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高まる「ブランド毀損リスク」<運用型広告の穴とは> "ヘイトサイト"に広告載ることも

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 通販会社にとって欠かすことのできないネット広告。最近は自社で出稿先を選ぶ「純広告」のシェアは減り、「運用型広告」が一般的になっており、「どこに出すか」ではなく「どんな人に広告を見せるか」が最重要視されている。そんな中で、自社のポリシーに反した内容の記事や、ヘイトスピーチのような反社会的なコンテンツが載っているサイトに広告が表示されてしまう問題が起きている。自社のブランドを守るにはどうすべきか。「ブランドセーフティー」にまつわる問題を追った。

 近年、急速に数を増やしている「まとめサイト」。時事問題などのキーワードでグーグル検索すると上位に表示されることもあるため、ネット利用者にとっては比較的身近な存在といえる。

 こうしたサイトは、「5ちゃんねる」のような匿名掲示板やツイッターの投稿をまとめたものであることが多い。話題となっているのは、政治や芸能、社会問題、スポーツといった時事ニュースが大半。大手マスコミの報道に対し、掲示板やツイッターのユーザーが示した感想などをまとめ、新たに記事化しているわけだ。さらに、その記事にはコメントできる欄があり、ユーザー同士が意見を述べあったり、コミュニケーションしたりしているケースもみられる。

 こうしたサイトの中には、内容的に問題があるものも多々存在する。例えば、一次情報となるニュースの内容をねじ曲げるようなタイトルを付けたり、人種差別や女性差別にあたる投稿を抜き出してまとめたり、誹謗中傷に近いコメントが付くサイトもある。また、掲示板に投稿されたデマを確認せずにまとめて拡散、大きな問題になったこともあった。ネット広告を出稿する企業にとって、もしこうしたサイトに広告が掲載されることになったら、自社のブランドイメージは大きく傷つくことになりかねない。さらには、「差別をあおったりデマを流したりするサイトに広告料を提供する」ことに対する問題もある。

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 人種差別的な内容の記事が多数掲載されているとして、問題になっている「保守速報」(右はトップページのキャプチャー画像)というサイトがある。特に目立つのが、韓国や中国に対する差別的な内容をまとめた記事やコメントだ。保守速報にも各企業の広告が掲載されており、これを問題視するユーザーから、企業や広告配信会社などへの指摘が相次ぐようになった。

 6月初め、保守速報にカタログハウスの広告が掲載されていることを発見したユーザーが同社に連絡。これを受けて即日掲載を取り下げたという。同社の上條篤氏は、その理由について「当社では、アダルトサイトや反社会的なサイトへは広告を掲載しない方針としている。ユーザーからの連絡を受けて確認したところ、保守速報が差別的な内容を掲載しているサイトであると分かったため、掲載停止を広告代理店に申し入れた」と説明する。

 また、同様に広告が掲載されていたエプソン販売にもユーザーからの連絡があった。セイコーエプソンの広報IR部では「子会社のエプソン販売が保守速報への広告掲載を見合わせたのは事実。社内規定に照らし、コミュニケーション活動の基本的な考え方である『中立性を維持する』という観点から判断した。特定の思想・信条を支持している、あるいは否定していると受けとられるような広告活動は行わないのが弊社の基本方針」と出稿停止の理由を説明。「バナー広告は広告代理店を通じて出稿を行っているが、出稿先は広告別に自動選定されるため、弊社のコミュニケーション方針と合致しないウェブサイトへ掲示される結果となった。今回の件を受け、出稿方法の見直しを行っている」とした。

 アフィリエイトサービス「A8.net」でも、保守速報とのメディア会員契約を解除した。運営するファンコミュニケーションズの佐藤吉勝執行役員は「当該サイトを確認し、すでに退会処理は終わっている。どの規約に反したかなどは言えないが、総合的に判断した」と話す。佐藤執行役員によれば、保守速報の掲載期間は短く、成功報酬が支払われたことはなかったという。

 A8.netのメディア会員規約の第23条には、メディア会員としての資格を有するサイトの条件として「人種差別を推奨するサイト・アプリを運営していないこと」と明記されている。規約に違反する可能性が高い保守速報が会員となった理由について、佐藤執行役員は「審査は登録前審査ではなく、新規登録後チェックになるため、若干のタイムラグが生じる。今回は契約期間が非常に短かったので、チェック前に外部から情報をいただいて対応した」と説明する。

 「広告を剥がす」動きは保守速報だけをターゲットにしたものではない。ゲーム系の大手まとめサイト「はちま起稿」は、以前から誤った記事を配信したり、偏った編集をしたりするなど、悪名が高い。同サイトに広告が掲載されていた日本HPに対しユーザーが指摘し、広告配信が停止された。同社では「これまでも、不適切なコンテンツを提供するサイトについては、配信除外設定を行うよう代理店に依頼していた。当該サイトも、内容を確認し配信除外の設定をした」(日本HP広報)という。他にも、保守速報と同様に差別的な内容の記事が問題視されている「アノニマスポスト」や「News U.S.」などへも同様の動きが広がっている。

 ブランド価値を毀損しかねないサイトへの広告掲載を望む企業はない。では、なぜ広告主が要望しないサイトに広告が掲載されるのか。背景には運用型広告の普及がある。

 ネット広告のうち、「予約型」は広告が掲載される媒体や時期、分量を予約するタイプの出稿方法。「純広告」とも呼ばれ、従来のマス媒体に掲載する広告と同じ仕組みだ。一方、運用型は掲載される媒体や時期、分量を予約せず、効率条件で約定して広告が掲載される。

 上に掲載した図がネット広告の概念図だ。実際には、DSP(広告枠を買い付ける事業者)やアドエクスチェンジ(広告枠の仕入れ販売と買い付けの受給を調整する事業者)、アドネットワークとSSP(広告枠を仕入れる事業者)は多数のプレーヤーが複雑・多様に関連。効率化や自動化が進む一方で、「広告配信の経路が複雑化・多様化しており、広告が掲載される媒体を事前にコントロールすることが著しく困難になった」(広告代理店のネット広告担当者)。

 ブラックな広告主や媒体は従来から存在したものの、以前は表舞台に出てくることは少なかった。ところが、優良なサイトからニッチなサイトまでを束ねて取り引きする運用型広告が一般的になり、違法・不当なサイトが紛れ込むケースが多発。正当なビジネスを行う企業の広告がブラックなサイトに表示されれば、ブランドに傷がつく。これが「ブランドセーフティー」問題だ。

 こうした動きを受けて、広告事業者は問題ある媒体社を排除するための取り組みを行っている。アドネットワークやSSPのように広告枠を提供する側では、自社が束ねている媒体について、クローリングをすることで悪質サイトを排除。DSP側でも、アドベリフィケーション(不適切なサイトに掲載されていないかを確認するなど、配信をコントロールするソリューション)との接続や、広告買い付け時に掲載先の判定を行う3PAS配信やPre―bidソリューションの活用も進んでいる。

 とはいえ、「契約時にはサイト内容に問題はないが、広告事業者の営業時間外には違法・不当サイトになる」ケースや、契約を打ち切られてもドメインやIPアドレスを変えて再申請してくるケースなどもあり、違法・不当サイトが紛れ込むリスクはゼロではない。広告主である通販会社には、それを踏まえた予防策が重要になってくる。



まずは問題の認識を、炎上すれば売り上げに響く恐れも


      【違法・不当サイトへの掲載防ぐには】



 こうしたサイトに広告を掲載しないためにはどんな対策があるのだろうか。最も安全なのは、掲載するサイトを絞ることだ。広告代理店のネット広告担当者は「運用型広告は掲載媒体のコントロールが難しいため、こうした意向を持つ広告主には、純広告、PMP(プライベート・マーケット・プレイス=有力な対象媒体のみへの出稿)、ホワイトリストでの配信を提案している」と話す。

 ブランドセーフティーへの意識を持つ企業は世界的に増えており、日本でも「外資系企業では対策が進み始めている」(先の広告代理店の担当者)。一部では、予約型広告が見直される契機にもなっているようだ。

 とはいえ通販企業の場合、リターゲティング広告やアフィリエイト広告のように、直接販売につながる、効率を重視した広告手法にウエイトを置くことが多い。

 アドベリフィケーション事業のMomentumでは、広告を同社のシステムでラッピングして、問題あるサイトに配信しようとしたらブロックするサービスのほか、DSPと同社のデータベースをAPIで連携、入札リクエスト時に突き合わせ、問題がないサイトに広告を配信するサービスを提供。アダルトや違法ダウンロード関連だけではなく、まとめサイトへのフィルターもある。同社の高頭博志社長は「ブランドセーフティーは費用対効果に換算するのが難しいが、保守速報の件はツイッターでユーザーが動いたのが発端で、炎上リスクは高まっていると感じる。特に通販企業は消費者に近い存在なので、放置すれば売り上げ減につながる可能性もある」と指摘する。

 最近は、アドベリフィケーションサービスとDSPなどとの連携がシームレスになってきており、対策コストも減少傾向にあるという。「ナショナルブランドの広告主に直接サービスを提供するケースも増えてきている」(高頭社長)。

 広告代理店では「運用型広告はブランド毀損リスクがゼロにはならない旨は説明している」(先の担当者)とするが、企業にとっては保守速報のような差別をあおるサイトが、掲載先に含まれていること自体が想定外だったのではないか。まずは問題を抱えたまとめサイトが多数あることを認識すべきだろう。ネット広告関連の業界団体、日本インタラクティブ広告協会の事務局では「広告代理店に自社のポリシーを説明することが重要だ。フィルターのかけかたやホワイトリスト・ブラックリストの活用法、まとめサイトをどう扱うかなども決める必要がある。仮に問題あるサイトから購入があった場合、それもコンバージョンという成果ではあるのだろうが、ブランドが傷ついた可能性があることも忘れてはいけない」と説く。



     「ブランド保護が重要」


 
       【「問題サイトに広告」企業の声は】


 企業はまとめサイトに広告が掲載されることについてどう考えているのか。差別的な内容の記事が掲載されるなど、問題があるまとめサイトに広告が表示されていたという、ある小売り企業のネット広告担当者に、匿名を条件に話を聞いた。

                     ◇

 ――運用型広告を利用する際に、問題がありそうなサイトを配信から除外する設定はしていたのですか。また、掲載されるサイトは確認していましたか。

 「ネットワーク広告はドメインごとに配信除外ができますが、広告の効率化の観点から、全体的なフィルターをかけていました。その中には『冒とく、乱暴な表現が含まれるコンテンツ』や『デリケートな社会問題』のように、当該サイトも含まれそうなフィルターもありましたが、個別にどのサイトに出ているかについては確認しきれないため、除外内容を信頼していました」

 ――発覚後、掲載を停止したとのことですが、広告出稿する際に何か変えたことはありますか。

 「広告代理店に対し、除外設定の再確認と怪しいサイトの手動除外を依頼しています」

 ――「ブランドセーフティー」についてどう考えますか。

 「予防と問題発生時の適切な対応が必要と考えています。今回の場合、除外設定はしていましたが、それをすり抜けて差別をあおるサイトに広告が出てしまいました。そのため、広告配信会社のフィルターに問題があったのではないかとみています。当該サイトはキュレーションサイトのような作りのため、アドネットワーク側が除外対象と判別できなかったのではないでしょうか」

 ――匿名掲示板やツイッターの反応などをまとめた、いわゆる「まとめサイト」については、当該サイトに限らず、内容的に問題があるサイトが多いように思います。今後どう対処しますか。

 「確かにそう思いますが、まとめサイトというくくりで除外するのは現状では難しいと思いますので、一般的なフィルターと代理店に依頼している手動チェックに頼らざるをえない状況です。場合によっては出稿先をチェックするツールなどの導入も検討しなくてはいけないと考えています」

 ――こうしたサイトを除外することで、広告の閲覧数が減少するといった影響は出るのでしょうか。

 「恐らく、こうしたサイトに訪れるユーザーが当社の顧客になる可能性は少ないと考えます。当該サイトに出された広告経由のアクセスを確認しましたが、コンバージョンはゼロでした。仮に除外によって広告閲覧数が減ったとしても、ブランドを守ることの方が重要と考えます」

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