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【再春館製薬所が描く成長戦略】 「ドモ」依存から脱却へ、グループで成長基盤を構築

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 再春館製薬所が事業構造の改革に乗り出している。2016年度(17年3月期)を初年度とする中期経営計画を策定。「ドモホルンリンクル」依存型の経営から脱却し、グループで新たな成長基盤を築く。中計策定は、同社にとって初めてとなるもの。背景にはグループ経営体制の確立に向けた取り組みを通じ、「人」と「組織」の成長を図る側面もある。20年度にグループ売上高370億円を計画。顧客の応対品質など化粧品通販で培った"らしさ"を追求しつつ、変革に挑む。

前期増収を確保震災前の水準に

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 「『ドモホルンリンクル』の発売から40年、愚直なまで(顧客に)寄り添った応対品質を追求し、強固な関係を築き成長を続けてきた。ただ、社員に職域の変化は少なく、さまざまな業務を経験する機会が少なかった」。再春館製薬所(以下、再春館)の大庭博人取締役執行役員経営企画本部長は、中計策定の背景の一つをこう話す。

 社員の多くは入社後、熊本の拠点で商品企画や広告制作、顧客対応などの各業務の担当につき、その業務を深めていく。これまで成長を支えてきた最大の強みは、「お客様プリーザー」と呼ぶコミュニケーターによる「電話」を介した顧客との関係構築。応対品質の追求と、顧客満足の向上に向けたトライ&エラーを重ね、独自のCRMを構築してきた。

 前期(2018年3月期)も好調を維持する。

 グループを含む総売上高は前年比7%増の326億円。単体の売上高も同4%増の301億円となり、16年に起きた熊本地震以前の水準まで回復している(=)。化粧品通販の好調に加え、海外事業の黒字化、加齢に伴う筋肉の衰えに対応した健康食品「長白仙参」が同50%増の10億円を突破したことなどが背景にある。

 92年に83%だったリピート売上高の割合は14年に94%、2000年に28%程度(約6万人)だった5年以上の愛用者も今では6割(約20万人)に到達。コミュニケーターと顧客の強固な関係を築く強みは健在だ。

 一方で「化粧品」と「漢方」の二軸に集約されたシンプルなビジネスモデルは現場から"イノベーション"を起こしにくい環境も生んでいた。各業務を深めプロフェッショナルに徹することを目指してきたものの、職域や人材の流動性は少なく、このことが社員の成長の機会を狭めてもいた。

グループ経営体制の確立へ

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 現場の課題認識が進む一方、再春館はここ数年、通販支援領域でM&Aを積極的に行ってきた。「ドモホルンリンクル」依存型の事業構造から脱却し、グループ経営体制の確立を視野に入れたもの。すでに通販に不可欠な「システム」「コールセンター」「広告(バイイング)」といった領域を一気通貫でカバーする体制を構築。今後も必要に応じてさらなるM&Aを視野に入れている。

 こうした中、次の成長に向けて策定したのが16年度を初年度とする5カ年の中期経営計画(第1次、16~20年度)だ。グループ6社となり事業構造が複雑化する中、新たな経営体制の確立に向け組織再編と人材の育成を図り、グループで成長基盤をつくる。40年以上に渡り蓄積した通販、CRMのノウハウをリピート戦略に課題を抱える企業に提供していくことで、市場の活性化や自社の成長につながるとみる。

 
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組織体制では、各部署の役割や責任の所在を明確にする。また、人材・職域の流動性を高め、各部署への権限移譲など経営判断や結果責任の経験を増やすことで、成長の機会を創出。グループの次の成長を支える人材を育成していく。

 昨年9月には、事業を開始したヒューマンリレーション代表に、再春館の研究開発部長を抜擢。コミュニケーター職採用の社員に企画職を経験させるなど人事異動も活発に行い始めている。
 組織再編では、グループ全体の事業を統括する「グループ経営本部」を設置し内部統制を強化。異なる部署が行っていた「採用」「研修」も経営企画本部に一本化して求める人材獲得と育成に向けた取り組みを強化するなど管掌の整理も行う。

化粧品事業の「安定化」図る

 「人」と「組織」としての成長を原動力に、中計では、成長のけん引役を「グループ各社」と「海外」に求める。一方で「ドモホルンリンクル」は、事業の"安定化"を図る。

 新規参入や少子高齢化の影響で化粧品市場の競争環境は激化。再春館も例外なく、テレビCMの効果低減など影響を受ける。「電話」主体のコミュニケーションを強みにしてきた同社にとって、ウェブやスマホの普及で新規獲得は厳しさを増している。

 これまで無料サンプルの請求は年間約25万件で推移。約2割(約5万人)が初回購入に至り、リピート率を高め成長を果たしてきた。だが、ウェブの活用で請求数は30万件前後にまで伸びるなど投資効率は高まっているものの、初回引き上げ率は数%低下。「かつてのビジネスモデルのままで同様の成長を図ることは難しくなっている」(同)。

 "安定化"で目指すのはコミュニケーションの深化。「電話」による接点が築きにくくなる中、「(事業の)安定化を図ろうとすると従来の『電話』『テレビ』だけでなく、ウェブや店舗などリアルなコミュニケーションを深化させていく必然性が生じる」(同)と考える。メールやチャットを活用して「電話」同様のサービス品質確立を目指す専任部署も設置している。

 また、リアルの接点も重視。「商品体験の場」として直接販売を行わない店舗も3店舗(大阪、福岡、東京)展開する。今では年間2万人近い来店客があり、店舗売上高(店舗を通じた注文受付)も約3億円になる。将来的に全国主要都市の店舗展開も視野に入れる。

成長力、「海外」と「グループ」に

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 今後、成長力として期待する「グループ各社」と「海外事業」は、それぞれ前年比約53%増、同約18%増と好調を維持している。総売上高に占める割合も7~8%。中計最終年度にグループ売上高は20年度に47億円、海外事業は40億円の売り上げを計画する。

 中核の一社、コールセンター事業を行うヒューマンリレーションは、効率性ではなく、「LTV向上」を重視したセンターを運営する。

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 顧客の潜在的なニーズや悩みを捉えてCRMに活かすなど再春館が長年に渡り培ったテレコミュニケーションのノウハウを共有し、差別化を図っている。すでに50社超の企業から問い合わせを受けており、オペレーター数の拡充など体制整備を図っていく。

 海外は12年に進出した台湾がけん引する。前期に顧客数が約3万人、約21億円の売り上げに到達。商品の配送コストがかさむものの、商品注文や顧客対応を熊本本社で受け、国内同様の「商品品質」「応対品質」を維持するモデルで展開。前期に海外事業単独で黒字転換を達成した。

 今年6月に3カ国目として進出するタイでも同様のモデルで展開する。外国語に対応したウェブサイトも立ち上げており、越境ECの展開で顧客は世界23カ国前後に広がる。

                   ◇

 ここ数年、これまで通販市場をけん引してきた大手各社の苦戦が表面化している。とくに単品リピート通販で強みを持つ"九州系"は200億円を天井に、通販単体での成長力が鈍化する企業が少なくない。ウェブを主戦場にする新興企業の台頭など外的要因もあるが、市場変化に対応し、再春館が成長基調を維持できるか注目される。


  学で寄附講座、地域の魅力語り人材確保へ


      <地方の「発信力で挑む」>

 全国に拠点を構え営業展開する必要のない通販は地方に拠点を構える企業が少なくない。再春館製薬所もその一つ。そうした環境から、以前から地域貢献の取り組みを行う。昨年12月には、熊本県立大学と、寄附講座開講に向けた業務連携協定を締結。こうした取り組みが企業の成長や信頼感の醸成、企業価値の向上につながっている。

 寄附講座で目指すのは、地域が学生を育て、育った学生が地域をつくっていくことで地方を活性化することだ。

 熊本県の大学卒業生の就職状況は、就職する8割のうち県外就職が7割に上り、県内就職はわずか3割にとどまる。講座を通じ、地域を支えるリーダーを育てていく。

 再春館の西川正明社長自らも教壇に立ち、講演を行う。語るのは、再春館の強みではなく、熊本から全国に発信する企業としての考え。地方の企業であっても「通販」という業態を活かすことで全国や世界に発信していくことができる魅力、地方企業だからこそできる取り組みを語る。

 今年4月には、「再春館学生支援」制度も始めた。経済的に支援が必要な熊本県下の学生を支援する目的で奨学金を融資するもの。制度を活用した後、再春館に入社した学生は返済を全額免除(3年勤務)。県内企業に入社した場合も半額(同)を免除する。3年以内であっても在籍期間は免除の対象にする。こうした取り組みも地域に根差す企業として、熊本に学生が残り、地域の活性化に向けて働いてもらうことを目指すためだ。

 今回、策定した中計もこれに通じるところがある。これまで人材の流動性がなく、成長の機会が狭められた社員にその機会を創出し、チャレンジ精神を醸成していくことだ。

 奨学金制度では、制度利用者の採用も見据えている。大学卒業生の県外就職など働き手不足が深刻化する中、優秀な人材の確保につなげる。

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