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【売れるネット広告社とFID 「コンバージョン」なき論争㊦】 「オリジナル」か「知財」か、見解相違に冷めた声も

 「確認画面でアップセル」の商標をめぐり法廷外論争に発展した売れるネット広告社(以下、売れるネット)とFID。和解となっても主張が平行線を辿る背景には、この商標に集約されたマーケティング手法が「オリジナル」か「知財」かという法的根拠の有無が見解の違いに表れている。

 「確認画面でアップセル」という商標の侵害を判断する場合、まずこれが商標権上の「商品等表示」(識別性のある商品・サービス)に該当するか、という点が争点になる。これにFIDは「確認画面でアップセルを行うという機能を営業ツール等の『説明文』で示すだけでは『商品等表示』にあたらないと和解協議の中で明らかにされた」とする。和解にあたり侵害がないことを認めることを求めており、和解内容は「商標権・著作権侵害はない」となっている。

 だが、売れるネットの見解は「違法なのに和解したというロジックではおかしいから。(侵害の)最終的な判断は下されていない」というもの。確認画面でアップセルを行う手法は05年に開発。「当時の企画書やランディングページ(LP)も残っており、100%確実」と"オリジナル"であると自負する。同様の手法を他社が使用することが許せなかったのだろう。

 もう一つの争点はFIDのLP等制作ツール「侍カート」で作ったLPが売れるネットのものに酷似していたとして著作権侵害を訴えた点。FIDは「争点にすらならなかった」という。実際にLPを制作したのは通販会社であり、そもそも訴えるべき対象が異なるためだ。

 この点、売れるネットも争点とはならなかったことに「間違いない」と認める。ただ、「FIDのツールは同じものができるもの。その点が許せなかった」とする。

 「確認画面でアップセル」を行う手法は、確かに売れるネットの"オリジナル"であるかもしれない。商標登録していることからも開発への強い思いが表れている。ただ、訴訟となれば問題は別。あくまで法的根拠の有無が判断されることになる。

 では、なぜ和解決着の道を選んだのか。これに売れるネットは、「FIDが『確認画面でアップセル』を変更・削除したため目的は果たした。パクリ文化が横行する業界への問題提起が目的。削除・変更を条件に和解に応じてあげた」とする。

 一方のFIDは「「互いに気持ちよくビジネスを行うため、嫌だというのであれば変更しようと。係争を続けても互いに生産性がない。これを勝訴と主張したいのであればそれもよいが、裁判上の判断は別」と和解した経緯を話す。

 法廷外で和解をめぐる互いの主張が平行線を辿る中、複数の通販事業者からは「だったら判決で明確にすればよかったのに」と、冷めた声が聞こえてくる。和解となった以上、その内容がすべて。解釈は各社に委ねられるが、和解後も互いの主張を喧伝し合うことは、両社にとってプラスになりそうもない。

 売れるネットは確認画面でアップセルを行う機能で近く特許を取得するという。「違法でないなら削除・変更したものを戻してもらっていい。業界をけん引するリーダーとして権利の不当な侵害には断固たる姿勢で臨む。取得後に改めて提訴も検討する」とも話す。「確認画面でアップセル」をめぐる問題はまだ緒を引きそうだ。
(おわり)


ベルーナ 若年層向け事業強化へ、仮想モールのシステム開発

 ベルーナでは、20~30代向け衣料品通販の「リュリュ」を強化する。ネット販売を伸ばすために、ネット専用商品を増やすほか、昨年から展開している仮想モールを強化する。同社の主力事業である総合通販事業においては、中高年向けの「ベルーナ」は好調に推移、事業全体では増収となったものの、リュリュは減収だった。他社商品の取り扱いも拡大することで、若年層向け事業をテコ入れする。


 リュリュの2018年3月期売上高は、前期比11・5%減の65億9400万円だった。リュリュでは昨年から他社ブランド商品の取り扱いを始めており、夢展望やマキシムの「神戸レタス」など30前後のブランドが出店している。現在、来年4月をめどに、仮想モールのシステム開発を進めており、出店店舗数は70~80まで拡大する予定。

 ネット専用商品に関しては受注構成比が拡大しており、2017年1~3月には6・7%だったものが、18年1~3月には15・7%まで増えた。19年3月期は定番商品の拡充などを中心にラインアップを増やす。

 専門通販事業では、化粧品のオージオが売上高は前期比23・2%増の67億5400万円、営業利益が同16・6%増の7億3200万円と好調に推移。卵殻膜系化粧品などが成長をけん引した。また、台湾向けの越境ECについては、売上高が17年3月期の3000万円から18年3月期は1億4000万円まで拡大、単月黒字も確保した。19年3月期の売上高は4億円を見込んでいる。

 一方、ベビー用品やギフトのベストサンクスは苦戦。売上高は前期比14・3%減の21億9300万円、営業損益は2億7000万円の赤字(前年同期は1億8400万円の赤字)で、5期連続の赤字となった。これを受けてベルーナでは事業の収益化を断念。「売却も検討したが、ベストサンクスには固定資産があるため、営業停止がコスト面で最も効率が良い」(安野清社長)として、今年度上半期をめどに営業を停止する。ベストサンクスは、レモールのベビー事業とギフト事業を承継したもので、14年2月にベルーナが子会社化していた。

 アパレル店舗の売上高は、前期比13・1%増の56億2600万円、営業損益は2億5700万円の黒字(前年同期は5億300万円の赤字)だった。コスト構造の見直しを進めたほか、不採算店を閉店。また、直近のトレンドを反映させた店舗専用商品の割合が拡大したことで、既存店売上高が同31・8%増と好調に推移、事業全体でも2桁増収となった。店舗数は17年3月期末の64店から18年3月期末は59店に減ったが、19年3月期末は90店となる予定。

 同社では4月から、衣料品通販において購入額によらず送料を請求するようにしたほか、食品通販やワイン通販などでも送料を値上げした。影響について安野社長は「まだはっきりとはわからないが、ゼロではないだろう。商品力強化とネットの充実でカバーしたい」としている。

スマホの「打消し表示」 消費者庁が監視強化へ、「強調表示」と同じ色・背景を

12-11.jpg スマホの「打消し表示」は、「強調表示」と同様の大きさ、色、背景色で。消費者庁が景品表示法におけるスマートフォンの「打消し表示」監視を強化する。画面サイズの小ささから表示を見落としがちなスマホの特徴を捉え、パソコン以上に「強調表示」とのバランスを求める。5月16日に公表したスマホの「打消し表示」に関する実態報告書で明らかにした。

 スマホは、PCに比べ画面サイズが小さく、縦長のページ構成になる。アコーディオンパネル(クリックで開閉する表示)を用いた表示も特徴。情報を拾い読みしたり、下にスクロールしなければ表示されない情報を見落としがちになる。これら特徴を捉え、消費者庁は景表法違反のおそれのある事例と、スマホで求められる「打消し表示」の事例を公表した。

 とくに注意すべきポイントは、「アコーディオンパネルにおける打消し表示」「コンバージョンボタンの配置箇所」「強調表示と打消し表示の距離」「打消し表示の文字の大きさ」「打消し表示の文字とその背景の色・模様」「ほかの画像等に注意が引きつけられるか」の6項目。これら要素から、景表法違反を総合的に判断する。

 アコーディオンパネルのクリック後に表示される「打消し表示」は見落とされがちな傾向にある。「強調表示」やほかの表示で重要性に気づかない場合、景表法上問題となるおそれがある。

 このため「強調表示」に近接した箇所に配置。「打消し表示」と一体として認識されることを求めた。クリック前のラベル表示の場合、消費者が必ずタップするよう工夫することも必要という。

 「強調表示」と申込等のコンバージョンボタンと同一画面に表示され、「打消し表示」が離れていることで気づかない場合も景表法上問題となる場合があるとする。「強調表示」とコンバージョンボタンを同一画面に表示する場合は、同時に「打消し表示」を認識できるようにすることを求める。同一画面の表示が難しい場合も、スクロールした際に認識できるようにすることが必要という。

 「打消し表示」の文字の大きさや色、背景色とのバランスでも留意点を示した。「強調表示」に比べ目立たない色で気づかないものである場合は、景表法上問題になる。

 このため「打消し表示」を同一画面にあるほかの表示と比べて注意をひく大きさにすることを求めた。文字の色も「強調表示」と「打消し表示」の色や背景色を統一し、一体と認識できるようにすることを求めた。

 実態調査は、20~60歳の男女1000人を対象に、ウェブアンケート調査やグループインタビューを行った。

 スマホでは、表示画面をスクロールして下まで読まない層が約4割に達した。飛ばし読みや途中でスクロールをやめる傾向がみられた。「打消し表示」を見落とし、誤認したまま購入した消費者も約4割に達していた。

スクロール 3年後売上高1千億円へ、新中計を策定、ネットは自社サイト強化

 スクロールは、2019年3月期からスタートする3カ年の中期経営計画を公表した。ネット販売事業においては、既存事業のブランド再構築を図るほか、商品調達力を強化することで収益力を強化。化粧品・健康食品事業については、ブランド認知向上に向けたプロモーションを展開する。最終年度となる21年3月期の連結業績は、売上高が18年3月期比で60・8%増の1000億円、営業利益は同276・1%増の49億円、経常利益は同242・9%増の50億円を見込む。

 同社では17年3月期から3カ年の中期経営計画を策定していたが、昨年シニア向け個人通販から撤退するなど、経営環境が大きく変化したこともあり、今期をスタートとした新たな計画を定めた。堀田守会長は新しい中期経営計画について、「最初の2年間は達成できるという確信のある予算だが、最終年度の数字は"複合通販"というコンセプトを押し進める中で、大きな飛躍を遂げる新しいビジネスが出てくることを期待して設定したものだ」と述べた。

 生協事業を中心とした通販事業においては、これまで展開してきたアパレル・雑貨の拡大を図るとともに、化粧品・健康食品や医薬品など商材拡大による成長を目指す。また、旅行など体験型の"コト消費"関連サービスも提供する。

 個人向け通販となるeコマース事業では、大手仮想モールで知名度の高い店舗を運営する子会社を複数抱えており、利益に直結する商品調達力を引き続き強化するほか、楽天市場など仮想モールの店舗だけではなく、自社通販サイトの売り上げ増に向けて、ブランドを再構築する。

 同事業では今年、ミネルヴァ・ホールディングスを買収。5月には同社子会社のナチュラム・イーコマースと合併し、社名も「ナチュラム」に変更している。アウトドア用品専門の通販サイトを運営するナチュラムの顧客は男性が約90%。これまで女性顧客が中心だったスクロールグループにとっては新たな顧客層となるため、今後は男性向け事業も強化していく。

 化粧品・健康食品の健粧品事業では、収益バランスを取りながら、ブランド認知・浸透に向けたプロモーションを実施する。すでに、ナチュラピュリファイ研究所の24hコスメは欅坂46の平手友梨奈さんを、T&Mの「TV&MOVIE」は女優の中谷美紀さんをブランドミューズに起用している。

 代理店や大手小売りと連携を強化することで、配下店舗を拡大。また、オフィシャルサイトの刷新や、大手仮想モールへの出店も行う。さらには、越境ECや海外卸販売など、グループの資産を使った収益モデルを構築する。

 ソリューション事業は物流拠点の拡大を計画しており、20年3月期中には新たに関東地方の物流センターが稼働する予定。越境EC関連では、新たに子会社となった成都インハナを活用してサービスを強化する。物流代行に関しては、消費者が通販サイトで購入した商品が、全国のファミリーマートで受け取れるようになるサービスも5月に開始している。

 各社の業績に大きな影響を及ぼしている、配送料値上げについては「通販事業は生協による共同配送なので影響はほとんどない。eコマース事業については、顧客に値上げ分を転嫁していくことになるので、厳しい状況だ。ソリューション子会社のスクロール360では、ネット販売企業の配送を約80社受託しており、宅配会社との契約は同社が行っている。昨年12月~3月までの間にクライアントと交渉し、全社値上げを受け入れてもらった」(堀田会長)という。

【売れるネット広告会社とFID 「コンバージョン」なき論争㊤】 和解も法廷外論争、売れるネット「完全勝利」と喧伝

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 売れるネット広告社(以下、売れるネット)とFIDは今年4月、和解が成立した。売れるネットの商標権などを侵害したとして福岡地裁に差止請求していたもの。だが、和解の解釈をめぐり、法廷外で売れるネットは実質勝訴を主張している。互いに販売企業の商品を購入など「コンバージョン」という最終成果に導くのが仕事だが、論争は両社のプラスになるのか。

 売れるネットが問題視していたのは2点。一つは、同社のLP等制作ツール「売れるネット広告つくーる」の特徴的な機能である「確認画面でアップセル」という文言が、FIDのショッピングカートASP「侍カート」に関する営業ツールの説明文で使われていたこと(=画像)。売れるネットは「確認画面でアップセル」という文言を商標登録していた。

 もう一つは、「侍カート」を使い、制作されたLPが、「売れるネット広告つくーる」を使って制作したLPに酷似していたこと。昨年5月、これら行為が商標権、著作権の侵害にあたると損害賠償を求め提訴した。

 ただ、訴訟はFIDに商標権、著作権の侵害、不正競争防止法違反にあたる行為がなかったことを認める和解で決着。原告も請求を放棄した。

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 FIDは「侵害がない事実が認められ、これ以上争う必要がなく和解した」(和田社長)とする。

 だが一方の売れるネットは、「解釈が異なる」と反論。和解内容も「説明文の変更に応じ、商標を守るという当初の目的を完全に果たし勝利した」(同社発表資料)、「修正・削除対応したため和解してあげることにしました」(同・加藤社長のコメント)などと"実質勝訴"を主張する。

 実際、FIDは、説明文中の内容を「確認画面においてアップセル」に変更してはいる。
 互いに通販企業の販売戦略を支援する立場。当然、各種の表示関連法規、競争法に精通していることが求められる。だが、プロフェッショナルであるはずの両社の主張はなぜこうも異なるのか。(つづく)

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