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【健康食品 包囲網】安全対策で大幅規制へ、企業不在の議論に過剰規制の恐れ

消費者庁厚労省.pngトクホや機能性表示食品を含む「健康食品」の製造・販売が大幅に規制される可能性が出てきた。11月15日、厚生労働省が食品衛生法改正に向けた懇談会の「取りまとめ」の中で、健食の安全対策を打ち出してきたためだ。ただ、その内容は事業者にとって寝耳に水のものばかり。わずか5回、企業不在の懇談会で、業界を左右する健食の安全対策の方針が決められようとしている。過剰規制となる恐れもあることから事業者の反発は必至の状況だ。


企業への説明わずか2日前

 「説明会があったことも伏せて欲しいという感じだった。今後の安全性対策の方向性に事業者とざっくばらんに意見交換したいという感じ。安全性対策は必要。ただ、過剰規制になる恐れがある」(健食業界団体関係者)。

 同月13日、厚労省は健食業界の主だった業界9団体を集め、食品衛生法改正懇談会「取りまとめ案」の説明会を行った。説明に立ったのは、森田剛史新開発食品保健対策室長。それからわずか2日で「取りまとめ」を公表。その内容に、「日本はサプリメントに関する規制がない。議論が一歩進むことには肯定的。ただ、健食の安全対策といっても今は"義務化"の基盤がない」「パンドラの箱を開けてしまったという感じ。日本は、機能性といっても生鮮食品からサプリメントまでごった煮。何に対して網をかけるのか」と、説明会参加者からは議論の詰めの甘さを指摘する声が相次いでいる。

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健康被害防止へ安全対策強化

 「取りまとめ」の骨子はこうだ。現在、食衛法には、健康に危害を及ぼす食品の「流通禁止措置」(第6条)と「暫定流通禁止措置」(第7条)の規定がある。6条の運用は、因果関係が明確であること必要。7条はそこに至らない場合でも運用できる。

 ただ、実際、活用された例はわずか。営業の自由との兼ね合いから制限的な運用にとどまる。
 懇談会はその打開策を検討した。健食に関わるポイントは、被害防止に向け「暫定流通禁止措置」の運用改善、健康被害の報告義務化など被害情報の収集体制の確立、GMP(適正製造規範)の義務化の検討を含む製造工程管理の徹底などだ。

 ただ、現状、健食には明確な定義がない。このため、「リスクの高い成分」「抽出・濃縮された特定成分(カプセル・錠剤等の形状)」といった新たな枠組みを新設。その中で安全対策の規制をかけるべきと取りまとめられた。長期的には食経験のない食品や摂取方法については販売前にリスク評価を行う欧米の仕組みを検討することも提言。対象は「いわゆる健康食品」だけでなく、トクホ、機能性表示食品も含んでいる。

消費者の意見議論なく採用

 突如、議論が沸き起こった背景には、今年7月に発覚した「プエラリア・ミリフィカ」の健康被害の問題がある。

 国民生活センターには、過去5年で不正出血など209件の危害情報が寄せられ、これを受けた厚労省の調査でも223件の被害事例が明らかになった。ただ、6・7条の執行には至らず、通知による安全性の対策強化のみ。このため委員の問題意識も健食の安全対策の不備に集中した。

 「取りまとめ」の提言も委員の意見が何ら議論なく反映されている。

 「錠剤・カプセルはGMPを義務化するぐらい強制的にしても良いのではないか」(森田満樹委員)、「健食は消費者に対する新たなリスクということで規制強化と法制度の見直しを求めたい」(同)、「因果関係が分かるまで待つことで被害拡大の恐れがある。健食が原因か分からないけど重篤なものは情報を見られるように」(平沢裕子委員)といった具合。森田委員は健食の表示解禁を受けて機能性表示食品の制度設計にも関わり、平沢委員は、健康被害問題に関心の強いマスコミ関係者として知られる。

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「悪質クレーマーが跋扈する」 
 
 ただ、これに事業者からは異論が噴出している。「取りまとめ」の具体性があまりに乏しいためだ。
 まず、「健食」の定義を明確にしないまま議論が先行している点。トクホは国が安全性を審査し、機能性表示食品もガイドラインに沿った安全性評価が行われている。被害報告の制度もある。本来、別枠で議論すべきものだが、懇談会では一律に規制対象として語られている。

 健康被害の報告義務化、「リスクの高い成分」というカテゴリの新設にも「報告対象、成分の選定方法が全く分からない」といった声がある。健食事業者の相談窓口には、日常的に詐欺や脅迫まがいのクレームも多く寄せられている。「"因果関係が分からなくても情報公開"となったら行政や消費生活センターの窓口にもそうしたクレーマーが押し寄せる。正確な情報など把握できない」「ひと口に健康被害といっても過剰摂取によるもの、個人の体質によるもの、『プエラリア』のように成分自体の問題などさまざま。何を報告対象にするかも不明」といった声が上がる。「健康被害を外形的に捉えているだけで、販売の現場を踏んだことのない人たちの意見。ただ問題意識だけが先走っている印象」というのが事業者の本音だ。

 長期的に販売前にリスク評価を行う欧米の仕組みを検討するとの提言も、欧州でこれを担うのはEFSA(エフサ=欧州食品安全機関)、米国ではFDA(医薬食品局)。つまり国がその役割を担っている。「『プエラリア』の問題から健食全体の規制を捉え、規制一辺倒になると行政コストがあがる」といった意見もある。

 「プエラリア」の問題から健食全体の規制につなげることの妥当性には、「安全対策の強化は必要。ただ、そもそも"飲んだら胸が大きくなるサプリ"なんてものがおかしい。素材特有の問題と健食全体の安全性を分けずに規制を考える意味が分からない」との声も。化粧品では13年、カネボウ化粧品による「白斑問題」が起きた。当時、白斑被害を被った顧客は約1万4000人。国センにも473件の危害情報が寄せられた。ただ、とられた対応は、パッケージの注意表示に「色抜けや黒ずみ」という文言を追記するよう業界団体主導で自主基準が変更されたのみだ。

検討プロセスに企業不在

 具体性の乏しい「取りまとめ」の背景には、検討プロセスの問題もありそうだ。

 懇談会が設置されたのは今年9月。食衛法のカバー領域は広範囲に渡るにも関わらず、そこからわずか5回の会合で健食業界を左右する安全性対策の方針が決められてしまった。加えて、構成員は、消費者サイド・マスコミ関係者5人、行政関係者5人、学識経験者2人という構成。現場感覚に疎い関係者らが自由な意見を交わして決めているためだ。

 厚労省は、「取りまとめ」を受けた今後の検討スケジュールを「着手できるものから」とする。企業不在の懇談会の人選には、「分からない。『取りまとめ』にも関係者と調整しつつ、という点は触れている」と話すのみだ。

 今後、議論を深めるための検討会の設置には、「検討会というより、関係各所と調整の上で、法改正が良いのか、省令や通知での対応が良いのか検討する」と話す。

 「リスクの高い成分」の選定方法、GMPや健康被害の報告義務化には「まだ決定していない。報告対象もこれから検討する」と回答した。

 日本通信販売協会は、今回の「取りまとめ」に「すでに機能性表示食品にも報告制度があり、かたや消費者庁。報告の基準も分からない中で義務化など大変な内容が含まれている。あれだけでは中身があいまいだが、今後の方向性によっては懸念している」と話す。多角点な視点を欠いたまま検討が進めば過剰規制になる恐れがある。


消費者庁は〝定期縛り〟規制

健食めぐる規制環境

 健康食品に対する規制の包囲網が急速に狭まっている。安倍首相の「表示解禁」宣言から一転、新制度が導入された意味は置き去りにされ、トクホや機能性表示食品を巻き込み、規制強化が進む。

 制度の導入からわずか2年の間にライオンのトクホ飲料に対する行政指導が行われ、最近では、「葛の花」の機能性表示食品に対する行政処分が行われた。消費者庁は、健食に限らず、保健機能食品の表示に対しても例外なく厳正に対処する方針を明確にしている。

 健食に対する規制の圧力も増している。新制度の導入と前後して、食品安全委員会は15年12月、健食の安全性に懸念を示す「健康食品に関するメッセージ」を公表。今年1月には、健康増進法の権限移譲を受け、保健所が規制当局として保健所が台頭している実態が明らかになった。

 消費者委員会でも健食の表示規制はたびたびテーマに上がる。消費者庁は10月、消費者向けパンフレット「健康食品Q&A」を策定。その中で健食に対し「体調が良くなっても『長期的に悪い影響がでるかも』」、「上手に使うには『健食で問題解決しようとしないで』」などと呼びかけている。監修は、新制度の設計にも関わった梅垣敬三氏。ただ、健食の利用を頭ごなしに否定するような内容に、事業者からの評判はあまり良くない。

 11月1日には、消費者庁が定期購入に関するガイドラインを公表した(6面に関連記事)。購入条件を明確にせず、定期購入に誘導する手法に対する特定商取引法の執行強化を目的としたもの。「初回無料」「送料のみ負担」などと表示しながら、複数回の定期購入を条件とする"定期縛り"を規制するものだ。

 "定期縛り"をめぐる苦情は、ここ数年で急増していた。「リピート通販」という仕組み自体の信用性を崩しかねないものであり、早急な対処が必要。今後、健食に対する規制は今後ますます厳しくなりそうだ。


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