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積み残し課題検討会、議論決着も「徒労の1年」 〝届出未処理800件問題〟が急浮上

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消費者庁が行う機能性表示食品制度の"積み残し課題検討会"が終わった。議論のテーマとされた「対象範囲の拡大」は、ビタミン・ミネラルなど栄養成分で糖質の一部、機能性関与成分の不明確な食品で、植物エキス等を対象とすることが決まった。ただ、こうした結論は、いわば現行制度の「整理」。早くも業界からは「やる意味あったのか」といった声が上がっている。今年1月から20時間以上を費やした検討会。"徒労の1年"に終わった検討会を振り返る。

成果は現行制度の"整理"だけ

 対象化されたのは、「ビタミン・ミネラル」など栄養成分から糖質・糖類の一部、「関与成分が不明確な食品」で植物エキスと分泌物のみだった。安全性や品質管理の面で届出の追加情報を求めることを条件に対象にする。

 ただ、糖質等の機能性はすでにトクホでも許可実績があり、本来、制度開始時点で対象とすべきもの。届出ガイドラインの不備から漏れていたもので、いわば微調整に過ぎない。植物エキス等もすでに現行の機能性表示食品制度(新制度)で届出が受理された例があり、これも定義を明確にして整理しただけ。傍聴者からは「実質ゼロ回答」「今年1月から1年かけて議論を行う必要があったのか。微調整なら検討会でやる必要はなかった」と落胆の声が聞かれた。

お願いだらけで汗流さず

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 一方、学術・消費者サイドの要求は、11月25日に行われた最終会合でも延々と続いた。

 河野委員が「制度を活かすも殺すも企業姿勢。報告書案に記載された『倫理観を持って制度の信頼確保に努力する』という言葉を重く受けてほしい。広告宣伝も企業倫理が問われる。配慮をお願いしたい」と言えば「非常に重要なポイント。広告の仕方は何らか考えないといけないと思う」と寺本座長も同調。その座長は「報告書で指摘されている『消費者リテラシーを高める必要がある』という言葉はいいが実効性が必要。パンフレットをつくって出せばいいというものではない。我々が(検討会などで)色んな事を言っても実行されないケースもある」とグチをこぼした。

 学術サイドも「大学で最近テストをすると食品の三次機能を薬のように理解している学生が増えた印象でショック。本屋にも"これさえ食べれば"なんて書籍が平積みにされている。宣伝、出版のあり方も倫理観を持ってほしい」(吉田委員)など、企業の倫理観を憂う声の大合唱だった。

 これには「無責任。それなら業界と一緒に汗を流してと言いたい」「安全地帯から消費者教育や企業倫理を求めるのは簡単。薄っぺらな意見」と傍聴した事業者側の不満が噴出していた。

 業界は昨年9月、都内で「アンチエイジングフェア」を開催。加藤勝信大臣、消費者庁川口次長も訪れ、制度の普及啓発に努め5万人が来場した。日本通信販売協会(JADMA)も消費者庁や業界団体、消費者団体に呼びかけ横断イベントをこれまで3度開催。届出書類の不備解消に向けた企業教育に取り組む。消費者サイドは制度啓発を訴えるが、掛け声ばかりで具体的行動は皆無に等しい。

 あげくの果てに副座長の梅垣氏は検討会で自らの研究を売り込む始末。自らがまとめた健食の有害事象の収集手法に関する研究を紹介。「妥当な評価ができるのでぜひ(研究成果を)利用してほしい。(自分が所属する国立健康・栄養研究所など)公的機関はお金がない。報告書にも健康被害の収集などを事業者が(公的機関などと連携して)やっていかなければいけないというのをちょっと書いていただければ」とすかさずアピールしていた。

議論にいる人いらない人

 今回、検討会を通じて評判が集まったのは、検討委員ではなく、序盤戦、場外から乱入した寺本祐之氏(ファンケル総合研究所サプリメント研究所所長)だった。

 登場したのはJADMAからのヒアリング。ビタミン等の対象化に消費者サイドが反対する中、「市場に溢れる『いわゆる健康食品』を制度に取込むことで『いわゆる健食』を排除する」と対象化の意義を語った。消費者サイドが反論しにくい"規制"の観点からの発言が複数の傍聴者の印象に残ったとみられる。検討会委員の合田氏もヒアリング後、寺本氏の意見に対する感想を求めたところ「彼は食品における品質保証の要諦は分かっている」と評価していた。

 その合田委員はもう一人のMVP。検討会を通じ、品質管理の面で議論をけん引。「業界に苦言を呈する場面もあったが、それは企業側の問題もある。食品の品質や安全性をどうすれば担保できるか、前向きに捉えて意見を述べてくれた」と言った声が聞かれた。

 一方で評判が悪かったのは、寺本民生座長。検討会序盤、業界団体からのヒアリングでは、仕切りの悪さからくる時間配分ミスを棚に上げてこれを遮るなどした。これには「検討会は業界団体をヒアリングに招いた側。敬意を失した態度は問題」「そもそも適切に議事進行しなかった座長の問題」と指摘する声が。検討会終盤でも「制度そのものをゼロベースで見直すべき」と発言した佐々木委員、これに同調した森田委員の意見を収拾せず、予備日を使った検討会の延長を決定。これにも「こんなちゃぶ台返しが通用するなら業界もビタミンを対象にしないのはおかしいと強弁すればいい」といった不満の声があがっていた。

受理遅れ深刻化国会でも追求

 そんな検討会だから「やる意味あったのか」という傍聴者の不満が絶えない。だが、検討会の結論より深刻な問題として浮上しているのが現行制度の運用だ。

 新制度は、企業の自己責任による「届出制」。だが、届出の手続きは「1回の返答に90日ほどかかる」という遅れよう。受理に1年かかる企業も多く「タイミングを読めないので販売計画を練れず、流通サイドとの折衝も行えない」と戦略に支障をきたしている。

 11月22日には国会における追求で受理件数が約500件であるのに対し、手続き中の未処理案件が約800件に上ることが判明した。消費者庁は「企業側で難しいと判断して止まっているものもある」とするが、12月には政府の規制改革会議でこの問題が取り上げられるとの情報もある。規制改革委委員の森下竜一氏は会議のテーマは「ノーコメント」とするが、「3カ月は遅すぎる。『届出制』という制度の趣旨に沿って運用すべき」と問題意識を口にする。

 手続きの遅れは企業側の問題もある。ただ、大幅な遅れは成長戦略の成否に関わる。制度の迅速な運用が新たな問題として浮上している。

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対象化「当然の結果」

積み残し課題検討会が報告書案をまとめた。ただ、制度導入の旗振り役の森下竜一氏(規制改革会議委員)からは「当然といえば当然の結果」との声も聞かれた。

 消費者庁では来年初めから今年度末をめどにガイドラインの見直しを進める。ガイドラインの改正後、消費者庁はモデル事業などトライアルを経て不具合を調整。届出手続きに使うデータベースの修正を行った上でスタートする。

 「ビタミン・ミネラル」など栄養成分は、一部の糖質を除き対象としなかった。検討会では"制度揃え"の観点から栄養機能食品で認められた範囲での栄養機能の併記、過剰摂取が新制度の対象化の有無に関わらず起こっている問題であることなどが指摘された。ただ、過剰摂取や健康・栄養政策との整合性の観点から学術・消費者サイドの反対が根強く、対象化を見送った。

 「不明確な食品」は、すでに現行制度で受理された製品にも一部含まれ、今回の議論で定義を明確にして「植物エキス」「分泌物」を対象にした。ただ、少なくとも1つの指標成分で表示しようとする機能性のメカニズムが考察されていることが必要。また、「動物由来エキス」や「菌エキス」は対象から除外した。「不明確な食品」は、品質管理の面で届出情報の追加的要件を求める。

 また、今回の報告書案には、特定保健用食品や栄養機能食品など「保健機能食品制度」全般の見直しも触れられた。

 制度導入時、制度は施行後2年をめどに見直しを行うと定められていた。ただ、来年度に予定されている"二年後見直し"の開催は現時点で未定。まずはガイドライン見直しを含め今回の議論で得た変更点を軌道に乗せることを優先する。また、栄養機能食品制度の見直しも触れられており、これを先に行う。その上で制度の"二年後見直し"の進め方を検討する。

 今回の検討会に森下氏は、「糖類と植物エキスが入ったのは成果。ただ、本来対象とすべきだったもの。入らないよりは入った方がよいという意味での成果」とコメント。ビタミン・ミネラルの対象化には「(個人的に)対象にすべきとは思う。最新の科学的知見に基づいて見直すべき。トクホも含め、保健機能食品制度の抜本的な改革に向けた議論が必要」と話した。一方で、「(健食)業界内も意見が割れている」と、業界総意を示していくことを業界に求めた。



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