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"ライオン・ショック" 初勧告の衝撃⑤ 相談わずか10件

 2-1.jpg健康増進法の運用で事業者に衝撃をもって受け止められたのは、国の許可を得た特定保健用食品(トクホ)に社名公表を伴う措置が使われたことだ。行政の目的意識や社会環境の変化があったとしても、これには業界関係者から「過剰規制でやりすぎ」との批判が根強い。本当に国民の健康に"重大な影響"を与えたのか、実態が見えないためだ。


慎重な運用か?

 トクホは1991年の発足から20年以上が経ち、ようやく知名度が高まってきた。消費者に浸透し始めた矢先の措置に「ヒト試験で効果を実証したのに『著しく誤認』で社名公表では意味がない」との声がある。

 また、「勧告」は"口頭指導"などおおやけにならない指導を経ずに突然使われる。「(口頭で)指導したのに直さない、というなら分かるが一足飛びの勧告はひどい」といった声もある。これでは多額の費用と時間がかかるトクホへの投資意欲も削がれるというものだ。

 また、前回示したように、健増法の「誇大表示の禁止」は健康増進効果について「誤認させる"ような"表示」に対して適用できる。景表法が「誤認させる表示」が要件であるのと異なり事実認定の度合いが弱い。その分執行担当官の"裁量"が入り込む余地が大きい。それだけに運用は、より慎重に行われるべきだ。


不明快な回答

 実際、判断は慎重だったのか。「勧告」は、誤認させるような表示が「国民の健康に重大な影響を与える場合」に使われる。"重大な影響"は、「患者が診療機会を逸した場合」、もう一つが「国民生活センター(国セン)や消費生活センター等に健康増進効果に関する"数多くの苦情"が寄せられている場合」になる。

 相談件数の面から今回の事例を見てみる。対象になったライオンのトクホ「トマト酢生活トマト酢飲料」について、検索漏れを少なくするため「ライオン」と「トマト酢」というキーワードで国センの「パイオネット(全国消費生活情報ネットワーク・システム)」に寄せられた相談件数を調べた。結果は10件。初の勧告であるため、比較対象となる数字はない。

 参考まで措置命令を受けた企業の相談件数と比べたが1件から427件と幅がある。ただ、ライオンという企業の知名度を踏まえた場合、10件は"重大な影響"というほどインパクトがある数字だろうか。加えて、健増法の要件は、「効果に関する苦情」。10件には、効果意外に契約やサービスに関する"問い合わせ"も含まれるとみられる(相談内容は非開示)。

 消費者庁は「数の多寡でなく、質と量の両面で判断する」(食品表示対策室)と言う。また、今回適用したのは、もう一つの要件である「診療機会の逸失」。必ずしも件数の把握は必要とせず、「(相談件数は事前に)把握していたかを含め公表していない」(同)とする。

 だが、「健増法においては件数こそが、実態を把握する唯一の手段」(行政の元執行担当官)との声もある。なぜ重視されるべきなのか。それは、健増法が厳密な事実認定を求めていないためだ。"誤認させるような"という規定は、担当官の裁量に左右される要素が強い。そうであれば"重大な影響"かを判断する有効な手段の一つは効果に対する苦情件数になる。かつて国センへの逐一の照会が必要だった相談件数は07年以降、各省庁の端末から容易にアクセスできるようになった。仮に把握していないのであれば、それこそ重大な遺漏だろう。


任意の「報告書」

 調査手法にも問題がある。健増法の権限に基づかない「報告書」の提出を"任意"で求めていたことだ(1548号既報)。内容は広告の表示媒体や表示期間、商品売上高、13の広告表現の裏付け根拠など景表法の「合理的根拠の提出要求権限」で求められる内容とほぼ同じとみられる。

 対策室は「調査テクニック」として説明を避けるが、行政の元執行担当官は「事業者が健増法に根拠の要求権限がないことなど事情を知らなければ、特に説明せず、『報告書』を"任意"で求めても素直に出す事業者はいる」、地方自治体の元執行担当官も「昔、景表法の指示に関する調査でよくやっていた手法。『根拠の要求権限』はない(注・当時。2014年12月の景表法改正で地方に権限が移譲)が、任意の報告依頼でも事業者が拒否する覚悟を持つのは難しい」と、テクニックを明かす。事業者の心理を逆手にとった手法であり、健増法にない権限で明らかに法律に定められた範疇を超える要求。そうなるとテクニックを理由に"なんでもあり"になってしまう。法の執行者として説明可能な法運用であるべきだ。 (⑥につづく、※前回の④はこちら

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