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健康食品のネット販売市場 新興企業"ニッチ"に商機 「太る」「いびき」対応、アイデア勝負

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健康食品のネット販売市場に新規参入が相次いでいる。機能性表示食品制度の導入以降、商品の「機能」と「根拠」に強みを持つ既存プレーヤーの多くは、こぞって新市場に目を向けた。一方、新興プレーヤーは、これと逆行するような動きで独自の"ニッチ訴求"に商機を見出し、「アイデア」勝負で市場の一角に切り込もうとしている。その販売手法には危うさもつきまとう面もある。今後、市場はどう動くのか。

「太るサプリ」という逆転の発想

 健食で底堅い市場といえば「ダイエット」に異論のある事業者はいないだろう。一説には1000億円超の市場規模があるとされる。一方でここ最近、ウェブである"マイノリティ層"に注目されている市場がある。「太るサプリ市場」だ。

 男性の「ガリガリ体型」の悩みや、女性の「ふっくら体型」への憧れに対応するもの。痩せたい層がいればそのまた逆もしかりだが、店頭市場でそのニーズが着目されることはない。

 今年4月、「太るサプリ市場」に参入したライフリーフ(本社・東京都港区、佐藤拓朗社長)は、この市場における後発組。「ヤセ菌ブロック酵素」と名付けた酵素やビフィズス菌、生姜を配合した健食

「ファティーボ」を通販で展開する。

 ビフィズス菌や生姜と聞けば、ダイエットをイメージするが、「太るサプリ市場」においてその役割は異なる。ビフィズス菌は、「腸内環境を整え栄養吸収を助けるもの」、生姜も「体温低下で酵素の働きが鈍るため、脂肪が少なく体の冷えに悩む人のために配合したもの」という側面がクローズアップされている。要は"解釈"の問題だが、市場にはこうした商品が溢れている。

マイノリティ層を狙い打ち

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 気になるのは、いかにして"ニッチ市場"の鉱脈を引き当てるかだ。ニッチ訴求の健食を扱うある事業者は「思いつく、というより見つける方が正しい」と話す。この事業者の場合、グーグルが広告の出稿企業に提供する分析ツール「キーワードプランナー」を使うという。特定のワードを入力すると、その検索ボリュームが分かるもの。例えば、「太る」で調べると約2000件ほどの検索数がある(今年4月時点)。同時に関連ワードの検索数も表示されるが「太りたい」が約8000件に対し、「ダイエット・食事」「痩せたい」は6万件前後。検索ワードの微妙な違いで検索数も異なるが、こうしてニーズを掴む。単純に換算すれば「ダイエット」の7~30分の1程度の市場は存在することになる。

 ネットユーザーの悩み投稿サイト「知恵袋」や「Q&A」の機能も利用する。「太りたい」といった悩みで検索。「痩せたい」などと比べ悩む層がどの程度いるかの総数を比較して"アタリ"をつけるのだという。ちなみに前出ライフリーフの場合、佐藤社長自らも痩せていることに悩んでいたことが商品開発のきっかけになったという。

 これは一例だが、市場では睡眠中の「歯ぎしり」や「いびき」、赤ちゃんの「夜泣き」、「歌がうまくなる」なんていうとんでもサプリまである。そのメカニズムに疑問符がつくものもあるが、こうしてライバルのより少ない市場を探す。

"定期縛り"で高額成果報酬

 これら新興プレーヤーの多くが市場における露出の手段に使うのが「アフィリエイト広告」だ。プル型のメディアであるウェブは"悩み系商材"の展開に強い。潜在顧客の検索にマッチできれば比較的少ない投資で新規顧客と接点が築けるメリットもある。ただ、ここ数年、アフィリエイターに対する成果報酬単価は高騰ぎみ。資本力や通販ノウハウで大手の後塵を拝す新興プレーヤーの間でトレンドになっているのが"定期縛り"だ。

 多くは初回購入単価を抑え購入のハードルを下げる一方、数カ月の定期契約や自動継続を条件
にする。このことで投資回収のめどを掴み、高い成果報酬単価の支払いでアフィリエイターに露出してもらうようにする。

 ライフリーフの場合、割引率が最も高い9カ月コースの購入が「全体の6~7割ほど」(佐藤社長)。これだけの契約が維持できれば先行投資も行える。

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 そもそも、"定期縛り"の手法は健食通販を行う健康コーポレーションやモイストが考案したとされる。これら企業の成功を受けて一気に広まり、市場には10億円前後の新興プレーヤーが増加。より高い成果報酬単価の支払いを行うため、継続回数も3回から4回、5回、6回と増えていった。

 だが、これに応じて「解約できない」「定期購入と知らなかった」といったトラブルも増加。昨年1年間で全国の消費生活センターに寄せられた定期トラブルの件数は約1万3000件。12年の658件からわずか4年でじつに約20倍まで急増した。

手を引き始める決済代行会社

 「債権回収型の決済代行会社の多くは"定期縛り"を設ける企業から手を引き始めている」。アフィリエイト広告を運用するある広告代理店関係者はこう話す。

 「債権回収型」とは、顧客の支払いの有無に関わらず債権を保証するもの。小規模事業者にはありがたい存在だが、あまりの定期トラブルの多さに負担が増しているという。

 加えて、"定期縛り"に対する適格消費者団体による監視も強まっている。昨年、定期トラブルに対する景品表示法や消費者契約法に基づく申し入れ(差止請求)は5団体が行った7社に上る。新興プレーヤーの多くが広告表示の見直しを迫られ、"定期縛り"を前提とした事業モデルが設計しにくくなっている。

 広告市場の変化も新興プレーヤーにとって向かい風になっている。「最近は、アウトバウンドに強みを持つ九州系の通販企業が継続回数を着実に伸ばす『顧客育成』の観点からアフィリエイターに対する成果報酬単価を高めに設定している」(前出の広告代理店関係者)といった動きもある。
 "ニッチ市場"の「アイデア」には見習うべき点も多い。ただ、機能性表示食品制度の導入で表示に求められる根拠の質が高まる中、メカニズムがあいまいな健食への監視は厳しくなる。

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 今年3月、景表法の処分を受けたミーロードは「バストアップ」と「ダイエット」を同時に叶えるダブル機能を売りにした健食を展開していたが、消費者庁から"同時に叶える合理的根拠"を求められた。同じく、ニッチ市場には「二日酔い(暴飲暴食)」と「ダイエット」などダブル機能に独自性を見出す企業も多い。だが、今後は事業モデルの転換を迫られそうだ。

"定期縛り"の行方は?
事業モデルに限界、アフィリエイターは「在庫持たない販売者」


健康食品のウェブ市場で新興プレーヤーと並ぶもう一人の"主役"が「アフィリエイター」だ。だが、一部のアフィリエイターは、コンプライアンス意識の差など、企業とは相容れぬ商習慣の隔たりがある。中には、自ら顧客リストを持ち、アプローチするアフィリエイターも存在する。

 新興プレーヤーが、顧客育成を念頭に置いた事業モデルではなく、アフィリエイターへの成果報酬単価を高めるには二つの選択肢がある。「定期縛り」か「まとめ買い」、つまり、販売総額を高め、報酬を多く支払う方法だ。

 ただ、こうした販売手法にはリスクもつきまとう。アフィリエイターにとって広告を依頼される商品の多くは「初回無料」「まとめ割引」などで販売される。一方で成果報酬は高額、とくれば、自ら商品を購入し、オークションサイトで販売できるからだ。「成果報酬」「販売利益」の二つを得ることができる。

 安売りや乱売につながるだけでなく、中には「オークションでの販売を通じて自ら顧客リストを作るアフィリエイターもいる」(アフィリエイト広告を使う通販企業)という。ダイエット商品のニーズに合った顧客リストが作成できればそのリストに直接メールなどでアプローチできる。「在庫リスクを負わない販売者」というわけだ。

 当然こうした行為は、"不正"になる。本来、成果報酬の対価として企業が得るのは顧客の獲得。アフィリエイター自らが商品を購入するのは広告行為と異なる。継続して追跡すれば、企業側も特定のアフィリエイターを通じた購入顧客の継続が全くないなど不審な点を把握できる。

 ただ、事前の対応に限界があるため「見えない部分でこうした不正行為が横行しているのが実態」(アフィリエイト広告を運用する広告代理店関係者)という。また、「リピート」を前提とする通販の事業モデルに理解のない一般の主婦がアフィリエイターである場合など「1000円のサンプル品を販売して2000円の報酬が得られる」といった広告商品で不正の意識なく同様の行為を行うケースもあるため線引きが難しい。

 アフィリエイトではないが、最近では「食べログ」の大物レビュアーが飲食店から接待を受け、その店に高得点をつけ絶賛していた疑いを持たれた報道もあった。かつてこうした不正は組織的に行われていた。だが、広告モデルの成熟とともに、その主体は細分化され実態が掴みにくくなっている。こうした側面からも"定期縛り"を前提にした事業モデルは限界がきている。



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