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越境ECの"現実"は 成否分けるポイントとは? モールとの関係、ルールの見極めカギに

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新たな顧客・商圏を求めて海外へとネット販売を展開する「越境EC」に取り組む事業者が増えてきた。現地の仮想モール事業者を始め、越境EC支援ビジネスを展開する業者からの"誘致"も目立ってきている。ただし、いざ参戦すると「それほど甘いものではなかった」と口にする事業者もまた少なくない。魅力的にみえる越境ECだが、"現実"はどうなのか。また、参戦後に超えねばならない"壁"とは。活況な中国での越境ECを軸にすでに越境ECに取り組む事業者の現状を見ていく。

アリババ側との情報交換を密に

 海外向けに日本のアニメやゲームのキャラクターグッズなどをネット販売するトーキョーオタクモード(TOM)は世界130カ国以上への配送実績がある。北米が全体の6割を占めるが、昨年からは中国市場の開拓も強化している。

 中国では自社通販サイト「オタクモード・ドットコム」からの販売は少なく、売り上げの大半は昨年5月に出店したアリババの越境仮想モール「天猫国際(Tモール・グローバル)」経由。

 「天猫国際」出店後、初の「独身の日」となる昨年11月11日は1日で前月の売り上げを上回ったようだ。中でも福袋は好調で用意していた100個はセールが始まって数秒で完売した。同社CFOの小高奈皇光氏は「事前にそのくらい売れると言われていたが、実際にそうなって驚いた」と振り返る。その後も中国展開は好調を維持している。同社によると成功の鍵はアリババ側との綿密な情報交換にあるようだ。

 TOMでは出店を行う前にアリババが本社を構える中国・杭州まで行き、担当者と話し合いをするなど関係を構築。代理店に任せるのではなく、自ら動いてアリババの中に食い込んでいった。今ではTOMのチームが中国とチャットでつながって日々打ち合わせをしているという。

 「市場が大きいからとはいえ、ただ出店するだけでは厳しい。次のキャンペーンは何か、『独身の日』に向けて保税区にどの商品を入れるか、そうしたコミュニケーションをしっかりとっておかないと売り上げを作りにいけない」と小高氏は指摘する。現地との密なつながりを作ることが大前提になるというわけだ。

 TOMでは現在、中国向けに4000~5000SKUを展開しており、ぬいぐるみなどが人気。中国向けの物流は千葉県・舞浜の倉庫から個配しているケースが多い。今年6月からはアリババが保税区に構える倉庫の活用も開始。まずは売れ筋商品を2、3SKUだけ置いている。

 保税区の商品はオペレーションが難しくなるという理由からまとめ買いができないという。そのため売る際も単品で同梱は不可となる。ただ、事前に商品をまとめて中国国内に置いておくことで送料は下がるようだ。今年の「独身の日」に向けて、現地の担当者と密にコミュニケーションを図りながら、
保税区に商品を預けて備えている。

イベント参加必須規則対応こまめに

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 2015年から中国向けに越境ECを展開しているNHNテコラス。当初は日本の企業から商品を買
い取り、同じNHNグループのエイコンメイト社を通じて、アリババグループの越境ECサイト「天猫国際」で販売するという出品代行サービスを手がけていたが、現在は行っていない。

 越境EC事業部の藤原弘之ジェネラルマネージャーは「当初は『中国人に人気が出そうな商品を揃えれば売れるだろう』と簡単に考えていた部分もあったが、そんなに甘くはなかった」と振り返る。募集した商品に関しては、70%程度は中国向きではないためそもそも買い取らなかった。そして、買い取った商品についても「売れたとしても良くて10個程度、ほとんどが一桁」という惨状。商品を募集・審査し、買い取るという手間が必要な割には見返りがなかったわけだ。

 現在は、テコラスが商材をメーカーや小売り企業から仕入れて販売するという、一般的な手法を用いて天猫国際で日本の商材を販売。エイコンメイト社の天猫国際店に出品する形だ。ただ、天猫国際に出品するにはさまざまな制約がある。その一つが「商標がない商品は規定で出品できない」ことだ。「販売授験書」に商標権者が押印し、アリババ側に提出しなければいけない。ところが、あまり大きくない企業の場合、商標権を取得していないケースが多々ある。さらに、生鮮食品や日本酒といった越境ECにはそぐわない商品もある。そのため、仕入れルートは新たに開拓。越境ECの売り上げ自体は大きく伸びている。

 商品ページの作成も一筋縄ではいかない。モールとしてのレギュレーションが厳しいためだ。1ページごとにアリババによる審査があるのだが、「禁止ワード」が含まれている場合はページが消されてしまう。事前に消去の連絡はなく、さらに禁止ワードが通告されているわけでもない。「消されたあとに問い合わせて、ようやくどこがまずかったのかが分かる」(藤原氏)。天猫国際への出店を計画する企業の中には、「商品データベースを自動翻訳してアップロードすれば簡単だろう」と考えている企業もあるだろうが、「それではかえって手間がかかることになる」(同)。

 アリババに支払う費用も非常に高額だ。出店時の保証金15万元(約270万円)に加え、モール利用料年間1万ドル(約105万円)と売り上げ手数料などが必要になる。また、販促面では「独身の日」のような、モール主催のイベントに参加することが重要だが、条件が設定されており、参加するには一定以上の実績が必要。藤原氏は「日本の仮想モールに出店するのと似たようなものと勘違いしている企業もあるが、リスクが大きいことは把握するべき。日本で通販サイトを運営するのとはまったく異なるビジネスだ」と強調する。

「日本ブランド」の"慢心"捨てる

 ネット販売を手がけるジェネレーションパスは昨年から、関税処理などで優遇措置を受けられる「上海自由貿易試験区」を活用した中国向けの越境仮想モールでの商品販売を開始している。事前に申請して許可を取った商品の在庫を現地に置ける仕組みを得たもので、中国向け販路の開拓が出来た一方、想定ほどの売り上げには届かなかったという課題もあった。

 原因は税関での事前審査の問題。当初は通関手続きの簡略化で商品が特区に入るまでの審査は2~3日程度と聞いていたが、実際には1カ月近くかかるケースもあった。品目ごとに1回通れば2回目以降は簡単だが、新商品や輸入規制項目のある商品などは時間がかかるという。

 そのため、「特区型」と並行しながら今年8月には、ネット販売の運営代行サービスなどを手がける中国企業と提携して、「直貿型」の越境ECサイトを開設する。日本の複数の仮想モールの売れ筋商品情報を数量単位で計測して合算し、商品カテゴリーごとにランキング形式で表示する仕組みで、マーケティングツールとしても活用しながらここで得た知見を特区型の越境ECでも活かしていく考え。

 これまで約1年間の取り組みを振り返って同社では、「中国は今ルール整備の最中。当然、多少の流動性はあるが政府が越境ECにやる気を持っている。ルールが固まるまで多少は待つが、今後も流通量が増えることは間違いない」とし、依然として成長性の高い市場であることを断言した。

 その上で、中国の消費者は日本商品に対しての欲求は確かに高いものの「日本ブランドであれば何でも売れる」といった慢心を持ったままでは成功しないと見ている。現在多くの日本企業が参加している大手越境モールの利用に関しても、決済手数料や諸経費などのコストがかかることから、まずは事業の採算が取れるかをシュミレーションした上で参加を判断する必要があると分析。マーケティング面でパートナー企業を選ぶ際にも、実際に越境ECを自社で取り組んで成果を挙げている企業かどうかを確認する必要もあるようだ。

 なお、今年4月に改正された中国越境ECの税制変更については、「アイテムによっては以前より安くなるものもある。消費税のように購入者が払う(負担する)部分なのでそこまで影響がないと考えている」(同社)と説明。元々、日本商品を購入している中国の顧客は富裕層が多く、特におむつ類など安心安全が求められる商品については中国製商品の10倍以上の金額を出して購入するケースも当たり前となっている。「すでにこれだけ高いものを買っている層が、多少税金が上がったことだけで購入を辞めてしまうということは考えにくい」(同)とした。

SNSへの好意的な投稿を誘発

 CD・DVDネット販売のネオ・ウィングでは、越境ECの売上高が20億円に達する。日本のポップカルチャー愛好家から支持を集めている。

 同社が越境サイト「CDジャパン」を開設したのは1998年。北米とヨーロッパが中心で、東南アジアやオセアニア、南米など世界各国からの注文がある。マーケティングに関してはくちコミ効果、特にSNSを重視している。自社でツイッターやフェイスブックを活用して情報を発信するのはもちろん、特に効果が大きいのはユーザーのSNSでの発信だという。「(CDジャパンの)サービスが良かった、あるいはこんな商品が手に入ってよかったとなど、自分の期待以上のサービスだったときにユーザーはSNSに投稿してくれる」(片桐社長)。例えば、商品が届いた後に、梱包がしっかりしていることを撮影し、ユーチューブやインスタグラムに投稿するユーザーがいるという。CDジャパンのサービス品質の高さが拡散されることになるわけだが、狙ってできるものではない。「ユーザーが感激したとき自然と発生するもの」(同)。

 そのためにも、サービス品質の向上は欠かせない。特に梱包は重視している。最近はCDなどの特典として付与される、ポスターを配送する際の梱包を刷新。潰れないように、堅いロール芯で配送している。こうしたポスターは国外では手に入らないため、梱包にも細心の注意が必要となる。

 同社ではユーザー向けにサービス品質改善のためのアンケートをとっている。例えば「ダンボール箱が壊れていた」というクレームがあった場合、なぜ壊れたかを徹底的にリサーチ。梱包の改善につなげている。リピート購入してもらうために重要なのは「ユーザーの期待値より高いサービスレベルを保つこと」(片桐社長)。そのためにもサイトの改善を続けていく。

中国越境ECの今後は?
新税制で減税も、競争激化
「最終価格」で適正判断を

中国政府が4月8日に、越境ECに対して新しい税制を導入した。BtoC向けの配送で減税措置が取られ、適用する上限金額を引き上げた。一方で、市場で取り扱う商品カテゴリーに偏りがみられるなど、競争激化につながっているようだ。

 中国政府は4月8日に越境ECの税制を変更し新しい制度を適用。中国政府が許可した商品を対象に、購入金額は2000元以下の購入について関税を0%とし、消費税(ぜいたく品にかかる税金)と増値税(日本の消費税と同じ税金)を30%減額した。税率は商品カテゴリーによって異なり、食品や日用品は低く、化粧品は高いといわれている。これまでに徴収されていた行郵税は廃止された。

 新しい税制は、BtoCの越境ECを対象にしたもの。税関が管理する現地倉庫に商品在庫を持つ「保税区モデル」や、EMS以外で配送する「直送モデル」に適用する。国際郵便「EMS」は個人の利用を想定しているため、新税制による減税措置はなく従来通り行郵税を適用する。

 今回の税制の変更は「税金をしっかり払えば越境ECを認める政府の方針がある」(越境ECを行う某事業者)。これまで越境ECは、「保税区」の運用が徹底されておらず通関証明書の提出がなくても利用できたという。また税関での抜き打ちチェックが5%と低かった。体制の甘さが非正規品の輸入を増やし、偽物が多く出回る温床になっていた。

 新税制の適用で減税となった一方で、税関のチェック体制は強化される。「保税区」では来年5月11日に、入荷する商品について、さまざま証明書の提出を義務付ける。また「直送モデル」ではすでに、税関のチェック率が5%から40%と高くなっている。

 新税制における越境ECのポイントは、商品価格に税金を加えた金額と商品特性のバランスを踏まえて商品ごとに越境ECの適正を判断することだ。「最終価格を踏まえて、消費者が税金を負担しても購入するかどうかを判断し、販売戦略を検討する必要があるだろう」(越境EC支援事業者)と指摘する。

 加えて、適用範囲の「購入金額2000元以下」についても注視する必要がある。商品代金と送料、税金を含む総額を対象にしており、容積重量が小さく送料が安価で税率が低い、食品や日用品などの取り扱いが増える傾向もみられるようだ。

 新税制は1年間の購入上限が1人2万元(日本円で約30万元)の範囲で適用されるが、現状は、越境ECでの1人あたりの購入金額を管理する仕組みが整備されていないという。今後、運用体制が変わる可能性があり、「中国消費者に付与しているマイナンバーで1人あたりの購入金額を管理するのではないか」、「税関をネットワーク化して、どの税関を通過しても越境ECの購入金額を管理できるようになるかもしれない」などの声も聞かれる。制度の不透明さは購買意欲の低下につながっており、「まとめ買い」が減少などの影響も出ているようだ。

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