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化粧品通販大手の店舗戦略、販売力強化のポイントは?

 1-2.jpg化粧品通販大手2社が店舗の拡大戦略を打ち出している。ファンケルは国内に170店舗、オルビスは同112店舗を展開。店舗売上高はオルビスが約25%、ファンケルが約30%に達しており、重要な位置づけとなっている。ここ数年108店舗前後を適正な数と捉え、年間2~3店を出店するもののスクラップアンドビルドを行ってきたオルビスは、年間5店舗の出店を計画。できる限り純増とし、3年後に120店舗体制の構築を視野に入れる。一方のファンケルは、3年後にほぼ倍層となる350店舗体制を構想。来期末までに89店舗の出店を計画している。各社の店舗戦略を追った。

【美容部員の確保】
「逆張り戦略」でパート戦力化


1-3.jpg 店舗戦略の拡大で、まず課題として浮上するのが、「販売員(美容部員)」の確保だ。

 ある求人サイトをみると、各社が求人情報を掲載している(=㊨表)。月収でみればディーエイチシーが群を抜いているが、細かく条件をみると判断は難しい。ある化粧品会社の採用担当者は、「月収は提示されるが、年収は示されていない。例えばオルビスは年3回の賞与を設定している。他社を横目に見ながら各社見えない部分で工夫している」と話す。販売員は常に流動しており、求人情報からも人員確保に向けた各社の狙いが窺える。

 一方、少子高齢化の中で販売員確保は難しくなっている。制度品大手では資生堂が11年ぶりに正社員登用に舵を切り、コーセーもこれに先駆け正社員登用を始めるなど取り合いが起きている。

 営業時間や売り上げ、立地にもよるが、一般的に1店舗の運営には6~7人の販売員登録が必要とされる。出店計画から単純計算すれば、オルビスで100人弱、ファンケルに至っては1000人超もの採用が必要になることになる。出店計画に響く販売員確保が課題となる中、いかにして確保を進めるか。

 オルビスは、制度品大手に先駆けて2008年から契約社員の正社員雇用を開始。適性を見極め、2年目から正社員として雇用する。ただ、販売員は平均年齢が28歳。20~30代が9割以上を占め、40代が1~2%程度に留まるなど、少子高齢化の中で採用が難しくなっており、「同じエリアで2カ月連続、3カ月連続で採用活動することも増えている」(今井良輔店舗事業部営業推進チーム課長)とする。

 「40代の販売員の採用も進めたい」(同)と話すが、ネックもある。20~30代の販売員が大半を占める中、通常の採用活動で40代の販売員の自然増を図ることは難しく「採用情報の中で明確なメッセージとして発信いかなければいけない」(同)と課題を語る。他業界だが、ファーストフード店では人員確保、CSRの両面からリタイヤ世代のシルバー層の大量雇用を積極化させており、何らかの明確な意志に基づく採用活動の展開が必要とみる。

 また、1年後の正社員登用も「求人サイトで『正社員』で検索された場合に引っかからない」(同)と難しさを語る。正社員化に踏み切れば母集団の形成スピードは早まるが、離職率が高まりトータルで無駄なコストが発生する可能性もある。現在、1年後に更新できないのは2~3%。適性の見極めに契約期間が必要と判断する。

 350店構想を掲げるファンケルにとって人材確保は、より大きな問題だ。今の販売員数は、1300人弱。平均年齢は32歳。店舗倍増を計画するものの、販売員の増員は200人程に留める考えだ。人員確保の面では、現在約10%のパート社員比率を20%に高めるほか、「店舗」ではなく、"エリア"を軸にした販売員のシフトコントロールの導入を検討。一方、化粧品と健食のハイブリット店とは別に、来年以降、新業態店舗の開発も検討して増員を抑える。

 採用市場をみれば、圧倒的な数の販売員を抱える制度品大手が正社員登用に舵を切っている。あるデータによれば資生堂が擁する販売員は約1万人(約2割が契約社員)。正社員のうち20代はわずか10%という。ただ現在、時短勤務を改め遅番や土日勤務を求めるなど「働き方改革」を進めており、若い販売員は正社員化を支持し、育児等が絡む30代以降の販売員は自由を求めて流動性が高まる可能性がある。これを追い風に、働き方に自由度を求めるパートを組織化する。

 一方で、課題になるのが"パート社員の戦力化"だ。都内の研修施設に集めることができないため、ベテラン販売員を「マイスター職」に認定する制度を導入。全国各地を巡り新任店長やパート社員の教育を進める。現在、マイスター職の販売員は10人、1年で40人ほどに増える見込みだ。
 一方、契約社員の採用には課題を残す。池森賢二会長が経営復帰した13年に約2万円のベースアップを実施。また、あいまいだった正社員登用制度の基準を明確にしたことで年間数名だった登用が前年度実績で50人超にまで増えた。

 3年前には、新卒採用で、従来の「総合職」「研究職」に加え「販売職」も始めている。た
だ、採用は難しくなっており、待遇面など人事制度のテコ入れを検討する。


【接客力の強化】
顧客への"メッセージ性"強める

 ファンケル、オルビスともに接客スタイルは「セルフ&カウンセリング」に軸足を置く。従来の化粧品売場における販売手法へのアンチテーゼとして醸成されてきたものだが、ブランド再構築を経て"メッセージ性"の強化を図っている。

 オルビスは昨年、これまで"暗黙知"として理解されてきた接客を計4回の研修プログラムとして形にした。大切にするのは、顧客満足をわずかに上回る「101点の接客」。適度なタイミングの声がけなど顧客に負担を強いない接客をベースとする一方、「例えば、旅行に行く予定のあるお客様が来店された際、大きなボトルを旅行先に持っていくことを考え、スキンケアのサンプルを渡す」(今井氏)などの心がけを重視する。

 「セルフ&カウンセリング」では、声がけの間合いなど"顧客の見極め"が重要になる。従来は、商品知識や接客マナーを研修、現場において実地で学んでいたが、各店長の考え方により、まず声がけしてから接客の有無を判断するケースや、対照的に全く声がけしないケースなどばらつきがあった。研修では、「接客理念」の研修を厚くし、顧客から悩みを引き出すテクニック論も学ぶ(画像㊤)。

 昨年3月から今上期にかけて、800人いる販売員の600人以上が受講。覆面調査(ミステリーショッパー)では、「適度なタイミングでの声がけ」など多くの項目で評価が高まる傾向にある。今後、数店舗の様子をビデオ撮影した上で、「販売員の立ち位置」や「観察のポジション」「声がけのタイミング」などいくつかのポイントで好例や悪例を編集したDVDの教育ツール作成も検討する。

 接客力強化に乗り出す背景には、ブランド再構築を経て、価格を据え置いた状態でリニューアルをかける従来の路線を変更。大半の商品で価値の向上を図った上、100~200円の値上げに踏み切ったため、顧客に納得感を得てもらう必要性が生じたこともある。販売面では、毎月の新商品投入にあわせた勉強会の参加者を200人から450人に増やし、商品知識の習得を強化。結果として購入点数に変化はないものの、購入単価は前年比5%増で推移。来店頻度も上がっており、「現在、年平均4回程度の来店頻度を5回に引き上げることを目指していく」(同)としている。

 012.jpgファンケルも「売らない勇気を持つ」といった接客スタイルを重視しつつ、よりカウンセリング力の強化を図っている。

 新店舗には、肌の水分や油分を専用スコープで測定するスキンアナライザー(画像㊦)やメークシミュレーターを導入。健康軸では、血管年齢や血流を観察できる機械を導入し、管理栄養士等の資格を持つ販売員が接客する。

 研修は、13年に設置した「ファンケル大学」が実施。スキンケアやメーク、健康関連知識を学ぶ各研修で専門家集団の育成を目指す。

 特に下期からは、化粧品における「無添加」、健康食品における「体内効率」の説明を強化。例えば、化粧品では、スキンケアの密封容器や製造年月日記載の意味を、健食では「届ける(吸収性)」「留める(持続性)」など各商品で異なる商品設計のこだわりを説明する。

 昨年7月からは「一点おすすめ」と呼ぶ販促活動も開始。四半期ごとにお勧め商品を決め、ファンケル大学がDVDや商品知識のドリルなど教育ツールを作成。販促と同時に代表的な商品の知識を深め、説明を受けた顧客の2割ほどが購入に至っているという。


【店舗デザイン・陳列】
視覚的演出で"魅せる売場"へ

 あるファンケルの店舗。積極的に広告投資する健康食品「えんきん」が商品棚に6列展開されている。在庫数を薄くすれば、6~12品程度で陳列自体は成立する。だが、フック陳列された商品は、各列10品ある。在庫数が少ないと顧客が残りものであるかのように認識してしまうためだ。在庫数の厚さは"イチオシ"の商品であると顧客心理に働きかける。

 別の店舗では、ダイエット対応の健食「カロリミット」を6列展開するが、製造年月日の古いものほど右側に置かれている。統計上、顧客は右側にある商品から手に取るためだ。

 実際の例ではなく、あくまで陳列のテクニックを示した一例だが、店舗の視覚的な演出は時に顧客の購買行動を左右する。"魅せる売場"作りに向け、ファンケル、オルビスともに効果的な売場レイアウトの設計を強化している。

 ファンケルはこれまで、商品にあまり強弱をつけることなく陳列してきた。だが、陳列は商品を三角構成で配置する「トライアングル陳列」や、左右対象に配置する「シンメトリー陳列」などいくつかのテクニックがある。通販を中核事業としてきたファンケルはこれまで、店舗デザインやプロモーション、陳列方法で演出するVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)戦略の専門家がいなかった。このため、VMDの教育ツールを作成。年初にSV(スーパーバイザー)や店長など現場管理者に対する研修を初めて行った。

 また、現在、化粧品と健康食品の「ハイブリッド型店舗」への改装を進めているが、店舗デザインでは、化粧品は、上質感を演出し、健食は、男性客や高齢者の取り込みを意識。温かみのある木目素材などを使い、化粧品フロアにいる女性が気にならない店舗作りを意識している。

 一店舗を2フロアに仕切るため、陳列も従来4段だった什器を5段にしたり、棚陳列からフック陳列に変えるなどして効率化を図っている。

 
1-1.jpgオルビスは、これまで白を基調とした店舗で商品をきれいに陳列。価格も小さな字で表記するなど、1500円ほどの化粧水(「アクアフォースシリーズ」)が高級な商品であるかのように演出されていた。ただ、多少のカジュアルダウンを招いても敷居の高さをなくし、気軽に来店しやすい店構えを目指し、木目調を使った店舗デザインに変更。これまで30店舗の改装を終えており、年に20店の改装を予定している。

 プロモーションの面でも打ち出したい商品の強弱をつけ、什器の配置や顧客の回遊性を意識して導線を変えたことでリニューアル前後で、売り上げが3%増加している。





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