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広がる百貨店のウェブ活用

011.jpg 大手百貨店を中心にウェブやIT技術を駆使することで店頭での機会ロスを軽減したり、店の集客力アップにつなげるなどの取り組みが増えている。百貨店各社はリアル店舗とネット販売チャネルなどの境目がない"オムニチャネル化"の流れを再成長への足がかりとしたい考えだ。そのため、彼らが仕掛けるウェブ活用の取り組みは単なる店頭施策にとどまらず、消費者の買い物の仕方を大きく変える可能性も秘めており、通販会社だけでなく多くの小売り企業の注目を集めそうだ。


髙島屋、オンワードと組み〝タブレット接客〟

 高島屋はオンワードホールディングスと組んで、実店舗とネット販売チャネルを融合させるオムニチャネル戦略の共同プロジェクトに乗り出した。9月9日から高島屋に入るオンワードの主力婦人服ブランドのショップにタブレット端末を導入し、店頭で取り扱いのない商品や欠品している商品などについて同端末から高島屋のグループ会社が運営するファッション通販サイト「セレクトスクエア」経由で購入してもらう"タブレット接客"を始めた。

 リアル店舗はスペースの問題で品ぞろえや在庫点数に限りがあるため、豊富なEC用在庫を活用することで色やサイズ違いを含めた店頭欠品時の売り逃し防止につなげる。また、店頭では"鮮度"を重視して商品の入れ替えスピードが速いこともあり、いまは店頭に並んでいない商品でもタブレット接客ではコーディネートの1アイテムとして勧めることができるため、買い足しの需要も見込めるなど、品ぞろえと奥行きを補完できるツールとしてタブレットを活用する。

 従来であれば、消費者の欲しいアイテムが欠品している場合、他の店舗から取り寄せる必要があり、商品が届くまでに時間がかかることから、消費者の購入意欲をそいだり、他ブランドに流れてしまうケースもあった。タブレット経由で提案できればこうした売り逃しを防ぐことができるほか、顧客に再来店してもらわなくても送料無料で自宅に届けることで満足度も高まる。

012.jpg 今回の取り組みについては、通販サイト「セレクトスクエア」とオンワードの自社通販サイト「オンワード・クローゼット」が在庫連動していることで成り立っており、既存の仕組みを使うことで大きな投資が必要ないこともメリットだ。

 オンワードではタブレット接客を始めるのに当たり、販売員の評価制度を刷新。「セレクトスクエア」経由で商品を販売しても、販売スタッフの成果に反映できるようにした。また、店頭スタッフはタブレットの研修を社内で受けて接客に臨んでいるという。

 タブレット接客は今春から今夏にかけて一部の実店舗でトライアルを実施。顧客が以前購入して気に入ったパンツの色違いをもう1本購入するといったニーズも確認できたことなどから正式導入を決め、まずは9月9日から、高島屋新宿店と高島屋横浜店に入る「23区」と「組曲」「ICB」「自由区」「Jプレス」の婦人服主力5ブランドに導入し、来春をメドに他の高島屋店舗に拡大する計画だ。
カート落ちが課題

 一方、タブレット経由での購入時は「セレクトスクエア」に会員登録してもらう必要があり、消費者にとっても手間がかかることから、インセンティブとして1万円以上の購入で次回の買い物に利用できる高島屋のギフトカード500円分を付与している。

 ただ、現状では「セレクトスクエア」の認知度不足などもあり、同サイトへの会員登録はハードルとなっているようだ。事前に行ったテスト時にも、カートに入れたものの会員登録に尻込みするケースがあったようで、「今後は多くの利用者の声を反映させることで、よりスムーズに商品の提案から購入にまでつながればいい」(23区販売員)との意見もある。

 いまや、アパレル店頭でのタブレット利用は珍しくはなく、販売員に対して顧客自身が気になるアイテムをスマホ画面で示すケースも増えている。また、リアル店舗と通販サイトをうまく使って買い物をする消費者が増えていることからも、小売りとアパレルメーカーが協業した今回の取り組みは時代に合った接客スタイルとも言えそうで、「将来的には館に入っていないオンワードのブランドも含め、ブランドをまたいで商品を勧められれば面白い」(同)との声も上がっている。

松屋銀座、O2Oサービスの商品受取店に

013.jpg O2O(オンライン・ツー・オフライン)型のウェブサービス「tabモール」に商品の受け取り拠点として参画しているが松屋銀座だ。

 ベンチャー企業のtabが運営する「tabモール」は、普段は店頭にない商品も送料無料で小売店頭に取り寄せて、試着してから購入できる顧客視点のウェブサービス。気に入らなければ購入する必要はなく、面倒な返品作業の手間もかからない。

 百貨店などの実店舗は、取り扱いブランドや商品数を増やして売り上げ拡大を図りたいものの、物理的なスペースの制約などで簡単には増やせず、増やせたとしてもロングテールのアイテムを店頭で扱うことで在庫リスクが高まるという問題を抱えている。

 「tabモール」は売り場面積を増床することなく、ウェブ上に品ぞろえを広げられるほか、強みである"接客力"を生かせるのがメリットで、ウェブを通じた情報収集の手軽さとリアル店舗での買い物のメリットを融合させたビジネスモデルだ。

 松屋銀座では、昨年11月のサービス開始当初から参加。専用の受け取りカウンターを店内に設けるとともに、消費者が取り寄せた商品が合わなかった場合に備えてサイズ違いや似たアイテムなどを提案できるようにしており、消費者が納得して購入できるサービスとして一定の評価を得ているようだ。

 松屋銀座は、「tabモール」への参画を機に取り引きが始まったブランドのポップアップストアを開設して取り寄せサービスの認知拡大を図ったり、毎年、店頭で人気の福袋については年始の混雑を避けて年内に受け取れる抽選販売を同サービス内で実施するなど新しい買い物体験を提供してきている。

014.jpg 「tabモール」を通じた取り扱い商品についても、当初は試着ニーズの高い婦人靴を中心にスタートしたが、対象カテゴリーは婦人服や紳士服、子供服、リビング&キッチン用品などに広がってきており、現在は約100ブランド、約8万2000SKUを扱うなど、昨年11月時点に比べてそれぞれ約2倍に増えているという。

 9月9日には「tabモール」の多言語版で、中国人など訪日観光客をターゲットにした予約販売サービス「+81(プラス・エイトワン)モール」が始動。これに合わせて、松屋銀座では広告配信会社などと「+81モール」の運営会社に出資するとともに、9月30日に新設する訪日観光客専用エリア「ツーリスト ショップ アンド ラウンジ」内に「+81モール」の受け取りカウンターを設ける。

 また、「+81モール」のスタートに伴って、化粧品や洋菓子、子供用品、スーツケース、サプリメントなど訪日観光客のニーズが高い商品もモールのラインアップに加わっている。

 今後の課題は「tabモール」と「+81モール」の認知拡大だという。松屋銀座では、「tabモール」の開設時に東京メトロの銀座駅から店舗までの地下通路や店舗外壁のデジタルサイネージ、店内のポスターで新サービスを告知したり、メーンエントランスにはカウンターを設けて紹介し、買い物客にはチラシも配布したが、まだ多くの消費者には周知されていないことから、多言語版を含めた露出戦略が重要となりそうだ。

三越伊勢丹、人工知能アプリ使った接客開始

015.jpg 三越伊勢丹は、利用者の好みを学習するアプリ「SENSY(センシー)」を使った"人工知能接客サービス"を伊勢丹新宿本店で行う。同店が進めるデジタル戦略の一環として人工知能の活用に着手するもので、消費者に新しい購買体験を提供する。

 ベンチャー企業のカラフル・ボードが慶応義塾大学、千葉大学と共同開発した「SENSY」は、画面上に出てくるファッションアイテムについて"好き"か"嫌い"かを選んでいくと、人工知能が利用者のファッションセンスを学習するため、選べば選ぶほど自分の好みに合ったアイテムを見つけやすくなるという。アプリ上で紹介する商品は提携先の通販サイトに遷移してそのまま購入も可能だ。

 伊勢丹新宿本店では、各月のイベントに合わせて段階的に「SENSY」との取り組みを深めていく。8月26日~9月1日にはデジタルとファッションを融合した企画、イベントを実施し、「SENSY」についても紹介した。9月16日からは、店頭販売員が「SENSY」をインストールしたタブレット端末を持って実際の接客に当たる。メンズ館では男性ファッション誌「SENS(センス)」と、本館では女性ファッション誌「SPUR(シュプール)」とそれぞれタッグを組んだ連動企画を展開するという。

 また、「SENSY」は9月中に大幅バージョンアップを計画。コーディネート提案のアルゴリズムを実装するため、10月下旬には伊勢丹新宿本店でも商品単品だけでなく「SENSY」を介したコーディネート提案を行う予定だ。

 今後は音声機能も実装されるため、ヒト型ロボットやデジタルサイネージに「SENSY」をインストールすることで、来店客が人工知能に相談しながら商品を選ぶという新しい買い方ができるようになるのに加え、ファッション商材だけでなく、ライフスタイル全般の商品を勧めることもできるようになるという。

 一見すると販売員が常駐する売り場に人工知能の出番はないようにも思えるが、実際には常連客の好みは販売スタッフが熟知しているものの、新規客や外国人などへの接客は難しく、好みを把握するのに時間がかかることから、テクノロジーが販売員の技術を補完することは有効のようだ。





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