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有料会員制とEC

 先日、初めて大型小売店「コストコ」に行った。非常に込み合い、溢れるほどに商品が積み込まれたカートが店内を動き回る様には圧倒された。その賑わいは「コストコ」が会員制であることが起因しているよう。「コストコ」では年会費4400円を支払い、会員にならねば買い物できない。会員の義母曰く「会費を払っても安くてよいものがある。せっかく払っているんだから、頻繁に行ってたくさん買わないと損」という。

 有料会員制はEC上でもアマゾンやヤフーでも採用しており、ヤフーによると「会員のロイヤリティの高さたるや尋常ではない」という。「買わせる」のではなく「会員になって」というアプローチ。ECで今後どう広がりを見せるか。注目だ。

市場縮小招く過剰規制に反対

 機能性表示食品制度の施行以降、消費者庁が大ナタを振るっている。健康増進法ではトクホに対する初勧告や取り消し処分、景表法でもトクホやアイケア関連の健康食品に初の処分が行われた。確かに健食の"表示解禁"は監視強化と両輪で進めるべき面もある。だが、新制度は導入わずか2年。ヒット商品も少なく、市場の評価は定まっていない。成長戦略としての側面を軽視して規制強化が先行すれば、逆に市場の縮小を招く。

 ライオンのトクホに関する健増法の「勧告」は業界に衝撃を与えた。国の許可を得たトクホですら例外ではなくなったからだ。

 日本サプリメントは、健増法に基づきトクホの取り消しを受けた。大きく報道され、社会的制裁を受けた。事業の存続すら危ぶまれる状況。だが、消費者庁は容赦なく景表法による処分で追い打ちをかけた。課徴金命令が科される可能性もある。

 健食に対する景表法の処分といえばダイエットが中心だった。だが、最近では、初めてアイケア関連の健食に適用された。機能性表示食品制度の導入を受け、今後は、目や関節に対する機能をうたう健食に対する監視も強まってくるだろう。

 景表法は14年末、都道府県にも措置権限が与えられ、国は昨年、課徴金制度を導入した。一方の健増法は、第4次一括法の施行とともに、執行権限が地方自治体に移譲された。保健所が新たな規制当局として台頭し、監視の網は広がっている。それぞれ運用が一段格上げになった形だ。

 ただ、トクホに対する「勧告」には、過剰規制との声がある。法律上の建てつけは、あくまで"行政指導"であるにもかかわらず、社名は公表され、社会的制裁効果はかつての景表法と変わらないためだ。そもそも国が許可したものでもある。

 保健所による健増法の運用も明らかにバラつきがある。都内をみても大手代理店や民放キー局が集中する「港区」の運用が群を抜く。管内の事業者に対する指導が基本であるためだが、不公平感が強い。

 莫とした"健康イメージ"を前に改善を求める指摘にとまどう事業者も多い。健増法の誇大表示の禁止規定は、「著しい誤認」を排除するもの。消費者庁は「著しい」の意味を説明するが、各自治体の担当者で認識は一致していないのではないか。「指導」は「処分」より"運用の壁"が低い。裁量の入り込む余地も大きい。早急な是正が必要だ。

 事業者も認識を改める必要はある。景表法は、その目的がかつての「公正競争の阻害」から「消費者の商品選択の阻害」を排除するものに変わった。規制緩和で新制度ができ、健食市場は「調整期」に入った。これまで通りの表現が通用しないことは認識する必要がある。

 ただ、消費者庁の役割はなにも執行だけではない。新制度を中心に消費者教育を進める役割もある。消費者教育がままならない中で国民の健康に対応する各制度が乱立し、その違いを認識する消費者は少ない。インパクトの強い処分など規制強化が続けば、新制度の成否にも悪影響を及ぼしかねない。慎重な法運用が求められる。

自主回収での対応

 先日、遅めの"新年会"の計画が持ち上がり、事前に近くのドラッグストアで卓上コンロ用のカセットボンベを購入しておいた。

 ところが、その翌日に当該ボンベの製造会社が自主回収を発表。あわてて問い合わせ先のフリーダイヤルに電話したが、何度かけても一向につながらない。数十回のチャレンジの末、あきらめた。

 通販企業でも仮に自主回収を行う際は、要注意である。単に告知するだけでなくインバウンドの体制も整えなければ、さらなる客離れを招いてしまう。

 逆にそこでの対応やコミュニケーション次第では、既存顧客とのつながりを保ち、ピンチをチャンスに変える可能性も潜んでいる。その意味でも対応力が大事になるだろう。

消費者庁の行政処分について

 「一粒で二度おいしい」といえば昔懐かしいグリコのキャッチフレーズだ。これを思い起こさせるような事例が続いている。消費者庁による行政処分だ。

 刑法には「一事不再理」という原則があるが、そんなことなど消費者庁はお構いなしらしい。1月には三菱自の燃費不正問題を巡り、国交省による改善指示や罰則、自主的な賠償金の支払いが行われる中で同社に5億円の課徴金を科した。2月にはトクホの許可を取り消した日本サプリメントを措置命令で追撃した。

 確かに2社が犯した違反は重い。だが、2社の事案は「誤認の排除」という景品表示法適用の目的からは外れるだろう。すでに多くの報道機関が問題発覚時点でこれを報じ、「誤認」は排除されていた、といえるためだ。

 行政のある元執行担当官は、「最近の消費者庁による景表法運用は、『既往の行為(すでに終わった行為)』にも厳しい態度で臨むケースが増えている」という。ただ、処分せずとも2社にはすでに社会的制裁が加えられていた。

 いずれも違反を認めている事案。証拠集めに労力はかからない。日本サプリメントには今後、課徴金が科される可能性も残されているが、単品訴求が多い健康食品通販では業績に与える影響が深刻だ。「溺れる犬を棒で叩け」ではないが弱った者にさらに追い打ちをかけ、実績を積むことが消費者庁が行うべき消費者利益の保護なのか。

早期にオープン化を

 ヤマト運輸の関連会社や日本郵便が設置する宅配ロッカーが合計で200台を超えている。設置を本格化してから1年足らずで、首都圏の駅を中心に設置されるようになっている。

 今後も設置が増えるだろうが、一方で受け取れる荷物は限定されている。一定の通販会社の商品、あるいは特定の個人宛て荷物といった具合だ。

 より広範な利用を可能にするためには設置台数を増やすだけでは不可能。より多くの通販顧客が受け取れるようにすることが必要になる。

 そして多様な宅配便会社の荷物を受け取れるようオープン型とすることも不可欠だ。設置台数の拡大に加え、オープン型も早期に実現してもらいたい。

価格下落の先には?

 正月に本格スタートしたアパレルのセールも終盤を迎え、定価1万円の服が3000円台で販売されているのを見ると、最初の値段設定に疑問を感じてしまう。

 ゾゾタウンの前澤社長も昨年、セールで売り切るアパレル業界の体質について苦言を呈し、「良い商品がそれなりの値段で顧客の手に渡る市場作りをけん引したい」と発言した。

 ゾゾは今後、PB商品を投入することを発表。大手アパレルもEC限定の商品やブランドの開発に前向きで、アパレル商材はより買いやすい価格になることも予想されるが、それは同時に通販専業の価格優位性の低下も意味しており、これまで以上に価値ある商品を提供できなければ勝負できなくなりそうだ。

「ゆうゆう窓口」の縮小

 郵便局の24時間営業窓口「ゆうゆう窓口」が縮小している。記者宅の近所にある郵便局のゆうゆう窓口も、この2月で24時間営業を取りやめるという告知が正月に来た。

 記者は一人暮らしのため、ゆうパックの初回配達時に通販の荷物を受け取れなかった際、軽い物であれば深夜に窓口まで受け取りに行くことが良くあった。ユーザーとしては利便性低下となる。

 もちろん、郵便局の人手不足が深刻なことは良く分かる。それであれば、例えば初回配達時でも受取人が日時指定を変更できるようにしてもらえないだろうか。受取ロッカー「はこぽす」の拡大も。配達員の負担軽減に協力したいのはやまやまだが、インフラ整備も願いたいところだ。

配送は早さだけ?

 英アマゾンが「急がなくてもいいよ便」なる配送サービスを展開中だという。通常よりも配送に時間がかかる分、それを選択した顧客には次回以降に使用できる1ポンド(140円)分の割引券を付与するというもの。

 日本では各社が短時間のスピード配送などし烈な配送サービス合戦を繰り広げている。利用者側も買った商品が早く届くに越したことはないと思っているだろうが、早く届けなくてもよい商品や速さよりも割引して、といった様々な要望が当たり前にあるはずだ。

 過剰な配送サービスは至るところで歪みを生む。配送は通販にとって重要で様々な工夫を行うべきだが、できることは配送スピードだけか。再考してみてもよさそうだ。

労働環境対策も差別化を

 今号の読者投票による「2016年の通販業界10大ニュース」を見ると、今年も通販業界に関わる様々な出来事が起きたことが分かる。どれも今後の通販業界に影響を与えそうな出来事で注目されるが、通販業界のみならず今年あった出来事として印象深かったことの1つは電通社員の過労自殺問題だ。これを契機に日本企業における"働き方"に関わる諸問題がクローズアップされた。最近では社員に違法な長時間労働などを強いる企業に対し、是正勧告を矢継ぎ早に行うなど行政も本腰を入れて対策に乗り出しており、社会の目が労働問題により厳しくなってきている。無論、通販企業とっても他人事ではない。これまで労働環境対策を後回しにし、なし崩し的に従業員に長期労働を強いてきた企業であるならば早急な対応が必要だろう。

 しかし、労働環境の対策・整備は行政や世間から増す監視の目の厳しさに対応せんがために行なうべきわけでない。社会的変化に対応した労働環境を整備できなければ、企業は働き手、それも長期にわたって会社に利益をもたらしてくれ得る優秀な働き手を確保することが今後、困難になるからだ。働き手の数が多い時代は何とでもなったろうが、生産人口が減少し始めた今後はこれまでのようにはいくまい。優秀な人材の獲得はもちろんのこと、そうした人材を退社させず、長期にわたり働いてもらえるための準備も必要だ。

 それには働きに見合う報酬面はもちろんだが、従業員のワークライフバランスを考えた施策が必要だろう。従業員の生活を圧迫する残業を極力、なくすための対策なども講じるべきだろうし、産休・育休制度を"普通"に利用できるようにすることも必須だ。時短勤務への対応も必要だろう。また、"育児"だけでなく、"介護"にも対応した制度も考慮すべきだ。老若男女問わず、限られた優秀な人材を獲得していくには様々な準備が欠かせまい。

 すでに通販実施企業の中でも労働環境の整備に向けて動き出している企業も多い。例えばジャパネットたかたでは来年1月から原則、午後8時半を超える残業を禁止し、また、週2回は残業自体を禁止する試みを実施する。そのために人員体制やシステムやツールにきちんと投資をして、無理なく実現できるような環境を整えるという。仮想モールを運営するヤフーでは10月から新幹線通勤を導入。通勤時間が2時間以上に従業員を対象に上限15万円まで支給することで静岡や新白河、越後湯沢からの新幹線通勤も可能になる。従業員の生活水準向上を支援する狙いのほか、育児や介護の問題のための離職を防ぐ考えもあるようだ。また某外資系通販企業では家族同様の存在である"ペット"が病気などの際に、休暇がとれる制度を設けている。

 労働環境の整備はすべての企業がこれから先、避けて通ることはできない。避ければ人材は集まらず、会社は成り立たなくなる。そうであればいかに先んじて対策に乗り出し、費用対効果の高い施策を考えて展開し、競合と差別化を図っていけるかも企業にとって1つの重要な戦略と捉えるべきだ。本腰を入れて対応に臨むべき時はすでにきている。

新技術の行方

 IoTやAI、ドローンなど今年も通販業界では多くの注目サービスが登場した。新技術は既存のビジネスに変化をもたらすという点で常に大きな期待が寄せられている。

 しかしながら、過去を振り返ると注目度ほど定着しなかった技術もたくさんある。数年前に登場した3Dプリンターもその一つで、関係業者に聞くとインク(樹脂)代の高さがネックとなり最近では取扱量が低迷。一部の大手海外メーカーが近く日本での事業を撤退する噂もあるという。

 新技術は他社に先駆けて導入することで差別化できるため、見切り発車で導入する企業も多い。前述のサービスも果たして何が残り、消えていくのか。1年後にはその答え合わせができることだろう。

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