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機能性表示食品 積み残し課題の検討始まる、ビタミンなど対象成分拡大なるか

011.jpg 消費者庁が、機能性表示食品の積み残し課題を検討する。テーマは、制度の対象とする「食品・成分の範囲」の拡充の是非について。国の健康・栄養政策との整合性を図る観点から導入が保留されていたビタミンやミネラルなどの成分がこれにあたる。ただ、消費者庁は、制度の活用で「健康長寿社会の延伸」と「成長産業の育成」の両立を目指すことを公言しており、これら対象成分の拡大は国の政策とも一致する。創設の原点に立ち返り、制度を肯定的に捉えた中での議論が必要になる。

栄養成分の扱い、今秋めどに結論

 「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」(以下、検討会)は1月22日、第1回会合を開く。テーマは、ビタミンやミネラルなど食事摂取基準に規定される栄養成分と、「機能性関与成分」が不明確な食品の取扱いについて。関係者からのヒアリングを踏まえ、今秋をめどに報告書をまとめる。また、対象とする「食品・成分の範囲」だけでなく、制度の運用改善に向けた意見交換も行う。

 当時、これら食品・成分が除外されたのには理由がある。前者は、すでに食事摂取基準が定められており、これと異なる成分量・機能で摂取を推進すると、過剰摂取の要因になるなど国の健康・栄養政策と整合性がとれない可能性があったため。後者は、機能する成分が特定できないため、安全性の確保や販売後の監視の観点から導入が見送られた。

対象範囲の拡大、健康政策と一致

 対象範囲の拡大は、国の健康・栄養政策と一致するのか。この点は制度導入の経緯から見てとれる。

 制度導入は、安倍総理が成長戦略スピーチで示した基本方針を受け、「日本再興戦略」に明記された「健康長寿社会の延伸」が背景にある。この点、消費者庁の川口康裕次長は「(制度は)「『健康長寿社会』と『成長産業の育成』を同時に達成するという世界の未来を先取りしたテーマ。これを実現するため『食の健康増進機能の活用』が位置付けられた」と、語っており、国の政策と齟齬はない。

 加えて、政策推進に制度を活用すべき事情もある。これまで国の政策は失敗続きであったためだ。

 「健康寿命の延伸」で思い浮かぶのは2000年、厚生省(当時)が掲げた「健康日本21」構想。国をあげて健康目標を打ち立てたが、「メタボ」という言葉が広く認知を得たなど成果はわずか。13年から第二期を迎えたが、栄養摂取や食生活改善への意識が浸透したとは言い難い状況にある。

 最近では、日本人の長寿を支える「健康な食事」の普及を目指し、14年末まで約1年半に渡り検討。シンボルマークの普及を図ったが事業者の反発を受けてトーンダウンしている。もはや国の健康・栄養政策の一翼を担えるのは、消費者や企業の高い関心を集める機能性表示食品しかないといえる。

国民の「意識づけ」に有効活用

 導入に「健食の過剰摂取による健康被害が懸念される。基本は『バランスのとれた食生活』」(澤木佐重子委員)など懸念を示す声もある。昨年12月には食品安全委員会が「『健康食品』に関するメッセージ」を策定。その中で、ビタミン・ミネラルの過剰摂取に対するリスクに触れてもいる。

 ただ、「過剰摂取」という問題にいかに対処するか。これは上限量の設定などテクニカルな管理だけではすでに難しい状況にある。制度は、生鮮食品からスープ、コーヒー、飴玉などあらゆる食品が対象。機能性関与成分に使われる難消化性デキストリン一つとっても、「その摂取量を調査しようと思っても管理できない」(業界関係者)状況にある。ビタミンもOTC医薬品や医薬部外品、健食まで幅広い製品に使われている。

 そもそも、食安委から国民への"メッセージ"がどれほどの国民に届いているか。メッセージを伝え、消費者教育を徹底する上でもトクホや機能性表示食品など「表示」商品を"ツール"として有効活用すべきだろう。

 その有効性は、すでに多くの識者が認めている。今回、委員に選出されている梅垣敬三委員もトクホの知名度を活かし、国の健康政策を反映させた表示を行う使い道に着目(特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会で発言)。戸部依子委員も「国の健康政策を反映させ、意識づけのツールとして機能すれば」と話す。

 古い話ではあるが、米国ではかつてケロッグが国立がん研究所の許可を得て食物繊維の疾病予防効果を表示。その是非はともかく、食物繊維を含むシリアル食品を食べる家庭が数百万世帯増えた例もある。導入の是非ではなく、注意表示などを含め、"いかにして入れるか"という観点から議論が必要だろう。

栄養成分の追加、市場拡大に貢献

 個別テーマの状況を見ていく。

 現在、栄養成分の中で機能性表示が認められている「栄養機能食品」には事業者サイドに不満がある。「大きな市場であるのに消費者も存在を認知していない」「本来、より多くの機能があるが、現行制度は、夜盲症(ビタミンA欠乏)、骨軟化症(ビタミンD欠乏)など欠乏症から『視力の維持』『骨の形成』といった表示が定められているだけ」という声だ。ビタミン・ミネラルとの組み合わせで新たな機能を見出す成分もあり、対象とすることで使い道が増え、市場拡大にも貢献する。

 栄養成分の導入は成長戦略の成否にも大きく関わる。制度の導入以降、食品の機能性研究の出口戦略が明確になったことで企業の投資は活発化している。とはいえ、制度はまだ始まったばかり。現状でそれほど多くの研究論文があるわけではない。

 一方のビタミンやミネラルはすでに世界中で多くの研究が行われ、多様な機能が認められている。今は単一成分の機能しか認められていないが、対象にすることで機能性表示の幅は広がる。制度の魅力を増し、制度活用の勢いを左右する重要な要素になる。

「特定困難な食品」導入に課題も

 「機能性関与成分」が不明確な食品は、制度化にいくつか課題がある。最も大きなものは、体内での作用機序(メカニズム)が不明確であること。現行制度で求められている作用機序の考察は、「安全性」の観点からの要請が強い。摂取前後の作用は分かっても、考察は難題。制度化には、「科学的根拠に使われている原料と、製品に使った原料の同一性が確認できなければならない。『原料GMP』と『成分分析の方法の開示』の二段構えで仕組み化すべき」といった声がある。

 ただ、現状の制度運用を見る限り、「機能性関与成分」が不明確なものは、それほど多くないようだ。代表格はローヤルゼリー。ただ、食品である以上、作用を単一成分に求めるのは難しい。例えばすでに受理された「イワシペプチド(バリルチロシン)」もそれ以外のペプチドが機能していないわけではなく、代表的な成分が届出されている。「あまりに厳密に特定を求めると精製しなければならず、食品と違う作り方になる」(業界関係者)という声もあり、市場に流通する成分が特定できない食品の把握から進める必要がある。

 いずれにしても、現状は、市場に多くの"いわゆる健食"が残されている状況。監視の効率を高め、消費者の信頼を得る観点からもこれをすくい上げていくことが必要だ。

導入1年、制度の現状は?

制度の原点からかい離、「つくりやすい」「売りやすい」と逆行


012.jpg 「『つくりやすい』『売りやすい』『消費者の信頼が得られる』という3拍子が揃った制度に育てていく必要がある」。機能性表示食品制度を巡り、消費者庁の川口康裕次長は、ことあるごとにこう述べてきた。裏を返せば、「制度を利用して製品をつくる企業がない、製品があっても売る人がいない、売られていても消費者が買わないとなれば制度としては機能不全と言われても仕方ない」(同、日本通信販売協会発行の「機能性表示食品GUIDEBOOK」より抜粋)ということだ。現状の制度は、この3つの観点に応えるものになっているだろうか。

                           

 制度は、「健康長寿社会の延伸」という目標のもと、岩盤規制を打破してつくられた。国の健康・栄養政策に大転換を迫る制度であるため、制度は小さく生み、大きく育てることが念頭に置かれた。このことは、川口次長の発言からも読み取れる。今回の検討会をはじめ、制度は施行後2年をめどに課題を検討する必要性も触れられている。

 だが、事業者サイドは、制度の本質とかけ離れた消費者庁の運用に多くの不満を抱えている。制度は、企業が安全性や機能性の根拠を持ち、自らの責任で「届出」を行うもの。表示も一定のルール下で企業に委ねられるべきものだ。だが、実際は、届出に際して消費者庁が「不備」を指摘。実質的な審査が行われている。届出から受理までの日数には大幅な遅れが生じ、販売計画が立てづらい状況も見過ごせない状況まできている。

 また、昨年10月には、消費者庁が35の「不適切な表示例」を示し、個別の表現に実質的な規制を行った。制度の本質が歪められ、「つくりやすい」「売りやすい」という本来の目的とまさに逆行している状況にある。

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 一方、消費者サイドにも不満はある。制度が事後チェックによる監視を前提とする制度でありながら、販売前に60日間のチェック期間が担保されていないことだ。また、販売前の商品に行政に調査義務が生じる「申出制度」を使えないなどの不満もある。科学的根拠に対する疑義、義務表示に対する要請もある。疑義が生じた際の対応もより明確にしていく必要があるだろう。

 受理の遅れも消費者庁だけの問題ではなく、制度に対する事業者の理解不足に起因するところも少なくないとみられる。「消費者の信頼が得られる」制度としていくためにも、消費者サイドと事業者が議論を重ねていく必要がある。

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 今回の検討会は委員の数が17人という大所帯。委員は、事業者団体と職能団体から5人、消費者団体や消費者サイドも消費者問題の専門家である田口義明教授を含め5人、学識経験者が7人という構成だ。

 問題は、委員間の「レベル感の違い」だ。学識経験者を中心にテクニカルな議論に寄れば、消費者サイドが置き去りにされ、収集がつかなくなる可能性がある。

 栄養成分や機能性関与成分が不明確な食品をいかに組み込むか、テクニカルな面だけを議論するのであればおおやけの場で議論する必要はない。幅広い分野の専門家が選ばれたのは、「つくりやすく」「売りやすく」「消費者の理解が得られる」という観点から、異なる立場の関係者間で合意を形成する必要があるためであることを忘れてはならない。

 事業者サイドにも不安要素はある。ビタミンは、OTC医薬品や部外品、健食などさまざまな製品に使われる。この点「日本OTC医薬品協会と健康産業協議会では意見が異なる可能性がある。互いの利益を守ろうという狭いスタンスだと駄目になる」(業界関係者)との声がある。つまらぬ利害対立が露見すれば、消費者サイドが不信感を募らせることになりかねない。

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