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ヤマト  オープン型宅配ロッカー始動、他社へ解放しインフラ目指す

 1-0.jpgヤマトグループがオープン型宅配ロッカー事業に本格的に乗り出す。ネット販売市場の拡大により宅配便の利用が増加する一方、ライフスタイルの変化などに伴い多様な受取手段が求められ宅配ロッカーのニーズが高まっていることに対応。同時に再配達が多い状況へも対処していく。自社だけなく他の宅配便事業者も利用できるオープン型を展開し、開かれたインフラとしての利用を想定している。佐川急便や日本郵便、西濃運輸などへ利用を呼びかけていき、2022年までに5000カ所へのロッカー設置を目指す。

 1-1.jpgオープン型宅配ロッカー事業は5月11日にフランスのネオポストグループと設立した合弁会社「Packcity Japan株式会社」で展開する。合弁会社は資本金が7億5000万円で、出資比率はネオポストグループのネオポスト・シッピングが51%、ヤマト運輸が49%。代表取締役社長(CEO)にジャン・ロラン・リュケ氏、代表取締役副社長(COO)には阿部珠樹氏が就任した。
㊨画像はヤマトグループ、ネオポストグループ、合弁会社の首脳陣。5月11日開催の事業説明会で

 事業内容はオープン型宅配ロッカーネットワークの構築と同ネットワークの維持・管理・運用。宅配ロッカーは「PUDO(プドー)ステーション」(Pick Up&Drop Off station)との名称で公共施設などに設置していく。

 今回の宅配ロッカー事業で進めていくオープン型は、ヤマト運輸1社だけが宅配ロッカーを活用して荷物を受け渡すのでなく、他の宅配便事業者へも開放し多様な荷物を1カ所のステーションで受け取ることを可能にしていく。佐川急便や日本郵便、西濃運輸などへ声をかけ交渉を進めていくという。

 宅配ロッカーは最少2列で構成し、最大37列まで増設できる。宅配事業者へは1列単位でレンタルする。レンタル料金は設置スペース賃料を含めた月額で徴収する。当面は宅配事業者のみへのレンタルに限定していくが、将来的には小売店などへのレンタルも検討する。

 宅配ロッカーを設置したPUDOステーションは17年度までに1000カ所設置し、22年には5000カ所まで拡充していく。また6月からはJR東日本の駅へ設置し始め、池袋駅、川口駅、蕨駅、大井町駅、鶴見駅、藤沢駅、平塚駅、豊田駅、下総中山駅、幕張駅、東所沢駅などを候補としている。またJR東日本では山手線、京浜東北線、東海道線、中央線、埼京線、総武線など首都圏の各路線駅へ順次設置を検討していくとし、1年以内に100駅で設置するという。

 JR東日本の駅のほか、バスターミナル、ショッピングセンター、コイン駐車場、自社の営業所・配送センターなどへも設置していく考え。

 宅配ロッカーではネット販売サイトでの購入商品の受け取り、再配達になった宅配便の受け取りを対象にする。顧客へはメールで2組の4桁のパスワードを送信し、ロッカーのタッチパネルへの入力と指での署名でロッカーが開く仕組み。ロッカーにはカメラやアラームも搭載してあり防犯対策を図っている。

 またロッカーの宅配便を収納するボックスは、S・M・Lの3サイズを設けている。収納できる荷物のサイズは3辺の合計が100センチメートル以内、重さが10キログラム以内で、常温商品のみ。将来的には宅配便の受け取りだけでなく、発送にも利用できるようにする。

 宅配ロッカーの稼働率は現状、7割を目標に掲げている。3年目での黒字化を目指していく。

 昨年秋からテストしてきた東京メトロ有楽町線5駅の宅配ロッカーでは、ヤマト運輸の個人会員「クロネコメンバーズ」限定のサービスを行ってきた(テストには佐川急便も参加)。JR東日本の駅や他の箇所に設置していくロッカーの利用対象者などについては今後詰めていくという。

 宅配便の再配達はドライバーの人材不足や配達車の二酸化炭素排出など社会的課題として問題視されている。昨年には国土交通省が再配達削減に向け有識者や通販企業、コンビニエンスストア、ロッカーメーカー、商社などが参加し議論・協議を進めてきた。検討会の報告書では社会的基盤として多様な事業者が利用できる宅配ロッカーの整備を方策のひとつとして挙げており、今回、ヤマトグループはオープン型宅配ロッカー事業を始動することになった。同社は再配達削減からの要請だけでなく、「非対面性」「秘匿性」といった顧客側の受け取りに対する新たなニーズにも対応していく。

 なおネオポストグループは宅配ロッカー事業をフランスのほか、アメリカ、オーストラリアで展開している。フランスでは3000カ所に設置し、このうちネオポスト専用が1000カ所、オープン型が2000カ所という。オープン型は小売店や公共施設に設置、駅への設置もパリとパリ郊外で行い、実践段階という。


試行では6割がネット販売商品

 オープン型宅配ロッカー事業に乗り出すに当たり、ヤマト運輸は昨年秋からテストを行ってきた。東京メトロ有楽町線(副都心線)の5駅に設置して実施、佐川急便も参加した。

 テストでは約1000人が利用した。利用者の性別は女性58%、男性42%だった。テストで判明したのが、引き取り時間が午後9時以降に多かった点。午後9時はヤマト運輸の配達時間が終了するため、配達による受け取りが不可能になることから、9時以降の帰宅時にロッカーを利用する顧客が多いと見られる。利用した荷物はネット販売の購入商品が6割を占めたという。

 このほか、木曜日と金曜日の取り出しが多く、週末に自宅で待機して受け取りたくない顧客の利用が多いようだ。またリピーターが30%で、さらにこの30%のリピーターの荷物が全体の5割に達している。

 一方、昨年12月にヤマト運輸が実施したアンケートでは、宅配ロッカーについて59%が「業界で仕様を統一するべき」と回答。宅配ロッカーの利用条件として45%が「身近な場所への設置」を挙げ、希望場所として「コンビニ、スーパー等の店舗」(43%)、「鉄道駅やその周辺のバスターミナル、駐車場等」(35%)が多かった。


【日本郵便もオープン化へ】
JR東の駅は2社が併設


 1-2.jpg宅配ロッカーについては、日本郵便が昨年4月に楽天と組み都内の郵便局に宅配ロッカー「はこぽす」を設置し楽天市場の購入商品の受け取れるサービスを開始している。今年3月からは京王井の頭線6駅など設置箇所を増やし、多様なネット販売事業者の再配達荷物の受け取りの用途も加えるなどして事業を拡大している。20年までに約1000カ所の設置を目指すという。また同社もヤマト運輸とともに、6月以降にJR東日本の駅へのはこぽすを設置する。
㊨画像は京王井の頭線吉祥寺駅に設置された日本郵便の宅配ロッカー「はこぽす」

 JR東日本の駅では、ヤマト運輸、日本郵便がそれぞれのロッカーを併設することになる。両社がいずれか1社のロッカーを相互に活用するわけでないため、2社のロッカーが同一駅に置かれ、利用者にとってはどちらのロッカーに自身の荷物が収納されているのか分かりづらいものになるとの意見がある。またヤマト運輸は当初からオープン型を進めていく一方、日本郵便は当面、自社の「ゆうパック」とイオンのネットスーパーの商品の受け取りなどに限定し、オープン化はメドが立ち次第に実施する。オープン化に向けては既に福山通運に話を持ちかけているという。

 いずれにしても将来的には、1つのロッカーでヤマト運輸、日本郵便、その他の宅配便事業者の荷物が受け取れるような体制が望まれる。この件については2社とも「今後の課題」との認識を示しており、日本郵便の担当者は「将来的にはどちらかのロッカーということになる可能性もある。ま相互乗り入れできたらよいだろう」と述べている。

 欧州では、オープン化していない1社の宅配事業者だけのための宅配ロッカーもあるが、稼働率が悪いという。このような事例を日本で繰り返さないためにも、ヤマトググループは今回のオープン型を推し進めることにしたという。

 一方で宅配ロッカーを含め受け取り場所の多様化を進める動きは活発化している。ヤマト運輸はコンビニ受け取りのほか、自社の営業所での受け取りサービスを提供している。日本郵便も4月から郵便局窓口で受け取れる体制を整えたほか、コンビニ受け取りもローソンやミニストップ、ファミリーマートで実施。ファミリーマートとは親会社の日本郵政が業務提携を締結し、その一環としてファミマへのはこぽす設置も計画している。

 宅配便各社は多様な受け取り場所を可能とすることで、通販企業などとの取り引き拡大を図る狙いがある。宅配ロッカーのように競合先と協同して取り組む事業では、宅配便業界の競争によってうまく進展しなくなるようなことは避けたいところだ。

 また、今回のヤマトグループとネオポストグループの合弁会社は、他の宅配便事業者などからの出資を受け入れていない。ヤマト運輸は、スピードを優先して国内でもオープン型を根付かせるためと説明しており、他社からの出資は現状考えていないものの、将来の出資受け入れは否定していない。

 1社の取り組みではコストも莫大となり、採算ベースに乗せることが難しいと言われる宅配ロッカー。今後、顧客が使いやすいオープン型宅配ロッカーネットワークが早期に構築されることが望まれる。


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