Home > 特集企画 > 食品通販の売れ筋研究、「料理キット」が成長支える、差別化図る〝開発力〟重視に

食品通販の売れ筋研究、「料理キット」が成長支える、差別化図る〝開発力〟重視に

17-1.jpg
下処理済みの食材とレシピがセットになった「料理キット」が食品通販市場の売れ筋商品なっている。近年に食品通販市場での取り扱いが増えた商材だが、忙しい女性の増加を背景に、消費者への認知度が向上している。短時間で簡単に1~2品を調理できる利便性などが奏功し、定番商品化しつつある。食品通販各社にとって、事業成長に欠かせない商品になっている一方で、他社との差別化を図る商品開発力や、品ぞろえ拡充や生産量増加に対応できる製造体制の整備などが重要になっているようだ。

顧客の定着率向上に「不可欠」

 野菜などの食材の販売を行う各社にとって、「料理キット」は不可欠な商品になっている。主力だった野菜の売れ行きが伸び悩んでいるためだ。調理の時間がないことや、届いた食材で献立を考える負担、食材が余ってしまうことが定期購入の離脱の理由になりがちだ。

 実際に、調理が必要な野菜の売り上げは、低下する傾向があるもよう。らでぃっしゅぼーやでは野菜が伸び悩む一方で、加工食品が伸長した。大地を守る会は「野菜セット」を中心に新規客獲得を進めてきたが、継続率が課題になっていた。また、オイシックスも、野菜の購入から料理キットに移行するケースが多いと指摘している。

 「料理キット」はカット済み食材と調味料がセットになったもの。各社でメニューが異なるものの、多くが簡単な調理工程で1~2品を作ることが可能だ。短時間に料理が完成する利便性などで訴求している。「働く女性や子育て中の母親にとっては、『料理キット』は簡単に手料理を作れるものになっている」(らでぃっしゅぼーや)と説明する。コープネット事業連合は「食材と一緒に購入される。届いた日のメニューが決まっていることは、献立を考える負担を軽くしている」と指摘する。

 2015年度の売上高をみると「料理キット」を展開するオイシックスが200億円を突破するなど好調に推移し、らでぃっしゅぼーやも増収を達成した。一方で大地を守る会は「料理キット」の取り扱いがなかった15年度は、前年同期並みで推移した。30~40代の定着率が苦戦したことが影響した。

 大地を守る会の藤田和芳社長は今年8月の料理キット発表会で、「惣菜の受注率が高まっている。女性の社会進出で働く女性が増え、食生活が変化している。時間が野菜を洗ってカットして調理することができなくなっている」と分析した。

「料理キット」前年を上回る

 各社の「料理キット」の販売動向を見てみる。オイシックスの「KitOisix」は、シェフなどの有名人やキャラクターとのコラボ商品をラインアップするほか、主菜と副菜のキットだけでなく、サラダや冷凍のキットなども展開する。

 定期購入者は前期末から36・7%増え4万4000人に拡大している。野菜の定期購入者と比べて、1回の購入単価が低いものの、購入回数が多いと分析。年間の売上金額は高い傾向にあり、「ライフタイムバリューの向上に貢献している」(同社)とした。

 らでぃっしゅぼーやの「わたしが仕上げる10分キット」は、包丁やまな板を使わず簡単な工程で、10分以内に完成することにこだわる。子どもの好き嫌いや料理のアレンジの要望に対応したカット野菜の取り扱いや、パーティ向けの高級メニューも提案している。

 今期末に累計販売数は25万個を達成する見込み。15年から、継続購入の回数に応じて割引率が高まる販促を行い、リピート購入を促進した。30~40代の子育て層における購入比率は3~4割で発売開始から2倍に増えた。

 大地を守る会の「おやさいdeli kit―大地のめぐみでゆとりごはん―」の販売数量は発売から3カ月で3万5000個で、購入者数は2000人に増加。定期購入者数は550人を超え、当初目標としていた今期8万個の販売を達成する見通しだ。

 料理キットは後発ながら、野菜をたっぷり使ったメニューや、家庭で調理する頻度が少なかった新しいメニューを展開し他社との差別化を図る。時短だけではなく、「ゆとり」をコンセプトが浸透したと見る。

17-2.jpg
 このほか、コープネット事業連合の「そろってgood!」は前年比10~20%増と前年を上回った。主菜のみのキットだけでなく、主菜と副菜がセットになったキットを用意。メニューの改廃をしながら年間500アイテムをラインアップしている。

 パルシステム連合会は「お料理セット」を展開し、毎週14アイテム前後をラインアップする。16年4~7月の売上高は前年同期比21・6%増で推移するなど好調に推移している。

 「料理キット」のメリットは、他の商品と需要の食い合いが少ない点だろう。らでぃっしゅぼーやでは、料理キットのユーザー層を「食生活そのものが変化した人。『野菜を摂取できる』ことの訴求で、野菜不足の人の食生活を補うものになっている」と分析する。コープネット事業連合も「他の商品カテゴリーへの影響がない」と説明。また大地を守る会も「惣菜の売り上げを維持しており、『別財布』になっている」としている。

16年は市場の品ぞろえ増加

 需要が高い一方で、課題もある。カット野菜の賞味期限は数日と短いため、1回の購入点数は1
~2品にとどまる点だ。このため、料理キットの品ぞろえだけでは購入点数を増やすのは難しい。

 オイシックスは、「時短」を軸に、品ぞろえを拡充している。従来から冷凍品の「フローズンキット」や、副菜を簡単に作れる「サラダキット」や「スープキット」などを展開していた。16年は新たに、カット野菜カテゴリーを充実させ、レシピに必要な野菜を組み合わせたセットや、フライ用の添え野菜セット、野菜の使用量にこだわった冷凍総菜を投入した。

 これまでよりも調理時間を短くした「クイック10」やデザート需要に対応した「スイーツkit」も展開。これら品ぞろえの増加が奏功し、1人あたりの利用金額が上昇しているもよう。

 らでぃっしゅぼーやでも、カット野菜と調味料をセットにしたアイテムを展開する。顧客が自由に魚介や肉、麺などとあわせてアレンジができるようにし、選択の幅を広げた。また、「贅沢」志向の顧客ニーズへの対応を図り、「プレミアム」ラインを用意しパーティ向けメニューを訴求した。

 品ぞろえを増やす中、賞味期限の長期化が共通の課題になっている。カットすると断面が変色しやすい野菜は、長期保存には向かない。オイシックスは冷凍のキットを展開し、賞味期限が短い弱点を補っている。大地を守る会は春に、冷凍のキットを展開する予定だ。

 一方で、らでぃっしゅぼーやは商品を開発中だ。葉物野菜は冷凍に向かないほか、冷凍加工によって味や香りが変わりやすいことから、「課題が多い」(同社)とし開発に注力する考え。
自前か委託か、事業拡大へ舵

17-3.jpg
 各社の販売が好調で、ますます市場の品ぞろえが増えそうな「料理キット」。今後は、製造への投資が課題になりそう。

 自社工場を構えて製造するのはオイシックス。料理キットやカット野菜といった品ぞろえの拡充は自社製造が強みになっているようだ。

 パルシステム連合会は17年10月をメドに自社製造工場を稼働させる予定で、これまで外部委託していた自社に切り替える。産直野菜の使用頻度を高めることが狙い。将来的には料理キットだけでなく、カット野菜や惣菜、高齢者や少人数家庭向けの商品開発を進める考え。

 一方で、委託製造で品ぞろえを増やすのはコープネット事業連合。冷蔵の料理キットを販売し、複数のメーカーに製造を委託し年間500アイテムを展開している。

 またらでぃっしゅぼーやは生産者を組織して野菜の鮮度良く加工するメーカーに製造を委託する。野菜の産地で加工することで、カット野菜の鮮度を重視しながら商品化できることが強みとなっている。大地を守る会は、製造のコントロールやコストなど管理のしやすさを踏まえ、タイヘイに製造を委託する。

 タイヘイは03年から料理キットの製造販売を行っており、現在では自社通販で冷蔵の「かんたんおかずCook」と、冷凍の「いつでもCook」を販売する。

 製造委託は初期投資が抑えられる。だが、業者によって加工技術に得意・不得意があり、製造能力にも限界がある。外部委託では品質や原価のコントロールが難しさもあるようだ。今後の競争激化を踏まえると、取引メーカーの拡大や自社製造への投資などへの検討が必要かもしれない。

Trackbacks:0

TrackBack URL for this entry
http://www.tsuhanshinbun.com/mtos-admin/mt-tb.cgi/3689
Listed below are links to weblogs that reference
食品通販の売れ筋研究、「料理キット」が成長支える、差別化図る〝開発力〟重視に from 通販新聞

Home > 特集企画 > 食品通販の売れ筋研究、「料理キット」が成長支える、差別化図る〝開発力〟重視に

Amazon出品サービス
Search
Feeds

△ ページtopへ