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"ライオン・ショック" 初勧告の衝撃④ なぜ「勧告」は使われたのか

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2003年の健康増進法改正で「誇大表示の禁止」が規定されて以降、「勧告」は適用されてこなかった。なぜ、今回適用に至ったのか。背景には、執行主体や特定保健用食品(トクホ)を取り巻く環境の変化がある。

病院に行かない

 これまで適用されなかったのは、「国民の健康に重大な影響を与える」という要件の認定の難しさが一因だ。極端な例でいえば、その広告のためにがん患者が治療を受けない、といったことがあてはまる。

 一方で、同法の運用指針には、どういったケースが"重大な影響"か、具体例が示されている。一つは「患者が診療機会を逸した場合」、もう一つは「(国民生活センター等に機能に関する)数多くの苦情が寄せられている場合」だ。後者は本紙掲載までに苦情件数が把握できず検証はできない。

 ただ今回、執行を担った消費者庁の「食品表示対策室」では、「高血圧は薬等による治療が必要
な疾病。『診療機会の逸失』が十分あてはまる」(三上伸治室長)としている。
"的"が絞られる

 どのような表現がこれにあたるか。指摘されたのは、「驚きの血圧低下作用」、「薬に頼らずに食生活で血圧の対策をしたい」、「50、60、70、80代の方に朗報」といった表現だ。

 広告(=画像)では、血圧低下をグラフとともに表示している。一方で、トクホとしての許可文言は「血圧が高めの方に適した食品」。「低下」を打ち出すのは"かい離"があるようにも見える。

 ただ、この点だけを抜き出してみれば、問題はなかったとみられる。業界団体が策定した「『特定保健用食品』適正広告自主基準」では、テレビなど瞬間的な表示になる媒体への注意点以外、グラフの使用を否定していない。今回は新聞広告。基準がすべてではないが、行政の元執行担当官も「グラフは間違っていない、血圧低下も事実。今回は"事実"を争ってはいない」とみる。

 では、何が問題だったのか。前出の関係者は、「各表現を積み重ねた結果の総合的な印象」と指摘する。「血圧が高めでも仮に20代訴求であれば薬を飲んでいる人は少ない。血圧患者である蓋然性が高い70代や80代に訴求し、加えて"薬に頼らず"という表現が重なったことで『診療機会を逸する』と問題視した」(同)と分析する。それぞれの表現はセーフであったとしても、積み重ねた結果、的が絞られてしまったわけだ。

「ような」がミソ

 加えて、景品表示法の「不当表示」と異なる部分にポイントがある。

 「誇大表示の禁止」は、健康増進効果について、「著しく事実に相違する表示」や「著しく人を誤認させるような表示」を禁じている。今回は、ヒト試験で血圧低下を確認したトクホであり、その"事実"は争っていない。このため「事実に相違する表示」ではない。

 後者はどうか。不当表示が「誤認させる」と断定しているのと異なり、健増法は"ような"だ。厳密な事実認定が必要になる景表法には根拠の要求権限があるのに対し、健増法はそうした権限がない反面、事実認定の度合いが弱いとみることができる。ここに執行担当官の主観や裁量が入る余地があるとみられる。要は「実際に騙されたり購入したり、誤解した人がいなくても良い」(別の元執行担当官)というわけだ。

 事実認定が景表法ほど厳密でないため執行も早い。景表法は膨大な資料を精査し、認定に最低半年から1年ほどかかる。今回は昨年11月末の調査開始からわずか3カ月という短期間で執行につなげている。

"強気"の解釈

 とはいえ、健増法が改正され、権限や適用要件自体が変わったわけではない。執行に踏み切った背景には、行政の目的意識の変化も指摘される。

 09年に創設された消費者庁は、公正取引委員会から景表法を、厚生労働省から健増法を移管された。公取は「公正競争の維持」を目的にし、厚労省も監督官庁として事業者との関わりが浅くない。「公取は独占禁止法運用で企業の大小や、執行が競争環境に与える影響を気にする。おかしな方向に導いてもいけない」(元公取職員)。事業環境を強く意識するわけだ。厚労省も、適切な法運用により業界を健全発展に導く。

 一方の消費者庁は、消費者視点の行政の実現こそが目的。事業者目線は乏しい。こうした背景が強気の解釈を生んだ可能性がある。 (⑤につづく、※前回の③はこちら

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