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日本サプリメント問題で浮上 「トクホ」の正体、四半世紀でわずか400商品

011.jpg 四半世紀で400品――。これまで闇に閉ざされてきた「トクホ」の実態が明らかになった。消費者庁は11月、日本サプリメントの問題を受けてトクホに関する品質調査を実施。販売する大半の企業が問題ないとする結果を報告した。ただ、制度開始から25年。初めて行われた調査では「トクホ」の別の側面が明らかになった。現在売られているトクホが400品目に満たなかったことだ。昨年始まった機能性表示食品制度は、導入からわずか1年半で受理品目が500件。"世界でも画期的な制度"ともてはやされてきた「トクホ」だが、その使い勝手の悪さに企業の不満が噴出している。

開始1年半の新制度に抜かれる

012.jpg 今年9月、消費者庁は、日本サプリメントの特定保健用食品(トクホ)に許可時の関与成分が含まれていなかったことが発覚した問題を受け、トクホ全品の調査を行った。調査は、業界団体の日本健康・栄養食品協会に依頼。これまで許可を得た201社の1271品目のうち、今も販売されている366品目(分析中の7品目を除く)で申請時の関与成分量が適切に含まれていたとする結果を公表した。

 ただ、結果を受けて多くの関係者から驚きの声が上がっている。許可件数のうち、すでに販売されていないものが約860品目。一方、今も売られているトクホは、販売準備中の39品目を含めてもわずか400品目しかなかったことだ。

 機能性表示食品(新制度)は制度が始まって1年半。受理件数はすでに500件を超え、受理に至っていない届出件数はその数倍あるとされる。これまで"数年でトクホを抜く勢い"などと言われてきたが、実態はとっくにトクホを抜いていたのだ。

「お茶とヨーグルトの制度」

013.jpg トクホ制度が始まったのは1991年。すでに25年が経過する。

 市場は、07年の6800億円をピークに減少。昨年は拡大に転じてはいる。だが、その中身をみると魅力は半減してしまう。

 現在、売られているトクホは約3割を占めるのが「お茶(青汁を含む)」。「乳飲料・ヨーグルト」も12%と多い。飲料に限ると「お茶」の割合は約半数に上る。

018.jpg 加えて食品の種類別市場を見ても「乳製品」が約3200億円を占め、お茶など「清涼飲料水」が約2300億円。市場の8割を占める。"機能をうたえる食品"と言われながら、実態は乳製品とお茶ばかり。これに複数の企業から制度に対して「商品カテゴリーにまったく幅がない」「そんな状況なら、お茶とヨーグルトとガムの制度にすればいい」といった失望の声が上がっている。

「トクホなんていらない」

 こうした現実をトクホ制度を所管する消費者庁はどうみるか。

 "25年で400"という品目数には、「比較対象がないので何をもって(多い少ない)を議論するか難しい。食品の中で精査されたものがトクホ。(売り場でほかの食品群に比べ少ないと感じたとしても)そうなるのは自明の理」(食品表示企画課)と話す。

 一般的にドラッグストアが一つのカテゴリーで棚を形成するには、市場に1000品目の商品が必要とされる。だが、機能性表示食品に導入わずか1年半で抜かれたことにも「各制度は別もので独立している。(比較はできないが)トクホよりハードルが低いため多いのではないか」(同)と、関心は低い。

 こうした評価をヒントにほかの商品分野を調べてみた。

015.jpg 「いわゆる健康食品」は現在、市場に約3万種あるとされる。健食は法的な位置づけもなく、玉石混淆の市場。これに劣るのは仕方がないといえる。ただ、食品よりはるかにハードルの高い医療用医薬品は約1万5000種、一般用医薬品も約8000種に上っている。有効成分やその用途も幅広い。

 機能性表示食品と比べても「成分数」こそ、新制度の75に対して63と拮抗している。だが、中身は素材由来の異なる食物繊維や乳酸菌が大半を占めている。「用途」の範囲は機能性表示食品が17分野にわたるのに対し、トクホは8分野。最近ようやく「肌の保湿」という新たな分野が加わっただけだ。

017.jpg 一方で、許可のハードルは異常に高い。一商品の開発にはヒト臨床試験の実施など数億円のコストがかかり、申請しても許可が得られるのは平均して3~4年。許可が得られる保証はなく、ようやく販売にこぎつけても売れる保証はない。このため申請する企業、分野は絞られ、狭い市場の中で厳しい競争を強いられる。最近ではライオンのトクホに行政指導が行われた事例もあり、こうした現実に企業側からは「トクホなんていらない」「機能性表示食品のように指標成分やコンビ機能のアイデアもない。今の制度設計からすれば現状の成分数、表示範囲に限られるのは当然。そもそも広がらない制度」といった不満が噴出している。

行き場をなくす健康食品市場

 消費者庁は"だから機能性表示食品ができたのだ"と言うだろう。ただ、新制度の対象範囲拡大を議論する「積み残し課題検討会」もビタミン・ミネラルは糖質など一部を除き、その大半が先送りとなることが決定。消費者・学術サイドは成分分析など品質管理の面で追加条件を求めており、制度のハードルは医薬品を例に徐々に高まっている。

 一方で機能性表示食品制度、トクホ制度から漏れざるを得ない「いわゆる健康食品」に対する規制は厳しくなっている。

 これまで健食の表示規制は主に薬事法、景品表示法で行われてきた。だが、今年4月には健康増進法の「誇大表示の禁止」に基づく勧告・命令権限が都道府県知事と東京都下23区の区長、全国の保健所設置都市の市長に移譲された。これを受け、これまで健食の広告監視をほとんど行っていなかった保健所が新たな規制当局として台頭。「保健所から指導された」という事例が聞こえ始めている。

 指導を受けた企業から聞かれる行政機関の意向は、「機能性表示食品制度ができたのだから表示(広告)をするのであればそちらでやってくれ」というもの。だが、肝心の新制度は手続きが「届出から返答まで90日ほどかかる。こうしたやり取りを複数回行ってようやく受理に至る」と遅れている。企業の自己責任による「届出制」ながら受理に1年を要した企業も多く、「タイミングが読めないので販売計画が練れず、流通サイトとの折衝も行えないなど戦略に影響がでている」という声があがる。

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 企業側に問題のあるケースもある。だが、トクホも機能性表示食品もダメ、という中で漏れざるを得ない健食に一方的な規制強化が進めば、健食は行き場をなくし、市場は一気に冷え込む。

食品表示制度の問題は?

分断された制度、「消費者が理解できるほうがおかしい」


 トクホ制度が始まって25年、消費者庁が今年に入って行った調査では、「どういった制度か知っている」と答えた消費者は3割未満だった。栄養機能食品は17%、機能性表示食品(新制度)は13%。認知の低さを背景に、1月から消費者庁が行う新制度の「積み残し課題検討会」では、消費者サイドが「新制度の拡大より既存制度(トクホや栄養機能食品)の普及が先」と対象範囲拡大に歯止めをかける。だが、複数の業界関係者は「今の制度の建てつけで消費者が理解できるほうがおかしい」と指摘する。

016.jpg 例えば、カルシウム。同じ容量であっても、企業が栄養機能食品として売るか、トクホ(疾病リスク低減表示)として売るかでその表示は異なる(=表)。トクホは"疾病リスク"を低減するため疾病名が書かれ、栄養機能食品は栄養機能を表示。「栄養素の機能をうたう制度」と「保健の用途をうたう制度」と、"制度の目的"が異なるためだが、業界関係者は「同容量でも書き分けさせるのは科学的合理性がない。日本は海外と異なり『栄養』と『疾病』の関係を限定的にしか認めていない。だから制度が縦割りに分断されたものになる」と指摘する。

 ちなみに日本が制度の参考にした米国の「疾病リスク低減表示」は、ドリンクでもお惣菜でもサプリでも同じ表示が行える。表示も「食物繊維と大腸がんのリスク低下」の関係など12種類。日本はわずか2つだ。

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 認知が進まない背景には、制度ごとに表示が分断され、消費者の混乱を招いていることがある。

 栄養機能食品で表示可能なビタミン・ミネラルの機能はトクホ表示と併記が可能。だが、機能性表示食品はできない。

 積み残し課題検討会でも、消費者・学術サイドはビタミン等を対象にすることでこれら成分の過剰摂取につながると指摘。強硬に反対した。

 ただ、表示さえしなければビタミン・ミネラルを配合すること自体は可能。これに「ビタミンやミネラルが入っていても何も書かれていない場合のリスクが議論されていない」「何か栄養機能食品という確立された制度があり、アンタッチャブルな区分という勘違いがあるのではないか。栄養機能食品もフタを開ければ逆に(ビタミン・ミネラル以外の)ほかの成分が一杯入っている」といった指摘もある。

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 トクホは、個別許可型の通常のトクホのほかに、科学的根拠のレベルが劣る「条件付きトクホ」、許可件数が多く審査を簡易化した「規格基準型トクホ」、疾病に対する機能を表示できる「疾病リスク低減表示」がある。

 日本サプリメントが許可を取り消されたのは、「条件付き」。今回の問題で市場から「条件付き」は消えた。ただ、通常のトクホより低いレベルの科学的根拠をあえて導き出さねばならない「条件付き」は試験計画が立てづらい。こうした制度上の欠陥からそもそも利用企業はほぼいない。「今の制度設計のままならいらない」という声もある。

 「規格基準型」も3用途の10成分のみ。条件を満たしながら、検討されていないものが19成分ある。今年に入りようやく「難消化性デキストリン」の中性脂肪への機能が認められ、ほか3成分も検討されることになった。ただ、残る15成分は規格化が困難なことや過去5年間で許可がないことなどを理由に今回見送られている。

 これには「業界団体が強く要望しない問題もある」と業界側の問題を指摘する声もある。ただ、「規格基準型」は業界として拡大を推進するのに向かない分野。「自社が数億円のコストをかけて開発したものが急に"はいどうぞ。ハードル下げますよ"とやってもらいたくはない」と、制度の構造的な問題を指摘する声も聞かれる。




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