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ジャパネット処分で注目、公取協の実態 処分背景に「脱退」の影響は

1-10.jpg 消費者庁は今年10月、家電通販大手のジャパネットたかたに景品表示法に基づく措置命令を下した。販売するエアコンや4Kテレビで不当な二重価格表示を行い、「有利誤認」と認定された。違反内容はジャパネットも認めており、妥当といえるもの。ただ、処分で改めて注目されるのが、「公正取引協議会」の存在だ。というのも、ジャパネットは、処分の対象になった表示を行う直前、家電製品の販売をめぐる公取協を脱退していたためだ。



非加盟社はアウトサイダー

 「家電公取協を脱退したからだよ。公取協からすれば入っていない企業はアウトサイダー。抜けたら損。大丈夫かなと思っていた矢先の処分だった」。かつて公正取引委員会で法執行を担当していた行政関係者はこう話す。この関係者の言う"家電公取協"とは、全国家庭電気製品公正取引協議会のこと。家電製品の販売をめぐり、表示等に関する業界自主ルールを運用する団体のことだ。

 家電をはじめ、公取協は現在、全国に104団体ある(今年3月時点)。運用するのは、景表法に基づき、加盟する事業者が自ら策定した「公正競争規約」。いわば国公認の"広告カルテル"だ。当然、その内容は法律以上のものになり、加盟社は表示面で制約を受ける。

 一方でメリットもある。消費者庁が規約のある商品の景表法事案に接した場合だ。消費者庁の選択肢は二つある。

 一つは自ら調査し「指導・措置命令」を行うケース。もう一つは、公取協に「移送(処理の委託)」するケースだ。「移送」の判断は、消費者庁が行うため、公取協の加盟社であっても処分対象になる場合はある。

 ただ、日常的に規約を遵守し、公取協による規約に基づく「注意・警告」(社名非公表)を受けている加盟社は、「移送」によって処理されることが少なくない。前年度実績でも、消費者庁は調査事案のうち、15件を公取協に「移送」。ただ、非加盟社など影響力が及ばない企業である場合、必然的に対応は消費者庁が行うことになる。

脱退と処分奇妙な符号

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 ジャパネットが家電公取協に入会したのは6年ほど前。だが、昨年4月末、これを脱退している。理由について、家電公取協は「とくに理由の提示はないが、考えるコンプライアンスや新しい売り方が(協議会のやり方と)そぐわなかったのではないか」とする。ジャパネットは、「加盟社の大半はリアル店舗の家電販売店で、通販で加盟は当社のみ。価格に関する見解の違いが『リアル店舗』と『通販』という業態の違いによってあったのが理由。日本通信販売協会に加盟していたこともある」と話す。具体的内容は「回答を差し控えたい」としたものの、過去に数件、家電公取協から口頭注意を受けたこともあったという。

 10月、消費者庁はジャパネットを処分したが、対象になった表示は昨年5月以降に発行した会員カタログなど。不当表示の対象期間は、家電公取協からの脱退直後と奇妙に符号する。

非会員は 「デタラメな商売」

 今年7月、40周年の記念式典を兼ねた家電公取協の定時総会では、役員が軒並み家電広告の表示に関する問題意識を口にしている(家電公取協の会報誌から抜粋)。

 「いよいよ年末には新4K8K衛生放送が始まる。テレビの本格的な買い換え需要と重なり、大きな成長が期待できる(略)残念ながら昨年から今年にかけて、企業が襟を正さなければいけない案件が続いている。これを他山の石として、規約をしっかり遵守することにより消費者に信頼される業界であるべき」(会長=長榮周作パナソニック会長)。

 「従来、二重価格表示、有利誤認の問題の多くは家電量販店サイドで多く発生していた。現在、それらの問題は非会員のネット販売、テレビ通販業界で多く見受けられるようになってきた。非会員がどうであれ、消費者のために正しい表示を続けていくことが肝要」(副会長=金谷隆平上新電機副社長兼会長)。

 「(式典に参加した)消費者庁の岡村和美長官から家電業界に関するクレームは非常に少ないとの声をいただいたが、内部にいる人間からするとまだまだ正常とは思えない。例えば非会員ですが、新聞広告で今日は5980円だけど明日からは5万9800円とか、そんなデタラメな商売があり、本当に情けないと思う」(理事=牧野伸彦京都府電機商業組合理事長)。

 家電公取協は、大手メーカー等による「製造業部会」と、大手量販店、全国電気商業組合連合会加盟の商業組合による「小売業部会」で構成。いわば、加盟社の多くは自営業を営む中小の"街の電気屋さん"だ。かつて、メーカーの販売を下支えした中小小売店だが、ネットの普及、通販市場の拡大とともにその経営は厳しくなっている。「地域の中小店は大手に安売りされたら勝負にならない。連日テレビで販売するジャパネットが面白いはずもなく、恨みを買ってもおかしくない」(前出の関係者)。

公取委OB再就職先 

 行政との関係も密接だ。

 07年、一般紙報道で全国にある82の協議会(当時)のうち、3割近い23の公取協で公正取引委員会から天下りを受け入れていた実態が明らかになった。「専門知識を持つ人材が必要」というのがその理由だが、公取委OBの再就職先として定着。当時、家電公取協も公取委OBの天下りを指摘されたが、現在、専務理事を務める松尾勝氏も公取委の経済取引局長だった人物。前任で公取委取引部長だった山木康孝氏はその後、全国ローヤルゼリー公正取引協議会の会長に就任している。

 通販とは異なるが、別の公取関係者は、「自動車公正取引協議会では、燃費不正の問題を受けて当時の専務理事が退任した」とも指摘する。16年、自動車業界では燃費不正の問題が発覚。同年4月、消費者庁は三菱自動車と日産自動車を対象に、水増しした燃費を記載した広告が景表法違反にあたるとして措置命令を下した。17年1月には、三菱自を対象に約5億円の課徴金納付を命令。課徴金制度の導入以来初めての命令であり、巨額な課徴金もインパクトを与えた。

 ただ、自動車業界は、公取協が規約を運用する業界でもある。「両社とも加盟社であり『移送』という判断もある。ただ、消費者庁自ら対処した。自動車公取協からすれば自らの業界で消費者庁ががんがん取締りをすれば存在意義がなくなる。"うちがいるのに"というのが普通の心境」(前出の関係者)。その直後、当時、自動車公取協で理事を務めていた公取委OBが任期満了を前に退任している。自動車公取協は「(燃費不正の問題の影響は)ないともらっていい。本人の意向であり、現在も別の公取委OBは職員として在籍している」とするが、業界を揺るがす問題への対処が遅れたことに、自責の念を感じたとしてもおかしくはない。

                    ◇

 公取協は、あらゆる商品を対象に抽象的な規定にならざるを得ない景表法に対し、具体的な商品で業界の自主ルールを定めるもの。消費者の合理的な選択、信頼確保の上で、公取協による規約運用が果たす役割は大きい。ジャパネットの処分をめぐっても家電公取協は、「(こちらが)申告したわけではない」としている。

 ただ、規約が定められている業界は、食品でとくに多く、化粧品もある。また、家電は中小小売店がひしめく業界でもある。通販企業は、全国に監視の目が光っていることを意識する必要がありそうだ。


課徴金の"破壊力"

行政処分に依らず、表示是正も

【強まる景表法の圧力】


 消費者庁は10月31日、健康食品通販を行うシエルに景表法に基づく措置命令を下した(6面に関連記事)。合わせて命じた課徴金納付の額は、約1億円。シエルは、2年3カ月におよぶ不当表示の清算を迫られることになった。課徴金額は、2016年に制度が導入されて以降、2番目の規模。思い知らされたのは、課徴金の"破壊力"だ。ただ一方で疑問として残るのが、なぜ不当表示が放置されたかだ。

 シエルの不当表示期間は15年12月から今年1月末。課徴金対象期間は、16年4月から今年7月末となっている。課徴金制度の導入が16年4月であるため、それ以前の不当表示による売り上げは納付対象にならず、一方で課徴金は不当表示を終えてから半年間の購入(自ら社告掲載など誤認排除措置をとらなかった場合)まで対象になるためだ。

 算定方法は、その間の不当表示の対象になった商品の売上高の3%。不当表示期間が2年3カ月に及んだことで、単純に利益にして7%超の損失を1年で背負わされたことになる。民間信用調査機関によると、シエルの17年11月期の売上高は25億円。小さくない額だ。

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 ただ、なぜ2年超も間、シエルの不当表示は放置されたのか。消費者庁はこの点、「(不当表示の)端緒情報に接したから(対処した)としか言えない」(大元慎二表示対策課長)と話す。一般的に景表法事件の処理は端緒に接してから数カ月から1年ほどとされる。が、これと比べても長い。

 また、消費者庁は四半期ごとに健康増進法に基づく健食のネット広告監視事業も行っている。17年度の指導件数は、381社の425商品。これにシエルが含まれたかは不明だが、少なくとも表示の是正は進んでいなかったことになる。消費者庁は「事業者側は置き換え食品との認識で、痩身効果の標ぼうと理解していなかった」(同)とも話しており、このことが長期に及んだ背景にあるかもしれない。

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 ただ、そこで気になるのが、消費者庁が水面下で調査を進めている"耳の健康"に対応した健食だ。調査は昨年秋頃に始まったとされるが、ある事業者は複数回のやり取りを経た今年2月頃、突如として消費者庁からの音信が途絶えたとしている(本紙1674号既報)。

 このために「措置命令なのか指導なのか。"生殺し"の状態」と今も不安を抱え、広告再開のめど、広告クリエイティブの内容も判断できない状態が続いている。いわば、課徴金への"将来不安"が、足かせになっているわけだ。逆から捉えれば、消費者庁は行政処分という違法認定を行わずとも、景表法に抵触する可能性がある表示の抑止を図ることができることになる。

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 景品表示法に課徴金が導入されて以降、処分を前にした企業による「お詫び社告」の先出しも増えた。処分を受けた際の課徴金減額を念頭に置いたもの。昨年11月の「葛の花事件」をめぐっては、調査段階でスギ薬局が社告掲載に踏み切って以降、処分を前に五月雨に社告掲載に至った企業が12社に至った。調査段階における社告掲載に「課徴金をチラつかせて後出しジャンケンで措置命令を決める、新たな調査手法では」と企業の疑念は強まっている。課徴金を圧力に景表法の運用が変わりつつある。

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