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公取委VSアマゾン 協力金は「収奪」か「共栄」か、公取委が独禁法違反の疑いで立入り

1-2.jpg 公正取引委員会は3月、アマゾンジャパンに独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査した。広告の新メニュー導入で事業者に1~5%の「協力金」を求めたり、セール時に割引額の補填を要請する中で「優越的地位の濫用」の疑いがある行為が行われたとみている。だが、アマゾンの取引先に対する要請は今に始まったことではない。「協力金」名目のもと行われる要請は「収奪」なのか。それとも「共栄」のためのものなのか。 


プールできない「プール金」

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 「報道をみて"何を今さら"と。払ってないところがあったんだ」。アマゾンと直接取引関係にある日用雑貨卸はこう話す。というのも、この事業者は5年ほど前の契約当初から「COOP(コープ)費用」の名目で毎月取引金額の5%を負担していたからだ。

 「『COOP費用』は契約当初、『プール金』という形でサイト内の広告出稿に使えるという話だった。取引金額は、1000万円ほど。『COOP費用』は50万円で当初は使えた。けれど今は使えない。というより使う"選択肢"がない」(前出の事業者)。どういうことか。

 「3、4年前はバイヤーに連絡して『COOP費用』から天引きされたが、システム改修していく中で、(『ベンダーセントラル』と呼ばれる管理画面から)広告費用の支払い方法として『カード払い』と『売上相殺』の二択しか選べなくなった」。バイヤーに問い合わせても"COOP費用はシステム運用の費用"などと言われたという。

 別の事業者も不可解な「販売手数料」負担に対する疑問を口にする。

 「うちは化粧品で毎月取引金額の2%、時計は5%、機能性ウェアはゼロ。もう5年以上。"商品管理の手数料がかかる"という説明があるだけ」という。利益を圧迫する大きな負担だが、「プールされたまま。なんのために取られているかわからない」(前出の日用雑貨卸)。契約書に記載はなく、うやむやなまま現在に至る。

「定期割引分」中間卸が負担

 「優越的地位の濫用」と、巷で騒がれている「割引補填」も今に始まった話ではない。トイレタリーの中堅メーカー担当者が明かす。

 「うちの場合、顧客が定期購入した場合の割引分を負担してくれと言われた。断ったが、中間卸が負担している」。別の雑貨卸も「数年前から要請を受け、定期時の割引分はこちらで補填していた」と話す。

 当事者のアマゾンは「審査には全面的に協力させていただいております」と答えるのみのため実態は不明。だが、なぜ今明るみになったのか。まず今回の騒動の発端を振り返りたい。

「対価の負担をお願いします」

 「『ベースCOOP』を導入させていただくことになりましたのでご案内させていただきます。(中略)(つきましては)サービスに対する対価のご負担をお願いします」(=表)。昨年12月頃、アマゾンは一部メーカーを集めた説明会で「COOP」と呼ぶ新メニューの導入を発表した。

 「COOP」は、アマゾンが「共同マーケティングプログラム」と呼ぶサービスとみられる。サイト内で自社商品やブランドの紹介ページの充実、広告等を行うメニューのこと。メーカーに提示された書面によると、今年度、一部を無料化したり、新メニューを追加するという。ひいては、「サービスの対価」を負担してくれ、というわけだ。

 ヘルス&パーソナルケア事業部、ビューティー事業部の場合、「ベースCOOP」と呼ぶ「協力金」の負担は「取引金額(仕入総額)の2%」。商品カテゴリで負担額は異なり、家電の場合3~5%の負担を求められているとみられる。詳細は不明だが、一部の新メニューの料金体系に「取引金額の1%(最低2500万円)」の記載もあることから前出の中小卸と異なり、大口取引先を対象にしたものだろう。同様の要請が複数の大手に寄せられている。一方、大口取引先でも「アマゾンと緊密な連携体制を敷く」という食品メーカーは「協力金要請はない」と話す。

「要請のまないと切られる」

 反応はどうか。中には、「強要とまではいえない」「単純な『協力金』ではなくサービス対価という形でどう捉えるか微妙」といった事業者もいる。新たな販促機能を使うことで、売り上げや収益改善につながる可能性もあるとみるためだ。

 「ベースCOOP」5%負担に「応じない」とするある家電卸は「(要請を)呑まないと切られる場合もあるのでは。メーカーはよいが、どこでも仕入れることができる商品を扱う商社はきつい」と不満を口にする。

 この家電卸をはじめ「割引補填」の要請を受けた事業者も複数ある。ただ、これも意見が分かれる。

 「『ベンダーセントラル』のシステム上、価格は基本的に卸自らが設定する。セール時に割引補填するが、セールを仕掛けるのも事業者側。自らの意思でフォーマットに沿って設定する」という。管理画面で設定してクリックすれば"合意"の意思表示にもなるわけだ。このためか「割引補填、という認識ではない」「アマゾンはブランド単位の成績を公表し、協力するメーカーは進んで協力してきた。強要と捉えるかメーカー次第では」とする見方もある。

 温度差の背景には、契約時期や事業規模で個別に異なる複雑な契約の態様もありそうだ。「あれだけの大きな会社組織だが、バイヤーの個人商店みたいなところがある。バイヤー決済も大きく、組織も縦割りで商品カテゴリの部署ごとで登録フォーマット、ルールも微妙に違う。これまで求めていなかった大口取引先の一部に『ベンダーセントラル』経由ではなく、個別に要請したことで明るみになったのでは」と見る事業者もいる。

背景に収益良化への焦りか

 アマゾンを「協力金」要請に駆り立てた背景にはビジネスの「収益性」に対する強い意識が働いているのではないか。

 事業開始当初こそ「地球上で最も豊富な品揃え」を目指し、投資先行で規模拡大を目指してきたが、競合モールは、「メーカーとの直接取引は多くはなく、中間事業者を挟めば必然的に価格に反映される。中間事業者を排し、直接取引を行いたいという志向は持っているはず」と話す。実際、ここ数年取次を排した出版社との直接取引への切り替えを進めている。今回の要請も「中間卸排除に向けた動き」とみる事業者もいる。

 前出の日用雑貨卸は「ここ3、4カ月からやたら卸値を下げて、といった要請がくる」と話す。要請は主に低単価商品。「数万円の高単価品に対する要請はまずこない。利益の絶対額が欲しいのでは」と推測する。

 昨年はヤマトと商品配送料を4割程度引き上げることで合意し、4月、配送代行サービスの手数料も引き上げる。要請も「(アマゾンの)売り上げに占める経費は33%ほど。IT関連コストがかさみ、粗利を稼がないとビジネスを存続できず、コスト増に協力を求める誘導があったのでは」とみる関係者もいる。

                 ◇

 本来、収益向上は販売企業の努力でなされるもの。サービス拡充や割引補填を背景にしたアマゾンの「協力金」要請は、取引先からの「収奪システム」と判断されるか「共栄」のための仕組みか。公取委の実態解明が待たれる。


元公取「うやむやで済まない」

 
違法認定の行方は?

 アマゾンの「協力金」要請は独占禁止法違反と判断されるのか。今回の立ち入り検査に元公正取引委員会の幹部は「少なくとも『優越的地位の濫用』の疑いがあるということは現実の問題として被害者がいるということ。それをうやむやで済ませることはないのでは」と指摘。別の元公取執行担当官も「被害者が存在し、外形的に見て『優越的地位の濫用』にあたる」との感想を口にする。

 「優越的地位の濫用」にあたるのは、「継続して取引する相手に自己のために金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させる」「相手に不利益となるような取引条件を設定、変更する」行為など。協賛金の負担や不当な返品、押しつけ販売があたる。仮に取引先が合意していても、通常の商慣習に照らして問題ならば違法になる。課徴金は違反行為期間(上限3年間)に相手方と行われた取引額の1%だ。

 ただ、認定は簡単ではない。「優越的地位」の確認に加え「正常な商慣習に照らして不当である」「濫用行為」の3要件の判断が必要だからだ。

 実際、09年に課徴金の対象となって以降、処分を受けた5社は、いずれも課徴金が高額であることから不服として公取委の審判制度で争っている。1社を除きいずれも決着はついていない(審判制度は13年に廃止)。

                    ◇

 一昨年、公取委は、アマゾンが競合他社と同等の価格・品揃えを取引先に保証させる「最恵国待遇条項」をめぐり立ち入り検査を行った。その後、1年を経て、条項撤廃という自発的措置を受けて審査を終了。ただ、前出幹部は、「『最恵国―』は課徴金の対象でもなく、正規の事件として着手する以前に改善に取り組んだことが背景にあった」とする。

 「最恵国―」をめぐっては日本に先んじてEUが調査していた。EUの当局は昨年5月、アマゾンの改善策を受け入れ調査を終了。これに日本も続いた。

 改善の背景に、海外の独占禁止法関連法案に規定される、「コミットメント(確約)手続」がある。「確約手続」は、調査対象企業が改善策を提示し、これを認定することで競争環境の正常化を図るものだ。

 「優越的地位の濫用」は、調査の進捗につれ取引先企業側の身元が分かりやすくなり、証言撤回など協力を得るのが難しくなる。また、巨大企業は取引先が多岐に渡り、個別判断はマンパワーと相当な期間が必要。このため「確約手続」は「優越的地位の濫用」に有効とされてきた。調査対象企業にとっても違法認定を受けず、取引先から損害賠償など民事訴訟を起こされるリスクが減る。

 「優越的地位の濫用」ではないが過去、調査対象企業の改善策を受け入れ調査を終了した例はある。「最恵国―」条項の撤廃も一見、「確約手続」に近いものに見える。

 ただ、こうした措置は、あくまで調査以前に企業が取り組んでいたことが前提。また、「確約手続」は日本で明確な法規定がなく、TPP協定の発効に合わせて導入される。

 今回は被害を訴えた事業者がいたことが発端。前出公取委幹部も「法規定がない中で(仮に確約を求めることに)説明がつくのか、といえばつかないと思う。あとはどれだけアマゾンが反証の材料を持っているか」(前出公取委幹部)と話す。

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