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【ビタミン・ミネラルの行方】 新制度のみ「表示不可」の異常

 1-1-1.jpg機能性表示食品制度の「対象範囲拡大」を巡る検討会の議論が紛糾している。ビタミン、ミネラルなど栄養成分の対象化を巡り消費者サイドと事業者サイドの意見が対立。ビタミン等について、国内の諸制度の中で新制度のみ、その機能を表示できない事態が続く恐れすらでてきたためだ。新制度は食品の機能性表示で"世界最先端"をめざし導入されたもの。だが、実際には医薬品、食品領域において、最先端どころか国内の諸制度にすら遅れをとっている。こうした状況に批判の声が高まっている。

 1-1.jpg6月30日に行われた機能性表示食品の積み残し課題検討会では、一定の条件下で一部の「糖質等」を制度の対象にする方向性が示され、「たんぱく質等」は対象化が難しいとの意見が聞かれた。残る争点は最も市場が大きい「ビタミン等」。業界、消費者サイドが対象化を巡り、激しい議論を戦わせている。


新制度だけ使えないビタミン 

 「"制度揃え"を考えている。制度全体を俯瞰して見た時に違和感がある」。同日の第6回会合では、日本通信販売協会の宮島和美委員(ファンケル社長)が、国内諸制度とのバランスからみた機能性表示食品制度の違和感を口にした。

 現在、国内には、食品領域で特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品(栄機)、機能性表示食品、医薬品領域で医療用医薬品、OTC医薬品、医薬部外品の制度がある。いずれも「ビタミン等」の機能表示が可能。だが、機能性表示食品のみ表示できない状況にある。「注意表示や配合量の工夫で安全性を担保し、肯定的な議論が進むことを望む」(宮島委員)と求めた。


1-1-2.jpg摂取量が計算できない

 ただ、消費者、学術サイドにはビタミン等の対象化に否定的な意見が根強い。意見を集約すると、その懸念は「過剰摂取」と「栄養政策との混同」に二分される。

 ビタミンの過剰摂取の問題は、昨年12月の段階で食品安全委員会からも指摘されているところ。この日も河野康子委員(全国消費者団体連絡会事務局長)が「『1日に摂取すべき栄養素量』の知識を持っている人は約4割で残る半数はほとんど知らない。(情報の)受け取り側に知識がないと量的なコントロールはしにくい」と指摘。売場の実態として「サプリメントといっても機能性表示食品、トクホ、栄機がある。中身を見ると恐ろしいことに『骨に効く』などタイトルに『ビタミン、ミネラル』と書いていないものにもビタミン等は入っている。意図せず、拒絶できない形で入ってくるのが実態」と改めて懸念を示した。

 これに寺本民生座長(帝京大学臨床研究センター長)が「私もそう思う」と同調。梅垣敬三座長代理(国立健康・栄養研究所情報センター長)も「ここにいる先生は自分がどれだけのビタミン、ミネラルを摂っているか把握されているか。これが問題。安易に使えるようにすると良いものも悪くなる」と話し、座長、座長代理が揃って否定的な見方を示す事態に発展している。

 1-2.jpg迫和子委員(日本栄養士会専務理事)も「日常の食生活で大きな不足がない状況にあって医薬品や栄機、トクホから入ってくるビタミン等、さらに機能性表示食品が加われば(上限量の)計算が全くできなくなる」と追い打ちをかける。

 業界を代表する健康食品産業協議会の関口洋一委員、日本チェーンドラッグストア協会の宗像守委員はともに「耐容上限量」を踏まえ制度の対象化を求め奮闘したが、「一人たりとも健康被害を出してはならない」(河野委員)と、"ゼロリスク"を主張する消費者サイドの反論を受けた。


対象にすると制度が壊れる

1-1-3.jpg 「栄養政策との混同」も大きな懸念の一つだ。すでに栄機でビタミン等の機能性表示が行われている中、国が定めた定型文の表示とは別に、企業の自己責任でビタミン等の機能性表示が溢れることになる。梅垣座長代理は「栄機さえ正しく理解されていない中で(企業責任による機能表示が)前に出てくるのはおかしい。『健食が病気の予防に効果がある』と考えている人が約3割もいる状況。新制度を壊したいのであれば良いが、うまく育てたいならまず問題点を洗い出すのが先」と発言。これに「大賛成。栄機では認められていないビタミンの機能が別に出てくると消費者は混乱する」(赤松利恵委員)と、対象化に否定的な見方が相次いでいる。


「新制度だけの問題じゃない」

 ただ、この日は否定派の意見に首をかしげる傍聴者が相次いだ。「過剰摂取」と「栄養政策との混同」に関する懸念は、機能性表示食品に限った問題でないためだ。

 宮島委員は検討会で「過剰摂取や栄養政策のかい離が起きるという問題は機能性表示食品だけに言われることではなく、トクホや栄機、医薬品の諸制度全般に言える問題」と指摘。

 会場にいた傍聴者からも「仮に新制度にビタミン等を入れなかった場合、栄養政策との混同が避けられるのか。すでに現状で同じ混乱が生じている。(現在、存在する)制度全体のバランスを考える際に議論すべき問題で、新制度へのビタミン対象化の可否と次元の異なる問題」「新制度の対象にしなければ過剰摂取がなくなるのか。消費者サイドから具体的な説明はなかった」といった意見が聞かれた。

 現在、市場に存在する食品、医薬品を分類すると9つの領域に分かれる。いずれもビタミン、ミネラルの機能表示が可能。梅垣委員が「どれだけ摂っているか把握している?」と指摘するように、その量を正確に把握できる人はよほど健康に関心が高く、几帳面な人間だけになる。ただ、これは新制度に限った問題ではない。国の栄養政策自体や消費者教育の遅れといった問題だ。


栄養機能食品を制度に取込む

 落としどころはどこにあるのか。ビタミン等の栄養成分を新制度の対象として開放し、機能性表示を企業の自己責任に委ねることへの反対は根強い。二つ目の選択肢は、ビタミン等の機能表示は栄機に委ね、対象化を見送ること。現在、消費者、学術サイドの多くがこれを強く求めている。ただ、その論拠となっているのは複数の関係者が指摘するように機能性表示食品に限った問題ではない。

 三つ目の選択肢はこの日、合田幸広委員(国立医薬品食品衛生研究所薬品部長)から提案された折衷案だろう。「栄養機能食品で認められている範囲でのビタミン等の"並列表示"を認めてはどうか。消費者にとって確実なメリットは、(機能性表示食品に義務づけられている)被害情報が集まる」というもの。栄機の運用では得にくい被害情報の収集に焦点をあてたものだ。これには業界サイドからも「お客様からはこれ(=ビタミン等)は違うのか、と聞かれることがある。(並列表示ができるなら)お客様の疑問もある程度解消され、事業者としても売りやすくなる」(宮島委員)など肯定する声が上がった。


1-1-4.jpg売りやすく透明性も高まる

 これは栄機の弱点を補うものでもある。栄機は「表示が一言一句同じでないと駄目、という使いにくさがある」(傍聴した業界関係者)というのが問題。機能性表示食品に取り込み表示が行いやすくなれば「作りやすく、売りやすく、消費者に信頼される制度」という、川口康裕次長が話す新制度の趣旨とも合致する。

 消費者の信頼にも応える。機能性表示の内容は、国が研究論文を精査してレビューを行い、さらに専門家が議論して決めた非常にレベルの高いもの。機能性表示食品で活用が増えれば、広く国民に栄養機能を浸透させることにもつながる。

 透明性も高まる。検討会の第2回会合では梅垣座長代理が「『栄養機能食品』、例えばビタミンCと書いておきながら、コラーゲンやイソフラボンと書いてある製品がある。表示と中身がかい離している事例が実際にある。そういう現状を解決しないで先に進んでいくのは問題」と指摘していた。だが、機能性表示食品では、機能性表示に関わる「機能性関与成分」の表示のみとなるためこうした問題が解消される。安全性や機能性に関する情報も広く公開されることになる。

 一方、現状の栄機に認められていない新たなビタミン等の機能はどうするか。これには「最終製品を使った臨床試験による評価のみ認めては」(前出の傍聴者)との意見がある。河野委員も「トクホに私が信頼を置いているのは最終製品に含まれる成分を評価しているから」と指摘しており、製品ベースなら研究に使う原材料(成分)と実際の原材料が違うといった問題も起こらない。



 ビタミン等の栄養成分を中心に議論が白熱する中、今回、沈黙を守ったのは、日本OTC医薬品協会の上原明委員(大正製薬会長)だ。

 製薬業界を代表しての参加には「医薬部外品の利益、もっと言えば『リポビタンD』の利益さえ守ることができれば、という思惑があるのではないか」といった意見も根強い。検討会でも腕を組み、時折、上を向いて沈思する姿が印象に残る。経済界の重鎮でもある上原氏は何を考えるか。

 閉会後、ビタミン等を新制度に取り込むことに対する意見を求め後を追ったが、直接のコメントは拒否された。

 代わりに大正製薬の北島秀明セルフメディケーション研究開発本部セルフメディケーション薬制部長が回答。新制度のみビタミン等の機能性表示が漏れている状況には、「安全性が担保されればいい。『これだけは駄目』とは考えていない」、栄機で認められている表示を併用することには、「医薬品メーカーもビタミン含有保健薬という中で(栄養成分の)一次機能、三次機能を表示できている。共存できればいい」と答えた。

 上原氏の今後の発言は検討会の行方を左右する一つのカギになりそうだ。

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