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機能性表示食品制度で「変わる勢力図」

 1-1.jpg機能性表示食品制度が始まって2年、届出の公表件数は900件に迫る。数では、四半世紀で許可件数1200件にとどまるトクホを年内にも凌ぐ勢いだ。新制度を上手く活用して業績を伸ばす企業も現れ始め、早くも市場の勢力図は変わり始めている。だが、制度を活用する一部の企業では当初の期待感とは裏腹に、諦観めいた空気も流れている。明暗を分ける機能性表示食品の"ポテンシャル"はどこにあるのか。

1-2.jpg参入相次ぐ アイケア市場

 機能性表示食品制度開始から2年、制度を活用する企業は257社に達した(4月末時点)。受理された機能性関与成分は約80成分。表示の範囲も「目」「関節」「肌」「睡眠ケア」「抗疲労」など17分野にまで拡大している。一方、国の許可で運用するトクホを活用するのは約200社。関与成分も約60成分にとどまる。表示も「体脂肪」や「血圧」「血糖値」など生活習慣病関連の7分野のみだ。

 新制度で人気の高い分野の一つが「アイケア」だ。届出数100件を超えるカテゴリは、「中性脂肪」「血糖値」などトクホでもおなじみの分野。ただ、新制度以降広がった分野では「肌の保湿」(81件)、「目の健康」(67件)、「関節サポート」(53件)がある。広告はどう変わったか。


1-5.jpg変わる広告アプローチ

 「『みる』『読む』を楽しむ」「クリアな毎日をサポート」「想像以上のスッキリ感」......。ビルベリーやルテインを配合する「いわゆる健康食品」の広告ではどの商品も似たようなコピーが並ぶ。目に対する効果の暗示は薬機法(旧薬事法)違反となるため明確な訴求は行えない。結果、新聞を読む高齢者やパソコン作業に疲れた様子の男性の写真、体験談や成分に関する情報でなんとなくイメージさせる状況が長く続いてきた。

 一方、新制度の最大の特徴は、身体の「部位」に訴求できること。アイケアの機能性表示食品を扱う企業の広告では、「目のぼやけに」「疲れ目知らず?」といったコピー、目の断面図を示すイラストが並ぶ。認知機能であれば「脳」、便通改善ならば「腸」のイラストを使う企業もある。


1-3.jpg市場の勢力図変える破壊力

 「このしぐさにピントきたら」。俳優の村田雄浩と松尾諭が手を前後させるしぐさが印象的なCMを展開するのはファンケルの「えんきん」だ。

 発売は新制度開始間もない15年6月。当初、「臨床試験済」というインパクトのあるコピーが話題を呼んだ。届出表示は、「手元のピント調節機能を助ける」。「えんきん」のCMも健食であれば「目の健康」をもろに表現した動きだが、機能性表示食品では問題ない。わずか1年でリニューアル前の商品の4・4倍の35億円の売り上げを記録。今期も55億円の売り上げを目指す。500億円前後あるとされるアイケア関連の健食市場の勢力図を1年で変えてしまった。


「表示できる範囲が絞られる」


 アイケア関連で「臨床試験済」は、2件のみ。もう一方の富士化学工業も同じく「目のピント調節機能」で届出を行う。だが、こちらは在庫限りの販売休止を決めた。思ったように売り上げが伸びなかった要因を「競合他社品とのブランド力に差」(同社)と話す。

 ファンケルは「えんきん」で大々的な広告投資を行っており、富士化学工業はそもそも原料供給が主力事業。力の入れようは異なる。ただ、同じアイケア関連を扱う別の企業からも「レスポンスは以前とさほど変わらない」といった声は聞かれる。

 背景には特有の事情もあるだろう。「こと『目』に関して言えば、ルテインやアントシアニンはもともとアイケア関連の訴求しかなく、新制度で部位を訴求できた方が優位。イチョウ葉(脳機能関連)も知名度がない分適しているかもしれない。けれど、コラーゲンは『肌の保湿』といった機能が表示できるが、美容だけでなく関節ケアなどマルチ機能が売り。表示が絞られ、さまざまな機能で戦えない。新制度に適した商品とそうでないものがある。イソフラボンも『骨の健康』というのは、これまでのイメージと全く異なる機能」と、見る企業関係者もいる。とはいえ、ファンケルとの違いは広告投資や限られた分野の問題だけでもなさそうだ。


1-4.jpg分かりやすくビジュアル化

 「脂肪の分解に着目したトクホ、特茶」。CMではインベーダーゲームのようなゲームをする本木雅弘が何やら脂肪のような物体を次々撃ち落としていく。こちらはトクホだが、サントリー食品インターナショナルが販売する「特茶」は昨年11月、累計販売本数が10億本を突破した。13年末の発売から3年。記録の達成は、サントリーがこれまで扱ってきたトクホ史上最速だという。だが、印象的なCMも許可表示は「体脂肪を減らすのを助ける」と、いたって普通。数多くの届出がある「目のピント調節機能」と同じだ。なぜ明暗が分かれるのか。

 「消費者からすると"ああ、なるほどね"と。トクホも機能性表示食品も基本は一緒。言える範囲は絞られるが強い訴求はできる。そこを分かりやすいビジュアルに変換して説明できるかが重要だと思う」(別の企業関係者)。

 アイケアを扱うほかの機能性表示食品の広告を見ると「目」の断面図を使うのは多くの企業に共通する定石。イラストとともに「目の黄斑部の色素量の維持」「光の刺激からの保護」などの機能を説明している。ただイラストや表現の組み合わせに代わり映えはなく、「ピント調節」を手の前後の動きで示す独自のアプローチに比べると、主要ターゲットである中高齢者にはまだまだイメージしづらいのかもしれない。機能性の科学的根拠やメカニズム、身体の部位をいかに組み合わせて分かりやすく伝えるかが勝負になりそうだ。



 新制度で食品は、身体の「部位」への訴求が可能になった。「えんきん」以外でも「睡眠ケア」などほかの分野でこれを追い風に業績を伸ばす企業が現れ始めている。

 アイケアでは一旦、休止を決めた富士化学工業だが、制度は「明確に表現できる点で健食より扱いやすい」と評価。今後、「目の健康」とは別にアスタキサンチンの機能として知られる「美容」や「抗疲労」で届出を行い、巻き返しを図る。新制度の開始で広告の「方程式」が変わる中、広がる機能性表示の各分野でどこが抜け出すか注目される。



「いわゆる健康食品」の規制は?
"言葉遊び"限界も


 「あたかも関節の曲げ伸ばしによって生じる身体の痛みが緩和・解消されるかのような表示を行っていた」。景品表示法の措置命令では例のない「関節ケア」への処分だが、消費者庁は指導レベルですでにこうした指摘を水面下で行っている。先ごろ行われた「アイケア」の健康食品に対する初の処分しかり。機能性表示食品制度の活用が進む反面、今後も初処分は起こるだろう。



 「例えば『読むのが楽しくなる』といった表示。必ずしも目の健康の暗示ではなく、『日常を楽しむために飲むサプリ』といった健康イメージともとれる。言葉が『目の健康』など一つの意味しか示さない場合はダメ。ただ、『クリアな毎日』であれば『視野が広がる』という意味にもとれる。どこまで"抗弁"が通用するか、ということ」。ある業界関係者は、アイケアの健食で行われる広告についてこう話す。

 同じように間接的な表現で機能を想起させるものはある。「目からウロコ」「耳より情報」はお得情報の意味、血流改善を促す顆粒タイプの商品の「サラサラ」は顆粒の状態、関節ケアの「ふしぶし」は季節の変わり目...。前出関係者は「例えば『見る』といった表示も『みる』とひらがなにするだけでマイルドになる」と直球的な表現を避ける各社の工夫を分析する。業界は昔からそんな言葉遊びを続けてきた。



 1-7.jpg今年3月、アイケアで初の処分を受けただいにち堂の広告(=㊨画像)がまさにそれだ。「スッキリ・クリアな毎日を実感」といったコピーや、読み物をしている中高年男性の写真とともに「読書に集中できない」などと表示。要は生活シーンからイメージさせる常とう手段だ。

 当時、対象になった広告が朝日新聞に掲載されたことから業界に動揺も走った。「何がダメ、という指針がない中で、昔は自治体に相談に行った時も"朝毎読売の審査が通るような広告にしてください"と言われたこともあって、正直、最後は新聞考査を盾にしていた」「地方紙も"全国紙を通ったものなら"と。あとはさじ加減で調整していた」といった事業者も少なくないからだ。

 対象になった広告にも「これがダメなら全部ダメ」「もっとひどいものはある」との声もある。



 だが、新制度で「いわゆる健食」に対する規制は変わった。少なくとも目や関節、肝臓、脳機能、便通改善など新制度で表示可能な範囲は注意が必要だろう。日本通信販売協会のセミナーで消費者庁食品表示対策室の担当官が語った言葉が印象深い。「企業の皆さんはぎりぎりセーフの広告出したいと思っているかもしれない。でもそれはぎりぎりアウトかもしれない。そこを見極めて広告は根拠に基づき根拠が示す範囲でやってほしい」。この言葉に行政の健食広告に対するメッセージが込められている。

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