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「アマゾン商法」の実態<「消費者至上主義」の舞台裏> 原価割れ赤字「補填して」

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 「地球上で最も豊富な品揃え」と「最安値」を追求し、アマゾンジャパンはこれを実現しようとしている。だが今年3月、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を実施。その安さの"カラクリ"は、納入業者に対する「割引補填」で実現されてきた疑いがある。「元が取れないから金払え」。消費者至上主義の裏で何が行われてきたのか。納入業者が明かす「アマゾン商法」の実態。


赤字販売を垂れ流し?

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 「ひどかったのは昨年。"1月から半年経った。1千数百万円の赤字だ"と。それを払ってくれときた。拒否しようとすると平気で取引停止すると言いますから」。ある家電卸はこう不満を漏らす。内容は、昨年末、多くの納入業者に通知された事前の「協力金」要請と異なるものだ。

 200億円近い年商のこの事業者の場合、年間の取引額は、十数億円。「割引補填」の要請は年数回。「リベート」の名目で、月末の場合もあれば、四半期ごとの場合もある。こちらが『それなら赤字にならんように売価設定すれば』と言っても、"売価について言うと独禁法(再販売価格の拘束)に触れますよ"と返してくるからタチが悪い」という。

 アマゾンとは毎回交渉になるが、拒否することはできないのか。

 「メーカーからは"なんでこんなに安く売るんだ"と。アマゾンは"安く売らせろ"と。メーカーならもう商品卸さないと突っぱねることもできるが、年間予算を組む中で急に億単位の商売が切られると計画が狂う」と、赤字にならないぎりぎり手前の範囲で要求を呑まざるを得ないという。

 家電卸の営業利益は、一般的に1、2%と言われる。加えて固定費負担も、部門ごとにばらつきのあった「COOP」と呼ぶ広告メニューが、「昨年末、一律5%にされた」としており、「リベート」負担が事業を圧迫している。

 とくに要請が激しいのは「家電」分野とみられる。「はっきり言って卸した原価より安く売っている。例えば、1000円で入れたら980円。採算が合ってないのでは」とするが、背景に何があるのか。

「システムが勝手に商売する」 

 「損して売れば誰でも売れますよ。そんな楽な商売ない。"システム"が勝手に商売して、最安値で売ってくれる」。前出の家電卸が言う"システム"とは何か。

 「例えばヨドバシ(・ドット・コム)が1000円で売っていたら、(アマゾンは)自動で910円くらいの売価になる。ヨドバシの場合、ポイント10%還元があるから実質900円。ポイントを加味した売価になる。お互いそういうシステムが入っている」。アマゾンは競合するモールやサイトの価格をリサーチし、自社通販サイトの価格に反映する「価格調整」の自動化システムを導入している(=図)

 "システム"がとくに威力を発揮するのは、価格比較が容易なナショナルブランドが力を持つ「家電」業界などだ。家電は価格変動が激しい市場。1日10回前後、10円から100円前後で変動するのはザラだ。扱う商品も数千から万単位に上る。このため、ウェブを主戦場にする小売業者で同様のシステムを導入し、競合を価格調査し値決めする企業は多い。

 ただ、運用は各社で異なる。顧客の商品選択の決め手となり、企業が差別化する要素は、「価格」のほかに「ポイント」や「送料」「在庫の有無」など複数ある。ただ、ポイント施策で後手に回るとされるアマゾンは「最安値に振り切っている」(同様のシステムを提供する事業者)とみられている。このため表示される価格は、「ズバリ(安い)価格」(前出の家電卸)。

 アマゾンが競合とみるモールやサイトは、「取材に協力できない」(アマゾン)とするため不明だ。ただ、強みを持つ「家電」で競合関係にある「ヨドバシ・ドット・コム」は意識しているとみられる。立ち入り検査をめぐり、公取関係者も「対抗意識を燃やしているのはヨドバシカメラと言われている。ヨドバシが下げればアマゾンも追随。価格競争でどんどん下がる」と、話していた。「優越的地位の濫用」の疑いが持たれている「割引補填」の問題も、新時代のテクノロジーが生んだシステムにより「囚人のジレンマ」化した苛烈な価格競争の末に起こったものと見ることができる。

「人気商品は卸さない」 

 ここ最近、アパレル、食品に力を入れるアマゾンだが、まだその分野では存在感を発揮できていない。一方で強いのが「本」「家電」「日用品」分野。それだけに軋轢も多い。出版社や取次大手からは取引をめぐり一部で反発が起こり、日用雑貨では昨年末、「有利誤認」で措置命令を受けた(=表)。さらにここにきて強みの家電でも「アマゾンに対して引き気味のところが多い」(業界関係者)と、忌避感が漂い始めている。

 「やはり日本はまだ家電は、家電量販店が強い。売れるカラーはお世話になっているところに。アマゾンだけは違うカラーで。そういう風に変えていかないと、(システムによる)自動追尾で価格競争が起こる。せっかく作った商品が(アマゾンに)つぶされる」(前出の家電卸)。

 別の家電卸も「アマゾンに新製品は持ち込まない」という。「廃盤品をアマゾンで売り、新製品は今まで通りの流通ルートで展開する」。「とにかく(アマゾンと)バッティングしないように」(同)がモットー。本来は同型製品を全販路で売りたいが「そうすると商品が死んでしまう」(同)と話す。

 食品など異なる分野では、「うちは緊密な連携を取っているため(割引補填は)要求されていない」というメーカーもいる。ただ、いつ方針転換が行われるかも分からない。「世界一豊富な品揃え」を掲げるアマゾンだが、家電分野で今後も競争力のある「商品」を集められるか不透明だ。

「最安値」追求で生じた歪み

 
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優れたテクノロジーを背景にアマゾンが市場に持ち込んだ競争原理は、これまで競合他社を圧倒してきた。価格調整の自動化システムもその一つ。ウェブの台頭で価格はオープンになり、容易に比較可能なものになった。企業が市場の変化にリアルタイムで対応することを可能にし、人手を使わず、競争力強化を実現した。急成長を遂げた一因も、こうしたテクノロジーを巧みに利用してきたことがある。

 ただ、競争力はなにも「価格」だけではない。「ポイント」や「送料」などの販売戦略、さらにいえば、「企業姿勢」や提唱する「価値観」も差別化ポイントになる。

 「地球上で最もお客様を大切にする企業」を掲げてもいるアマゾンだが、その実現は優れたマーケティング力やテクノロジーだけではなし得ない。「最安値」の追求が生んだ歪みは、公取委によって明らかにされようとしている。

 疑いが持たれているのは、課徴金対象となる「優越的地位の濫用」。過去、その疑いをかけられ、その認定を免れた企業は「知る限りない」(公取関係者)。

 アマゾンに「割引補填」の要請や、これを理由とした納入業者に対する取引停止の可能性の通達、価格調整システムの運用について質問したが、「ご依頼の件について御取材へのご協力はできませんが、審査には全面的に協力させていただいております」との回答が得られただけだった。



「取引停止」圧力に

売価口出すと「独禁法に触れるよ」

 
【家電卸が明かす「割引補填」】

アマゾンから「割引補填」の要請を「受けた」と明言する家電卸事業者に、「割引補填」の実態や、アマゾンとの取引状況について聞いた。

 ――「割引補填」要求を受けた分野は。

 「PC(『家電』部門)と『ホーム&キッチン』部門の商品。部門によってこないものもある」

 ――ばらつきの理由は。

 「おそらくだが、ある程度売り上げが立っているもの。少額取引の部門から要求はない」

 ――要求は"事後的"なものか。

 「あちらも毎日実績は追ってないので月単位や四半期単位でくる。"1クオーター閉めたが○百万円の赤字。どうしてくれるのか"と。(立ち入り検査が)報道された次の日でも平気で"払えないと言っていると話が進まない。そうなると取引停止するしかない"と電話がかかってきた」

 ――「取引停止」を明言する。

 「ほかに取引してくれるところはあると平気で言ってくる」

 ――どのような名目で求められる。

 「『リベート』と言っている。月単位でも100万円とか要求される」

 ――具体的な要求金額は。

 「赤字販売の金額に比例して。『ホーム&キッチン』の商品で300万円ということはあった。おそらく年末年始の需要期で売れた商品。赤字垂れ流して売れすぎるとその分の補填を求められる」

 ――損失分100%の補填を求められる。

 「スタートの要求は。ただ、全額出しようがないので交渉。売価を上げればいいのでは、と言うと"売価に口出すと独禁法(再販売価格の拘束)に触れるよ"と。原価割れでも、値決めをしたのは向こう(アマゾン)の勝手。けれど赤字になったから金くださいとくる。商売をやっていけない」

 ――拒否できない。

 「うちみたいなポジションはメーカーからもなぜ安く売るのかと言われ、アマゾンからは安く売らせろと言われる。メーカーならもう商品卸さないと言えるが、問屋は一杯いるから。呑めないとも言うが、最終的に"商売変える"と言われれば、ぎりぎりの範囲で払わざるを得ない。ある程度(アマゾンとの)商売が軌道に乗り、年間予算も組んでいるので億単位で切られると計画が狂う」

 ――要求の背景は。

 「家電ははっきり言って卸した原価より安く売っているものがある。採算が合ってない」

 ――なぜ原価割れが起こる。

 「自動で競合他社の価格を追従するシステムを入れているから。アマゾンはポイント還元率がヨドバシ・ドット・コムなどより低いからズバリで安い価格で表示される」

 ――システム上、原価割れを避けて下限を設定することもできるのでは。

 「仕組みは分からないが原価割れはある。例えばアマゾンが(システムで)ベンチマークする企業が処分品として値決めした場合、これを巻き込んで連鎖的に価格が落ち、処分価格が市場価格になってしまうこともある」

 ―そういったことがたまに起こる。

 「よくある」

 ――追従はサイト内でもあるか。

 「サイト内の『マーケットプレイス』の出品事業者の価格も追従しているものがあるよう見受けられる。だから、サイト内で『カート』(顧客に最も買われやすいトップ表示)を取れなくても、悪くても2番手、3番手の位置にいたりする」

 ――納入業者はアマゾンに卸した時点で取引は終了している。

 「そう言っても"それ(自動追従)が仕組みだから"と。"それをサポートするのが納入業者であり、メーカーさんなんですよ"と言われる」

 ――競合の取引先からの要請もあるか。

 「収益が確保できないならばその商品の掲載を止めましょうというところが多い。それでも売り続けるということはなくなった」

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