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医薬品「オンジ」の表示問題が浮上、「物忘れ改善」に日本医師会が横やり

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 「中年期以降の物忘れの改善」という効果をうたえる「オンジ」配合の漢方に日本医師会からイチャモンがついている。2015年、規制改革会議における検討などを背景に規制緩和で見直されたもの。今年4月、ロート製薬と森下仁丹が「キオグッド」の名称で発売して以降、市場が盛り上がり始めていた。認知症の治療法が確立されない中、"記憶ケア"は医薬品、食品双方で市場が過熱する分野。だが、厚生労働省は近く、取扱いに関する通知を出すとみられる。医薬品における表示規制は、機能性表示食品制度にも冷や水を浴びせることになりそうだ。

新たな効果?市場が過熱

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 「これ以上悪くならないというのであれば『予防』だが、ある時点から良くなるのは『改善』。失った記憶がよみがえる、と言ったらそれも『改善』。承認の効果と違わず、本来ならなんら問題ない。結局のところ厚労省が承認したことが問題」。突如湧き上がった"オンジ問題"にある業界関係者が見解を述べる。まず、経緯を振り返りたい。

 発端は15年12月。厚労省は、「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて」(以下、ガイダンス通知)という通知を発出したことに始まる。規制改革会議における医薬品等の規制緩和要請を背景にしたもの。複数の生薬を組み合わせた漢方薬ではなく、1種類の生薬(単味生薬)の審査基準の整備が遅れていたことに対応したものだ。

 そこで新たに認められたのが「オンジ」という生薬の効果。「中年期以降の物忘れの改善」と明記された。新しい効能であることもあって、厚労省は販売時、適切な医療を受ける機会を失わないよう、認知症とは異なることを注意喚起するようメーカーに求めた。

 以降、高齢社会の進行に加え、認知症の治療法が確立していないこともあって、これをケアする製薬市場は過熱。「キオグッド」をはじめ「ワスノン」(小林製薬)、「アレデル」(クラシエ薬品)、「キノウケア」(日本薬師堂)などさまざまな商品が展開されている。最近では大正製薬が「メモリーケア」を発売した。

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 ただ、勝手な推測だが、商品名は、「記憶がグッド(良くなる)」「忘れるnone(ノン)」「あれ?でる」「昨日ケア」と連想できなくもない。これを"けしからん"と問題視。横やりを入れたのが医師会だ。

「記憶ケア」表示見分けつかない

 そもそも「認知症」と「物忘れ」は何が違うのか。端的にいえば「物忘れ」は年相応の"正常な物忘れ"のこと。視力で言うところの加齢に伴う「老眼」と、治療が必要な「老視」の違いと同じだ。症状による判断基準も示されている。

 ただ、認知症ほどではないにしろ"正常な物忘れ"より記憶能力が低下する「軽度認知障害」も注目されている。未病から病気に至る身体の変化は本来、段階的なもの。機能性表示食品でも「記憶力の維持」といった表示が行われており、脳のイラストを使った広告などと合わせてみると消費者は見分けがつかない。

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厚労省 通知で規制か、「4・13」事務連絡再来も

 厚労省が準備を進める通知は、まだ"案"の状態。着地点は見えないが、すでに販売企業へのヒアリングを終えており、近く出されるとみられる。

 ポイントは、大きく3つ。まず「中年期以降の物忘れの改善」という効果について。加齢による"正常な物忘れ"のことであり、一般用医薬品で認められている「『健忘』と変わらない」ことを通達するとみられる。

 「健忘」は、オンジを含む複数の生薬の効果として過去に認められたもの。現在、大々的に販売する企業はない。今回、"単味"で「物忘れの改善」が認められたため「新しい効果の承認」と広告していた企業もあるが、これを規制する狙いだろう。

 ガイダンス通知で示された「物忘れの改善」の科学的知見と範囲を超える効果の表現も規制する。たとえば「脳機能の活性化」「脳神経細胞の増加・再生」「忘れてしまった記憶を甦らせる」といった表現は誤認を生む表現として規制され、商品名を広告の表現と組み合わせることも避けるよう求めるとみられる。

 前出の「キオグッド」から「記憶がよくなる」を連想させる結びつけのことだが、健食の商品名を規制した07年の「4・13事務連絡」をほうふつとさせる規制だ。

 最後に「認知症の治療・予防に用いる医薬品ではない」旨の記載は"必ず書け"と義務表示を求めるとみられる。

 騒動の発端とみられる医師会は「オンジ」について「商品名が色んなものが出ており、それについての問題意識から(会内で)話が出たことはある」とする。ただ、団体として明確な要望は「厚労省と意見交換したというレベルではない」と否定。だが、通知が事実なら、実際は水面下でご立腹だったわけだ。

 厚労省は企業へのヒアリングの事実に「答えられない」とコメント。企業側も「回答を差し控えさせていただく」(ロート製薬、森下仁丹、小林製薬)と口を揃えるため真相は今後の厚労省の対応を待つことになる。

 ただ、今回の規制に「そもそも承認した厚労省側の問題」「自らのヘマを取り繕う言い訳文」と業界サイドは冷ややかだ。

機能性表示食品に問題波及も

 規制は、機能性表示食品や健康食品にも影響を及ぼしそうだ。

 新制度はすでに「認知機能」に関する届出が多数行われている。医薬品は、物忘れの「改善」、食品は記憶力の「維持」でニュアンスは異なる。ただ、広告表示では見分けがつかないものばかりだ。「オンジ」の登場以来、機能性表示食品も「以前は認められていたパッケージに『脳』のイラストを使うことが認められなくなっている」(別の業界関係者)といった声も聞かれる。新聞広告では「脳」のイラストが使われているケースがあり、新聞考査は現状セーフ。ただ、通知が出されることになれば影響を受ける可能性がある。

 医薬品と食品のすみ分けについて、厚労省は「(機能性表示食品は)薬ではないので。医薬品として申請されたらそれを承認するのがこちら。立ち位置が違う」と話す。消費者庁には厚労省からの出向者もいるはずだが調整には「(所管する)法律が別なので」と、あいかわらずの縦割り行政を露呈。消費者庁も「届出の内容に不備がないか確認はするが(事業者の自己責任であるため)消費者が誤認するとなれば(景品表示法の執行を担う)表示対策課の範疇」(食品表示企画課)と無責任な回答に終始する。
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 厚労省の失態ともいえる今回の騒動は、いかに着地点を見出すか。政府が成長戦略として推し進める新制度だが、「葛の花」に対する措置命令の方針しかり。ここのところネガティブなニュースばかりで市場が冷え込む懸念がある。「食品は食品、医薬品は医薬品」と建前を振りかざすならば、食品に累が及はないよう適切な対応が求められる。

"オンジ問題"新制度への影響は?

医・食の相克再び、表示がオーバーラップ「怖すぎて広告できない」

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 「中年期以降の物忘れの改善」という効果をうたえる漢方「オンジ」の表示問題。高齢社会の進行を背景に"記憶ケア"は医薬品、食品双方にとって今後も拡大が期待される市場だ。ただ、医薬品に端を発した表示規制は、機能性表示食品にも影響を及ぼしそうだ。

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 それぞれの制度の表示を見てみる。「オンジ」に認められているのは「中年期以降の物忘れの改善」という効果。機能性表示食品は「認知機能の一部である記憶力(思い出す力等)の維持」「中高年の方の加齢に伴い低下する認知機能の一部である(略)情報の記憶をサポートする」といった届出表示がある。事業者の自己責任による届出制の機能性表示食品は、医薬品と異なり、表現に一定の幅がある。

 広告に至ると、その境界はよりあいまいになる。

 「オンジ」にみられるのは、「記憶に自信がなくなってきたなと気になり始めたら」「脳内伝達の活性化、思い出す力を高めます」「覚える力と思い出す力を高め、物忘れの改善に役立ちます」といった表現だ。

 一方、機能性表示食品では、認知機能に働きかけるイチョウ葉で「最近物忘れが気になる方へ」、「記憶力を維持したい中高年の方の記憶を内側からサポート」といった表現、同じくDHA・EPAで「認知能力の維持に役立つ」といった表現がみられる。

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 基本的に表現は、物忘れの「改善」に踏み込める「オンジ」と、記憶力の「維持」にとどまる機能性表示食品ですみ分けられている。

 ただ、前出の広告でも機能性表示食品の「思い出す力の維持」と医薬品の「思い出す力を高める」は近い表現。中には、機能性表示食品ながら「物忘れが気になる方へ」と表現しているものもある。ほかにも「認知」「記憶」といった言葉、「脳」のイラストを使った表現は重複する可能性が高い。

 医薬品は、漢方をめぐる通知に沿った効果表示が決まっており、表現の幅も制約される。一方の機能性表示食品は、繰り返しになるが「事業者の自己責任による届出制」が基本。それだけ表現のチョイスにも幅がでてくる。双方の領域が近づけば近づくほど、「行政が制度や法律上、すみ分けができているといっても、表現の選択が比較的自由な食品は、作り方を一歩間違えると踏み越えることになる」「何が法律に抵触するのか怖すぎて広告できない」といった声が業界関係者からも上がる。

 表現が必要以上に抑えられれば企業の販売戦略にも影響する。ひいては制度の成否にも関わる問題だ。なりより企業でも「判断が難しい」もの。消費者庁は、消費者教育を推進すると言うが、消費者はどういった違いがあるのか容易に理解できないだろう。

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 そもそも、医薬品と食品の"相克"は今に始まったことではない。

 機能性表示食品制度の導入を前にした2015年には「指定医薬部外品(ビタミン含有保健剤)」、いわゆる栄養ドリンクの表示問題が浮上していた。

 栄養ドリンクと認識されるものには「ビタミン含有保健剤」と食品に分類される「清涼飲料水」がある。ビタミン含有保健剤は、国の承認基準に沿って「滋養強壮、肉体疲労時の栄養補給」といった効果がうたえるが、規制改革会議の方針を受け、表示を改正することが決まった。市場が縮小トレンドにあったことも背景にあったとみられる。

 これを受け、今年4月に基準が改正。効果表現は「体力、身体抵抗力または集中力の維持・改善」「疲労の回復・予防」など5項目から一つ以上を表示できるよう変わった。また、一定の基準を満たせば「筋力の低下」「目覚めが悪い」「肌の不調」といった症状への効果も表示できるようになった。

 ただ、機能性表示食品でも「疲労感」や「筋力量の維持」、「睡眠」に訴求するものがある。

 15年当時、厚労省は「たとえば『目の健康』と着眼点が同じであればオーバーラップしたような表現はありうる。ただ、食品は『健康増進』の範囲。法的、制度上も別物」(監視指導・麻薬対策課)としていた。ただ、事業者の広告活動はそうきれいにすみ分けられる単純なものではない。明確な判断基準がない中で、市場は混沌とした状態に陥っている。

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