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消費者庁、また景表法で調査 「機能性」大量処分の悪夢再び、「グラブリジン」の根拠問題視

1-10.jpg 機能性表示食品制度が剣ヶ峰に立っている。昨年11月、消費者庁による16社の大量違反処分に続き、またも機能性表示食品に景品表示法違反を予定しているからだ。今回は届出表示の「科学的根拠」を問題視しており、制度の信頼性が根底から揺らぎかねない。相次ぐ摘発に企業側も嫌気がさしており、利用を見送る動きも強まりそう。安倍首相の肝いりで消費者庁が創設した表示の新制度が、同じく消費者庁の徹底した誇大表示の取締りを受け、存在意義を問われる局面にさらされている。


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調査は最終局面弁明の機会付与

 問題となっているのは、カネカの独自原料である「甘草由来グラブリジン」を含む機能性表示食品(以下、「グラブリジン」)だ。体脂肪やBMIを減らす機能等があるとされ、6社が機能性表示食品として届出、消費者庁食品表示企画課に受理されている。

 一方、景表法を所管する同庁表示対策課は、「グラブリジン」の広告に景表法違反の疑いがあるとして調査を進め、6月上旬までに同法違反事件を公表する最終的な手続きである「弁明の機会の付与」を岡村和美消費者庁長官名で販売者に通知した。

 複数の関係者の話を総合すると、通知を受けたのは、カネカの通販子会社であるカネカユアヘルスケア、アサヒグループ食品、ディーエイチシー(=DHC)を含む「4~5社」(業界関係者)であるとされる。これにカネカ、アサヒは「個別案件の有無は答えていない」と回答。DHCは掲載までに回答が得られなかった(=)。

 同様に「グラブリジン」を含む機能性表示食品を扱う企業では、ウエルネスライフサイエンスが「(届出は公表されたが)まだ販売に至っておらず、広告もしていない」と調査を否定。リマックスジャパンは「回答を控えさせてもらう」と明確に否定せず、ファインは掲載までに回答が得られなかった。

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SRの結果を問題視か

 消費者庁は何を問題視しているのか。仮に機能性表示食品に対する行政処分が行われることになれば2度目。だが、今回は「食事制限や運動をしなくても」といった"届出表示"を逸脱した広告が問題となった「葛の花」と位置付けが異なる。届出表示と広告表示のかい離ではなく、これを裏付ける「科学的根拠」そのものが、問題視されているとみられるためだ。

 各社とも「グラブリジン」の機能性評価は、研究論文の総体から総合的に判断する「システマティックレビュー(SR)」で行う。根拠論文では、摂取による「体重」「BMI」「体脂肪」の変化などを考察。いずれの製品も「体脂肪の増加を抑え、BMIの改善に役立つ」といった機能性を表示、広告している。

 だが、消費者庁表示対策課では、SRから導きだされた「グラブリジン」の研究結果が届出表示と具体的に対応していないことを問題視しているようだ。

 ある企業の研究者は「グラブリジン」をめぐる根拠論文について「摂取と非摂取の2グループで、有意差が一部の指標でしか出ていないことが問題となったのでは」との見方を示す。一方で別の専門家は「SRの詳細を分析し、重箱の隅をつつけばきりがない。細かい指摘は制度の存続を危うくする」と懸念を示す。

SR再検証に発展のおそれ

 「SR」は、機能性表示食品で初めて導入された機能性評価の手法。「臨床試験」が前提となるトクホに比べ、低コストかつ短期間で行える点が最大の特徴になる。実際、これまで届出が公表された機能性表示食品約1308製品(今年5月時点)のうち、その9割がSRを根拠にしており、制度を支える屋台骨となっている。それだけ機能性表示食品制度に影響も大きい。

 仮に今回のケースが違反になれば、ほかの製品も再検証となる可能性がある。そうなれば、機能性表示食品の大半が、違反の疑義にさらされ、宙に浮く。制度存続すら危ぶまれる事態に発展しかねない。

 こうした点を鑑み、消費者庁と企業が「弁明の機会」を通じ、どのようなやり取りが行うのか。また、消費者庁が、機能性表示食品の科学的根拠について、景表法との整合性をどう整理して判断するかが、今後の制度の行く末を占うポイントになりそうだ。

 「グラブリジン」の機能性表示食品への調査の有無に対し、景表法を所管する表示対策課は、「個別案件には従前より答えていない」と話している。





    行政関係者「指導で十分」

 
        企業に広がる失望感



「グラブリジン」をめぐる消費者庁の対応に、事業者、行政関係者双方から「過剰規制」と不満の声が上がる。

 ある企業関係者は、「実質審査を経て公表された届出の根拠に問題があるからと処分に持ち込むのはおかしい。先に執行権限で対処すべき悪質業者をなんとかしろと思う」と話す。

 制度は「企業の自己責任」による届出制。ただ、実際は、消費者庁食品表示企画課が「不備事項指摘」の形で届出資料の修正や不備を伝える。受理まで事前に複数回のやり取りが行われ、SRに問題があれば通常は事後的に届出の「撤回」や「変更」で対応するのが通例だからだ。仮に景表法の行政処分で対処すれば新しい事例といえる。

 だが、厳正な対処に踏み切ろうとする消費者庁の姿勢に「機能性表示食品はこれからのばそうという制度。表示の範囲が絞られる制約もあるが活用している。けれど頑張って数百万の費用を捻出してSRを行ったのに、後からダメと言われ処分までいくなら使うメリットはゼロ。(イメージで訴求できる)健康食品の方がよい」(前出の企業関係者)、「『撤回』を求める法律がないため景表法違反で対処しているのでは。ただ、SRは解釈の違いで議論の余地もある。そこに踏み込み景表法で対処するとなると、活用する側もやりづらく、制度を嫌煙するようになる」(別の企業関係者)と、相次ぐ取締りに事業者の間には制度に対する失望や忌避感が広がる。

 「過剰規制」と断じるのは企業関係者だけではない。景表法の元執行担当官も「指導で十分。『撤回』を求めるべき」と指摘する。「企業とすれば制度を活用することが正しいと思いやってきた。積極的に誤認を招く表示の意図があるなら分かるが、最近の"著しく優良と誤認する表示"の判断はひどい」と考えるため。別の行政関係者も「制度でSRの活用を認め、これを活用して受理されたにも関わらずちゃぶ台返し。それなら、はなからSRという手法自体を認めるべきではない」と、疑問を口にする。



 揺らぐ制度の根幹、成長戦略と"逆行"鮮明に

    【機能性表示食品、調査の影響は?】


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 「グラブリジン」の調査が処分に至るか、消費者庁の判断を待つことになる。だが事件は、「企業の自己責任による届出制」という制度の信頼を支える根幹を揺るがしかねないものだ。「葛の花」に続き、改めて同時多発的に起きるSRのリスクも浮き彫りにしている。「目指すのは最先端」。2013年、安倍首相の号令のもと成長戦略の一環で導入が決まった機能性表示食品制度だが、これと逆行する運用から危機に瀕している。

 今回、問題視されているのは「科学的根拠」。届出表示と広告表示のかい離を問題視された「葛の花」と異なる。

 だが、広告に問題がない中で、SRの根拠にまで踏み込めば、ほかの製品の検証も必要になる。制度の信頼を揺るがす事態に発展しかねない。

 ここ最近、消費者庁では「要件の不足」を理由にした処分が増えている。トクホでは日本サプリメントが、特別用途食品ではキッセイ薬品工業が制度に求められる品質管理を行っていないことから景表法で措置命令を受けた。「グラブリジン」の事件も同様に求められるべき科学的根拠がなく、届出要件を満たさないとの判断から調査するものだ。

                    ◇

 調査の端緒をめぐっては「SRの質向上に向けた検証事業が端緒になったのでは」など複数の情報がある。

 だが、事後チェックで発覚した科学的根拠等の問題に消費者庁食品表示企画課はこれまで届出の「撤回」や「変更」を求めることで対処してきた。昨夏に相次いだ「グルコサミン塩酸塩」を含む機能性表示食品の撤回が一例。導入間もない制度の軌道修正を図りつつ、活用を促す狙いが背景にあるだろう。

 一方の表示対策課は、こうした手続きを越えて「厳正対処」に踏み切っている。同じ科学的根拠をめぐる対処として落差はあまりに大きい。消費者委員会は、消費者庁にSRの質向上を強く求めており、処分をそのスケープゴートにしようとしているのかもしれない。こうした点からも制度をいかに育てるか、管轄する食表課と、執行を担う対策課が庁内で連携を取れていないことが分かる。手綱を握る消費者庁がこの有様では「世界最先端」の制度など目指せない。

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 「厳正対処」と言えば聞こえはいいが、対策課は日本サプリメントに三度に渡る処分を下しながら、同じく要件の不足が発覚した大正製薬、佐藤園の処分は現時点まで見送っているなど、根拠があいまいな"裁量判断"も目立つ。

 「葛の花」の大量処分をめぐっては、対策課の大元慎二課長が「食品で痩せるはあり得ない」と断言した。科学的根拠から、「体重で1キロ」の変化量が一般の人の1日の変動範囲にとどまることを理由などにしたものだ。

 だが、その根拠は、制度で認められた機能性評価の手法に沿い、有意差が認められたもの。「制度で評価手法を定めながら、そこで得られた結果を覆すような発言をするのはおかしい」といった専門家の指摘もある。

 届出制の根幹は「企業の自己責任」でガイドラインに沿って届出を行うもの。「グラブリジン」のSRは議論の余地があるかもしれない。だが、自ら提出した根拠を使われ、これに確定的な判断を下される取締りが相次げば、制度を活用する企業はいなくなる。


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