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機能性表示食品の広告問題 「葛の花」販売企業を〝一斉聴取〟 課徴金調査で処分不可避か

011.jpg 機能性表示食品に対する初の行政処分が不可避の状況だ。東洋新薬がOEM供給する「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品の広告問題は今年5月、スギ薬局の「お詫び社告」で浮上(本紙1609号既報)。消費者庁は調査の有無を明言していないが、7月下旬、「課徴金」に関する調査を始めたとみられ、大詰めを迎えている。制度開始から2年。"表示解禁"と逆行する取締り強化に舵を切る消費者庁の狙いはどこにあるのか。

"詰み"の状態

 「事情聴取への協力をお願いします」。今年6月、消費者庁食品表示対策室から「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品(以下、葛の花)を扱うある企業にそんな要請が寄せられた。聴取は「任意」。「広告作成に至る経緯、意図および内容」を聴取した供述調書を作成するとの依頼だった。

 東洋新薬がOEM供給する「葛の花」で届出した企業は26社(未発売、販売休止を含む)に及ぶ。一斉聴取の対象は十数社とみられ、6月下旬から2週に渡り行われた。

 当日は、担当者1人での来庁を要請。対する消費者庁は2人1組の2班で対応したという。前出企業の関係筋は「景品表示法の調査ならば不実証広告規制で『根拠』の提出を求め『表示』との整合性を判断すればいい。任意で、しかも広告の作成経緯まで聞く013.jpgのは稀。通常の手続きと異なる雰囲気を感じた」と話す。背景は後述するが、7月下旬、少なくとも4社に「課徴金」の調査依頼がきたとの情報が複数の関係筋の話から確認できた。

 「課徴金」は、景表法の「措置命令(行政処分)」とセットの運用が決まり。いわば"詰み"の状態といえる。5月に「お詫び社告」を掲載したスギ薬局も、課徴金対象期間を短くすることが目的とみられていた。

「特定条件」の結果

 「葛の花の臨床試験はある"特定条件"のもとで行われた結果であることをご存知でしたか?」。調査に応じたある企業は、消費者庁からそう聞かれたという。問題は、「強調表示」と「打消し表示」のバランスだ。

 「葛の花」の臨床試験は、「1日9000歩の運動」「2000カロリーの摂取」という条件下で実施。内臓脂肪やウエスト周囲径、体重の減少を確認している。だが、ある企業は体重減少という「強調表示」に対し、「食事制限と適度な運動(特定条件)」という「打消し表示」が目立っていないことを指摘されたという。

 別の企業は、「対象者」の明確化を求められてもいる。

 そもそも「葛の花」の届出表示の大半は、「肥満気味な方に」「お腹の脂肪が気になる方に」と対象者が明記されている。ただ、臨床試験は「BMI25~30」の健常者を対象にしたもの。この企業も広告に使用するグラフ周辺に表示していたが、「もっと目立つように」と指摘を受けたという。要は、「届出表示」の対象者より「臨床試験」の対象者を明確に書け、というわけだ。"動物試験"の結果から得られたメカニズムの考察」の明示を求められた企業もいる。消費者庁の意図は何か。

「打消し」を問題視


 調査と連動して今年6月、消費者庁はある重要な調査結果を示している。「打消し表示」に対する実態調査だ。

 詳細は省くが、調査では多くの消費者が「打消し表示」をスルーしていると報告。とくに「体験談(強調表示)」ではダイエット食品の広告を例に、商品の試験・調査結果との適切な対応を求めている。曰く、商品の使用と併用して「食事療法、運動療法等が必要な場合」、試験がBMI25以上の者を対象にするなど「特定条件の者しか効果が得られない場合」にその明示をすべきというのだ。その内容は「葛の花」の広告をめぐる指摘と一致する。

 消費者庁はここ最近、ほかの景表法事案でも「打消し表示」の問題に言及。行政処分を下している。ただ、今回の事件には販売企業とは別にもう一人の主役がいる。「葛の花」を製造していた東洋新薬の存在だ。

優れた営業資料

014.jpg 「よくできている。要は、機能性表示食品といっても表現のせめぎ合い。(取引先が)欲しいのは販促表現などテクニカルな部分。けどうちは怖いしやれない。制度の趣旨に合わず、消費者庁はこういうの大嫌いでしょうね」。あるメーカーが見解を述べる。論評の対象は、東洋新薬が「葛の花」の販売企業に提示していた営業ツール(=画像、一部抜粋)だ。

 資料はダイエット市場の概況に始まり、「食事制限をしないダイエットサプリのニーズが高い」と解説。「葛の花」の素材としての背景を説明する。
 特筆すべきは「販促表現例」との記載とセットで示される部分。試験結果を示すグラフ、体重減少のイメージなど自社商品の説明にとどまらず、同じダイエット関連の機能性表示食品を扱うディーエイチシーやライオンなど他社販促表現例を挙げて、その"法逸脱リスク"を指摘しているのだ。

 「(東洋新薬は)プレゼンテーションなどの資料を作る学術・法務関連の専用部署がある。わりと分業で、その意味で他社の実名をあげた資料作成も(取引先の実名を商習慣上伏せる)営業的な感覚で作ってないかもしれない。攻めている、とは感じるが、懸念されるリスクを示しつつ、ここまで立派な資料を作るのは販売側からすればありがたい」(前出のメーカー)。

 知財戦略に強い企業としても知られる。主力の青汁のOEMでは特許網を構築して他社優位性を確立。「お詫び社告」以降、「葛の花」の販売を休止する企業が相次ぐが、一時は「原料供給が間に合わず、提供をストップしている状態」(別のメーカー)というほど爆発的な勢いで売れた。

5カ月で2億円

 ただ、事ここに至り「葛の花」を扱っていた企業からは「営業ツールを信じてやったのに」と、恨み節も聞かれる。

 表示への「関与の度合い」が深い場合、東洋新薬のようなOEMメーカーであっても景表法の対象にはなる。実際、過去に事例もある。

 また、健康増進法は「何人も」が対象。6月下旬、消費者庁の事情聴取を受けた企業が広告の作成経緯の任意聴取など景表法調査と異なる手続きに違和感を覚えたのも「一斉聴取で製造元の関与を認定しようとしたのでは」との見方がある。

 ただ、「営業ツール」はこれを元にした販促物の作成に際して東洋新薬への再確認を求め、「関連法規に抵触する表現が含まれるので販促物への使用はお控えください」とも釘を刺している。

 東洋新薬は消費者庁からの調査の有無に「答えることができない」としており、消費者庁の対応が及ぶかは分からない。ただ、販売企業の中には、「5カ月で約2億円を販売した」という企業もある。少なくとも600万円前後の課徴金がかかる計算。年内にも機能性表示食品初の行政処分は下る可能性がある。

「葛の花」騒動の背景は?「中小活用」で生じた歪み

 機能性表示食品の届出公表件数は1000件を越え、四半世紀で許可件数約1200件のトクホにわずか2年で迫っている。制度は、トクホのような最終製品による臨床試験を必要としない「システマティックレビュー(SR)」が売り。成分をめぐる学術論文の総体から機能を評価できるこの手法は、中小企業に制度活用のすそ野を広げる上で大きな役割を果たした。

 消費者庁自身、届出企業の所在地から大都市圏(東京、大阪、愛知)に本社を構える企業が約600件、それ以外の都道府県からの届出が約300件に上ることを成果にあげている(届出の公表件数が約900件だった今年5月時点)。だが、ここにきて自らが成果とする中小の制度活用にジレンマを抱え始めている。

 「いわゆる健康食品」であれば、原料・OEMメーカーは商品を供給するだけでよかった。表示は販売側で責任を持つ。だが、新制度は「機能性評価の内容」と「表示」の整合性が重要。学術論文を読める専門家を抱えていない中小企業の場合、「この表現は大丈夫?」と原料メーカーに相談せざるを得ない。原料メーカー側も「『表現は自分で考えて』『ダメなものはダメ』と突っぱねる消極姿勢と、積極姿勢に分かれる」(OEMメーカー)。これを仲立ちするのがOEMの役割だが、「販売企業の理解不足に辟易する原料メーカーも多い」(同)とやり取りがこじれるケースがある。その中で躍進した1社が東洋新薬だ。

 「葛の花」は、東洋新薬のオリジナル原料。販売企業、原料メーカーをつなぐ"伝言ゲーム"を必要とせず、スムーズなやり取りが可能。「届出支援、販促サポートを含めたパッケージを数百万円で提供していた」という話も聞かれ、学術面の支援を強みに展開した。

 ただ、このことが制度への理解が未成熟な企業の参入も招いたかもしれない。さまざまな企業の参入は広告のバリエーションを生み、"多少逸脱しても"という企業が現れないとも限らない。一方でSRのため、表示問題が起これば同様の商品を扱う企業も芋づる式に騒動拡大のリスクがある。

 消費者庁も原料メーカーに対する要請を強めている。「届出情報は消費者庁に集約されるため、ある程度どの原料メーカーが関与しているか把握できる。実際、販売企業が届出表示を逸脱しないよう、見極めをきちんとするよう注意されたメーカーもいる」(別のOEMメーカー)という。

 騒動が東洋新薬にどのレベルで影響を及ぼすかは不透明だが、制度は企業の自己責任による届出制が前提。その趣旨から外れる企業への監視を強めているわけだ。「葛の花」騒動の背景にもダイエットという商材の反響の大きさに加え、消費者庁が抱えるジレンマの解消がありそうだ。

 とはいえ、中小の活用は、消費者庁自ら推進した成果でもある。「いわゆる健食」を差し置いた機能性表示食品の取締り強化は、ようやく認知を得はじめた市場を一気に冷え込ませる可能性がある。



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