本通信販売協会(JADMA)の新会長に、QVCジャパンの佐々木迅社長が内定した。6月1日の通常総会を経て、第12代の会長に就任する。テレビ通販専業企業の会長は初となる。宮島和美会長が進めてきた改革路線の引き継ぎはもちろん、テレビ局の自主的な通販枠の総量規制など、テレビ通販にも逆風が吹きはじめている中で、専業ならではの視点に基づいた施策の実施にも期待したい。

 伸長の続く通販市場だが、引っ張っているのはJADMA会員である既存の通販事業者ではなく、ネット販売を中心に事業を手掛ける企業だ。ネット販売専業はもちろん、近年は通販を販路の一つとするメーカーや有店舗小売業も目立っている。ただ、こうした企業の中でJADMA会員は多くない。

 実際に、加盟していないネット企業に話を聞くと「メリットが何もない」「単に統計を取るだけの団体ではないのか」という否定的な回答が帰ってくることが多い。もちろん、JADMAは日本で唯一の通販業界の業界団体であり、会員社への情報提供や各種のセミナー、行政への意見具申など、さまざまな取り組みを手がけてきた。しかし、市場をけん引する楽天やヤフー、アマゾンといった大手ネット企業の加盟していないJADMAの意見は、行政からみれば「通販業界の総意とはいえない」と捉えられてもおかしくない状況なのも事実だろう。

 2年前に就任した宮島会長は、会員企業数の停滞に危機感を持ち、さまざまな改革を進めてきた。まず、「サプリメント部会」が中心となって健康食品の登録制を推進。会員企業の扱う商品名や安全性のチェック体制など所定の項目のデータベース化を進め、消費者トラブルが発生した際の対応の迅速化を図るもので、協会非加盟の企業とは信頼度に差があることを明確にする目的だ。また、セミナー事業を強化するなど、非加盟の通販企業に入会のメリットを示す取り組みを行なってきた。

 さらには、2010年9月に専用電話を開設し、企業からの法律相談に力を入れているほか、JADMAマークの普及や協会の認知向上を目的にテレビのスポットCMを展開。広報誌「JADMA NEWS」の掲載内容やレイアウトを見直し、電子ブック形式での閲覧を可能にするなど、広報機能も強化している。こうしたJADMAの取り組みについては「この2年でかなり変わった」(ある中堅通販企業)と一定の評価を与える声は少なくない。

 ただ、今後もJADMAが行政に物申す存在であり続けるためには、既存、新規の通販企業にとって加盟に値する必要な団体とならなければいけない。佐々木新会長には、宮島現会長の路線を推し進め、会員企業数の増加を意識してもらいたい。

 その一方で、佐々木氏ならではのアプローチにも期待したい。ファンケル出身の宮島氏は、健康食品関連で手腕を発揮したが、佐々木氏も同様に、テレビ通販がらみの問題における行政との折衝など、実力の発揮できる場面は多々あろう。通販市場の健全な発展のためにも、JADMAのさらなる変革が求められる。

行政は健食制度の整備急げ

食品の機能性に対する消費者の関心の高まりを示す出来事が続いている。健康食品素材「レスベラトロール」はテレビ番組で取り上げられたことから脚光を浴び、トマトは脂肪燃焼効果が注目された。食品の機能性が注目されることは、健食業界にとっても追い風であり、喜ばしいニュースに思える。だが、こうしたブームが起こっては立ち消えていく背景には、消費者が機能性に関する確かな知識を持ち得ていないことがあるのではないか。これは、健食にまともな表示制度がないことが一因だ。機能性に関する不確かな情報が垂れ流され、健全な市場発展を阻害する可能性もある。行政は制度整備を急ぐべきだ。

 昨年6月、NHKは「レスベラトロール」が、老化の原因を抑えるとされる遺伝子の働きを活性化させる可能性を番組で取り上げた。「あなたの寿命は延ばせる 発見!長寿遺伝子」というあまりに刺激的な番組タイトルが消費者に与えるインパクトは大きく、放送以降、健食通販各社に問い合わせが殺到した。

 今年2月には京大の研究グループがトマトに含まれる成分の一つがメタボリック症候群の改善に役立つ可能性があることを発表した。研究は動物試験に拠るもの。だが、発表を受けてテレビ各局が「人間で作用を得るためには○個のトマトを食べることが必要」「毎日トマトを食べているトマト農家の人はみんな痩せている」などと面白おかしく伝えたことから消費者が情報に飛びつき、店頭ではトマト関連商品が品薄となる事態に発展した。

 機能性が関心を集めるのは今に始まったことではない。過去から現在に至るまで、さまざまな食品、健食が注目されてはそのブームが終息してきた。"フードファディズム(食品の一時的流行)"という現象だ。

 だが、こうして消費者の関心が高まる事態を楽観視していて良いだろうか。「レスベラトロール」を摂ったからといって長寿が約束されるわけもなく、ただトマトを大量に食べさえすれば痩せるわけでもない。複数のフィルターを介して消費者に伝えられる情報は、時として誇大なものとなり、間違った形で伝わっている。にもかかわらず情報に飛びつく消費者の行動に、いびつな形となって現われた、機能性情報に対する"飢え"を見ることはできないか。

 時に健食に対する過信を抱かせ、時に不安を抱かせる原因となる不確かな情報。原因は健食に表示制度がないことがある。事業者は健食について適切な情報を伝える手段を持ちえず、一部の悪質事業者にはこれを悪用して根拠が薄弱な情報を垂れ流すことさえ許している。

 ファンケルの宮島和美会長は09年、消費者庁で行われた「健康食品の表示に関わる検討会」など、ことある場面で健食を巡る議論に必要な視点として米国ケネディ大統領が示した「消費者の4つの権利」(安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利)を挙げている。今の健食の表示制度がこれを満たす制度と言えるのか。行政は情報の氾濫に自らの失策を省みて、消費者の権利を真剣に考えるべきだ。

企業買収は実現性重視せよ

 通販企業が関わる買収や業務提携が相次いだ。1月30日には、NTTドコモが食品宅配大手のらでぃっしゅぼーやを買収すると発表。続いて2月3日には、 ディノスが菓子材料などのネット販売などを行うクオカプランニングに出資し、資本業務提携を結んだ。さまざまな企業が通販に進出し、競争が激化する昨今、 通販・店販といった販路のボーダレス化もますます進んでおり、今後はドコモのような異業種も含めてM&Aや提携が活発化しそうだ。

 ドコモは株式公開買い付けを実施し、らでぃっしゅの完全子会社化を目指す。その上で、らでぃっしゅ株式の最大20%分をローソンに譲渡する資本業務提携を締結、3社で野菜通販を拡大させる狙いだ。

 らでぃっしゅは近年、売上高が横ばい傾向で、会員数も伸び悩んでいる。同社は定期便の野菜セットとカタログを主力としているが、毎週決まった曜日に届け る宅配スタイルだけに、通販に比べて利便性で劣る部分がある。また、競合となる有機野菜の宅配・通販企業に比べて、やや価格面で不利なことも伸び悩みの要 因となっていたようだ。

 今後はドコモの顧客をらでぃっしゅの宅配事業に送客するほか、モバイル通販を強化。流通量の拡大で商品の値下げにもつなげたい考えだ。業績が頭打ち傾向 にある中で、台頭するオイシックスのような野菜通販への対抗策といえるが、食品宅配事業は生産量のバランスの問題や、比較的高額な食材宅配を利用する世帯 は限られた層であることなどから急激な業容拡大が難しく、実現性は不透明。課題は山積のようだ。

 通販市場はネット販売の拡大をテコに成長を続けてきた。ただ、新規事業者の相次ぐ参入もあり、競争は激化する一方。経営難に陥るネット専業も多いとみられ、今後はM&Aの活発化が予想される。

 販路のボーダレス化が進む中、店舗も含めたあらゆる媒体で商品を販売することが求められている。事業多角化を進める大手通販によるM&Aや、逆にドコモ のような異業種の大手による通販企業買収は今後も続きそう。ただ、問題は本当に多角化が果たせるかどうか。「店舗と通販の連動」など、事前に掲げたメリッ トが実際にはほとんど機能しないM&Aは、これまでも多々あった。

 例えば、かつてイマージュはアパレルブランド「トランスコンチネンツ」を買収したものの、店舗運営に失敗し、事業を清算。グループの業績悪化の要因とも なった。最近では、スクロールが衣料品通販とのシナジー効果を期待し、化粧品通販の「イノベート」を買収したが、買収後のイノベートの売上高は減少。さら には前経営陣による薬事法違反も発覚している。

 こうした事態に陥らないように、事前の慎重な検討が必要なことはもちろん、事後も互いの課題や問題点をすりあわせ、解決していく姿勢が重要となるだろ う。かつて、キューサイは青汁と宅配との相乗効果を狙い、らでぃっしゅを買収したが、思うような成果が出せずに手放した過去がある。ドコモが食品販売や宅 配事業の弱点をきちんと認識できるかどうかが成功のカギとなりそうだ。

化粧品の"原点回帰"に注目

通販化粧品市場をけん引してきた大手各社で「ブランド再構築」が進んでいる。オルビスは2007年にこのテーマに着手し、ファンケルも09年秋から検討を進めてきた。ディーエイチシー(DHC)も今年1月、企業ブランディングを意識したと思われるテレビCMを始めている。3社の業績はいずれも踊り場を迎え、好む好まざるとにかかわらず、店舗市場を軸に展開する制度品大手各社との競争は避けられない。ただ、国内化粧品市場の横ばい推移が続く中、大手3社が抱える危機感には、早晩、中小事業者も直面するだろう。3社の取り組みが如何なる結果を残すか、注目する必要がある。

 ブランド再構築は、自らがこれまで打ち出してきたブランド価値を再定義していく作業だ。何が顧客の支持を受けてきたのか、その"原点"を見つめ直し、長年に渡る事業展開で溜まってきた澱(おり)とのギャップを埋めていくものだろう。

 3社は80年代、「無添加(ファンケル)」「オイルカット(オルビス)」「オリーブオイル(DHC)から想起される"安心・安全"のイメージを、既存大手化粧品に対するアンチテーゼとして打ち出し支持を得てきた。

 しかし、「無添加」は"肌には優しいが効果は薄い"といった意図しないイメージを生み、「オイルカッ
ト」もシンプルで機能的なイメージが定着したものの、40代以降の女性に"物足りない"との印象を持たれた。「オリーブオイル」も"安心・安全"の域を出なかった訳だ。

 その中で、まず「ブランド再構築」の方向性を明確にしたのがファンケルだ。無添加だからこそきれいになれる「素肌純化」というブランド価値を新たに打ち出した。オルビスもオイルカット理論を用いたアンチエイジングケア製品の強化に乗り出している。2社の取り組みは、原点であるブランド価値に最適な"付加価値"を持たせていく試みだ。

 一方、異なる戦略を取ってきたのがDHCだ。ここ数年、オリーブオイルのみへのこだわりを捨て、「プラチナナノコロイド」「CoQ10」など注目成分をスピード感を持って製品化するのは一つのやり方ではある。だが、「機能(配合成分量)」と「価格」こそ品質であると定義し、その最高パフォーマンスを目指すとしてブランディングCMを展開するのは、原点に対する付加価値を追求する前出2社とは異なるが、ブランド価値というものを意識し、再定義する必要性を感じたからだろう。

 3社の新たなブランド価値の創造は、商品だけでなく、サービス面にも及ぶ。ただ、ブランド価値を再定義する取り組み、新たな企業ブランドの確立を目指す取り組み、いずれもリスクはある。顧客に支持を得てきた"原点"を見誤れば、逆に顧客の離反を招くことにもつながりかねないためだ。

 だが、国内化粧品市場が限界に達しようとも、女性のライフスタイルの変化や少子高齢化など、市場環境は絶えず変わる。そこにブランドチェンジを起こし、市場を切り取る好機も存在している。この中から"原点回帰"の最適な姿を確立する企業が現われるか、その決断の行方を見守る必要がある。

過剰な消費者保護はやめよ

 近年、行政による過剰な消費者保護の姿勢が目立つ。例えば、先日、東京都がネット販売などでも広く販売されているカイロポケット付き腹巻の試買調査を行った。同調査の結論はこうだ。「長期間に渡ってポケットにカイロを入れておくと低温やけどをする可能性がある」ので消費者は注意が必要であり、「消費者が分かりやすい形で注意表示を行うこと」とポケット付き腹巻の製造元や販売事業者に要望した。

 これは過剰な消費者保護である。カイロを長期間、肌に密着させて使用すれば、おのずとどういう結果を招くかは常識として分かるであろう。まして、その結果として腹巻の製造・販売元に半ば、責任を転嫁するように分かりやすく注意表示を行え、と言い出すというのはいかがなものなのか。

 もちろん、東京都の試買調査の意図は分からないわけではない。実際問題、低温やけどは重症化すれば、手術が必要になるなど深刻な事態を招く可能性もある。そのこと事態の注意喚起は必要なことなのかもしれない。また、実際に都に「腹巻のポケットに使いすてカイロを入れて使用していたら、低温やけどを負った」という相談が寄せられていたようだ。ただし、腹巻の製造・販売元への要請というのは筋違いだ。

 そもそも低温やけどの注意表示を行うべきは「カイロ」の方であり、カイロの製造元が注意表示を徹底していないのだとすればそうした「要望」を申し入れることはまだ理解できる。しかし、腹巻の製造・販売元にまでこうした要望を行うのは明らかに行き過ぎだ。この論理でいくとカイロを挟んで使用できるすべての肌着や衣服について、同様の注意表示を行う必要が出てくるわけだ。果たしてどこまで「注意表示」を行えば、行政サイドから「要望」されずに済み、そして、それによってどのくらいの消費者が保護されるというのだろうか。

 一昔前であれば、社会一般の常識の範疇とされていた様々な事象は昨今の過剰なまでの行政による消費者保護の結果、消費者から常識を奪った。何らかの不具合が生じた場合、明らかに自らのミスであっても、何重にも法律で守られた権利をかさに自己都合の持論を主張し、事業者など誰かのせいにするクレーマーまがいの「非常識な消費者」を生み出してしまった。それでもなお、行政は懲りずに非常識な消費者までも手厚く保護する姿勢を崩さない。

 悪質な事業者を排除し消費者を守ること自体は当然、行政の責務であり、それに何ら異論はない。ただし、それと同時にまっとうな事業者のビジネス活動を妨げる悪質な消費者の排除も必要ではないか。過剰な消費者保護を是とする姿勢は事業者をいたずらに疲弊させ、日本の産業の衰退を招く危険性があるだけでなく、常識が欠如した非常識な消費者をさらに生む可能性を孕む。行政が為すべきは過剰な消費者保護で非常識な消費者を増やすことではなく、消費者に事故を未然に防ぐ「常識」を持たせることであろう。そうなれば貴重な税金を使って試買調査などせずとも消費者を「守る」ことができるのではなかろうか。

健食業界は「外圧」に備えよ

健康食品を販売する国内企業が瀬戸際に立たされている。国内制度では、健食はその存在すら認められておらず、国が承認する特定保健用食品(トクホ)ですら、海外では全く通用しない、独自の制度となっているためだ。一方で、市場の世界的な拡大を背景に、外資系企業の動きは活気づいている。昨年末には在日米商工会議所(ACCJ)が健食表示に関わる提言を発表。規制緩和に向け動き始めた。その背後には、野田佳彦首相の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加方針の表明を受けた世界戦略があるとみられる。だが、健食に関する限り、"主体性"を欠く日本政府、行政、業界にこれに対抗する術はない。市場のグローバル化が進む中、このままでは国際競争力を持ち得ない国内企業は海外から取り残されてしまう。

 ACCJは昨年末、トクホ審査や健食の表示制度の改善を求め、提言を発表した。「外圧」による規制緩和の要請だ。ACCJと言えば1994年、食品(健食)の形状規制緩和を先導したことが知られている。今回の提言は、その背後に健食を販売する外資系大手MLM(連鎖販売取引)2社が関与しており、日本のTPP参加を念頭に規制緩和を一気に進めようとの思惑が垣間見える。

 外資系企業にとって健食にかかる高い関税は長年に渡り頭を悩ませてきた問題。仮にTPP参加が決定し、関税撤廃に動くことになればそれだけで外資系企業が受ける恩恵は大きい。だが、それだけでなく、貿易自由化が進むことになれば、健食という商品分野で次に浮上するのは海外と日本の表示制度の整合性の問題だ。日本より数段厳しい審査体制を持つ海外諸国が制度改革を求めてくるならば、まともな法律や制度を持たず、通知規制でお茶を濁してきた日本に国内制度を守りきれる保証はない。

 TPPに直接関与しないが、EUは08年、許可する健食表示のリストを確立すべく、各国企業から申請された表示とその科学的根拠の評価を始めた。日本からもトクホを取得した多くの企業が申請。中にはトクホ申請時より厚い試験データをもって臨んだ企業もみられたが、その結果は惨敗。国が認めたトクホですら海外においては役不足だった。こうした海外の動きを見るにつけ、いかに国内制度が脆いものかを実感する。

 ただ、この「外圧」を好機と捉えることもできる。健食業界は過去に時に政治の力を借り、時に業態の垣根を超えた団体を発足して規制緩和を試みたが、そのいずれも思惑の違いから離合集散を繰り返してきた。

 だが、最近ではこの反省を受け、社会的評価を得る着実な歩みを見せ始めてもいる。日本通信販売協会は、健食の登録制度を始め、市場の実態把握と健康被害防止に向けた環境整備に動き出した。流通・小売の業界団体、消費者団体が加盟する「国民生活産業・消費者団体連合会」発足も期待される動きではあるだろう。

 通販事業者もこれら団体と行動を共にし、健食業界としての意識を醸成していくことが必要だ。市場の国際化を背景に制度改革議論が再燃する可能性がある中、業界として確固たる主張を示す準備を始めなければ海外制度に後れを取ることになる。

"消費行動の変化"を捉えよ

 本紙が行なった通販実施企業を対象としたアンケート調査によると、2011年で最も印象に残った出来事はやはり、3月に発生した東日本大震災であった。この未曾有の災害は通販業界にも様々な影響をもたらした。発生直後は物流網の混乱に伴う商品の配送などの遅延や広告および販促活動の自粛。このほか、一部では計画停電で配送および受注拠点の稼働時間が制限される事態にも陥った。関連工場が被災したために商品調達面でも影響を受けたところもあったようだ。これらにより春先は業績面では厳しい局面に立たされた通販実施企業も少なくなかった。

 震災発生直後の混乱から脱した後も、震災に伴う原発事故などから水や食品、電池などの買いだめが発生。当該商品を販売する一部のネット販売実施企業は特需の恩恵を受けられた一方で、そうした混乱に伴う弊害の方がむしろ強く、過剰に確保した当該商品が今度は余ってしまい、後になって値引き販売をする羽目となり、それが原因で赤字に転落したところもあり、混乱を見せた。

 震災は通販実施企業に様々な影響を与えたわけだが、やはり一番大きな影響として考えられるのは「震災に伴う消費行動の変化」であろう。単純に防災・節電対策商品などの売れ行きがよかったということは当然あるが、それだけでなく震災がきっかけとなり消費のベクトルが「個人」から「家族」、「便利」だけではなく「エコ」にも貢献できるものへ、と大きくシフトさせたのではないか。

 複数の通販実施企業によると、今年は例年になくダイエット関連商材やフィットネス器具の動きが悪く、逆にキッチン雑貨や調理器具、掃除用品などの売れ行きがよいという。テレビ通販ではキッチンやバスリフォーム、太陽光発電パネルも人気となっている。これまでのように自分自身の趣味嗜好に投資するのではなく、震災を経て、より絆が深まった家族の安心や快適さを担保・向上させることができるものにこそ投資しようという消費行動の変化のあらわれと言えるのではなかろうか。

 エコ関連商品の売れ行きがよいというのも震災がきっかけだと言えそうだ。無論、ここ数年間で消費者の意識もだいぶ変化してきているわけだが、やはり「エコ商品がいい」とは言っても、まずは「価格」や「デザイン」など他の要素が優先である消費者が多かったように思う。しかし、震災とそれに伴う電力問題、また様々な節電対策商品やエコ対策商品などを購入、使用しているうちに、消費者のエコ意識を恐らく平時であれば数年はかかるであろうレベルにまで一足飛びに到達させたのではないだろうか。

 これらの消費行動は今年だけの特殊なものではなく、恐らくは来年以降も継続される新しい消費のトレンドであると言えよう。市況はいまだ回復せず、円高や増税など消費に悪影響を与える事柄も多い。しかし消費者はまったく買い物をしないか、と言えば無論そんなことはない。変化する消費トレンドを見定めつつ、適切な商品選定と販促策を打つことができれば、どんな時代でもおのずとモノは売れるはずだ。来年も通販企業各社の奮起に期待したい。

リスク管理を再確認せよ

2011年もあと1カ月を残すのみとなった。今年は3月に起きた東日本大震災と、それに伴う福島第一原発事故の影響を大きく受けた年といえよう。

 通販業界のこの1年を振り返ると、震災関連に並ぶ大きなニュースといえるのが、悠香の「茶のしずく石けん」による集団小麦アレルギー発症ではないか。ここに来て、大手マスコミでも連日のように報道されており、悠香だけではなく、通販業界全体の信用に関わりかねない事態となっている。さらには、来春にも各県で結成された被害者弁護団が集団訴訟の準備を進めていることも分かっており、問題は長引きそうだ。

 本紙でも指摘してきたように、今回の事件がここまで大きくなった背景には、悠香のリスク軽視と被害者への対応のまずさがある。「加水分解コムギ末」がアレルギー発症の可能性となっている事実を、09年末から10年初頭にかけて医師などから指摘されていたにも関わらず、何の対策も打ってこなかった。また、顧客に対しては少額の「お見舞い金」で解決しようとしたほか、告知はダイレクトメールや電話によるものに終始し、謝罪会見やテレビCMでの周知などは一切行っていない。

 11月には、今回の問題への取り組みについて説明した文書をサイトで発表。「被害者に対して誠心誠意対応する」とは述べているものの、「全く新しい症例であり、弊社としても大変な驚き」などの言い訳に終始。被害者に対する謝罪の姿勢はまったく見られない。訴訟を考慮に入れたものではあるのだろうが、実際に小麦アレルギーに苦しむ被害者が、この文書を読んだときにどう感じるのか、という視点がまったく抜け落ちているのではないか。

 今回の事件は、同社が消費者からの信頼を失うだけにとどまるものではない。通販全体への不信につながるものだ。「きちんと治験はされているのか」「よく知らないメーカーでは何かあっても補償もままならないのでは」という疑念が湧くのは無理からぬことといえる。業種は異なるものの、例えばパナソニックは、かつて死亡事故を起こしたFF式石油暖房機の回収を呼びかけるCMをこの冬も放映している。こうした姿勢が消費者にどんな印象を与えるか、悠香は考えるべきだ。このままでは、通販各社が築いてきたブランドを壊すことにもなりかねない。

 これまで右肩上がりの急成長を続けてきた悠香。だが、そのおごりからリスク管理に甘さが出たとみることもできるのではないか。確かに、リスク対策は少なくない費用がかかるだけに、創業から間もない同社にとっては目を向けにくい部分だったのかもしれない。しかし、消費者からの信頼を失うのは一瞬のこと。他の通販企業は同じ轍(てつ)を踏まないようにしなければならない。

 リスク管理は、製品の安全対策に限った話ではない。例えば地震などの大災害でも事業を継続できるように備えなければならないし、通販サイトのセキュリティー対策も重要だ。常に最悪の事態を想定し、対策を練る。2011年は、通販企業にとってリスク管理の重要性を再認識する1年といえるのではないか。

「通販番組批判」など無視せよ

 改正放送法に伴う省令で総務省がテレビ局各局に課した「番組の種別ごとの放送時間の公表」が始まった。地上波およびBS各局は半年ごとに放送した番組を教養、教育、報道、娯楽、その他、通販の6種別に分けて、それぞれの放送時間を公表するよう義務付けられており、その初回の公表が11月初旬までに各局で行われた。それによるとBS局は総じて通販番組の放送割合が高く、最も多いのはグループの通販専門放送局のQVCジャパンの番組を流すワールド・ハイビジョン・チャンネル(WHC)で半数弱が通販番組だった。この数値を巡って、早くも「通販番組が多すぎる」などの声があがり始めているようだが、飛んだ茶番である。総務省や一部の消費者団体により恣意的に作られた「世間からの批判」などテレビ局は無視すべきだ。安易な自主規制など行なえば、それこそ思うツボである。

 番組の種別ごとの放送時間の公表は「通販番組が多すぎる」という一部の消費者や消費者団体からの意見に応じて、総務省が通販番組の総量規制を検討したが、民間の放送局の番組内容に注文をつけることは「表現の自由」を侵害する恐れもあるため、まずはあくまで次期BS放送の参入条件に限定するという形で「広告放送(通販番組)を全体の放送時間の3割以下にする」とし、総務省として「基準」を内外に示した上で、次の手として、改正放送法に伴う省令で番組種別ごとの放送時間の公表を各局に義務付けたわけだ。

 総務省はあくまで「放送法に定めのある『番組調和原則』の適正な履行を確保する目的で通信販売番組に対して何ら規制を課すものではない」とするが、放送法での番組種別は教育・教養・報道・娯楽とCMなどを含むその他と規定しており、通販は含まれていない。「通販番組」を単独で公表しなければならないとしていることからも、それはおためごかしに過ぎないことは明白だ。

 今回、公表された各局の通販番組の放送時間の数値を見て、特にそれがWHCのように総放送の半数近くを占めていれば、多くの人が「通販番組は多すぎる」と感じることは当然のことだ。総務省はそうした世間の声を世論として、放送局にプレッシャーをかけつつ、暗に示していた「通販番組は総放送時間の3割以下」という基準に地上波およびBS局を含めた既存のテレビ局を従わせたい考えだと見られる。

 これまでも繰り返し述べてきたが、通販番組であろうと何であろうと、番組の内容に行政が口出しすべきでない。通販の総量をどうするかは民間事業者であるテレビ局各局の自由だ。通販番組が視聴されず、売り上げも上がらなければ、おのずと通販番組はなくなる。通販番組が増えているということであれば、それだけ世間が求めているということだ。行政や一部の反対勢力により作り出された恣意的な「世論」を信じるか、市場原理で証明された「世論」を信じるか。過剰な自主規制で元気のない市況下でも成長著しいテレビショッピング市場の今後を潰すことなく、放送と通信の融合でますます密接な関係になりつつあるテレビと通販の両業界の発展を期待したい。

ネットの薬事違反に注意せよ

ネット販売企業のコンプライアンス意識が問われている。昨年、化粧品のネット販売専業大手イノベートが保健所から薬事法違反に基づく指導を受けたのに続き、同中堅のオズ・インターナショナルが今年9月、警視庁の一斉摘発を受け、薬事法違反で書類送検されたためだ。ネットの技術革新、消費者への普及を追い風に成長した2社の違反行為は、ネット販売業界の緩いコンプライアンス意識を印象づけるに十分なインパクトを持つ。行政や警察当局のネット上の違反行為に対する関心が高まる中、また、消費者のネット活用が進む中、市場の健全発展を図るため、ネットの広告表現に細心の注意を払う必要がある。

 オズ・インターナショナルは今年9月、警視庁から未承認医薬品であるED(勃起不全)治療薬の輸入代行に関する広告違反で書類送検された。オズは送検の事実に「送検されてない」と応じていたが、このことだけでも、同社のコンプライアンス意識の低さが窺い知れる。

 一方、イノベートは、保健所から輸入化粧品の一部に表示違反があった指摘を受け、自主回収を発表した。これと前後してスクロールが同社を買収。だが、買収の際に薬事法違反の事実を隠して利益をだまし取っていたとして今年10月、島根県警に元社長ら3人が逮捕されている。

 未承認医薬品の個人輸入は法律上、禁止されていないが、言うまでもなく健康被害の恐れがあるため、決して推奨される行為ではない。特に、ED治療薬は規制強化から今では個人がネット上で違法に売買するケースがほとんど。これら個人に混じり、中堅規模の売上高を誇るオズが摘発を受けたのは余りに情けない。

 イノベートにしても、輸入化粧品の表示違反は、本来、仕入れ先が貼るべき日本語訳の成分表示シールを化粧品製造業の資格を持たない同社が作成し、貼り付けていたこと。当時、60億円超もの売上高を誇っていた企業にしては有り得ないミスだ。

 事業者の中には、行政や消費者団体が主張する「ネット=悪」との図式に反感を覚える者もいるだろう。確かに、今回の違反も一部事業者によるものであり、これを持ってネット市場を一括りに判断はできない。

 だが、折しも、消費者庁では食品表示課が健康増進法に基づくネットパトロールを年1回から4回に増やし、表示対策課もアフィリエイト広告などへの監視強化を打ち出している時期。また、警察庁もサイバー犯罪対策に対する監視強化の大方針を打ち出し、全国規模で人員強化を図っている。今後、化粧品、健康食品を扱う事業者は、各県警の薬事法所管部署、薬事法監視が不十分な県警でもネットに関わる犯罪を監視するサイバー犯罪対策課の両部署から二重の網を張られることになる。

 これまで、ネット販売は参入が容易なことや販促コストが安いこと、コミュニケーションツールとしての利便性などメリットばかりが強調されてきた。だが、法令順守に対する確固たる信念がなくては、前2社に続く事業者が現われるのも時間の問題だろう。コンプライアンス意識の強化なくして、ネット販売市場の発展は有り得ない。

単品通販の脆さを認識せよ

悠香の自主回収を巡る騒動の拡大は、企業が「製品回収」という事態に見舞われた際、どのように消費者対応すべきかの教訓を残し、また、消費者の"安心・安全"に対する要求が高まる中、品質保証がいかに重要なものになっていたかを再認識させるものだ。一方で業界サイドからすれば、これまで通販市場で強いとされてきた"単品通販モデル"の思わぬ脆さを露呈させたものでもあった。

 悠香は2008年(6月期)に約100億円、09年に同200億円、10年に同300億円と破竹の勢いで業績を伸ばしてきた。その姿は通販という業態の特性を活かし、潜在的な顧客ニーズに訴えかける強い単品商材を仕掛けていくことが、新たな市場を創出する可能性を秘めていることを業界内外に示しもした。

 昨年12月にはこれまで顧客要望を受けて販売してきたトイレタリー関連12アイテムの販売を終了。その決断に至る中山慶一郎社長の「集中こそが力を生む」という考えも単品通販モデルに欠かせない、根幹の理念を示すものであった。

 だが、今年5月の自主回収で悠香を取り巻く状況は一変した。厚生労働省の回収発表以降、7月の国民生活センターによる会見、8月に始まった全国の都道府県における被害者弁護団の結成、9月の国センによる2度目の会見と、そのたびに消費者はリマインドされ、「茶のしずく石けん=悠香」で知られたブランドイメージは著しく毀損された。11年6月期の業績は10~20%減の見通しを示していたが、いまだ新規獲得に向けた広告再開のメドも立っていない。業界関係者によると、今年4~7月の売上高は一説に前年同期比40%減で推移したとも言われる。

 キャッシュインの正常化のメドが立たない中、一方でキャッシュアウトの状況は、数百人いる従業員の人件費など固定費に加え、被害を訴える顧客への見舞金、また、全国の被害者弁護団と訴訟に発展した場合の裁判費用など後を絶たない。その影響の大きさも単品商材に拠って立つが故の脆さだろう。

 ただ、同様のリスクは単品通販を展開する他の通販各社にも例外なく起こりうる事態といえるのではないか。新興の企業であれ老舗企業であれ、消費者から見た企業の姿は同じ。社歴の浅さを理由に品質保証を疎かにしていたことが許されるものではない。

 化粧品業界に限らず、通販市場は今、異業種からの新規参入により競争激化に晒されている。その中にあって"単品通販モデル"は通販という業態の特性にマッチした事業モデルであり、その戦略は異業種との競争を勝ち抜いていく上でも有効に働くであろうことに変わりはない。

 だからこそ、通販各社は今後品質保証体制を再度点検することでリスクへの事前の備えとし、また、仮に自主回収など不測の事態に発展した際の企業対応のあり方を今一度見直さなければならないのではないか。

 また、一企業の甘い認識が自社への影響に留まらず、ようやく社会的認知を得てきた通販業界に対する消費者の信頼すら脅かしかねないものであることも忘れてはならない。

有店舗小売のネット販売戦略に注目

 本紙姉妹紙の「月刊ネット販売」が実施した2010年度のネット販売売上高調査によると、上位300位のネット販売売上高合計はおよそ1兆9400億円で前回調査から約15%伸びた(今月25日発売の月刊ネット販売10月号にランキング表を掲載)。この調査結果を見て印象に残ったことの1つは、EC市場における有店舗小売業の存在感の増大だ。2010年度は不況や震災の影響で伸び悩んだネット販売実施企業は少なくないが、イトーヨーカ堂やユニクロ、丸井、ヨドバシカメラなど多くの有店舗小売業者が安定的にネット販売の売上規模を拡大させている。

 無論、世間的にも知名度が高く、「小売り」としての元々のポテンシャルもそもそも高いわけで、ネット販売でも売り上げを伸ばすことは当然と言えなくもない。実際、ネット販売の黎明期から「クリック&モルタル」という言葉に代表されるように、有店舗小売業者はネット販売においても大本命の有力プレイヤーと目されてきた。しかし、その実、前評判ほどの実力が発揮されることはなく、長らく「ネット上における小売り」の主役はアマゾンや楽天市場に代表されるネット販売専業者、仮想モール運営者であった。

 「ネット上の小売り」においては、これら新興企業の後塵を拝す結果となっていた1つの理由として考えられるのは、有店舗小売業者特有のネットに対するスタンスだ。結局のところ、彼らにとってネットは、あくまで本業である実店舗ビジネスの「広告宣伝」であり、通販サイトや通販戦略に必要な経費は、来店促進として出稿する新聞折込チラシやテレビCMと同じ捉え方だった。「クリック&モルタル」などと言葉では言ってはいても、実際のところ、店舗を中心に据えた長年のビジネスやそれに伴う考え方から、そうやすやすと抜けられるものではなく、「その先」まで考えが及ばないでいた事業者が多かったように思われる。

 それがここにきて、ネット販売市場において有店舗小売業者が存在感を見せ始めたのは時代の要求はもちろんのこと、これまでの手痛い失敗や上層部と現場との軋轢を乗り越えようやく有店舗小売業者としてのネットの活用の仕方が分かってきたためだろう。あるGMSは通販サイトでの実績データを活用し、売れ筋を実店舗でも専用コーナーを設けて販売し店舗においても売れ筋に。有力セレクトショップでは戦略商品をネットで先行予約販売し実店舗での本格展開を前に仕入れ量などを見極めるための重要な指標として活用し効果を上げているようだ。あるアパレル企業は通販サイトで気になる商品を顧客に選んでもらい、当該商品を指定する実店舗に取り寄せて実物を店舗で確認できる仕組みを始め、好評を得ているという。

 ネット上の小売りでは独走態勢にある「アマゾンの天下の揺るがない」という見方もあるが、本来、小売りとして強力な力を持った有店舗小売業各社がネットを使いこなし始め、既存の通販企業もまた新たな次の一手を模索し始め、成果を上げ始めている。今後、ネット販売市場の勢力図がどのように変化していくのか。まだまだ目が離せそうにない。

消費者委は過ちを繰り返すな

「とんだ茶番」ではないか。今年8月にまとめられた消費者委員会「健康食品の表示の在り方」に関する中間整理に係る審議のことだ。審議は2009年~10年にかけて消費者庁で行われた「健康食品の表示に関する検討会」の論点整理を受けて始まった。健食表示の効果的な規制のあり方について、具体策を提示するのが狙いだった。だが、示された提言には、先の検討会で退けられた意見が蒸し返されたとしか思われないものが散見される。いずれも消費者目線を自認する消費者団体や弁護士の"願望"に近いものだ。

 消費者委による審議には当初から懸念が示されていた。審議を行う委員会メンバーの多くは健食についてさしたる知識を持ち合わせていないためだ。継続審議を行うこと自体、事業者出身の委員自ら「企業経営の立場で言えば物事を決める際、継続審議という形で委員会が引き継ぐのはおかしい。消費者庁と委員会で重複するテーマを整理すべき」と指摘するほどだ。

 それだけではない。委員会にヒアリングで招かれたのも、検討会に参加した日本通信販売協会、日本健康・栄養食品協会、日本医師会、国民生活センター、食の安全・監視市民委員会代表の神山美智子弁護士など見た顔ばかり。健食に関する知識は消費者委メンバーより深く、審議は最後まで健食に対する理解を深める勉強会の域を出なかった。

 異なる点と言えば、審議するメンバーが消費者団体や弁護士などに偏りがみられること。そんな委員会審議だから、まとめられた中間整理も消費者団体が検討会で主張していた意見が公然と提言に盛り込まれた。

 一例を示そう。中間整理では、効果的な規制のあり方に向けた提言として食品衛生法の改正が盛り込まれた。「表示」のみ対象とする食衛法の規制対象を「広告」にまで拡大するというものだ。これは神山美智子弁護士が持論としているもの。検討会でも同じ主張がされたが、一方で健食の誇大広告は薬事法、特定商取引法、健康増進法、景品表示法など複数の法令が重複して規制対象としており、運用面の充実を図るとの観点から論点整理に盛り込まれなかった。

 同じく今後の検討課題とされた事故情報の報告義務化と消費者からの申し出制度の導入。これも検討会に参加した山根香織主婦連合会会長が主張していたものだが、論点整理に含まれていない。にもかかわらず中間整理に盛り込まれたのは、同じ主婦連合会の佐野真理子事務局長が消費者委メンバーに加わっているためだろう。

 自らの信念や所属する団体の総意を示したいのであれば、「消費者委」の看板を借りるべきではない。消費者、事業者双方の意見を踏まえ大局的見地から消費者視点を語り得ず、「消費者委」という権力をあからさまに利用するこれら団体に、消費者委として活動する資質があろうか。

 今の時代、消費者目線を重視するのは、何も消費者団体ばかりではない。消費者委は8月末で解散となり、メンバーは任期を終えた。次期メンバーには前メンバーの失敗を教訓とし、二度と同じ轍を踏まないことを願いたい。

薬通販訴訟の控訴審判決急げ

一般用医薬品通販の規制見直しに向けた環境が徐々に整ってきた。この問題を巡っては、今年3月の規制仕分けで安全性の確保の具体的な要件の設定を前提にビタミン剤などの第3類以外も含めた医薬品通販の合理的な規制を検討すべきとの評価結果が出されており、7月22日には、政府が「規制・制度改革に係る追加方針」を閣議決定し、今年度中に医薬品通販の合理的な規制の在り方の検討に着手する方向となった。こうした状況を受け、医薬品通販の規制推進派だった日本チェーンドラッグストア協会が9月にも独自に検討会を立ち上げる意向を示すなど、規制に直しに伴う一般用医薬品通販のルール作りに向けた動きが活発化しつつある状況だ。

 医薬品通販規制の見直しについては早急に検討に着手することが望まれるが、その方向性を考える上で注目されるのは、医薬品ネット販売を行うケンコーコムとウェルネットが国を相手取って提起した行政訴訟の行方だろう。

 この行政訴訟は、ケンコーコムなどが第2類以上の医薬品ネット販売を禁止するのは違憲などとし、当該省令の無効・取り消しや医薬品ネット販売を行う権利確認などを求めているもので、1審は国側に都合のいいネット販売と対面販売の優劣論に終始し、原告側が全面敗訴となった。しかし、控訴審で東京高裁は、1審の論点を軌道修正し、立法事実に基づいた規制自体の合理性や妥当性を焦点とする方針を提示。これはケンコーコムなど控訴人側が当初から主張を展開しようとしていた論点であり、今後、医薬品通販のルール作りの検討を進める上でも少なからず影響することも考えられる。

 だが、東京高裁が目指していた夏休み前の判決は遅れているのが現状で、8月30日の段階でも判決期日は決まっていない。裁判所側からすると規制の違憲性を問う行政訴訟であるだけに、慎重に審理を進めているのかも知れない。無論、それは重要なことだが、理不尽な規制で消費者や、医薬品を扱う通販・ネット販売事業者が不利益を被り続けている現状を考えれば、東京高裁は司法の責任として、早期に国の誤った規制を正す判決を下すべきだろう。

 当初、今年5月末に期限切れとなるはずだった経過措置が2年間延長され、第2類医薬品の通販・ネット販売はかろうじて継続できている。だが、販売対象は継続利用者や離島居住者など極めて限定的で、この状況が続けば、消費者の利便性を損ねるだけではなく、通販に依存する伝統薬通販事業者、あるいはネット販売に活路を求める医薬品販売事業者の経営が悪化していくことにもなる。こうした状況を避けるためにも、早急に医薬品通販のルール作りの検討を始め、少なくとも現行の経過措置のうちに安全性を確保した制度を整えなければなるまい。

 行政訴訟については、控訴人、被控訴人とっていかなる控訴審判決が出ても最高裁で争われる可能性が高く、法的な決着がつくまでには時間を要すると見られるが、医薬品通販のルール作りの本格的な検討に向けたひとつの足掛かりとして、早期の控訴審判決が望まれる。

BS局は二度と通販に頼るな

 BSの番組表から通販番組が少しずつ姿を消しつつある。無論、まだまだBSでの通販番組は多いが、昨年までの番組表と比較すると、減少傾向となっているkとが分かるだろう。今後もこうした流れは加速していくと見られる。これは放送法改正に伴い、今年から施行される総務省の省令に起因しているようだ。当該省令ではテレビ局各局に教養、報道、通販などの放送番組の種別ごとに放送時間を公表するよう義務付けており、まずは初回公表の10月を前に、特にBS各局は番組編成から「通販」を締め出そうと躍起のようだ。

 ただ、この省令自体は別段、通販を規制しようというものではない。単にテレビ局に現状の番組編成の番組の種別ごとの時間配分を公表せよ、というだけのものである。無論、放送法には各ジャンルの番組をバランスよく放送し調和を保つことを求める「番組調和原則」が規定されているが、特定の番組種別が多かったとしても罰則があるわけではない。

 つまり、この省令自体が通販を規制しているのではなく、BS局が自ら通販番組の総量規制を行うためのあくまで"きっかけ"に過ぎないと見る向きもある。BSは今でこそ広告媒体としても価値が高まりつつあるが、少し前までは視聴世帯数が伸びず、一般企業の広告がなかなか入らないといったBS局の厳しい経営を支えてきたのがBS枠を買い、テレビ通販を行ってきた通販企業であり必然、BSで通販番組が多く放送されることになったわけだ。

 今回の省令により、番組種別公表の際、「"通販依存の体質"について、消費者団体などから出るであろう『通販番組が多すぎる』との批判をかわしたい」というのが通販の総量規制を自主的に行っているBS局の主な言い分だが、省令はあくまで口実に過ぎず、「テレビが汚される"通販"を入れたくない」というテレビ局側の思惑がある、との声が一部から漏れ伝わってくる。

 要は媒体価値の高まりから一般企業の広告も入り始めた現状を踏まえ、この際、切りにくかった通販を排除すべく、省令を口実に一気に通販を締め出してしまおう、ということらしい。無論、BSの媒体価値が高まったこともあろうが、BSの通販枠代が今春に大幅に上昇、今秋からもさらに値上がりが続いているのもこれに関係するのは、と見る関係者もいる。ある通販企業の幹部は現状のBSを「尋常ならざる強気の単価」と評し「嫌なら買わなくて結構と言われているようだ」と話す。

 民間事業者であるBS局が自らの判断でどんな戦略を採り、何を放送しても誰からも何ら文句を言われる道理はない。苦しい時代にBS局を支えた通販はもう必要ない、とばかりに意図的に排除したとしてもだ。であればテレビ通販企業もまたBS依存から今こそ脱却すべきだ。「一定の視聴世帯数がいる割に枠代が安く費用対効果が良い」というBSで通販を行うメリットはすでになく、BSに固執する必要はあるまい。

 BS各局にはむしろ、多方面から批判を浴びぬよう通販に二度と依存しない収益体制を築いて欲しい。インターネットを始めとする新たな広告媒体の登場やテレビ離れなどで圧倒的な視聴世帯数を誇る地上波の在京キー局でさえも広告収入が目減りし苦戦する中、BS各局が通販を抜きにどう収益を安定させるか、お手並みを拝見したい。「またダメなら通販に」という虫のいい話ならごめん蒙りたい。

中国との協議の準備を進めよ

日本企業の中国市場への参入意欲が依然旺盛だ。通販・ネット販売においても、中国で事業を開始する企業が後を断たないが、日本企業の中国ネット販売支援事業者によると、東日本大震災発生の以降、国内のメーカーや小売事業者などから、中国でのネット販売の展開に関する相談が急速に増えているという。未曾有の被害を出した今回の震災では、被災地の復興までにかなりの時間を要するとされ、さらに出口の見えない原発問題など、長期的に消費マインドを停滞させる要因が横たわる。こうした日本市場の先行きの不透明感が、国内企業に中国進出を急がせているようだ。

 中国市場の成長性については、以前から指摘されてきたが、経済産業省が6月初旬に発表した日中間の越境EC調査は、改めてこれを裏付けるものとなった。

 同調査によると、過去1年間に越境ECを利用したという中国消費者の回答は58・7%に達し、日本企業の通販サイトを1カ月に1回以上利用しているという回答が6割以上を占めた。今後の越境ECの利用意向についても、「利用したい」という回答がおよそ8割になるなど、中国消費者の消費熱や越境ECに前向きな姿勢をうかがわせる内容だ。経産省でも、2020年の日中間の越境EC市場は、最大1兆2600億円規模になる可能性があると予測する。

 ただ、この経産省の予測は、かなりの期待値を含んだもので、少し割り引いて見るべきだろう。無論、今後、中国ネット販売市場が拡大していくことはほぼ間違いないが、その触れ幅は、以前から指摘されている通関手続きや、商標権の問題、地域によって異なるローカルルールの問題など、制度的なものも含めた環境整備の進捗度合いによって左右される。これらは、ネット販売の別に関係なく、日本企業が中国市場で事業展開を行う上でネックとなる事案であり、その解消が不可欠だ。

 経産省でも昨年、中国側と制度整備などに関する協議を行うことで合意しており、ネット販売を担当する情報経済課では、百貨店やGMSなどを所管する流通政策課と連携し中国側との協議に臨む考えを示していた。だが、今年3月に予定されていた流通政策課と中国側との協議は、東日本大震災の発生で中止。情報経済課では現在、海外向けの放射線関連などの情報発信サイトの構築など国内ネット販売事業者の支援を優先させており、中国との協議については、具体的な時期は明確になっていない状況だ。

 無論、風評被害などに苦しむ国内ネット販売事業者の支援は大切なことである。一方で、震災発生以降、中国でのネット販売を志向する企業が増えている現状を考えれば、中国市場の環境整備も早急に手当しなければならない案件のはずだ。これについては経産省でも認識しており、今年度中に協議を行う意向だが、中国側との連絡も覚束ない現状のままでは、中国側の態度が冷え込むことも懸念される。被災地の産業復興や、原発問題など、経産省が取り組むべき課題が多いが、事業者の次の成長のためにも、早期に中国側と協議に入る準備を進めるべきだろう。

通販にクーリングオフは不要

 欧州各国で通販にクーリングオフ制度が導入される見通しのようだ。欧州連合(EU)は加盟各国でこれまでバラバラだったクーリングオフ期間などについて統一したルールを策定。消費者は商品購入後、14日以内であれば原則、無条件で契約解除が可能で返品できるというものらしい。さらにこのクーリングオフの権利を通販事業者が消費者に通知していなかった場合は契約解除の期間が1年間に延長されるという。

 こうした欧州の動きについて「ネット販売が一般化しつつある今、消費者保護の観点からも時代にあったよい制度だ」「通販にクーリングオフを導入することで消費者が安心し逆に通販・ネット販売の市場は伸びる」などの声が日本国内でもあがっているようだ。しかし、言うまでもなく通販におけるクーリングオフ制度などまったく不要である。欧州の動きや「消費者保護強化」という美名のもとに日本の行政や政治家が変に触発され、「日本でも...」という愚行を犯さないことを願うばかりである。

 そもそもクーリングオフとは訪問販売や電話勧誘販売など販売員が不意打ち的に接触し、商品を購入してしまった際に適用されるものだ。不意打ちでは商品購入を十分に検討する時間がないためだ。一方、通販の場合は消費者自身が時間をかけてどの商品をどの事業者から購入するかを自ら決定できる。そういった意味からすると、通販は店頭で商品を購入するのと何ら変わりはない。店頭での買い物にクーリングオフがない以上、通販においても不要だということだ。なお、09年に施行された改正特商法であらかじめ返品の条件を明示していない場合、通販で購入した商品でも8日以内であれば返品できる返品特約が盛り込まれたがこれはクーリングオフではない。

 大手の総合通販事業者は以前から、近年では有力ネット販売事業者でも独自のルールを設けて、返品返金に応じているが、これはあくまで企業としての販売戦略の一環である。個別の企業が自らの意思や戦略に基づいて、返品対応を行うことは無論、当該企業の自由である。一部の通販事業者が実施している購入後にサイズが合わなければ何度でも返品交換ができる、試着のようなサービスは通販の欠点である「実際に手にとって商品を確かめられない」というデメリットを解消する非常に有効な施策であるとさえ言えるだろう。

 しかし、法律で強制的に無条件で返品に応じろ、ということになると話は別である。事業者に著しい負担を強いることになるからだ。前述のようにすでに自社のサービスとして返品対応を行っている大手通販にしても独自のルールに基づいて運用している訳で、再販できない状態での返品には応じていないはずだ。体力のある大手通販ではそれでも何とか対応できようが、中小規模の通販事業者は到底、持ちこたえることはできまい。結局はそうしたコスト負担は価格に転嫁され、事業者にとっても消費者にとっても何ら利はない。クーリングオフ導入が通販市場の発展につながるなどは、まさに絵空事だ。欧州のことは知らないが繰り返すが少なくとも日本においては通販にクーリングオフは不要である。

JPは顧客視点の意識を持て

郵便事業会社(JP)は今年度の事業計画で、採算性が悪化している「ゆうパック」について、抜本的な事業運営体制の見直しを盛り込んだ。「ペリカン便」との宅配便事業統合を受けて構築した宅配便の輸送網を白紙に戻し、郵便物との混載による効率化などを骨子としたもので、JPはこれにより年間300億円程度のコスト削減を見込む。6月から本格的な検討作業に入っている状況だが、並行して進めている荷主企業への運賃単価引き上げ交渉が、通販荷主離脱の引き金になりそうだ。

 今回、JPが打ち出した「ペリカン便」の採算性改善策は、かなり思い切ったものと言える。もともと宅配便を郵便物と別立てで輸送する仕組みとしたのは、荷物の送達速度を速め、サービス品質を向上させることにある。これに対し、郵便物と宅配便の混載は、以前の「ゆうパック」のスキームに戻すものだ。理屈上、荷物と郵便物との混載でコスト削減が進むのは確かだが、このスキームは送達速度が遅くなるなど、サービス内容の後退を伴うことになる。

 通販関連の荷物が増加する中、宅配便各社が商品を受け取る顧客を重視したサービス品質の向上に取り組んでいる状況を考えれば、JPが打ち出した施策はこれに逆行する。言い換えれば「ゆうパック」は、宅配便としての競争力を落としてでも収益を回復させなければならない状況にまで追い込まれているわけだ。

 この要因と言えるのは、昨年7月の「ペリカン便」との統合直後に発生した大規模な遅配問題だろう。この際には、産直品を扱う通販事業者では商品がダメになるケースもあり、新生「ゆうパック」のサービス品質に不安を感じさせるものとなった。この大失態は、荷主である通販事業者の離脱を招いただけではなく、遅配による損害の補償、中元期のように失敗が許されない歳暮期を乗る越えるための体制整備など多方面に影響が及んだ。荷主企業の離脱による取扱荷物の減少と想定外の出費が重なり、収益性の悪化が進んだことは想像に難くない。統合段階における準備不足、遅配発生直後の対応の甘さが仇となり、大きな代償を支払うことになったわけだ。

 一方、今回の収益改善策では、荷主企業に対する運賃単価の引き上げ交渉を盛り込み、JPでもすでに通販などの荷主企業との交渉を進めている。だが、昨年の遅配問題に起因したサービス品質への不安、郵便物との混載輸送に伴う基本サービスレベルの低下を考えれば、荷主企業が単価の引き上げに応じるとは考えにくい。実際、単価引き上げの話を受けた通販事業者の中には、他の宅配便への切り替えを検討しているところもあり、「ゆうパック」の通販荷主離れは避けられない情勢だ。

 再三にわたる統合計画の遅れ、大規模な遅配と散々迷惑をかけた挙句、そのツケを荷主企業に払わせようという構図は、通常の感覚で考えれば明らかにおかしく、顧客サービスを重視する通販荷主が離れていくのも当然だ。JPは、なりふり構わぬ採算性改善策で「ゆうパック」の存続を考える前に、顧客の視点に立ったサービス提供の重要性をしっかりと心に刻むべきだろう。


高裁は国の過ちを是正させろ

第2類以上の医薬品ネット販売を禁止するのは違憲などとし、当該省令の無効・取り消しや医薬品ネット販売を行う権利確認などを求め、ケンコーコムとウェルネットが国を相手取り提起した行政訴訟の控訴審が4月28日に結審した。1審で東京地裁は、ネットは対面に優位に劣るとし、原告全面敗訴の判決を下したが、国の論点すり替えに翻弄され、国に都合の良い対面とネットの優劣論を盲目的に支持した1審判決はやはりおかしい。これに対し控訴審では、裁判所側が立法事実に基づいた規制の是非を論点とする方針を打ち出しているが、高裁には適切な司法判断を望みたい。

 まず、今回の医薬品ネット販売規制で指摘しなければならないのは、あまりにも矛盾点や問題点が多いことだ。厚労省の検討会では、ネット販売事業者が蚊帳の外に置かれ続け、対面の原則を錦の御旗に掲げる薬業団体等の規制推進派の根拠のないネット危険論が横行し、ネット販売の安全確保策などの実態が十分に検証されることはなかった。

 実際の販売制度を見ても、対面ではないネット販売は危険としておきながら、副作用リスクが高く店頭では専門家による対面での情報提供が義務付けられている第1類医薬品が代理人でも購入できるのは、対面の原則と矛盾する。また、店頭での実態を見ると、日本薬剤師会幹部が運営する薬局が代理人に対し第2類医薬品の通販を行っていた事例が報告され、厚労省が行った調査では、第1類医薬品販売時に情報提供を行っていた店舗が5割程度しかないなど、対応が徹底されていない実態もある。矛盾に満ち運用もままならないような医薬品販売制度は、"ざる"としか言いようがあるまい。

 そもそも、それまで容認していた医薬品ネット販売を規制するのであれば、その理由、すなわち立法事実があってしかるべきだ。しかし、厚労省や規制推進派が指摘してきた問題は、海外通販サイトで購入した健康食品の健康被害や麻薬事件などで、議論の対象となる正規の医薬品販売許可を得たネット販売に起因する副作用事故の事例は皆無に等しい。

 仮に予見的な見地で規制するにしても、根拠となるデータが必要なはずだが、先の規制仕分けで対面販売の方がネット販売よりも副作用の発生が少ないとする根拠を追求され、厚労省はデータがないと回答した。つまり、医薬品ネット販売を禁止する明確な理由がないわけだ。

 これだけ見ても今回の医薬品ネット販売規制は、かなりの問題をはらんでいる。それにも関わらず、国の論点のすり替えに同調し、安易にネットが対面に劣るという判断を下した1審判決は、裁判所の思考停止による産物としか言いようがない。

 控訴審で高裁は、医薬品ネット販売に対する規制前後の問題、情報伝達や副作用事故発生の実態などについて、ケンコーコム等と国に釈明を求めている。国側は依然、論点のすり替えを続け、中には全く答えていない釈明事項もあるようだが、そもそも裁判所が提示した論点にも答えられないような規制はおかしい。高裁は、司法の責任として国の過ちを是正させなければならない。

震災復興に貢献し存在を示せ

東北地方太平洋沖地震の発生から約1カ月が経過した。未曾有の被害をもたらした今回の震災では、依然、多くの被災者が不自由な生活を余儀なくされ、福島第一原発の放射性物質漏れ事故の不安がつきまとうなど、状況が落ち着くまでには、まだ時間がかかりそうだ。すでに通販事業者も義援金の寄付や必要な物資の提供など、被災地の支援に取り組んでいるが、今後の被災地復興に向けた道筋を確実なものとしていくために、通販がどのように貢献していくかを考える必要もあろう。

 大規模な震災で、まず思い起こされるのは、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災だろう。この際にも建物の多くが倒壊し、多数の死者を出すなど、甚大な被害をもたらしたが、その中で、ろうそくの火を灯し営業を続けるコンビニエンスストアの姿が報じられた。自らも被災しながら、それでも営業を続けたのは、24時間年中無休の地域に密着した業態としての使命感にほかならない。物資の供給が滞り、満足な品ぞろえができる状態ではなかったが、この際に被災者のひとつの拠りどころとなり、存在感を印象付けた。

 今回の東北地方太平洋沖地震災では、予想をはるかに超える規模の津波が家屋を飲み込み多くの犠牲者を出すなど、阪神・淡路大震災とは状況は異なっている。その中で被災者の拠りどころとしての役割が期待されるのは、阪神・淡路大震災発生当時とは比べ物にならないほど進歩したインターネット等の通信技術だろう。実際、震災被害や計画停電の実施状況などの情報発信で既にネットが積極的に使われ、支援物資の供給でも、支援団体が被災者から必要としている物資を聞き取り、ネット上で公開する試みが行われている。被災地ではネットを利用できる環境がまだ整っていないようだが、まず被災者が必要とする情報や物資を得られるようにするためにも、水道や電気、ガスなどと同様にネット利用環境の復旧は急務だろう。

 また、今後の復興の過程を考えても、ネット利用環境の整備は重要になるのは明らかだ。経済産業省によると、時間の経過とともに被災者が必要とする物資が変わり、多岐にわたっており、支援物資の受け付けや避難所への割り振りを行う各県では、限られた人員の中で被災者のニーズに対応した物資の調達・供給が難しくなりつつあるという。

 今後、被災者に対する物資の供給を担うのは民間の事業者になっていくわけだが、箱物を必要とする有店舗の本格的な営業再開に相当の時間を要することが見込まれる。経産省でも次の復興のステップで被災者が必要な物資を入手できるようにするためには、通販やネット販売の活用が不可欠と見ているもようで、関係者によると一部のネット販売事業者に意見聴取を行っているという。つまり、行政側でもネット販売が果たす役割を重視しているわけだ。

 今回の震災の影響で経済の停滞も懸念されているが、被災地の復興や消費の活性化などの面で、通販が貢献できる場面は多分にある。通販各社も自らの特徴を活かし何ができるのかを考え、存在感を示していく必要があろう。

通販各社は復興支援に力注げ

 3月11日に東日本を襲った東北地方太平洋沖地震だが、日が経つにつて甚大な被害が明らかになってきた。亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに被災された地域の皆様にはお見舞いを申し上げたい。まずは被災地域の救済と復興が急務となるがこれに通販業界は一役を担うことができるように思う。そしてそれはすでに動き始めているようだ。

 救済に関しては震災後すぐ多くの通販実施企業から義援金や支援物資の提供の申し入れが相次いでいる。千趣会やニッセンなどカタログ通販大手はもちろん、中堅規模のネット販売企業なども少なくない義援金や衣料品などの支援物資の寄付を決めている。また、ジャパネットたかたは充電式電池セット1万個の提供や義援金5億円とは別に、3月16日にテレビ東京の午前枠の通販番組で紹介した液晶テレビなどの売り上げをすべて寄付。そして、まだ、被災地への支援を行っていない通販企業の多くも現在、支援策を検討している模様で「支援の輪」は今後も広がっていくようだ。

 また、通販というビジネスの特性を利用して全国の顧客に対して、義援金を募る活動を開始しているところも増えつつある。フェリシモではネット受付専用フォームで義援金募集を開始。マガシークも通販サイト内でクリック募金の窓口を開設した。ジュピターショップチャンネルは通販番組内で視聴者に募金を呼びかけることを決めた。こうした活動は全国で多くの消費者を相手に様々な売り場でビジネスを行う通販企業ならではのものと言え、継続的な活動を期待したい。

 さらにそうした義援金だけではなく、通販企業はビジネスを通じて、被災のあった方々の復興のための支援ができるはずだ。被災された方々が再び元の日常を取り戻すためにはまずは震災で失ってしまった家財道具が必要であろう。ただし、そうしたモノを買いそろえるための店舗が復興の過程では少なく、当該地域では需給バランスが取れず、必要なものを手にできない方々も出てくるはずだ。その際、そうしたニーズを解決できるのは、やはり無店舗で場所の制約を受けず、豊富な商品を消費者に提供できる通販企業なのではないか。

 現状はまだ、東北地方の物流インフラは混乱をきたしてはいるが、政府は復興対策予算をすぐに成立させるはずで、遠くないうちに一定の回復を見せるであろう。通販企業各社にはその際には是非、これまで培ってきた良い商品を少しでも安く提供できる商品調達能力などの底力を見せて欲しい。

 この未曾有の大震災はようやく回復の兆しを見せ始めていた日本経済に大きな打撃を与えることは必至だ。東日本という大きな商圏のダメージに加え、全国的な震災に伴う消費マインドの冷え込みを勘案すると通販各社にとって今後、厳しい局面が続くことになるかも知れない。しかし、そうした悲観を吹き飛ばし、通販各社は被災地の救済と復興に力を注いで欲しい。それがひいては震災で甚大なダメージを受けた日本経済を再び立て直すための一番の近道になるはずだ。

早急に安全策の検討を始めよ

行政刷新会議は3月6、7日に開催した規制仕分けで、安全性確保策の設置を前提に医薬品通販の規制を見直し、その結論が出るまで、5月末で期限切れとなる経過措置を延長すべきとの評価結果をまとめた。これにより、6月以降、離島居住者や継続購入者が通販・ネット販売で第2類医薬品が購入できなくなるという最悪の事態が回避され、ネット販売継続の具体的な検討の芽も出てきそうだが、規制仕分けの議論の中で、平野達夫内閣府副大臣(規制改革担当)から、気になる発言が出された。ネット販売の台頭は、中小の薬局・薬店の経営に影響を及ぼすのではないかというものだ。

 平野副大臣は、医薬品を購入する場合、個人的には安心感のある対面を選ぶとし、だからこそ対面での情報提供を徹底してもらいたいと厚労省側に指摘。その上で、全国の消費者を相手にするネット販売はツールとしてパワフル過ぎ、小さな地域を商圏とする薬局・薬店が経営していけなくなるのではないかとの見方を示した。

 今回の規制仕分けでは、産業振興策的な角度から医薬品通販規制の是非を問うものではなく、薬局・薬店の経営に関する平野副大臣の発言は、いわば副次的なものとは言える。だが、敢えて産業振興策的な面から考えれば、ネット販売と薬局・薬店を対抗軸的に捉え、ネット販売の存在が薬局・薬店の経営の危機にさらすという見方は、一面的で早計だと言わざるを得まい。中小の薬局・薬店にとってもネットが新たな事業機会を創出するツールになり得るからだ。

 実際、中小の薬局・薬店が地域に密着し、懇切丁寧な情報提供や相談応需で支持されているとするならば、その特長をネット販売でも活かせる場面は多分にある。それに消費者も自らの健康に関わる医薬品を購入するのなら、対応がより丁寧で安心して利用できるサイトを選ぶはずだ。評判の良いサイトであれば、くちコミが広がり、全国の消費者を相手にすることもできる。ネット販売が必ずしも薬局・薬店の経営を脅かすものでないことは明らかだろう。

 規制仕分けの場で厚労省は、海外サイトで購入したダイエット食品に含まれた医薬品成分で健康被害が発生したなどの事例を挙げ、改めてネットでは安全性が確保できないと主張したが、そもそも議論の対象は「薬事法」で規定された一般用医薬品を正規の許可を得た薬局・薬店がネット販売を行う際、どうすれば安全性を確保できるかにある。この点については仕分け人も追及したが、"ネット性悪説"に立ち、悪戯にネットは危険と印象付けるようなことをするのは、中小の薬局・薬店にとっても、好ましいことではあるまい。

 安全性確保策がしっかりと担保された多様な医薬品の購入手段を用意し、消費者が自らの状況に応じて選択できるようにすることは、厚労省が掲げる"安心で安全な薬を円滑に届ける"ことにもつながる。医薬品ネット販売の禁止で、医薬品の入手が困難になる消費者がいる現実、さらに今後の薬局・薬店の経営という産業政策的な視点から考えても、医薬品ネット販売の具体的な安全確保策の検討を早急に始めるべきだ。

仕分け人は薬通販規制の矛盾突け

内閣府行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会(分科会)が「第2次報告書」案をとりまとめ、約250の規制改革提案項目の中に、通販で扱える一般用医薬品をビタミン剤などの第3類医薬品に制限する医薬品通販規制問題を盛り込んだ。各規制改革項目を所管する省庁と協議を行い、2月下旬に開催される行政刷新会議で「規制仕分け」の対象項目を決める段取りだが、対面の原則を盾にネット販売を危険視するこれまでの厚生労働省の対応を見る限り、医薬品通販規制の問題が「規制仕分け」の場に持ち込まれる可能性は高そうだ。

 分科会は報告書案の中で医薬品ネット販売規制について、特に問題のなかった通販・ネット販売の規制は、消費者の利便性を損ね、事業者間の公平性を阻害しているほか、対面販売の現場でも必要な情報提供が徹底されていないなど制度が定着していないと指摘。規制改革案として、販売履歴の管理や購入量の制限など安全性を確保しながらネット等で医薬品を販売できるルールを制定すべきとしている。これらは医薬品を扱うネット販売事業者などがかねてから主張してきたことで、正当な意見と言えるだろう。

 医薬品通販規制については、これまでにもネット販売事業者や厚労省担当者、規制賛成派の薬業団体関係者などを交えた公開討論などが行われているが、マスメディアや国民の関心が高い「規制仕分け」の場で議論されることのインパクトは強いと言える。分科会事務局側でも、過去に購買履歴のある顧客などへ暫定的に第2類医薬品のネット販売等が行える経過措置が今年5月に期限切れになることを踏まえ、厚労省側に規制緩和を強く求めていく構えを見せている。国民の生活に直結する問題という点からも、医薬品ネット販売規制の問題は「規制仕分け」の目玉になるはずだ。

 厚労省側では、対面でなければ副作用リスクを伴う医薬品の販売で安全性を担保できないという立場で医薬品通販を規制したわけだが、実際には規制根拠が曖昧で、対面で情報提供が徹底されていないという実態もある。また、医薬品通販規制を巡る一連の議論では、確信犯的な悪質事業者と医薬品販売免許を持つ薬局・薬店の混同など様々な矛盾点があり、いたずらにネットを危険視するだけで、医薬品ネット販売事業者が行っている安全性確保策が検証された形跡さえないのが実情だ。

 検討の過程から実際の運用に至るまで問題を抱えたまま、消費者の利便性を損ね、医薬品通販を行う事業者の経営に打撃を与えるような規制は早急に見直す必要があろう。

 仮に、医薬品通販規制が「規制仕分け」の対象項目となった場合、より多くのマスコミ、国民が注目する仕分け作業の場で厚労省がこうした矛盾をはらんだままの医薬品ネット販売規制を無理に正当化しようとすれば、その反響は大きなものになるはず。「規制仕分け」自体、政府・民主党のパフォーマンスと見る向きもあるが、仕分け人には、医薬品通販規制の矛盾点を徹底的に追求し、国民的な議論につながる流れを作り出すことを求めたい。


国センは役割を見つめ直せ

 消費者の安全を守る、というお題目を掲げて、長らく活動し続けてきた国民生活センター(国セン)が今、窮地に立たされている。消費者庁からその存在意義について疑問視されはじめているためだ。消費者庁は昨年12月に「国民生活センターのあり方の見直しに係るタスクフォース」の第1回会合を開催。その中で国センの役割や存在意義について再検討をし始めた。現状のままの国センでは消費者の役に立たないことばかりか、事業者の足を引っ張るだけの無用の長物でしかない。存在意義に疑問を持つのが遅すぎるとも言えなくないが、とりあえずはしっかりと国センを見つめ直し、抜本的な改革を望みたい。

 これまでも特に国センが行う「商品テスト」の妥当性については、通販事業者を含む小売企業やメーカーなどから疑問の声が挙がっていた。商品テストを行う以上、結果はだいたいネガティブなものであり、行政機関である国センが商品テストを行えば、それは一般紙などで広く報道され、当該商品の信用や売れ行きに大きな影を落とす。本当に悪質で消費者を騙したり、健康を害するような商品は無論、テストをすべきであろうし、その結果を発表して、販売者や製造者は相応に糾弾されるべきであろう。

 ただし、問題なのは、テストをする商品の選定方法や調査方法があまりに不条理な場合が多すぎるということだ。ある商品をテストするか否かは消費者センターに寄せられた相談や苦情の件数から判断することが多いようだが、案件によっては特別、件数が多くない場合でもテストに踏み切ることがある。また、疑問を持たざるを得ないのがテストする商品が非常に通販に偏っていることだ。これも本当に通販商品に問題があるのであれば話は分かるが、どうも単に通販が調査しやすいという安易な考えが起因しているように映っても仕方ないことが多い。

 例えば、国センは昨年4月、家庭の浴槽に入れることで「湯が温泉となる」と標榜する石やセラミックボールの商品テストを実施して、結果を公表したが、当該商品に関する相談者の8割が訪問販売で購入しているにもかかわらず、国センは商品テストの際、「楽天市場」などの仮想モールでネット販売されている10銘柄を対象としている。実際に相談件数が多い商品を調査しなければ意味がないにもかかわらず、そうしないのは単に労を惜しんで、自らの存在をアピールするための「テストのためのテスト」をしているだけと見られても仕方ないだろう。

 消費者庁は1月28日には「国民生活センターのあり方の見直しに係るタスクフォース」の第2回会合を開催。ここでも商品テストの問題について、消費者庁側が国センに「できることを自前の施設でやっているが中途半端ではないか」と追及するなど突っ込んだ話し合いがもたれたようだ。もちろん、消費者トラブルのセンサーとして役割を果たす機関は必要だが、何も国センに執着する必要はないはずだ。消費者庁はもちろん、国セン自身もまた、自らの存在価値や役割を真剣に見つめ直す時期にさしかかっている。


最高を目指し最悪に備えよ

飲食店経営の外食文化研究所がクーポンの共同購入サイト「グルーポン」を通じクーポンとして販売した「バードカフェ謹製おせち」の配送遅れ等の問題が波紋を広げている。新興のマーケティング手法を活用した販売手法で発生した不祥事、実際に届いた商品画像のインパクトなどもあり、この問題は各メディアで大きく報じられているようだ。中には、クーポン共同購入サイト自体を問題視する声もあるが、根本的には同サービスを利用する事業者側の危機管理に帰結する問題だろう。

 問題となったおせちは横浜の人気レストランの食材を使用したもので、通常価格2万1000円の商品を1万500円の500セット限定のクーポンとして販売していた。だが、クーポン購入者から配送予定日の12月31日になっても商品が届かない、サイトに掲載されていた見本と実際の商品の内容が異なるとの苦情がグルーポン・ジャパンに殺到。グルーポン側が事実関係を確認し、1月1日付で謝罪文を公表する一方、外食文化研究所の社長が辞任する事態となった。

 外食文化研究所が公表した謝罪文によると、商品500セット分の調理と詰め込み作業に予想以上の時間が掛かったため、納品の遅れや見本画像とは異なる商品の発送が起きたとしている。もともとおせち料理は、盛り付ける品数が多く、納期の厳守が求められる商材であるため、通販でも取り扱いが難しいとされており、事前の周到な準備が必要になる。その意味では、外食文化研究所の見込みが甘かったと言わざるを得まい。

 さらに問題なのは、初動の判断ミスだろう。これについては外食文化研究所でも、キャンセルを依頼すべきところを、無理に対応したことが今回の事態を招いた要因としているが、そもそも顧客の期待を裏切るような商品を提供すること自体、商売の基本から外れるものだ。

 また、この行為は法的な問題にも波及し、消費者庁が「景品表示法」違反の疑いがあるとして、同社に事情聴取を行う方針を固めたとされている。これについては表示主体を外食文化研究所と見るか、グルーポンと見るかといった解釈の問題もはらむが、少なくとも外食文化研究所側がネットを介し商品を販売する上で法的な意識を強く持っていれば、見本と異なる内容の商品を提供することのリスクは判断できただろう。

 無論、グルーポンも、外食文化研究所の商品管理体制等を見極められずクーポン購入者を失望させる結果を招いたことは反省すべきで、顧客が安心してクーポン共同購入を利用できる環境を整えなければならない。

 最高の商品を目指し、最悪の事態に備える。これが消費者を相手にするビジネスの鉄則だろう。企業として、より良い商品の提供に注力するのは当然のことだが、常に最悪の事態を想定していれば、万が一トラブルが起きても、初動段階で判断を誤る可能性は低くなる。今回の外食文化研究所の対応を見る限り、この両方の視点が欠落した結果、必要以上に問題を大きくした。同じ轍を踏まぬよう、通販各社も自らが最高の商品を目指し、最悪の事態に備えているか、自問してみる必要があろう。


通販事業者は新境地に挑め

2010年も残すところ1カ月となった。08年秋に発生したリーマンショックに端を発した消費低迷が尾を引く中、通販事業者にとっては、顧客の価格志向への対応、あるいは経営基盤の再強化に追われた1年だったのではないだろうか。カタログ通販企業の業績を見る限り、売り上げ的には厳しさが残るものの、コスト削減などの取り組みにより、全般的には収益力の改善が進んでいるようだ。まだ、商環境には不安要素も残るが、次の成長路線をいかに描いていくかがカタログ通販各社の課題だろう。

 ただ、通販市場は競争の激しさが増している。これは通販専業同士の競合もあるが、それと同等以上に影響しているのは、店販を主戦場としてきた有力アパレルブランドやGMSなどがネット販売を軸に通販の領域に流れ込んできていることだろう。

 国内市場の縮小が進んでいることを考えれば、店販小売事業者としても従来のように店舗数を増やし売り上げを作る時代ではなく、いかに効率化を進め利益の維持拡大を図るかがテーマとなっている。その意味では、時間や立地などの縛りがなく、参入障壁も小さいネット販売を中心に通販の領域に近づいてくるのも自然の流れで、取り組みを加速させてくるのは想像に難くない。

 言い換えれば、通販と店販の垣根はなくなりつつあり、カタログ通販事業者は全方位的な競争環境下に身を置いているわけだ。その中で次の成長うかがうには、やはり従来からの延長線上にあるだけの施策では限界もある。これまで蓄積してきた通販のノウハウや知見を活かした新境地の開拓が必要になるはずだ。

 この部分では、カタログ通販事業者の間でもすでに動きは見られる。ニッセンが今年から本腰を入れているブランド再構築の取り組みも、そのひとつと言える。20代女性層の開拓を狙いに、人気タレントの香里奈さんを起用したテレビCM、あるいはイベントなどを展開してきたが、40年間育ててきたブランドイメージを一新するという試みは、企業としてかなり思い切った施策だろう。

 また、セシールでは、「アニタ・アレンバーグ」での成果を踏まえ、ファストファッションの取り組みを積極化、同ブランドでの店舗展開をうかがうほか、ファストファッションの担当部門を設け、短サイクルの商品展開手法の確立を目指すなど、ネット販売への参入が相次ぐ店販系ブランドを意識した取り組みを進めている状況だ。

 さらに変わったところでは、千趣会が任天堂等と組み家庭用テレビゲーム機「Wii」を活用したショッピングサービスを開始した。ネット接続率の兼ね合いなどから、今後の展開を疑問視する声もあるが、通販でテレビを活用する必然性を追及し、「Wii」独自のコンセプト、世界観の中でファミリー層をターゲットにした物販の可能性を探るチャレンジングな試みと言っていい。

 現状、各社の取り組みに対して賛否が分かれ、結果が出るまでにも時間は掛かるが、厳しい市場環境下で次の成長路線を描くためには、各通販事業者も新境地の開拓に挑戦する姿勢が必要になってくるだろう。

日中協議の行方を注視せよ

尖閣諸島周辺での中国漁船衝突問題で亀裂が生じた日中関係の修復の方向性が見えない。未だに中国国内では、反日デモが散発的に行われている状況で、東南アジア諸国連合関連首脳会議で予定されていた中首脳会談を中国側が突然キャンセルするといった事態も起きている。領土問題という国益が絡むだけに、関係修復までには時間が掛かりそうだが、こうした日中関係の冷え込みが続けば、中国に進出している日本の通販事業者のビジネス展開に悪影響を及ぼすことにもなりかねない。両国で問題解決の糸口を探る必要があろう。

 一連の問題は、中国でビジネス展開を行う場合のリスクを改めて印象付けるものだが、実務レベルで考えた場合、日本の通販事業者にとって大きな壁となっているのは、中国の制度・ルールの問題だろう。

 特に中国現地の通関手続きについては問題点を指摘する声が多く、通販事業者等からも、手続の完了までに時間が掛かる、日本から同じ商品を輸入しても税関によって対応が異なるといった声が上がっており、経産省が2008年度に実施したアジア向け海外ネット販売の物流テストでは、中国(上海)の関税還付を伴う返品処理が他の国よりも手間取ったという事例も報告されている。

 原因は、担当者レベルのオペレーションによるものが多いようだが、このようなことが頻繁に起きているとすれば、通販事業者としても中国顧客への対応などの見通しがつきづらく、商品到着の遅れや注文のキャンセルなどを招くことにもなりかねない。日本を含む通販等の海外事業者のビジネス環境だけではなく、現地消費者のメリットといった観点からも、中国当局は対応を見直す必要があるはずだ。

 もうひとつ中国でのビジネス展開で悩ましいのは、現地のルールに曖昧な点があり、しばしば事業者の混乱を招いていることだ。

 通関についても、今夏頃から個人輸入に関する通関手続が厳格になっているとされているが、現地ネット販売の支援を行う仮想モール運営事業者が当局に制度の変更内容について問い合わせたところ、部署によって回答が異なり、詳細を正確に把握することができなかったという。

 経産省などによると、中国では制度の新設や変更を場合、まず法的な枠組みを作って施行し、実際に運用しながら文言の定義など詳細を詰めていく傾向があり、これが当局担当者の回答や対応の矛盾を生み出す一因になっているらしい。国によって制度が異なるのは当然だが、それ沿ってビジネスを行おうとする事業者の混乱を招くような仕組みは再考せねばなるまい。

 すでに経産省と中国当局でも、物流や店舗流通業、電子商取引などの分野で制度整備等に関する協議の準備作業を進めており、経産省では、中国側に通関手続き等の対応改善を求める考えを示している。現在の日中関係を考えると難しい局面も予想されるが、中国市場の環境整備は日本の産業振興を考える上でも重要だ。実際の協議入りは年明け以降になるようだが、通販事業者も今後の事業展開を左右する日中協議の行方を注視する必要がある。

決済規制議論の再燃を許すな

コンビニエンスストア店頭での各種料金収納代行の事業者団体・日本代理収納サービス協会(代理収納協会)が9月27日、正式に発足を発表した。収納代行に関する調査研究や広報、指針の策定などを主な活動内容としたもので、収納代行業者と収納窓口となるコンビニエンスストア本部を中心に構成する。コンビニ店頭の料金収納代行は、通販事業者にとっても欠かせない決済手段であるだけに、事業者自らがより安全なサービスの利用環境作りに動き出したことは評価したい。
 
収納代行を巡っては、一時、金融庁が銀行法で規定する為替取引の疑義があるとして、規制をかけようとする動きを見せていたが、代理収納協会発足の本質的な狙いは、この問題への対応がある。

 規制自体は、収納代行は商取引に伴う代理受領と主張する収納代行業者や経済産業省の反発もあり、導入が見送られた。だが、金融庁は依然、収納代行に為替取引の疑義があるとの見方を崩しておらず、何か問題が発生すれば規制議論を再燃させてくる可能性が高い。このため、代理収納協会を軸に収納代行業界として自主的に環境整備に取り組むことで、金融庁による規制議論の再燃を回避しようというわけだ。

 収納代行に規制が加われば、事務処理や対応コストなど、収納代行業者側の負担が増えるだけではなく、サービスを利用する通販事業者や顧客にも、利用料金の上昇や利便性の低下などの悪影響が出る恐れがある。その意味で代理収納協会の発足は、通販業界としても前向きに捉えていいだろう。

 だが、今後、代理収納協会がリーダーシップを発揮していく上で、幾つか課題もある。そのひとつは、金融系やシステム系など素性が異なる収納代行業者の意見を協会としてまとめられるかだが、さらに重要なのは、収納代行業者をどれだけ組織化できるかだろう。

 この点については、コンビニ本部と直接契約を結ぶ1次収納代行業者全てが同協会に加盟する見通しだが、1次収納代行業者のサービスを活用して事業を行う二次収納代行業者については、企業数などの実態が把握しきれていない。

 収納代行ついては、顧客への2重請求の防止や事業者自身が破綻した場合の対策、あるいは悪質なサービス利用事業者を排除するための審査体制の整備といった問題が指摘されているが、こうした課題を解消するためには、2次収納代行業者を協会に取り込み、対応の徹底を図っていくことが不可欠になるはずだ。

 商品代金の決済は通販を構成する重要な要素であり、サービスを提供する収納代行業者は、通販業界を構成するプレーヤーという側面もある。その意味では、日本通信販売協会との連携の方向性なども検討すべき課題だろう。代理収納協会では、これから具体的な活動テーマを決め、来年度から本格的な活動を始める意向だが、金融庁に規制議論を再燃させる隙を与えないような取り組みを進めていくことが期待される。そのためには、まず収納代行業者自身が通販業界のプレーヤーの一員という意識を持つことが必要だ。

消費者委は機能不全を正せ

 消費者庁の諮問機関として発足した消費者委員会(委員会)は9月10日、発足から1年を振り返り活動報告を行った。今後、委員会では消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」の結論を受け、審議を引き継ぐことになるが、議題には健康増進法の制度拡充も含まれるため事業者の関心は高い。だが、懸念がある。今なお存在感を示せず、機能に問題のある委員会が、残すところ1年の任期中に一定の結論を示さねばならないためだ。健食表示の議論の進め方も定まらない中、十分な議論が行えるか、はなはだ疑問だ。

 委員会は本来果たすべき役割を見失っている。月例の委員会では、消費者庁から報告される内容にまとまった見解をぶつけることは少なく、好き勝手な主張が飛び交っている。

 健食表示の検討会について報告された際には、ある委員が「ホメオパシーと同じで健食の好転反応の危険性は切実。具体的に検討してほしい」「宣伝も宗教団体のよう。健食の広告ガイドラインで体験談を規制してほしい」と捲くし立てた。消費者目線というより個人的見解を色濃く反映した意見と思えるが、この主張の是非が議論されることもなく委員会は閉会。こうした尻切れとんぼのようなやり取りが1年間続けられてきたわけだ。「単なる意見交換に終わっている気がする」と活動報告で自戒した別の委員の意見は委員会の機能不全を示したものといえるだろう。

 その根底には、人員・予算の不足より、幅広いテーマへの対応を求められる委員会の対応力の限界があるだろう。日常的にさまざまなテーマへの意見を求められる委員会は、結果的に各分野の専門家で構成する下部組織に具体的な審議を委ねざるを得ない。こうして得た結論に委員の個人的見解を反映させるのが役割というなら、果たして委員会というフィルターを通す意味はあるのか。

 事業者出身の委員は活動報告の席で「企業経営の立場で言えば物事を決める際、継続審議という形で委員会が引き継ぐのはおかしい。消費者庁と委員会で重複するテーマを整理すべき」と厳しい指摘をした。つまらぬ主張による議論の揺り戻しを防ぐ意味で、この意見に全く同感だ。

 このように多くの改善点を抱える委員会が仕切ることになる健食表示の継続審議。委員会はいまだに審議の進め方を打ち合わせておらず、わずか1年で消費者、事業者双方が納得のいく結論を見出せるのか。委員会の抱えるテーマがそれだけでないことは分かるが、重要テーマについてはその工程の見通しを早急に示す必要があるだろう。

 一方で、今後、健食表示の審議に留まらず、委員会を運営していく上で重要な観点が活動報告の中である委員から示されている。「ルール(規制)は万能ではなく、事業者の自主規制や消費者教育など、それに変わるものを育てていかなければ意味がない」というものだ。

 この言葉は、委員会が過度な消費者保護の視点で市場環境の整備に臨むことをけん制したものだろう。委員会の本来の役割は、消費者にとって最も身近な存在である事業者との健全な関係構築の仲立ちをすることにあるはずだ。

消費者庁は体制整備を急げ

この9月1日で消費者庁設置から1年が経過した。消費者行政の「司令塔」の役割を担うべく、福田康夫元首相の肝いりで設置されたものだが、この1年間の取り組みについて、対応の遅れなどを指摘する声が少なくない。各省庁からの寄り合い所帯で、情報の収集体制や指示命令系統などが一変したということを考慮すれば、当初からある程度予想されたことだが、事前の準備が不足していた観は否めない。その意味では、消費者行政を適切に遂行するための体制整備が先決だろう。

 しかし、このところの消費者庁の動きを見ると、消費者保護を名目にした新たな規制導入を検討する傾向が強まっている。無論、確信犯的な悪質事業者から消費者を守ることは必要だが、通販等の事業者にとって問題なのは、消費者代表を自負する消費者団体等の委員の意見に流された議論が進んでいることだ。

 端的な例は、「健康食品の表示に関する検討会」だろう。同検討会では、消費者団体等の委員の意見に押し込まれる形で結論が表示・広告など規制強化の方向に傾いた。さらに同検討会で象徴的だったのは、消費者庁自らが「消費者の立場に立つため、従来産業振興を担ってきた省庁と一線を画し、規制が中心になる」と発言したことだ。消費者庁設置後初の検討会で、"規制中心"の意向を示したということは、それ以降の検討会でも同様のスタンスで協議が進められることを意味する。

 これは、消費者庁が8月18日に立ち上げた「インターネット消費者取引研究会」にも同様のことが言える。ワンクリック請求など、ネットの特性を悪用した違法行為を行う事業者を排除するという同検討会の目的は、理解できる。だが、検討作業を進める中で、消費者団体等の委員の意見に偏重した議論になる可能性が高く、一部の確信的な悪質事業者、あるいは特異な事例を引き合いに出し、一緒くたに規制を掛けるような流れになりかねないのが実情だ。仮に、そうした規制の方向に進めば、産業として数少ない成長分野であるネット販売市場の発展の足かせにもなりかねない。これは通販事業者としても看過できない問題だ。

 このほかにも「集団的消費者被害救済制度研究会」が、民事訴訟での救済が難しい小額かつ多人数の消費者被害等の救済策について、集合訴訟制度等を盛り込む案をまとめたが、実際の運用を考えると、消費者被害救済の名目で濫訴を招く恐れがあるなど問題も少なくない。今後、消費者委員会で具体的な制度の検討を行うことになるが、運用面も勘案した慎重な議論が求められよう。

 消費者保護を名目にした規制の検討を進める消費者庁だが、設立から1年が経過しても見えてこないものがある。消費者に身を守る術を持たせる上で重要な消費者教育の取り組みだ。これについては、消費生活センターの人員体制整備や広報の問題などもあるようだが、消費者行政の両輪となる消費者教育が遅れているとすれば、「司令塔」としての役割を果たすことはできまい。消費者庁がまず取り組むべき課題は、規制の検討ではなく、消費者行政の両輪を機能させるための体制整備だろう。

JP経営陣は意識を変えろ


「ペリカン便」との統合直後に発生した「ゆうパック」の大規模な遅配問題を受け、郵便事業会社(JP)は7月30日、総務省に「郵便事業会社法」に基づく報告書を提出した。この問題を巡っては、一連の報道でJP側の準備不足などが再三指摘されてきたが、報告書の中でJPは、事前の準備や遅配発生時の対応など各段階で上層部の認識に甘さがあったとしている。総務省では報告書を精査した上で、行政処分などの対応を検討することになるが、JP側のずさんな体制が改めて浮き彫りとなったことで、通販等の荷主企業離れがさらに進む可能性がある。

 JPが総務省に提出した報告書では、事前の準備から、遅配発生時の対応や情報提供のタイミングなど各段階での問題点を分析しているが、そのいたるところに出てくるのが上層部の見込みや認識の"甘さ"だ。

 事前の準備段階について見ても、今年5月以降、荷物の区分け等を行うターミナル支店や統括支店で順次研修を行っていたが、JP本社で各拠点での研修の進捗状況が把握できていなかったという。だが、異なる仕組みの宅配便を統合することを考えれば、スタート段階で何らかの問題が起きることは想像される。その意味では、各拠点の現場担当者が新たなオペレーションにどの程度習熟しているのかを把握し、必要に応じて改善策を講じることが不可欠だったはずだ。

 実際に、遅配の直接的な原因が区分機の操作ミスなどによる作業の遅れだったことを考えても、現場のオペレーションを軽視したことが最大の過ちだったと言わざるを得まい。

 さらに問題なのはリスクに対する体制の不備と上層部の認識の甘さだ。報告書によると、統合初日の段階で経営陣が遅配発生の事実を把握していたにも関わらず、重大なトラブルにはならないと判断したとしている。この判断が応援要員の派遣などの対応策を遅らせ、結果的に遅配問題を長引かせる要因になったことを考えれば、判断ミスを犯した経営陣の責任は重い。

 こうした緩慢な対応は民間の宅配便事業者では考えられないもので、JPの一連の対応はずさんとしか言いようがない。「ゆうパック」を利用していた一部の通販事業者が他社の宅配便に切り替える動きも出ているようだが、顧客サービスを考えれば当然の判断だろう。

 これまで再三にわたり「ペリカン便」と「ゆうパック」の統合が延期された挙句、統合実現直後に発生した遅配問題。一連の経緯の中で共通した問題点を挙げるとすれば、JP側に未だに根強く残る官僚的な発想に行き着く。これについては、統合作業の過程で関係者がことあるごとに指摘していた点で、今回の遅配問題でも、顧客の視点を欠いた緩慢な対応にそれは表れている。

 顧客との接点になる宅配便は、通販事業者の間でも重視され、顧客の視点に立ったサービスが求められている。JPでは歳暮シーズンに向け、体制の建て直しを図る意向だが、まず経営陣が顧客視点の意識を強く持ち、それを現場に徹底させなければ、通販事業者等の「ゆうパック」離れを食い止めることは難しいだろう。

〝独自の価値〟

 本紙が調査した今号掲載の通販・通教売上高ランキングによると上位300社の合計売上高は4・1兆円だった。長引く不況が影響してか、市場成長率は鈍化傾向で、ランキング上位勢の多くは業績を落すなど苦戦を強いられている。しかし、一方で不況やデフレに左右されることなく、順調に業績を伸ばし続ける企業も少なくない。両者の違いとは何なのか。1つには"消耗戦"となる価格競争を回避できる「顧客に響く独自の価値」を作り上げ、それを実践できたか否かにあるようだ。

 不況かつデフレ状態の今、価格訴求は効果的な戦略なのかも知れない。だが、安易に使用すれば、恒常的な客単価下落や利益圧迫、さらには将来的な企業、ブランドのイメージ低下を招きかねない危険性を孕む「劇薬」であることは間違いない。ジャパネットたかた、オークローンマーケティング、ドクターシーラボ、スタートトゥデイなど不況下でも好調さを維持できている通販実施企業に共通するのは、安易な値引きなど劇薬の使用を極力、避けている点だ。裏を返せば、消費者を引き付ける"独自の価値"を持って価格訴求以外で勝負できているということだ。

 では"独自の価値"とは何なのだろうか。各社によって様々だが、その1つとして挙げられるのは「売りっぱなしにしない」ということだ。不況下でも業績を安定的に伸ばすある通販企業では、ダイエット食品を販売した後、効果的な使用方法やダイエット全般の相談を受け付ける無料の専用窓口の設置など、アフターフォローに手間やコストを惜しまずに投入している。その結果、この企業への安心感のほか、ダイエットの成功率を高め、当該商品において高いリピート購入率を生み出しているという。

 アフターフォローなどの顧客サービスが大切だ、ということは多くの企業が当たり前のこととして認識していることだろう。ただ、これまで多くの企業にとって顧客サービスとはある意味で、表面的なものだったのではないか。「商品を売る」ことが優先であり、販促費は潤沢に投入するが、直接、お金にならない顧客サービスはそれなりに、という事業者は少なくないはずだ。

 しかし、「売りっぱなしにしない」こと、つまり、直接はお金にならないはずの顧客へのアフターフォローに注力している企業こそが結局のところ、不況下においても、業績を伸ばし続けているという現実がある。価格以外の訴求ポイントを持つ企業は無理な値引きなどの体力勝負を避けることができ、健全な形で事業を展開することが可能だからだ。

 そしてこのことは今だけの問題ではない。むしろ、これからの通販市場で生き残るための必須条件となってくるのではないか。通販市場自体は今後も成長が見込まれている。ただし、その中身は大きく様変わりし、高い知名度や豊富な資金力を持った有力企業の新規参入や台頭が予想される。そうした強力な競合には価格訴求など通じまい。それらを相手に既存通販事業者が生き残るには"独自の価値"をどう創造できるかにある。簡単ではないだろうが今こそ、真剣に考えるべきだ。

薬事法への認識を改めよ

 神奈川県警が今年6月、健康食品通販を展開する「東京総合販売」の経営者らを薬事法違反容疑に続き、組織犯罪処罰法(組犯法)違反容疑で再逮捕した。本来、組犯法は暴力団など反社会的団体の犯罪に対する刑罰の加重を目的とするもの。今回のケースを極めて悪質性が高いと判断してのことだろう。だが、通販事業者は健食通販に伴う薬事法違反のリスクを改めて認識する必要がある。より刑罰の重い組犯法さえ適用されかねないリスクを負うためだ。

 社名変更を繰り返し、健食の違法な販売を続ける事業者が後を絶たない。こうした悪質事業者を取り締まるため、県警は組犯法の適用に踏み切った。今後は事業者の"組織実態"を重視し、組犯法の適用に対しても積極的な姿勢を見せている。
 こうした取り締まりは悪質事業者が健食通販に参入する抑止力となり、市場の健全化につながるという意味で歓迎すべきものではあるだろう。ただ、忘れてはならないのが、同様のリスクを全ての健食通販事業者が負うということだ。

 過去、薬事法違反で県警の摘発を受けた企業の中には、日本通信販売協会の正会員だった企業もある。協会への帰属だけで企業の信頼性を判断はできないが、協会内には加盟企業の広告表現をチェックする「表示審査特別委員会」があるだけでなく、入会時にも「倫理委員会」で広告表現が厳格に審査される。協会に属して適正な販売に努めようという姿勢が見える以上、全ての事件の悪質性が高かったと判断するのは早計だ。

 また、健食通販では消費者にいかに分かりやすく機能性を伝えるかが売り上げを左右する。効果的な媒体を見つけても、いずれ媒体が疲弊するのは必然。持続的な成長をめざし新しい媒体や広告表現を模索する中、一種の"慣れ"が最悪の事態を招かないとも限らない。とすれば、薬事法、さらには組犯法の適用も全ての事業者にとって"今そこにある危機"といえる。事業者は広告表現に細心の注意を払う必要があるだろう。

 一方で、摘発が後を絶たない背景には、事業者の"悪質性"を容易に見分けることができないことがある。その一因となっているのが、健食に明確な表示制度がないことだ。

 薬事法は医薬品の販売業許可を得た事業者の規制を前提としており、当然、健食通販事業者はそこに含まれない。そうである以上、業務停止といった措置を経ず、警察の介入によって、即、刑事事件に発展するリスクを負い続ける。
 だが、健食市場が一兆円超の規模に達する中、高齢化社会の到来や医療費の高騰といった社会環境の変化、市場の実態を鑑み、新たに健食を軸とした枠組みを整備することが必要なはずだ。でなければ、健全な事業者は、適正な販売であることを消費者に示す術さえ持たないも同然だ。

 同様のジレンマを負うのは事業者だけではない。消費者は商品の明確な選択基準を持ちえず、警察は悪質性を判断する基準を持たない。神奈川県警が健食通販事業者の摘発で他県圧倒していることが、そこに担当官の裁量が働いている証左といえるだろう。制度化を進めない限り、根本的な解決は図れない。

JPは真の顧客視点の思想を持て


郵便事業会社(JP)が手掛ける宅配便「ゆうパック」の遅配問題が波紋を広げている。7月1日、JPエクスプレス(JPEX)から「ペリカン便」を継承し、新たなスタートを切った「ゆうパック」だが、直後に複数の「ゆうパック」処理拠点で半日から2日程度の遅配が発生、通販事業者等の荷主や顧客にも影響を及ぼした。JPでは通販事業者をターゲットに荷主の開拓を積極化する構えを見せていたが、逆に顧客離れを引き起こしかねない状況だ。
 
JPによれば、荷物の遅配が発生した原因は、スタート当初のシステムの不具合や集配拠点の現場担当者が作業に不慣れだったことだとしている。「ペリカン便」の統合に伴い、JPEXの宅配便システムを導入したが、データの入力ミスなどで全体の作業が遅れ、荷物の配送にも支障をきたしたというものだ。

 問題は事前の準備が万全だったかだろう。この点では、JP側でも取り扱う荷物の増加などを勘案し、事前にシミュレーションを組んでテストも行っていたが、実際の現場では荷物の形状が様々で、担当者が作業に手間取るケースもあったという。単純なデータの入力ミスなどにより、複数の拠点で遅配が発生したことを考えれば準備不足だったのは明らかで、JP側の見込みが甘かったと言わざるを得まい。

 遅配の発生状況としても、7月2日に10拠点で荷物の遅配が発生。翌3日には3拠点、4日の段階で2拠点にまで縮小はしているが、この間の遅配荷物の数は約26万個、5日には約32万個に達し、通常99%の送達率も93%にまで落ち込んだ。

 無論、この中には通販事業者の荷物が含まれており、4月から商品の配送を「ゆうパック」に切り替えたニッセンでも、顧客からの問い合わせがきているという。さらに深刻なのは、生鮮品等の産直通販事業者だろう。鮮度が求められる商品の遅配は、致命傷にもなりかねないからだ。

 商品の配送を担う宅配便事業者は顧客との接点であり、通販事業者のイメージにも直結する。その意味で今回の遅配問題は、顧客の期待を裏切り、通販事業者に対する信頼も損ねるものでもある。JPでは商品の損害などに対し、賠償をしていく意向を示しているが、まず、顧客と通販事業者の関係性をも危うくしかねない問題であることを十分に認識すべきである。

 2007年10月に日本通運と日本郵政が包括提携を締結した際、「ペリカン便」と「ゆうパック」の統合は大きな目玉となっていたが、迷走を極めた。実際、JPと日通の宅配便事業統合作業は遅れに遅れ、土壇場で宅配便事業の統合を反故にするという事態になった。この間、翻弄され続けたのは通販事業者等の荷主であり、その顧客だ。

 宅配便事業統合を巡る紆余曲折の原因がJPだけにあるとは言えないが、顧客視点に欠くJP側の対応の緩慢さを指摘する関係者の声は少なくない。この構図は、今回の「ゆうパック」遅配問題にも通じるところがあり、問題は根深い。宅配便が通販の重要な構成要素であることを考えれば、JPも真の顧客視点の思想を持たなければならない。

通販協は変革し市場を導け

 6月11日に経済産業省が公表した「消費者向け電子商取引実態調査」によると、ネット販売市場を構成する事業者の8割が年商3000万円以下であるという。「2〓8の法則」よろしく極少数の大手通販事業者の売上高が市場規模の大半を占めているとは言え、同市場は非常に多くの小規模な事業者によって構成されている。売上規模だけでなく、それぞれの立ち位置もまた様々である。アマゾンのようなネット販売専業社、ユニクロなどの有店舗小売業者、カタログ系通販企業やメーカーなど当たり前の話だが立場によって、それぞれにとって必要な情報や戦略、抱えている課題もまた異なるわけだ。

 多様な事業者で構成される現在の通販市場、通販業界を取りまとめる役割を担う業界団体、日本通信販売協会(JADMA)は先日、新たな会長にファンケル会長の宮島氏を向かえ、同氏を中心に「変革」を表明。通販市場を取り巻く環境や前述したように同市場を構成する事業者の多様化によって、現行の協会の活動では通販事業者のニーズを満たすことができず、事業者にとって加盟するメリットが少なく、結果として業界の取りまとめ役になり得なくなる危機感から、手始めに広告表示に関する関連法の相談対応の強化を進めるなど通販事業者にとって価値のある業界団体となるべく、動き始めた。

 こうしたJADMAの変革の動きに通販事業者から歓迎する声が多く出てきている。しかし一方で、「法律相談だけでは全く足りない」「本当に我々のニーズを理解できるのか」というJADMAの変革に対して不安視する声が早くも加盟社、また、今後、加盟しようと考える新規の通販実施企業から多く出てきている。

 確かに事業者からこうした声があがるのは理解できる。通販市場は多様な立場の事業者によって構成されている一方、JADMAの中心メンバーはいわゆるカタログ通販企業がメーン。彼らが求める「ニーズ」は必ずしも新規に通販を開始した、例えばネット販売専業社にとって最優先に必要なニーズではないかも知れない。その逆もしかりだ。その際、どのようにそれぞれの「ニーズ」に優先順位をつけながら対策を考え、サポートや情報提供などをどう具現化していくのか。そうした作業は非常な困難が予想されるからだ。

 ただし、変革への不安の声はJADMAに期待するからこそ。インフラやデバイスの発達、社会環境の変化で成長し、今後もより一層の拡大が期待される通販市場だが、それだけに一定の秩序は必要である。また、成長市場には必ず行政から厳しい監視の目が向けられ、無用な規制がかけられる可能性もある。通販市場の構成メンバーは多様なのかも知れないが、消費者から、また行政からすれば否が応でも通信販売は通信販売である。それぞれが団結して事に当たらねば、市場の健全さは担保できず、結果的に規制を呼び込み、市場の発展を阻害してしまう。それだけにJADMAの変革には期待したい。事業者の多様なニーズを汲み取り、既存、新規の通販業者にとって加盟に値する必要な団体に変わって欲しい。通販市場のより良いこれからを導くには強い業界団体が必要だ。

通販協は質を伴う拡大目指せ

6月4日、日本通信販売協会(JADMA)の通常総会が開かれ、新会長にファンケルの宮島和美会長が選任された。前回は、会長就任を固辞する通販事業者トップが相次ぐという事態の中で、大学教授の上原征彦氏が会長に選任されたという経緯があったが、通販業界を発展させようと考えるのであれば、業界から会長が出てしかるべきだろう。その意味で今回のJADMA会長人事は、通販業界からリーダー役が出たことにより、本来あるべき姿に戻ったわけだ。会員企業の伸び悩みが続く中、新体制となったJADMAの今後の取り組みが注目されよう。

 宮島新会長の就任に対し期待を寄せる通販関係者は少なくない。というのも年々拡大を続け4兆円規模を超えた通販市場にあって、業界団体としてのJADMAの存在感が薄れていたからだ。実際、この数年は会員企業数が伸び悩んでおり、現状506社に止まっている。この背景には、通販市場拡大のけん引役でもあるネット販売事業者の取りこぼしなどがあると見られるが、一番の問題は、こうした事業者がJADMAへの加盟メリットを感じられないということだろう。

 この点については、宮島会長としても危機感を持っており、就任会見で具体的な施策として法律相談と広報機能の強化と、会員のウォンツを吸い上げ、それに則した対応を行っていく意向を表明した。これを足掛かりに会員組織の拡大につなげる考えだが、同時に質を伴った会員組織作りにも目を配る必要もあろう。これは既存会員への対応の部分もあるが、JADMAに加盟していなくてもコンプライアンス意識等の高い事業者についてはフォローを行い、加盟に必要な力をつけさせることも重要ではないか。難しい面はあるだろうが、こうした取り組みを通じ、質の高い会員組織ができれば、JADMAマークに対する消費者の信頼感が高まり、選択の基準にもなる。ひいては通販事業者の間にJADMA加盟を目指すという流れを作ることにもつながるはずだ。

 一方、懸念事項として挙げられるのは行政の横槍だ。通販業界が目立てば行政が新たな規制をかけてくることは想像に難くない。その意味では、行政に対し業界としてものを言っていかなければならない場面が出てくるはずだ。この点については、宮島会長自身が消費者庁の検討会委員を務め、対外的に通販業界としての意見を述べることの場数を踏んでいる。行政への対応についても期待したい。

 通販は数少ない成長分野で、高齢化社会に対応した販売チャネルとしても有望視されており、参入を目指す企業も未だに後を断たない。インターネットなどの新たなメディアの台頭によるところは大きいが、国内の通販の歴史を振り返っても、恐らく今ほど期待感を持って注目されたことはあまりないだろう。

 こうした状況を考えれば、通販業界は今、産業としての地位を確立できるかどうかの潮目にあると言ってもいい。その中でJADMAが果たすべき役割は重要だ。その意味でも、強い会員組織作り上げ、存在感を示していかなければならない。


TV通販企業は変化に備えよ

放送法改正案が5月27日、衆院本会議を通過、参院に送られた。政局が混乱を見せている中、今国会で同改正案が成立するか否かは不透明だが、成立すれば実に60年ぶりの通信・放送法体系の見直しとなる。改正を巡っては様々な議論があったものの、ネット上での映像配信の一般化など通信と放送の融合が進んでいる現状を踏まえ、時節に即した法改正は必要であろう。法改正によって「通信・放送の融合」が滞りなく進み、関連する新たなビジネスの成長や創造を期待したい。その一方で、今回の放送法改正案は放送事業者にいわゆる通販番組の総量規制を促す可能性もあり、特にテレビ通販実施企業は今後の動きを注視する必要がありそうだ。

 今回の放送法改正を前に昨年から総務省の諮問機関である情報通信審議会の「通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会」が中心となり、改正案の叩き台が議論されてきた。その中で一つの争点となったのが「通販番組」の法的な定義付けだ。総務省側は通販番組を「広告放送」と分類した上で、放送事業者に対し「番組ごとの種別と放送時間、分類に関する考え方」の公表を求め、ここ数年で増え始めた「通販番組」をけん制したい狙いがあった。

 こうした行政サイドの思惑に対して、放送事業者側は「通販番組は生活情報番組であり、広告放送ではない」と改めて主張。仮に通販番組を広告として分類された場合、日本民間放送連盟が定めた自主基準、週単位で18%以下という広告の放送時間に基づき、放送事業者は大幅に番組編成の見直しを迫られる。キー局各社はまだしも地方局やBS局ではテレビ通販事業者への放送枠の販売が大きな収入源となっており、それが断たれる事態となれば事業存続の危機に陥る可能性もあった。

 今回の放送法改正案では放送事業者からの反発もあり、結局、「通販番組は広告放送である」という通販番組の法的な位置づけは、改正案には盛り込まれなかった。ただ、「放送番組の種別の公表」の義務付け自体は法案にしっかり明記されている。総務省では「(法律の公布後、)番組種別の基本的な考え方を省令などで定めることも検討する」としており、この公表制度を論拠に将来的に通販番組を「広告」に位置づけることを決して諦めてはいないようだ。

 こうした総務省の動きを察し、省令で縛られる前にテレビ局各社は自主的に通販番組の区分を検討しつつ、通販番組の総量規制もまた自主的な基準作りを進めているようだ。キー局関係者によると、テレビ局が自ら手がける通販番組とテレビ通販事業者へ放送枠を販売する通販番組を合わせて、放送量は「週ベースで全体の3割以下」とするなどが話し合われているようだ。

 通販番組にせよ、放送内容云々は本来的に行政が介入すべきことでは決してない。ただ、現実問題として今後、通販番組の総量が制限されていく方向性にあるのは確かだ。テレビ通販事業者は現実を見据えてクロスメディアを駆使した通販展開など今後の戦略を考える必要があろう。千変万化の世の中で生き残っていくには、変化適応能力が必要だ。
《通販 2号 02面 15》

医薬品通販訴訟の行方を注視せよ

 医薬品通販規制訴訟の一審敗訴の判決を不服として、原告のケンコーコムとウェルネットは4月13日、東京高等裁判所に控訴状を提出した。原告側は、省令でネット販売や通販で扱える医薬品をビタミン剤などの第3類医薬品だけに制限するのは違憲として省令当該部分の取り消しなどを求めていたが、一審判決は原告の請求を全て棄却、ネットの情報提供が対面劣ると判断を下した。医薬品ネット販売規制を巡っては、以前から様々な問題が指摘されてきたが、購入者と直接顔を合わせているか否かという点だけでネットは対面に劣ると判断した判決は、原告だけではなく他のネット販売事業者にとっても受け入れられるものではない。

 対面であれば薬剤師等の専門家が購入者の顔色などを見ることができ安全。これがネットは対面に劣るという司法判断の理由だが、科学的根拠に乏しく、規制導入までの検討過程をみても対面販売の実態等が十分に検証されていないのが実情だ。

 実際、2004年に医薬品販売制度見直しの検討が始まって以降、医薬品ネット販売事業者が蚊帳の外に置かれたまま議論が進められ、ネット販売事業者が薬業団体関係者等と同じ議論の席についたのは省令施行間際になって設置された「新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会」からだ。しかも薬業団体等の規制推進派委員が大勢を占める同検討会では、ネット販売の安全性等に踏み込んだ議論は行われず、結局、検討会としての意見がまとめられないまま打ち切られている。

 一審判決では、省令施行までの過程に違法性はないとしたが、ネット販売を取り巻く環境が変化する中で、ネット販売事業者抜きで検討作業を進めてきたことに不備があったことは明らかで、混迷を極めた「円滑施行に関する検討会」での規制推進派委員の主張を全面的にトレースしたような司法判断を下したのは拙速だと言わざるを得まい。

 そもそも医薬品ネット販売は、従来の医薬品販売制度の中で厚労省が適法と認めていたものであり、離島居住者など医薬品の入手が困難な消費者の利便に供してきただけではなく、中小薬局・薬店等にとっても経営上の重要なツールとして機能してきた。副作用を伴う医薬品の販売では安全性を第1に考えるのは当然だが、十分な検証や議論が行われないまま、"対面の原則"という建前だけで排除するのは行き過ぎだ。既にネット販売が定着している現状を考えれば、より安全な情報提供や販売の手法、制度の確立を目指すのが本来あるべき方向性だろう。

 国内市場の縮小が進む中、ネットは経営効率化や生産性向上のツールとしても期待されており、ネット販売専業事業者のほか、GMSなどのリアルの小売業でもネット販売の取り組みを積極化している。そうした中でネットの情報提供は対面に劣るという司法判断が下されたことは、時代の流れに逆行するものとしか言いようがなく、ネットビジネス全体の発展を考える上でも看過できない問題だ。医薬品以外のネット販売・通販事業者も自らの問題と捉え、ケンコーコムおよびウェルネットの控訴審の行方を見守る必要があろう。

国センは〝存在意義〟考えよ

 国民生活センターは4月21日、通販で販売される家庭の浴槽に入れることで「湯が温泉となる」と標榜する石やセラミックボールなど関連商品の商品テストの結果を公表した。それによると、当該商品を使用した風呂の湯は各成分の濃度が温泉法で定めた基準を大きく下回っていたという。また、「温泉になる」という表示に関しても、温泉法の基準に及ばない以上、景表法や薬事法上、不適切であるなどとした。

 テスト対象となった商品のメーカーによれば、「テスト時の使用量が推奨しているものよりも少ない」などと調査の方法について、また、「事前に調査したデータと国センから公表されたデータが食い違っている」など疑問の声が挙がっている。これが事実だとすれば問題である。テスト結果が広く報道され、当該商品の信用や売れ行きに大きな影を落とす影響力をよく考え、国センには適正なテストを実施してもらいたい。

 これが大前提だが、それよりも大きな問題なのは、「なぜ、当該商品をテストするのか」というテストを実施する基準のあいまいさであろう。繰り返しになるが、国センの商品テストは広く一般紙等で報道され、当該商品の信頼に深い影を落とす。また、テスト対象になった商品はネガティブな結果が公表されることが大半だ。つまり、テスト対象となっただけで、当該商品を販売する事業者やメーカーにとっては大きなダメージとなるわけだ。

 それにも関わらず、国センはこれまであまりにも安易に商品テストの対象品を決めてきたと言わざるを得ない。ある商品をテストするか否かは消費者センターに寄せられた苦情件数などから判断する場合が多い。ただ、それもさほど件数が多い訳ではない商品でもなぜかテストに踏みきる場合が多々ある。今回の商品テストでも当該商品に関する相談が04年から約6年間で387件、品質や安全性に関するものが71件。「この相談件数は多いのか」と国センに尋ねると、「多いか少ないかは何とも言えないが一定の相談数が毎年あったため、テストした」となんとも煮え切らない回答だった。

 加えて疑問なのは当該商品に関する相談者のうち、80%は訪問販売で購入している。通販は5%、件数では18件だ。にも関わらず、国センは商品テストの際、「ヤフー!ショッピング」や「楽天市場」で購入した10銘柄を対象としている。本来、「相談が多い=問題のある可能性がある」商品に関してテストを行うことが筋であろう。これではテスト自体に何の意味があるのか首を傾げてしまう。「手っ取り早く、調査しやすいものを単純に調査した実績作り」と勘ぐられても仕方あるまい。

 折りしも経産省所轄の独立行政法人、製品評価技術基盤機構と商品テスト業務が類似していると指摘を受けて、今回の「事業仕分け第2弾」の対象となっている国セン。「通販いじめ」による点数稼ぎではなく、皆にとって意味のある機関とならねば、ただ、貴重な税金を食い荒らす「無用の長物」だとされてしまう可能性ある。国センは自らの存在意義と真に消費者の役に立つ情報の提供を考え直す必要があるのではないか。

社説 ネット業者は不当判決許すな

医薬品通販で扱える商品を省令で制限するのは違憲などとして、ケンコーコムとウェルネットが国を相手取って提起した行政訴訟の判決が3月30日、東京地方 裁判所で言い渡された。原告側は、一、二類医薬品の郵便等販売が行える権利の確認と、改正省令に含まれる薬事法施行規則の医薬品ネット販売規制に関する改 正規定の無効確認、同規定の取り消しを求めていたが、判決は原告側の訴え・請求を全て退けるというものだ。いわば、厚生労働省や規制推進派である薬業団体 等の主張をトレースした内容だが、何よりも問題なのは、司法が安全性確保等の面でネット販売が対面販売に劣るという見方を示したことである。

  判決文では、医薬品販売における安全性確保の点で、「インターネット販売は対面による販売に及ばず、両社の間には相当の有意な差異があるといわざるを得な い」とし、さらにネット販売事業者が講じる安全性確保策や自主規制案を用いても「この差異を克服し得る方策が示されているとは認めがたい」と明記してい る。

 主な理由は、購入者の年齢や性別、顔色、声などを見聞きできる対面販売に対し、ネット販売ではそれが難しい。利用者以外の人が医薬 品を購入する場合、対面販売であれば購入者から情報を聞き取れるが、購入者の自己申告に基づくネット販売では、虚偽の申告を見抜けない。対面販売では、名 札で薬剤師等の有資格者であるかを確認できるが、ネット販売では応対の相手が有資格者であるか確認できないなどだ。しかし対面か否かだけで、ネット販売が 対面販売に劣ると判断するのは早計だろう。問題は形式上の仕組みではなく、適正な運用にあるからだ。

 確かに、対面販売では購入者と直接 応対できるメリットはあるが、未だにドラッグストア等の店頭で専門家から商品の説明を受けたことがないという声も聞かれる状況で、現場で情報提供や相談応 需などがどれだけできているのかは疑問と言わざるを得ない。対面であれば名札で有資格者かどうかが分かるという点についても、現場で名札の着用がどれだけ 徹底されているのかは判然としない。判決では形式的な部分だけで、ネット販売が対面販売に劣っているとの判断を下しているが、本質的な安全性確保の実効性 を考えるならば、対面販売の現場の実情も勘案しなければならないはずだ。

 一方、判決理由では、将来的に医薬品の副作用や情報通信技術を めぐる事情が変わった場合には、規制内容の見直し行うべきとし、今回の判決が恒久的かつ固定的なものではないと付言を加えているが、どのような条件が揃え ば規制内容の見直しに着手するのかは明確になっていない。対面至上主義の既得権益者が跋扈する医薬品販売の世界で、ネット販売容認の機運が生まれるのか は、不透明と言わざるを得まい。

 今回の一審判決は、医薬品ネット販売規制導入までの過程と同様、実態の検証がないまま"ネットは危険"という烙印を押したもので、今後、医薬品以外の分野でも同様の事態が起こる恐れがあることも考えられる。他のネット販売事業者もこの不当判決を看過してはならない。

健食業者は表示を再点検せよ

消費者庁は3月8日、「平成21年度健康食品インターネット広告実態調査」の結果を発表した。「健康増進法」に基づく健康食品の虚偽・誇大広告の監視業務として、同法が消費者庁に移管される以前に厚生労働省の新開発食品保健対策室が手掛けていたものだ。調査結果を見ると、疾病に関する文言等が消費者を誤認させる恐れのある表示をしていた547商品(320社)を確認し、仮想モール運営事業者等を通じて「改善指導」を行うなど、問題のあるネット販売事業者が少なくないことを印象付ける内容だ。
 
このネット広告調査は、「ガン」「糖尿病」「心臓病」といった疾病名使い検索エンジンで無作為に抽出、その中から「健増法」に抵触する恐れのある表示を行うサイトを目視で探すというものだ。調査方法や不適切な表示を行っていた事業者に対する対応などは特に厚労省時代と大きな違いはないが、消費者庁が結果公表を大々的に行ったというのは、従来と異なる点だろう。

 以前から、健食の広告表示に対する行政の監視の目は厳しく、東京都など47都道府県が「薬事法」違反事例を共有し、モール運営事業者を通じ、同様の表示を行う出店事業者に注意喚起を促すといった取り組みも行われている。「健増法」に基づく消費者庁の健食ネット広告調査自体は、厚労省時代からの流れを汲むもので目新しいわけではない。だが、何かと注目されている同庁の調査結果公表は少なからずインパクトがあるはずで、健食に対する消費者のイメージダウン、あるいは健食の表示ルールの整備等の議論を進める「健康食品の表示に関する検討会」の審議への影響なども懸念されるところだ。

 また、こうした消費者庁の対応変化で、危惧されるのはネット広告の監視や「健増法」の運用強化などだが、この点については既に、同庁では、例年1回だった調査頻度の拡大や、関係省庁と連携した法執行の可能性を示唆している。問題点を指摘されることが多い健食の広告表示は、同庁にとって実績作りの格好の材料とも言え、対応を強化してくるのは必至。健食ネット販売事業者としても、従来以上に広告表示に注意する必要があろう。

 今回の調査では、「コエンザイムQ10は心臓病の治療薬として使われてきた」「この水は糖尿病治療に使われていた」「ところてんはガンの治療効果のみならず、発ガン防止効果がある」など、確信犯とも言えそうな広告表示の事例も報告されている。無論、真っ当な健食通販事業者であれば、このようなリスキーなことはしないだろうが、ネット上で確信犯的な不適切広告表示が横行するような状況が続けば、何れ行政側が規制強化に動き出し、真っ当な事業者の事業活動が制約されることにもなりかねない。これは健食ネット販売事業者だけではなく、販売の場を提供するモール運営事業者などにとっても、対岸の火事では済まされない問題だ。

 行政側の縛りはさらに強くなると予想される。健食ネット販売業者もそうしたリスクを認識し広告表示の再点検等をする必要があろう。

仮想モールは責任を自覚せよ

 国内の主なジュエリー関連事業者が加盟する日本ジュエリー協会(JJA)に寄せられた09年上期(4―9月)の相談や苦情のうち、「宝石や地金などの表示」に関する件数が最も多く、前年に比べ、大きく増加したようだ。その背景の一因がネット販売事業者だという。無論、様々な分野・商材でネット販売が広がることに関しては、喜ばしいことだと言える。問題なのは指輪の地金の純度表示など消費者に誤認を与える出鱈目な表示を堂々と記載、問題が表面化すると、社名を変え同じ行為を繰り返す悪質な業者の跋扈だ。

 消費者庁の設置等で行政の監視の目が厳しくなっている今、こうした悪質な行為を繰り返す業者を野放しにしておけば、さらなる通販への規制強化は免れまい。早急に業界内で何らかの施策を講じる必要がある。とは言え、そうした業者の行為に歯止めをかけ得る有効な手立てがないのが実情のようだ。出鱈目な表示を繰り返す業者の多くはいわゆるアウトサイダーで日本ジュエリー協会はもちろん、日本通信販売協会など業界団体には所属していない。また、前述した通り、そうした業者は問題が表面化すると社名を変更して逃げてしまう。歯止めを掛けようにもその防波堤となる得るもの自体が存在しないわけだ。

 唯一、期待できるのは当該業者が「売り場」としている仮想モールの運営者だ。常識的に考えれば、自らが運営する売り場で出鱈目な表示が繰り返されれば、利用者離れを招く危険性があり、放置できない問題と捉えるはずだ。しかも、出鱈目な表示を行なっている業者は〝ひっそり〟と隠れて販売行為を行なっているのではなく、ジュエリージャンルで売上上位の場合もあるようだ。しかし、JJAが再三に渡って、出鱈目な表示を行う出店店舗に何らかの指導をして欲しい、と某大手モール運営者側に申し入れを行っても、問題があるなら個別に店舗に指摘すれば良い、というスタンスで出鱈目な表示が横行する現状は何ら改善が見られないのが実情のようだ。これは何もジュエリーだけでなく、他の商材でも同様の有様のようだ。

 楽天やヤフーなど仮想モール運営者が中心となって、ネット関連事業者の業界団体「eビジネス推進連合会」が2月にも発足する。同団体の大きな目的の1つはネット事業者が大同団結して、近年のネット関連の規制強化に対抗することだ。行政のネットビジネスへの無理解から来る規制に声をあげること自体は大いに賛同する。しかし、皮肉なことにその団体の中心たる仮想モール運営者の仮想モール上で、規制強化のきっかけとなり得る出鱈目な表示が平然と行なわれている。そして一部のモール運営者は何ら手立てを講じない。〝売り逃げ〟を黙認していると捉えられても、文句は言えまい。

 無論、企業として営利を追求することは当然だ。しかし、モールの流通総額、出店者数の拡大のためには多少の「表示間違い」には目をつぶるという態度ではとても行政を牽制し得る「圧力団体」とはなり得まい。何かに文句を付ける際には、一層、自らの行動を正すべきであり、責任の重さを自覚すべきだ。

仮想モールは責任を自覚せよ

 国内の主なジュエリー関連事業者が加盟する日本ジュエリー協会(JJA)に寄せられた09年上期(4―9月)の相談や苦情のうち、「宝石や地金などの表示」に関する件数が最も多く、前年に比べ、大きく増加したようだ。その背景の一因がネット販売事業者だという。無論、様々な分野・商材でネット販売が広がることに関しては、喜ばしいことだと言える。問題なのは指輪の地金の純度表示など消費者に誤認を与える出鱈目な表示を堂々と記載、問題が表面化すると、社名を変え同じ行為を繰り返す悪質な業者の跋扈だ。

 消費者庁の設置等で行政の監視の目が厳しくなっている今、こうした悪質な行為を繰り返す業者を野放しにしておけば、さらなる通販への規制強化は免れまい。早急に業界内で何らかの施策を講じる必要がある。とは言え、そうした業者の行為に歯止めをかけ得る有効な手立てがないのが実情のようだ。出鱈目な表示を繰り返す業者の多くはいわゆるアウトサイダーで日本ジュエリー協会はもちろん、日本通信販売協会など業界団体には所属していない。また、前述した通り、そうした業者は問題が表面化すると社名を変更して逃げてしまう。歯止めを掛けようにもその防波堤となる得るもの自体が存在しないわけだ。

 唯一、期待できるのは当該業者が「売り場」としている仮想モールの運営者だ。常識的に考えれば、自らが運営する売り場で出鱈目な表示が繰り返されれば、利用者離れを招く危険性があり、放置できない問題と捉えるはずだ。しかも、出鱈目な表示を行なっている業者は〝ひっそり〟と隠れて販売行為を行なっているのではなく、ジュエリージャンルで売上上位の場合もあるようだ。しかし、JJAが再三に渡って、出鱈目な表示を行う出店店舗に何らかの指導をして欲しい、と某大手モール運営者側に申し入れを行っても、問題があるなら個別に店舗に指摘すれば良い、というスタンスで出鱈目な表示が横行する現状は何ら改善が見られないのが実情のようだ。これは何もジュエリーだけでなく、他の商材でも同様の有様のようだ。

 楽天やヤフーなど仮想モール運営者が中心となって、ネット関連事業者の業界団体「eビジネス推進連合会」が2月にも発足する。同団体の大きな目的の1つはネット事業者が大同団結して、近年のネット関連の規制強化に対抗することだ。行政のネットビジネスへの無理解から来る規制に声をあげること自体は大いに賛同する。しかし、皮肉なことにその団体の中心たる仮想モール運営者の仮想モール上で、規制強化のきっかけとなり得る出鱈目な表示が平然と行なわれている。そして一部のモール運営者は何ら手立てを講じない。〝売り逃げ〟を黙認していると捉えられても、文句は言えまい。

 無論、企業として営利を追求することは当然だ。しかし、モールの流通総額、出店者数の拡大のためには多少の「表示間違い」には目をつぶるという態度ではとても行政を牽制し得る「圧力団体」とはなり得まい。何かに文句を付ける際には、一層、自らの行動を正すべきであり、責任の重さを自覚すべきだ。

司法は虚構の通販規制許すな

 昨年12月24日、ネット販売で扱える医薬品を省令で大幅に制限するのは違憲などとして、ケンコーコムとウェルネットが東京地方裁判所に提起していた行政訴訟が結審した。昨年6月の改正「薬事法」施行に伴い導入された医薬品通販への規制強化は、"対面"でなければ副作用リスクを伴う医薬品の販売で安全性を担保できないという理由によるものだが、検討段階から様々な問題が指摘され、規制導入後も現場の混乱を招いているのが実情だ。様々な矛盾がはらんだ医薬品通販規制をこのまま放置しておけば、ネット販売等の事業者や消費者の不利益が拡大する。司法には、実態を踏まえた正当な判断を期待したい。
 
 まず、今回の医薬品通販規制で考えなければならないのは、一体誰のための規制なのかということだろう。薬局・薬店等の薬業関係者や厚労省は、薬剤師等の専門家が直接消費者に情報提供を行う"対面の原則"が担保できない通販・ネット販売は危険とし、規制導入を押し切った。いわば消費者保護を名目にしたものだが、そもそも医薬品通販が本当に危険なのかは甚だ疑わしい。
 
 実際、医薬品通販は、これまで厚労省が認めてきたものであり、通販という販売手法に起因した健康被害等の事例も報告されていない。予見的見地から医薬品通販を規制するにしても、どのような形で通販に起因した健康被害等が発生する恐れがあるのかも不明確なままだ。検討会などでは、規制推進派の委員からネット販売を危険視する意見が出されたが、実際の医薬品通販サイトでの安全確保策を十分に検証しているわけでもない。医薬品通販規制を巡っては、法的な規制論拠や検討作業の進め方など、厚労省の対応の問題が数多く指摘されており、十分に議論し尽くさないまま規制が強化されたというのが実情だ。
 
 さらに規制強化後の状況を見ても、ドラッグストア等の店頭で情報提供が十分に行われていないという事例が幾つも報告されている。"対面"でなければ医薬品販売の安全性が確保できないとしておきながら、リアルの売場でペレーションが徹底されていない実態を考えても、"対面"の原則を論拠にネット販売を規制することはおかしいだろう。
 
 果たして、今回の医薬品通販規制は、一体誰のためのものなのか。ネットで扱える医薬品を大幅に制限された販売事業者は日々売り上げが減少し続け、離島居住者や身体障害者などの利便性も損なわれている。規制導入を推進してきたドラッグストア等に恩恵があるようにも見えるが、将来的にネット販売への対応を考えざるを得なくなるのは必至で、その際に医薬品通販規制は足かせになるはずだ。そう考えると、今回の医薬品通販規制は、誰にも実質的なメリットはないと言わざるを得まい。
 
 法的な規制論拠が脆弱で検討作業の進め方に問題があり、現場の混乱も招いている医薬品通販規制は早急に見直す必要がある。ケンコーコム等が訴えた行政訴訟の判決は3月末に下されるが、"対面"の虚構を打ち崩し、真に事業者と消費者のためになる医薬品販売制度作りにつながる司法判断が望まれる。


〝変化〟に対応した戦略を打て

 09年は通販市場にとって苦難の年であったことは言うまでもないだろう。未曾有の不況で幕を開け、消費は低迷。「巣篭もり」で恩恵を受けた通販事業者は一部に限られ、多くは「モノが売れない」環境下で値下げや送料無料など利益を圧迫する体力勝負を余儀なくされた。市場の冷え込みに追い討ちをかけるように低料第3種郵便を使った複数の通販企業によるDM不正送付や、商社系通販企業からの個人情報漏えい、上場通販企業のトップや社員によるインサイダー取引などの通販の信頼を著しく低下させる事件も起こった。 これらに加えて、消費者保護という美名の下、大衆薬の通販規制や消費者庁の設置など通販市場の拡大を阻害する可能性の高い行政による通販への介入も目立った。

 様々な逆風の中、多くの通販事業者は苦戦を強いられ、業績を落とした。ただし、小売り全般で言えば、ユニクロやニトリ、通販企業でもジャパネットたかたやドクターシーラボ、スタートトゥデイなど厳しい環境の中でも大きく業績を伸ばしている企業も存在している。それらの企業の共通点は「不況」「デフレ」「規制」など「何かのせい」にはせず、戦略はそれぞれ異なるが、巧みに社会の変化を読み、その変化に対応する効果的な戦略を立て、即座にそれらを実行していることだ。

 逆に言えば、09年に業績を落とした企業はこうした社会の変化を読み取れず、適切な打ち手を施せなかったことになるわけだ。ただし、昨年の戦略を嘆くのではなく、むしろ活かすべきだろう。ある通販企業の経営者は「今年の不況は経営者としては大変、勉強になった1年だった」と言うが、その通りである。時代に即した「適切な打ち手」などそう容易く打ち出せるものではない。辛酸を舐めた昨年の経験を当面は続くと見られる不況やその先の社会構造の大きな変化に対応するための「教訓」として捉えるべきだ。

 恐らく景気の回復はすぐに成るものではなく、今年も暫く景気低迷は続くであろう。また、通販を取り巻く規制はより強化されるかも知れない。通販媒体となるメディアの変化や強力な競合となり得る新規参入事業者も次々に登場してくるであろう。そして、大きな流れとして、少子高齢化により消費者の絶対数は減っていく。こうした社会の変化はいかんともし難い「現実」である。「現実」を前に「言い訳」や「逃げ口上」を述べても何も変わらない。淘汰されるだけであろう。

 社会の変化で業績が悪化していくのであれば生き残るために、その変化に合わせて、柔軟にビジネスモデルや戦略を組み替え、その都度、時代に即した成長モデルを模索していくほかない。そして必ず活路が見えてくるはずだ。現在は好調な企業もこの先、未来永劫、保障があるわけではない。時代や社会の変化に合わせて、常に変化し続けることができる通販事業者こそがこの先も生き残っていけるはずだ。先の見せない不況が続く中、始まった2010年だが、通販企業にはそれぞれ時代の変化を読み取り、成長のための戦略を見つけてもらいたい。それこそが通販市場発展につながるはずだ。

消費者庁は〝本懐〟を果たせ

 消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」がまもなく第2回会合を開く。検討会は「エコナ」問題に端を発していることもあり、当初から"特定保健用食品(トクホ)制度見直しなど限定的な結論に留まるのでは"という疑念がくすぶっていた。だが、初会合では複数の委員が薬事法の「食薬区分」に踏み込んだ健食全体の議論を求めた。徹底的に議論すべきなのは当然で、トクホの見直し議論だけに留まらせてはならない。でなければ消費者庁は"消費者視点に立つ行政の実現"という本懐を果たしたとは言えまい。

 もはやトクホを含む健食表示制度に抜本的な改革が必要なことは明白だ。トクホの枠拡大や新制度確立など、やり方を選択することはできる。だが、業界サイドのみならず、消費者サイドからもあいまいな表示の制度化に向けた声は高まっている。

 全国の消費者組織をまとめる全国消費者団体連絡会(消団連)は第2回会合で「健食全体の表示制度確立」を要望するという。現行の表示制度では「消費者が分からない」というのが理由だ。消団連に限らず、消費者への情報提供が行えない現状は、全国の消費者組織の共通認識でもある。検討会に委員として参加する国民生活センターの宗林さおり氏もその1人。初会合では「現行の表示制度では消費者に分かりづらい」と発言していた。表示の分かりにくさは健食の商品テストでも度々指摘しており、相談現場から消費者の不利益をよく知る人物の意見でもある。

 一方で、監視指導体制の強化を望む声が強いのも事実だ。一部の消費者団体は「監視体制さえ充実すればトクホ制度さえ必要ない」という馬鹿げた主張をいまだに展開する。

 だが、大局的な視点立つならば、表示適正化が規制の「緩和」と「強化」のいずれかに寄るものでないことは明白だ。表示を行えるよう制度を確立することは即、規制「緩和」に結びつくものではない。専門分野を持つ関係者が適切な表示基準をつくり、これを事業者が遵守する。一方で基準に則り行政が指導を行う。それぞれが役割を果たしてこそ、消費者利益を実現する表示適正化が進むからだ。ぜひ、検討委員には自らが所属する団体の立場を越え、幅広い議論を求めたい。

 これを側面から支援するのが消費者庁の果たすべき役割だ。"消費者視点に立つ行政の実現"をめざす理念が本物であるならば、表示制度の確立が不可避であることは誰の目にも明らかだ。"省庁間のすき間事案への対応"を掲げるのであれば、薬事法とのすき間に落ちた健食表示に省庁間の垣根を越え、横断的な対応をするのは本望であるはずだ。今回の検討会で消費者庁は当初に掲げた理念の"真贋"を試されている。

 政治もその役割を果たす義務がある。今回の検討会は4カ月という時間的な制約、省庁間の垣根を越えた議論など複数の障害がすでに浮かび上がっている。これを"政治主導"の理念の下で動かせるのが政治であり、民主党にとっても政権交代以来の見せ場となるだろう。結論がトクホ見直しという限定的なものに終われば健食業界の失望だけでなく、消費者の信頼さえ損なうことになる。

都は責任と影響力を自覚せよ

 東京都医薬食品局が発行する「東京都食薬eマガジン」に掲載された広告に「薬事法」上問題となる表示のがあったことを受け、都が事態の収拾に乗り出した。問題の広告は、11月27日(139号)に発行されたメルマガに掲載されていた中堅健食通販企業「えがお」のPR広告で、コピーの内容が「薬事法」に抵触するのではないかとして、一部の健食通販関係者が都に問い合わせをしていた。無論、広告を制作したえがおには非があるが、事業者を指導する立場にある都が、自ら発行するメルマガに掲載されていた法令違反の広告を見逃していたのは、失態としか言いようがあるまい。

 「東京都食薬eマガジン」は月2回発行のメルマガで、都の食品衛生と薬事衛生の所管部署の報道発表やホームページ更新内容、中央官庁の報道発表などの情報を掲載したもので、健食通販事業者などのメルマガ会員も少なくない。問題の広告は、同メルマガの冒頭に掲載されていたもので、「ポッコリ」「スリム」「パワー」といった文言がコピーに使用されていた。明確に医薬品的な効能効果を謳ってはいないが、広告表示に関わる者であれば、一目で「薬事法」上問題があると察しがつくものだ。メルマガが「薬事法」違反事業者の処分情報などを含み、健康食品通販等の購読会員が少なくないということを考えれば、こうした広告が掲載されていたのがどれだけ異常なことか分かるだろう。

 都からすれば、メルマガに掲載する広告は配信の委託事業者が決めているもので、どうしようもなかったという思いもあろう。だが、そうした事情を汲んだとしても、対応はお粗末過ぎる。

 本来であれば、自ら問題に気付き必要な対応を講じるべきだが、都が問題を察知したのは、メルマガを見た事業者からの指摘で、薬事監視課に問い合わせた関係者によれば、メルマガを読んでいた担当者すらいなかったという。常日頃、事業者に対して広告の表示に事細かな注文をつけている都が、自ら発行するメルマガの内容をチェックしていないというのはあまりにもおかしい。

 その後、メルマガの臨時号を出し、本文以外の、委託事業者が掲載する広告は都と一切関係ないと告知しているが、同様の広告が掲載される恐れが払拭されないという点で、この対応は不十分だ。都のメルマガに掲載された広告表示をお墨付きと受け止めた事業者が法に違反した表示を行うという恐れがあることを考えても、但し書き一本で済む話ではあるまい。都でも、メルマガに広告を掲載しない方向で検討を進めている状況だが、初動が緩慢だったのは明らかだ。

 東京都薬事監視課では、メルマガに掲載されたえがおの広告が医薬品的な効能効果を暗示しているとの見方で、熊本県を通じ同社を処分する意向だ。だが、自ら発行するメルマガの不適切な広告表示を見逃した挙句、事業者側の混乱を招いた都の失態は看過できるものではなく、事業者を指導する立場にある責任と影響力に対する自覚の薄さを感じさせる。その意味でも東京都は、今回の問題を重く受け止めるべきだ。

行政は〝通販いじめ〟を止めよ

 消費者庁の通販事業者への恣意的ともとれる対応を巡って、通販業界の関係者から批判の声が挙がっている。同庁は10月、11月と相次いでニットおよび布団の「誤表記」に関して、当該製品を製造した三陽商会および住金物産の社名公表を行なっている。ともに「カシミヤ入り」と表示していたが、実際、当該商品にはカシミヤは入っていなかったというもの。言わば似通ったケースと言える。ただし、この2つ事例には相違点がある。社名公表の範囲だ。

 ともに表示ミスを犯したメーカーの社名を公表しているが、一方では販売社である百貨店の具体的な社名は伏せ、もう一方では社名が公表されている。公表されたのは大手テレビ通販事業者のQVCジャパンだ。こうしたネガティブな案件で社名が公表されれば、一般紙等で広く報道され、当該企業は企業イメージの低下を招くことは必至だ。加えて、それが業界大手ともなれば、通販業界全体にも悪影響を及ぼしかねない。消費者庁は2つの案件の公表について「消費者への注意喚起」などと説明しているが、ではなぜ、非常に似通ったケースであるにも関わらず、こうした「差」を付けるのか。いかなる理由によるものなのか消費者庁に問いたい。

 今回のケースだけでなく、行政による通販への恣意的ともとれる対応は以前からあった。例えば、今夏に公取委から某家電メーカーに下された景品表示法違反による排除命令では、当該メーカーが製造した冷蔵庫が実際には一部にしかリサイクル素材を使用していなかったにも関わらず、すべての製品に使用しているような表現を広告等でしていたとして、家電メーカーのみに行政処分が下っている。しかし、同じく景表法違反とされた数年前の防カビ効果があるという風呂桶や、最近あった消臭効果があるという健康食品のケースではメーカーではなく、当該商品を販売した複数の通販事業者に排除命令が下っている。

 販売者が違反を問われるのであれば、先の冷蔵庫の場合、家電量販店も同様に罪を問われるべきであろう。先の消費者庁の社名公表にしても、当該商品を販売していた百貨店を羅列すべきであろう。それが様々な理由をつけて、できないというのならば、通販事業者にも同様の扱いをするべきだ。決して、「ミスを隠せ」というわけではない。ただし、「法の下に平等」であるならば、一方は「売ったもの勝ち」で何ら処分は下されず、もう一方は行政や世間から糾弾されるというのはあまりに不自然ではなかろうか。

 特商法改正に伴い、12月から施行された通販事業者に課される「返品ルール」にしても、不自然だ。通販媒体に返品に関する規約を「分かりやすく明示しなければならない」というのは、例えば、百貨店など有店舗の「売り場」で返品について大々的に謳うなどとは考えられないことであろう。同じ小売業であるならば、ルールは平等にすべきだ。カタログ、チラシで証拠が残りやすく処分しやすい点数稼ぎ的な「通販いじめ」は止め、不況の今、国内の有望産業である通販をむしろ育成することこそ、行政の責務ではなかろうか。

産業沈滞招く法執行は慎め

 おにぎりの包装袋に貼付したシールに"国産鶏肉使用"と表示していたにもかかわらず、実際にはブラジル産の鶏肉を使用していたとして、消費者庁は11月10日、ファミリーマートに対し「景品表示法」違反(優良誤認)で措置命令を出した。消費者庁設置後初の「景表法」による行政処分となるものだが、実績作りを急いだ観が強く、その実質的な効果にも疑問が残る。

 今回の事件は、今年6月にファミリーマートが独自に行った調査で判明した。これは、度重なる食品偽装表示の問題を受け同社が自主的に行ったもので、おにぎりに使用する鶏肉の部位を変更した際、米飯製造業者がブラジル産の鶏肉に切り替えていたが、この確認を怠っていたことが誤表示の主因だ。ファミリーマートでは、事件発覚直後に農林水産省に事実を報告し商品の販売を中止、さらに自社サイトでも告知を行うなどの措置を講じている。確認を怠り誤表示を行ったという時点でファミリーマートに落ち度があるのは明らかだが、その後は、誤表示による消費者被害を最小限に抑えるための対応を行ったと言っていいだろう。

 事業者側が誤表示に関する報告を行政側に行い、顧客への告知や返金・返品を完了した後に「景表法」違反で処分されるという事例は、これまでに幾つもあった。消費者庁がファミリーマート対して行った措置命令も、同様に対応を完了した後に処分を下したものだが、この手法は、公正取引委員会時代から事業者側が違和感を覚えていたものだ。

 過去に遡って違反事業者を処分すること自体に問題はないにせよ、消費者被害の抑制に自主的に取り組んだ事業者側とすれば、行政処分という追い討ちをかけられることは相当なダメージになる。行政側では一罰百戒のつもりかも知れない。だが、こうした構図は事業者側の萎縮、或いは誤表示の事実は隠した方が得という歪んだ考え方を招く懸念があり、ひいては消費者被害を拡大させることにもなりかねない。消費者庁も、消費者利益を念頭に置いて法を運用するのなら、この辺りを十分に考える必要があるはずだ。

 また、法執行に当たっては、消費者庁設置の検討を進める中で打ち出された、"消費者行政の体制強化は消費活動だけではなく産業活動を活性化するものでなければならない"という原則との整合性も考えなければなるまい。この原則は、消費者利益にかなうことは企業の成長と産業の発展にもつながるというロジックによるものだが、今回のファミリーマートの事件は、3カ月も前の事案で既に商品も販売が中止されている。措置命令を出しても、実質的な消費者の利益にかなうとは考えにくく、消費者庁がわざわざ過去に遡って措置命令を出さなければならない事案だったのかは疑問だ。インパクトのある実績を作ることを急いだと受け止められても仕方ないだろう。

 消費者行政の舵取り役である消費者庁にとって、消費活動と産業活動を活性化という原則は順守すべき事項だ。消費者保護を名目にした過度な法執行で事業者を萎縮させ、産業を沈滞させるようなことがあってはならない。

過度な〝通販規制〟を改めよ

 日本の通販事業者のアジア諸国を中心とした海外進出が相次いでいる。先日も健康食品のネット販売大手のケンコーコムが来年から海外でネット販売を開始すると発表した。通販事業者が海外へと進出する理由の1つは活況なマーケットへのリーチだ。国内の消費環境は長引く不況で冷え込むばかり。国内だけでは思うような業績が見込めない各社は海外という新たな市場に活路を見出そうとしている。そしてもう1つ、各社を海外に向かわせる大きな理由は事業者のビジネス活動をやりにくくさせている世界でも稀な"雁字搦めの通販規制"にあるだろう。

 通販事業者にとってみれば、「消費者保護」を声高に謳い、その結果としての過度な規制の弊害で「売りにくくなった」国内市場で試行錯誤するよりも、馬鹿げた規制のない海外に進出するほうがはるかに効率的で将来の展望も描きやすい。実際、国内の通販関連法に嫌気がさしたことを理由に自由な商売ができる海外へと進出する通販企業も多い。無論、日本企業の海外進出は悪いことではない。ただ、行政は国内の通販事業者の海外進出を喜ぶだけではなく、裏にある原因をよく認識すべきだ。

 日本には通販を取り巻く規制が諸外国と比べ多すぎる。例えば通販市場をけん引する健康食品や化粧品についても、効果・効能の表記に関しては異常なほど規制を課している。薬事法の「効果・効能を謳えるのは医薬品だけ」という定義を杓子定規に振りかざし、違反する事業者を断罪するが、現実的に健康食品や化粧品を購入する消費者は「何に効くのか」を確認して購入したいわけだ。規制は事業者にとっても消費者にとっても不利益を及ぼしている。

 先ごろ、通販での販売が実質禁止された医薬品についても同様だ。近くに薬局がない辟地の消費者、または薬局まで薬を買いにいけない高齢者にとって、医薬品が購入できる通販は便利なツールであった。これを然したる理由がなく、「とにかく通販は危険性がある」として規制したために、事業者および消費者はやはり不利益を蒙ることになったわけだ。

 こうした規制は社会ニーズと明らかに乖離しているだけでなく、有望な通販市場の発展を著しく阻害している。一方で海外諸国は日本ほど過度な規制はない。無論、一定の制限はあるが、広告の表現についても比較的自由であり、また、日本のように医薬品の通販に規制を課しているような国もまた少ない。

 なぜに日本だけ特殊な環境下で商売を行なわなければならないのか。このままでは国内の有力な通販事業者は今後、海外に軸足を置くことになるだろう。当然、国内の事業者がそっぽを向くようなマーケットに海外の企業が興味を持つはずはない。そうして国内外の有力事業者から見捨てられた市場の行く末に明るい未来はなかろう。

 社会ニーズの変化を考えずに省益のためだけに通販に勝手な規制をかけてきた官僚による通販に対する縛りは、政権が変わった今こそ、見直すいい機会ではないだろうか。有望な国内産業の1つである通販市場の疲弊を招きかねない過度な規制の再考を新政権には強く期待したい。

社説・ネットの安全は最優先事項だ

 通販実施企業の顧客情報の漏えいが相次いでいる。7月には通販保険大手のアリコが、先月は大手芸能事務所のアミューズの通販サイトから、今月も三菱商事の通販子会社であるデジタルダイレクトの通販サイトからもクレジットカード情報を含む顧客情報の漏えいが発覚。情報漏えいが発覚した企業はその都度、「再発防止に向け、対策を徹底したい」などと繰り返すが、カードの不正利用などの実害が出ていることは無論のこと、知名度の高い企業からの相次ぐ顧客情報の漏えいだけに、消費者の通販に対する信頼を大きく毀損する可能性が高い。当該企業は自社だけの問題と捉えるのではなく、通販業界の今後の浮沈を左右しかねない事態に陥らせてしまったことを認識して、猛省すべきであろう。

 しかし、一方で腑に落ちないのは、なぜ、通販企業からの顧客情報の漏えいが絶えないのかということ。内部犯行の可能性が高いアリコのケースは別として、アミューズやデジタルダイレクトの顧客情報漏えいの原因は運営する通販サイトが海外から不正アクセスを受け、情報を盗み取られるというものだ。同手法による顧客情報の漏えい事件はここ数年で急増しており、その危険性は当の通販企業も認識しているはずで、事前に対策は施せたはずである。それにも関わらず、同じ手法で個人情報が漏えいしてしまっている事態は消費者から怠慢と非難されても仕方あるまい。

 通販サイトの安全対策の遅れは、資金面や手間、そして「うちだけは大丈夫」という根拠不明の思い込みがあるようだ。確かに万全なセキュリティ対策を施そうとすれば、少なくないコストを投じる必要があろう。また、以前から通販サイトを構える企業の場合、開発時にぜい弱なウェブアプリケーションを使用していることが多いため、対策を講じるためには、あらゆる箇所をチェックする必要があるなど、膨大な手間がかかることは言うまでもないであろう。

 しかし、これだけ通販サイトの顧客情報漏えい事件が多発している状況にあって、対策にかかる多額のコストや手間を前に、労を惜しみ、「今までも問題なかったから大丈夫」などと楽観している場合ではあるまい。今やセキュリティ対策の甘い通販サイトは悪質な海外のハッカーから、狙い打ちにされており、いつ顧客情報が盗み取られてもおかしくはない。「対岸の火事」と問題視していないと、近いうちに手痛いしっぺ返しを喰うことになりかねない。

 一旦、事が公になれば、渋っていたセキュリティ対策費は無論のこと、顧客への説明や対応、そして売り上げを支えてくれた既存顧客の信用を一気に失うことになる。また、個人情報が流出した通販企業で商品を購入しようと思う消費者はまずいなくなる。つまり、未来の顧客をも失うことになり、それこそ、関連するコストや損失は事業基盤を揺るがすほど甚大な額となるだろう。

 使い勝手の改善や集客策、販促策など通販サイトにはいくらでもやらねばならない事項がある。しかし、安全対策はそれらの優先事項を上回る最優先事項と認識しなければならない時期に来ている。

ネット政策は啓蒙視点が重要だ

 自由民主党および民主党が両党に対し、楽天などネット販売事業者60社が8月10日に提出したネットビジネスの振興策に関する質問状の回答が各政党から出された。質問状では、内需拡大や中小企業活性化策等としてのネットの位置付けや振興策、規制等をゼロベースで見直すことに対する考え方など6項目に関して質問したものだが、実態を踏まえた施策という点で見ると、民主党の回答がより踏み込んだ考えを示している。

 少子高齢化の進展で国内マーケットが縮小していくことを考えた場合、国内産業は経営の効率化と新たな市場の開拓が必要になる。そのための有力なツールがネットであることは明らかだ。小売業に関して言えば、小さな投資負担で時間や地理的な制約をクリアできネット販売は中小小売業に有効な活性化策であり、生産性の向上にもつながる。既に、有力総合通販企業がカタログからネットへのシフトに取り組んでいるが、根本的な狙いは経営の効率化だ。

 こうした点を考えれば、物販を中心としたネットビジネスの振興は政策上の重要テーマで、本来であれば自民・民主両党のマニフェストにも盛り込まれているべき事項だが、明確に触れられていない。その意味で楽天等が提出した質問状は、ネットに対する両党の基本的なスタンスを引き出した点で意味があろう。

質問状への回答では、自民・民主とも、ネット販売をはじめとするeビジネスが成長政策上重要と位置付け振興策を講じる考えを示しているが、自民党が既存の計画や枠組みをベースに政策や制度設計の考え方を示しているのに対し、民主党では、ネットの特性や実態、規制による弊害も勘案した考えを示すなど、政策の進め方で違いが見られる。

これは、政権を担ってきた与党と政権奪取を狙う野党の立場の違いを反映したものとも言えるが、その中で目を引くのは、民主党がネットに関連した制度設計に関して、過度な規制に依存するのではなく、ネットユーザーのモラル啓発やリテラシー向上をベースにする方向性を打ち出していることだ。

昨今、消費者保護を名目に行政が様々な形で産業に介入しようとする動きが目立つが、規制一本槍の施策は事業者を萎縮させ、産業の発展の足枷になる。その意味では、消費者への啓蒙を図り、自ら身を守る術を身につけさせることも重要だ。ネットを成長政策上の重要な要素として振興を図る以上、消費者のリテラシーを高めるという視点は欠かせないものだろう。

医薬品のネット販売では、安全性確保策等を十分に検討しないまま、"ネットは危険"という漠然としたイメージ先行で規制が強化され、消費者や医薬品ネット販売事業者がいわれのない不利益を被る結果を生んでいる。これはネットの実情から目を背けたものであり、他のネット販売分野でも同様のことが起きれば、ネットを軸にした成長政策など望めるはずもない。

政権政党は8月末の衆院選で決まるが、今回質問状に回答した自民・民主各党がネットの実のあるネット振興策を実行できるか、ネット販売事業者は注視する必要がある。

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