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化粧品のネット販売市場  "ニッチ訴求"で新興企業が台頭

 1-1.jpg通販化粧品市場は今なお新規プレーヤーの参入が活発だ。国内化粧品市場は2兆円規模で横ばい推移が続き、今後も少子高齢化など市場の拡大につながるプラス要因はあまりない。大手や中堅など既存プレーヤーの多くが若年層との接点に苦慮する中、これら新興企業はウェブを主戦場に若年層と接点を築きつつある。その販売手法には危うさもつきもの。だが、「男性用育毛剤」や「背中ニキビ」といった"ニッチ市場"に対しての訴求を強めていくことで市場の一角に斬り込もうとしている。

1-2.jpgアフィリエイト単価が高騰

 「育毛剤のネット市場はアフィリエイト次第。(アフィリエイターへの)成果報酬単価が異常に跳ね上がっていてちょっとやそっとでは露出できない」。2年ほど前、男性用育毛剤の市場に参入したユニットベースは現状をこう話す。

 男性用育毛剤のネット販売市場は、商品価格1~2万円台が主流。新規獲得後の投資回収を考えれば報酬は価格の100%程度におさめたいところだが「報酬に2、3万円出すところもある」(ユニットベース)。これを強みにウェブで存在感を示し、急成長を遂げたのが「チャップアップ」を展開するソーシャルテックや「ブブカ」を展開するT.Sコーポレーションといった新興企業だ。

 プル型のメディアであるウェブは"悩み系"商材の展開に強い。潜在顧客の検索にマッチできれば比較的少ない投資で新規顧客との接点を築ける。このため新規プレーヤーの参入が続いている。

 男性用育毛剤では最後発ともいえるユニットベースは2014年頃に参入。すでに多くの競合が存在する中、当初は「競合他社が行うプロモーションを研究し、これを少しずつ改善したようなプロモーションで展開した」。競合の多くが医薬部外品をベースに展開する中、育毛剤(部外品)と処方設計の自由度が高い頭皮ローション(化粧品)を組み合わせる二剤式で「最新の成分を配合」などと差別化を図った。

 ただ、当初は広告戦略で優位性を保てず月10本ほど売れるのみ。そこで約5000円という価格優位性を活かし、ターゲットを若年層に大きく振ることで前年比4~5倍と売り上げを伸ばしている。

 ただ、まだ売り上げは数千万円規模に留まる。中高齢層に比べ相対的に離脱率が高く、使用対象自体が少ない若年層をターゲットにすることに加え、"オールターゲット"で訴求していないためアフィリエイターからみて比較ランキングの中で取り上げにくいのが課題という。

 また、"ニッチ訴求"でつきものの課題が今後の拡大性。ユニットベースも今の展開では「数億円が天井」とみる。今後、若年層男性の「悩み」に応える商品の横展開で売り上げの拡大を目指していく。


1-3.jpgニキビケアは"部位別訴求"に
 
 化粧品市場の一角を占めるニキビケア市場でここ数年、増えているのが"部位訴求"だ。
 
 通販の大手プレーヤーは200億円(本紙推計、ニキビケア以外を含む)前後の売り上げで推移するとみられるガシー・レンカー・ジャパン。オールターゲットに訴求するやり方でシェアを伸ばしたが、このことが「ブランド価値の希薄化」を招く要因にもなった。最近ではウェブコンテンツ「ニキペディア」を立ち上げるなどして、幅広く潜在顧客へのアプローチを進めている。

 一方、通販大手のオルビスは女性特有のホルモンバランスの変化を原因とする「大人ニキビ」を訴求することで「思春期ニキビ」が中心だった市場に風穴を開けた。昨年3月にはニキビケアの「新クリアシリーズ」を発売。初年度に25億円の売り上げを目指すとしていた。

 こうした中、第三極として台頭してきたのが"部位訴求"だ。「背中」や「あご」、「デコルテ(胸元)」、「お尻」など気になる箇所にできるニキビケアを訴求するもの。中でも最も市場が大きいとされるのが「背中ニキビ」。オルビスは02年、すでに背中や胸元のニキビケアに着目したスプレータイプの「クリアボディーローション」を発売しているが、今年3月には小林製薬もスプレータイプの「セナキュア」(第2類医薬品)を発売するなどにわかに活気づいている。

 1-4.jpg市場をけん引するのは、早くから部位訴求に目をつけていた老舗のピカイチなど。一方、後発となるキュアメディカルは、昨年8月から背中ニキビケアをうたう「ルフィーナ」の通販を始めた。他社より初回価格を低く抑えることで「始めやすさ」と「続けやすさ」を強みに展開。今期に前年比数倍となる1億5000万円から2億円の売り上げを見込んでいる。

 ただ、「若年層向け」を打ち出す育毛剤同様、ここでも課題となるのが今後の拡大性。キュアメディカルも背中ニキビ用スキンケアでは数億円が限界とみており、今後は、「育毛」や「おでこのシワ」、「鼻の毛穴」、「目元のくま」などニキビとは異なる絞られたターゲットに向けた商品を展開。各商品で年間1億円ほどの売り上げを積み上げていこうとしている。


マーケティングに危うさも  

 大手のような知名度や信頼度がない中、新興企業はこれをマーケティングの工夫で補う。
 「専門家の意見」による説得力や「顧客満足度○%」といったデータを使うのはオーソドックスな手法に始まり、育毛剤通販では、資金力のある企業は著名人とのタイアップ広告を展開したり、「返金保証書」を添付することで安心感を担保したりする企業もある。

 「ミノキシジル」は育毛効果で知られた医薬品成分だが、海藻由来エキスに「M―034」などとそれらしいネーミングをつけて「話題の成分」と訴求するやり方もみられる。

 背中ニキビでも、海外で作った販売実績を背景に「海外で人気の○○」といったブランドイメージを醸成しようとしたり、大手が使うようなナンバーワン表示が難しい中、「私のナンバーワン」といった表示で商品の信頼性を高めようとするコピーがみられる。

 ただ、新規参入のハードルが低くプレーヤーが増加の一途を辿る中、一部では販売手法の問題も顕在化している。

 複数の企業でみられるのが、初回購入を安価にする一方、複数回の定期購入を条件とする"定期縛り"。広告の先行投資と投資回収のバランスを図る中でとられた手法とみられるが、中には「4回」「6回」の購入を条件とする企業もある。

 消費者の商品購入の重要な判断基準になるこれら条件を小さく表示する一方、初回の割引価格を強調していることから消費者トラブルに発展するケースが散見される。

 ここ最近では消費者団体がこれら販売手法に対する監視を強めており、今年に入ってすでに3つの消費者団体がネット販売を行う複数社に定期契約を巡る表示の改善を要請している。マーケティングに偏重した展開から脱し、安定的な顧客基盤を築けるかが今後の課題として浮上している。


"ニッチ訴求"今後の拡大性は?

ナノエッグ、ブランド広告展開

 化粧品市場の飽和感が高まる中、絞られた"ニッチ市場"のターゲットへの訴求は一定の威力を発揮する。ただ、それだけに今後の拡大性が課題になる。かつて女性が潜在的な悩みとして抱えていた"ほうれい線"にいち早く対応した商品を展開することで成長への足がかりを掴んだナノエッグだが、今では大きく戦略を転換している。
 
 "ほうれい線"はそもそも肌の「たるみ」の一種。だが対象が幅広い「たるみ」ではなく、"ほうれい線"という具体的な表現に変えることで潜在的に抱えていた肌悩みを具体的にイメージさせることができる。ただ、こうした表現を複数の企業が活用。"ほうれい線"で訴求する別の企業が薬事法で指導を受けたこともあり、ここ数年、表現に対する規制は厳しくなっている。
 
 聖マリアンナ医科大学発のベンチャーとして通販に参入したナノエッグは、肌のハリに関与する「α―リポ酸」を浸透しやすくするナノカプセル化技術で特許を取得し、臨床試験で科学的根拠を確認しているなど独自技術を強みに展開。ただ、当初は、その強みも大学の知名度を生かした県内中心の新規獲得に限られていた。
 
 成長の足がかりを掴んだのは2010年に口もとのハリに着目した美容液「豊麗」(今年10月に「豊麗EX」としてリニューアル)を発売してから。前期(2015年9月期)の化粧品通販売上高は前年比27%増の約13億円。「豊麗」が商品売上高の約8割を占めるめでに成長し、今期も増収を見込んでいる。好調の背景には、2012年頃から行う顧客コミュニケーションの転換がある。広告戦略ではいわゆる「通販広告」と決別し、ブランディングの要素を兼ね備えたものに変えて検証を重ねている。
 
 インパクトのみを求めた通販広告は、一方でこれを嫌う顧客など自らターゲットを狭める側面もある。「豊麗」の中心顧客層は60代女性。化粧品大手の展開するブランド広告に馴染みのある世代であり、強みとする研究開発力など独自の企業価値をいかに表現するかに力を入れてきた。
 
 1-6.jpgここ数年、変更を加えながら展開する広告もブランディングとレスポンスの二つの要素を兼ね備えたもの(=㊨画像)。「統一したビジュアルを新聞やチラシ、フリーペーパーなど横展開することで記憶してもらい購入につながっている」(同社)という。最初の接点で顧客が抱くイメージが重要と考え、ブランドイメージを大事にしつつ獲得効率とのバランスを測る。企業の持つビジョンや背景、経営者の姿勢が商品選択の重要な判断基準になっていると考え、今後もレスポンスだけでなく、企業PRを重視した広告展開を積極的に展開していく

 「豊麗」の一極集中から脱却する点では今後の拡大性に課題も残す。これまでスキンケアブランド「マリアンナプラス」へのクロスセルを勧めてきたが、異なるブランドであることからライン使いにつながっていなかった。

 12年には「豊麗」を中心にすえたシリーズ化を開始。現在、化粧水「豊麗水」やサプリメント、美容マスクをラインアップする。現在、化粧水の併用率は約2割。市場の主要プレーヤーの多くはクレンジングや洗顔料、オールインワン化粧品などデイリーユースの商品で支持を集めており、今年10月には洗顔用の「豊麗石鹸」も発売するなどライン使いを訴求していくことで購入単価を高め、美容液に依存する構造的な課題の打破を目指していく。加えて、11月には白髪用カラートリートメントのリニューアルを予定。市場が拡大しつつあるカラートリートメント市場で差別化された商品を展開し、第2の柱となる商品の育成を目指す。

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