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機能性表示食品で初の処分か スギ薬局「お詫び社告」の波紋、東洋新薬「葛の花」OEMで

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機能性表示食品に初めて行政処分が出される可能性が出てきた。ドラッグストアチェーン大手のスギ薬局が5月31日、新聞全国紙に突如、販売する機能性表示食品の広告が"不適切"であると自らの非を認める「社告」を掲載したためだ。ただ、波紋はこれだけにとどまりそうもない。東洋新薬が製造する同様の商品の供給先は26社(未発売を含む)。消費者庁は調査の手をすでに複数の企業にまで広げているからだ。突然の「社告」掲載は、これまでの消費者庁の法運用の転換を意味するものでもある。


「社告の掲載まだ続く」

 「スギ薬局に続き『社告』を掲載する企業が現れる」。その不穏な情報は、ある行政関係者から寄せられた。

 通常、景品表示法の運用で「社告」が掲載されるのは、その企業が措置命令を受けた時だ。消費者庁の処分を受け、これを消費者に周知するために使われる。明確な決まりはないものの、掲載は「新聞全国紙2紙以上」「2段10センチ」と相場が決まっている。内容も消費者庁が事前にチェックする。だが今回、スギ薬局は処分を受けたわけではない。では、なぜ「社告」掲載に至ったのか。

スギ薬局は「調査受けてない」

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 まず、掲載内容を振り返りたい。「葛の花由来イソフラボンには『お腹の脂肪を減らすことを助ける』機能があるとの機能性表示食品でありながら、本商品を摂取さえすれば、どんな条件下でも誰もが容易に痩身効果が得られるとお客様に過度に期待を抱かせる表示を行っておりました」。スギ薬局は5月31日、読売新聞、中日新聞の2紙に、昨年9月から販売する機能性表示食品「葛の花プレミアム青汁」を含む3商品について、ウェブサイトや店頭ポップの不適切な表示をお詫びする広告を掲載した。

 「葛の花由来イソフラボン」は、この商品で機能を担保する核となる成分(機能性関与成分)。今回の掲載に至った背景について「景表法に基づく判断から不適切と判断した」(同社)とする。ただ、異例なのは処分を受けていないこと。加えて「2段10センチ」という慣例から見ても掲載枠はわずかに小さい。

 だが、それもそのはずだ。この「社告」には、具体的に自らの"どのような表示"が問題だったのかを示す説明がないのだ。

 今年3月、景表法に基づく措置命令を受けたミーロードの場合、「○○といった表示で」といった記載がある。この点、スギ薬局は「誤った表現があったわけではありませんが」と前提を置きつつ、「そもそも痩せるには適度な運動と食事の是正は必要だが、これらの記載がなかったことで、全体を通してあたかもこの商品だけとればどんな条件下でも痩せられると過度な期待を抱かせた」としている。ただ、消費者庁からの指摘は「ございません」と否定。消費者庁からの根拠資料の要求や社告掲載の要請にも「未回答」としている。つまり自主的な判断で掲載。返金対応も始めており、今後表示を見直して販売を再開するとしている。

 額面通りに受け取れば、自ら自浄作用を働かせて表示を見直し、顧客に返金までしてしまうコンプライアンス意識が非常に高い企業、ということになる。

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「社告の掲載を暗に求められた」

 ただ、コトはスギ薬局だけに収まらない。問題となった「葛の花由来イソフラボン」は健食の製造大手、東洋新薬の独自素材であり、現在、同じ素材、根拠資料を使い26社が届出を行っている商品でもあるためだ。

 制度が始まった直後の15年4月、東洋新薬はいち早く届出を行い、以降、「製造が追いつかないという話を聞いた」(別のOEM事業者)というほど爆発的な勢いで取り扱う企業が増えている。

 一方で、販売企業の増加とともに、「機能性表示食品とはいえ、ダイエット訴求の表示が行き過ぎている」といった噂が業界関係者の間でささやかれ始めていた。

 実際、消費者庁が「葛の花」関連で調査を行っているのは複数社に上るとみられる(スギ薬局は調査を否定)。消費者庁は「個別案件に答えられない」とするが、本紙取材では「調査は入ってない」と明確に否定する企業がいる一方で、「消費者庁から連絡をいただいて対応しているところなので御社に回答させてもらうことはない」というECスタジオをはじめ少なくとも4社にコンタクトがあることが確認できている。

 調査があった企業も景表法の不実証広告規制を使った「正式な書面」による根拠要求は否定。消費者庁とのやり取りの状況は、「社告の件は言われていないが、適度な運動と食事が重要などの打ち消しがなく断定的にダイエット訴求している、と言われた」「社告を出せといったニュアンスを暗に伝えられた」「社告の案を持ってこいと言われた」と各社状況は異なる。ただ任意で根拠を提出し、表示管理体制や出稿媒体に関する消費者庁の要請に応じている。

背景に課徴金対策か

011.jpg そこで問題となるのが、冒頭の社告掲載の「怪」だ。「これまで処分前に社告を掲載した例はなく意図が分からない」と、行政関係者も当惑する。紐解くカギは昨年4月に始まった「課徴金制度」にありそうだ。

 通常、課徴金は措置命令を受けた企業に課されるが、企業は調査を受けた段階で自主的な「返金措置」を行うことができる。これにより課徴金額が減額されるからだ。

 ただ、これには要件がある。調査が始まった段階では、まだその表示が違法である認定はされていない。とはいえ自主的に行う返金措置は"迷惑料"といった名目ではいけない、という法律上の建てつけになっている。あくまで「不当表示」に対する返金でなければならないのだ。そのためには自ら不当表示であることを認め、このことを新聞全国紙などで周知することで「消費者が誤解するおそれの解消措置」を取る必要がある。これがスギ薬局が社告を掲載した理由である可能性がある。社告掲載を不当表示を排除した"証拠"とし、課徴金の対象期間を短縮できるわけだ。

 加えて今回のように販売企業が10数社におよぶ場合、消費者庁による調査も長期に渡る可能性がある。その間、不当表示の蓋然性が高い場合でも企業が販売を続ければ課徴金対象期間が長くなってしまう。このため、消費者庁による「社告」掲載の"提案"があるのではないかとみられる。消費者庁は、「社告」要請に「個別案件に答えられない」の一点張り。スギ薬局も消費者庁の調査を否定しているため真相は、今後の進捗を待たねばならない。

 当然、同じ素材、同じ根拠の商品でも企業により、表示の"程度"は異なる。調査を受けても「社告」を掲載しない判断もあれば、消費者庁が社名公表に至らない指導で事件を終了する可能性もある。順番がちぐはぐだが、"社告で自ら非を認めたのだから処分を下す"という判断もあるかもしれない。いずれにしろスギ薬局の「社告騒動」は、課徴金を前提にした新たな規制手法である可能性がある。

〝SR依存〟危うさ露呈、芋づる式に騒動拡大のリスクも

東洋新薬の「葛の花イソフラボン」を含む機能性表示食品の社告騒動を巡り、新たに浮上した問題がある。"システマティックレビュー"の危険性だ。

 機能性表示食品制度における機能性の評価は、「最終製品を使った臨床試験」「システマティックレビュー(SR)」の二択がある。端的に言えば、後者は製品ではなく、成分を巡る学術論文の総体から機能を評価するものだ。原料やOEMメーカーの協力を得て行うこの手法は、中小企業に制度活用のすそ野を広げる上で大きな役割を果たした。

 表現には、一定の制約がある。臨床試験による評価は「○○という機能がある」という"言い切り型表現"が可能。一方のSRは「○○と報告されています」といった表現が決まり事だ。この点、日本通信販売協会が3月に行ったセミナーでも消費者庁は「(SRでも)事業者の方々は言い切り表現にしてしまう。人が飲んでも(コレステロールを)下げるのかといえば、それ自体の根拠は持ってないことになる。届出を超えないことが大事」(食品表示対策室・金子智門食品表示調査官)と口酸っぱく言っていた。

 もう一つ、このセミナーでは「(バランスの摂れた食生活など)注意喚起表示も非常に小さくて分からない、という苦情が消費者や消費者団体からきている」(食品表示企画課・清野富久江課長補佐)といった指摘もあった。いずれも今回、複数の企業が指摘を受けた内容と重なる。

 「葛の花」を供給するのは東洋新薬だ。広告への関与を巡り、東洋新薬は「できることは必要に応じて行うが、あくまで販売企業の判断」と多くを語らないが、「消費者庁の狙いは販売企業の先(供給元)にあるのでは」という見方もある。販売企業側からは「広告に使う試験データの提供や、表現部分の相談をさせてもらっていた」といった話も聞かれる。スギ薬局は表示について「(表現で協力は)受けていた。ただ、最終的には自社の制作部門が作成した」としている。

 景表法上、広告の一義的な責任はあくまで販売企業だ。ただ、表示への関与が深い場合、「表示主体者」が供給元におよぶ可能性もゼロではない。根拠集めで販売企業に拠るところが大きい健食に比べ、機能性表示食品は、根拠資料を事前に届け、これに沿った表示を行うなど、供給側と販売側の関係は健食に比べて深くなる。

 SRのため販売企業には一律に根拠資料が渡され、その解釈を供給元と相談することになる。当然、各企業の判断、出稿媒体で表示の程度は異なるが、どこかで表示問題が起これば、芋づる式に問題が拡大しかねない。

 大手から中小まで扱いが増えることで風評被害のリスクも高まる。広告のバリエーションが増え、"多少逸脱しても"という企業が現れないとも限らないためだ。供給元依存ではなく、自社で適切に表示を管理する必要がある。

 ちなみに東洋新薬は「葛の花イソフラボン」を含む機能性表示食品の直販も行う。だが「現時点(6月5日時点)で(消費者庁の)調査はきていない」としており、届出の変更や撤回も予定していない。



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