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団体訴訟制度導入から10年 適格消費者団体の「正体」、問われる適格性、背景に「生協」の存在

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 適格消費者団体(以下、適格団体)の存在感が増している。その要求は、「法令違反」の指摘にとどまらず、違法性の有無を問わない「消費者視点」の観点からも行われる。最近では、景品表示法の処分企業を対象にクラスアクション(集団)訴訟を視野に入れたとみられる動きをみせる団体も現れ始めた(本紙1639号既報)。だが、消費者庁から与えられた権限を背景に強権をふるう適格団体に対し、その適格性を問う声が上がっている。その運営は、生活協同組合(以下、生協)への依存なくして成り立たないためだ。

オーナー並みの影響力

 「やはり公平性に欠けると思う」。適格団体の一つ、消費者支援ネット北海道の担当者はこう話す。後述するが適格団体と生協の関係は、多くの団体が認識するところであるためだ。全国に17ある適格団体の生協依存度を見てみる(表は、16年度に活動実績のある14団体のみ)。

 適格団体は、弁護士や司法書士などの法曹関係者、消費生活相談員らを構成メンバーにする。ただ、ここで問題となるのが生協関係者の多くがその運営にかかわっていることだ。役員・職員に占める生協会員の比率は高いところで50%。その比率が2割を超える団体は、14団体中、実に10団体に上る。

 ちなみに上場企業の場合、2~3割の株式を保有していれば、実質的に会社支配を行うことが可能とされる。企業でいえば、生協はオーナー並みの影響力を持っていることになる。

生協が関与

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 適格団体は、消費者庁の認定を受け、景品表示法や消費者契約法、特定商取引法に基づき表示の見直しなどを迫る「差止請求権」を持つ団体のこと。その「表示改善」の実績は枚挙に暇がない。

 団体によってその組織は異なるが、差止請求の前提となる「申し入れ」は大きく2種類に分かれる。一つは、弁護士などの専門家で構成される「検討委員会」の活動。表示について、景表法等の観点から違法性の有無が検討する。もう一つは、主に消費者で構成する「活動委員会」。違法性を問わず、「消費者目線で納得いかないものを検討する」(消費者団体関係者)という。

 そのやり取りの大半は、違法性の明確な判断が行われないまま公表され、報道される可能性もある。適格団体の指摘は、企業にとって新たなリスクとなっている。加えて、全国17団体のうち、2団体はとくに認められた特定適格団体(以下、特定適格)として財産的被害に対し、被害者に代わり損害賠償を求め提訴できる権限も持つ。

 一方の生協は、消費生活協同組合法によって組織された巨大な"消費者組織"。原則、利用は組合員に限定される。他方、生協は"事業者"としての側面も持つ。実店舗は組合員以外も利用可能。実質的にスーパーとなんら変わりはない。実際、過去には、全国の生協を束ねる日本生活協同組合連合会が景品表示法で行政処分を受けたこともある(06年と08年)。

「生協の別動隊」

 「消費者庁の行政処分を受ける可能性がある立場にありながら、その組織の役員が適格団体におさまっている。企業広告に差止請求が行え、時には消費者の集団訴訟を支援できる。生協のライバル会社、例えば食品の宅配事業者をターゲットに差止請求もできる」(業界関係者)。別の関係者も「いわば生協の別動隊。なぜ利益相反とならないか不思議」と指摘する。運営に生協が深く関わり、役員・職員に収まっていることに違和感を覚える企業は少なくない。

 当然、差止請求という強力な権限の行使には制約もある。その業務は、消費者庁に監督され、利益相反を排除するための措置がとられる。

 今回、本紙掲載までに回答が得られた複数の適格団体からも「(生協と)競合関係にあることが分かれば(差止請求判断の)決定に加わることはない」(消費者支援機構福岡=福岡、消費者ネット広島)といった声が聞かれた。

 ただ、生協が扱う商品は、食品や日用品、衣類など商品全般から医療・介護サービスなど多岐に渡る。健康食品を扱う生協もある。財務的にも「個人会員は100人ほどいるが、会費ではとても運営費は賄えない。運営費の原資は団体正会員。とりわけ生協の支援があって初めて成り立っている」(消費者防止ネットワーク東海=Cネット東海)と自ら認めるところ。「決して利益団体というわけではない」(同)とするが問題はないのか。

「こちら生協です」

 「適格団体の担当は今不在です。こちらは生協です」。ある適格団体に電話すると、そんな答えが返ってきた。というのも、確認できただけで埼玉、福岡、熊本、佐賀、石川にある適格団体は、生協内に事務局を置いているからだ。各団体は、「賃料、運営の費用相当分は負担している」(埼玉消費者被害をなくす会=なくす会)、「無償で提供を受けている」(福岡)、「生協の多重債務者救済活動を行っている事務所に事務局を置いている」(消費者支援ネットくまもと=熊本)と話す。

 ただ、国で2010年、国民生活センターの改革が行われた際には、その独立性や公平性を担保する観点からセンター内に拠点を置く消費者団体の全国消費生活相談員協会が「事務所の場所、契約等を通じて密接な関係を有する」として移転した経緯がある。

職員が全員生協

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 加えて、埼玉、福岡、熊本の団体は職員全員が生協組合員。こうした状況に、仮に消費者から生協に関する情報提供を受けても「内部で処理することが可能では」(業界関係者)との見方がある。

 各団体は、「確かに生協でも過去に異物混入や、表示の誤りなどの問題があったことはある。ただ、仮にあればその点は切り離して考える」(福岡)、「生協の商品表示も、情報提供があり法律違反と判断すれば申し入れ、差止請求の対象にする」(熊本)、「団体への関わりは事業者としてやっている趣旨はなく、あくまで消費者としての関わり。(消費者から寄せられた情報は)悪質性をチェックする項目があり、機械的に判断される」(なくす会)と答える。

 ただ、一方で、「(生協に対する指摘に至らないのは)適格団体に情報提供が行われる前に生協自ら対処しているため。そのため過去に生協を対象にした事案はない」(福岡)、「個人的見解だが、差止請求が目的ではなく、消費者にとってよい状態になることが目的。その意味でツーカーで話が進んで改善されるならば、それはそれで喜ばしいこと」(なくす会)とも話す。

 「性善説」で語られる生協に対し、かたや企業は、やり取りの多くが公表され、企業イメージの低下を招くリスクがある。かつて適格団体の指摘を受けた企業は、「指摘が改善につながりよい部分もあるが、違法性の有無が分からない中で強硬に要求し、妥協点の提案がないところもある。それでも事業者は泣き寝入りするほかない」と振り返る。生協に対する印象とはかなりの温度差がある。

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 「適格団体の運営は、財政的に非常に大変という部分は確かにある。ボランティアという覚悟がないとできない」。今回、運営の苦労は複数の適格団体から聞かれた。生協への依存度が4%という消費者支援ネット北海道は、「(生協依存の指摘を受けるのは)そういった部分が問題視されているから。そのため、独立性を担保しようとしてきた。過去には生協に申し入れも行っている」と話す。消費者市民ネットとうほくも、認定以前の14年と16年、生協に申し入れを行っている。

 生協依存度の高さに、消費者庁は「公正な遂行が阻害されないよう法律やガイドラインに沿って運営してもらう」と話す。適格団体の指摘には有益なものもある。だが、権限の影響力が強まる中、これまで以上に運営の適切性が求められている。


【「葛の花」事件の行方は?】

処分企業に問合せ
返金「ほとんど申請ない」


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 適格団体より強い権限を持つ特定適格消費者団体(以下、特定適格)が動き始めている。「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品で一斉処分を受けた企業を対象にしたもの。権限行使による「財産被害の回復(契約無効による返金)」の可能性を念頭に置いたものとみられる。景品表示法に基づく措置命令に対し、新たなリスクが浮上している。

 特定適格の消費者支援機構関西(=KC's)は昨年12月、「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品の表示で処分を受けた企業に「問い合わせ」を行った。処分企業全社に行われているとみられる。

 「問い合わせ」は、「葛の花」が景表法の「優良誤認」で違法認定されたことを前提に、消費者契約法上の「重要事実の不実告知」にあたると指摘するもの。その上で、処分企業に顧客への返金状況や返金の意思を確認している。

 特定適格は、多数の消費者の財産的被害を確認した場合、被害者に代わり事業者に損害賠償の義務をあることの確認を求めて提訴できる団体。裁判所が訴えを認めれば、団体は被害者を募り、企業の支払額を確定する。「不実告知」が認められれば、企業は顧客への返金が必要になる。

                   ◇

 今年2月、「葛の花」の処分で課徴金納付命令を下されたのは9社。課徴金額は、対象となる表示期間の商品売上額の3%であることを考えると、売上の総計は、推計で約36億円。仮に訴訟が提起され、訴えが認められれば企業の事業活動への影響は計り知れない。

 回答期限は、1月23日。複数の企業に確認したところ「問い合わせ」に対しては、確認がとれた企業すべてが回答している。ただ、返金状況には、「求めてきた顧客がほとんどいない」というのが実情。集団訴訟に発展すれば寝た子を起こすことになる。

                   ◇

 現状では訴訟に至るには複数のハードルがある。指摘の根拠法令は、消契法。過去にサン・クロレラ販売の折込チラシをめぐる最高裁判決では「広告も『勧誘』にあたりうる」との判断は示されたが、「広告」が「勧誘行為」とみなされるかが改めて争点になる。景表法の不当表示が、消契法上の「不実告知」にあたるかも争点になりそうだ。

 また、企業の多くは返金の意思を示している。返金を拒んでいるなら提訴も理解できるが、企業側は社告掲載やホームページの告知など景表法上求められる消費者に対する誤認排除措置は取られている。

 「不実告知」にあたるとしても、商品購入は、広告以外に通販カタログ、友人紹介をきっかけにしたものなどさまざま。被害顧客の範囲も問題になりそうだ。

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