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〝通販力〟高める組織作りとは?

011.jpg 通販ビジネスでの成功条件は様々あるが、なかでも必須の条件となるのは"組織力"だ。知名度も資金もある有店舗小売業者やメーカーが行う通販事業がなかなか軌道に乗らないケースが少なくないのもこのあたりに理由がありそうだ。優秀な人材を引き抜いたり、優れた通販システムやツールを導入しても、それだけでは通販はうまく行かない。ある目標に向かって社員ひとりひとりがなすべきことを行い、それらが有機的に機能することで初めて成功が見えてくるはずだ。では、通販力を高めるための組織作りとはどのようなものなのか。組織作りに力を入れる通販各社の取り組みを見ていく。
花粉症で〝遠隔勤務〟導入

012.jpg オリジナルTシャツのネット販売事業などを手がけるスパイスライフは、2月から「リモートライフ」制度を導入して、社員の効率的な働き方を支援している。同制度は期間限定で東京の本社オフィスに通うことなく、社員が希望する遠隔地から業務に参加するというもの。エンジニアやデザイナー、企画ディレクターといった裁量労働型の社員が対象で、1年に1回(2週間程度)利用することができる。

 利用に当たっては上限10万円を交通費や宿泊費などの必要経費として会社が負担する仕組み。「開発合宿を行っているのでその延長線。開発効率の向上や個人・会社の成長、採用への好影響を考えると費用対効果が高い取り組みだと思う」(吉川保男社長)とする。

 同制度が始まったきっかけは、開発部の五十嵐邦明部長がこぼした花粉症の悩みだった。今年の春先は例年より花粉の飛散量が増える予測があったことから、飛散ピークの2~3月に仕事のパフォーマンスが落ちてしまうことを懸念し、花粉からの"疎開"を提案。それを受けて社員が万全な体調で仕事をできるようにと同制度が始まったという。実際に五十嵐部長は2月中の2週間を使って、花粉の飛散量が少ないとされる沖縄で宿泊施設を使いながら業務を実施。

 現地での業務は主にシステム開発(プログラミング)で、他の開発者との会議はビデオ会議(Google Hangouts)、チャットツール(Idobata)、情報共有ツール(esa.io)などを活用。毎日10分程度で、チームでの進捗報告やインタラクティブなコミュニケーションを必要に応じて行っていた。

 結果的に最初の1週間は東京勤務時の約2倍、2週目は約5倍のタスク量をこなすまで作業効率が向上。花粉症に悩まされずに済んだだけではなく、開発に集中できる環境に身を置けたことや、前述のツールを使ってコミュニケーションがリモートでも密に取れたことなどが大きな要因となったようだ。加えて休日は離島などに小旅行してリフレッシュできたことも影響したという。

ネット環境の活用が必須に

 職種などの問題から、すべての従業員を同制度の対象にすることは難しいものの、ネットに接続できる環境があって必要ツールでコミュニケーションをとることさえ出来れば、例え遠隔地であっても業務が可能なため同制度の導入ハードルはそこまで高くないという。同社では会議用のマイクを購入して多人数対応もできるようにするなど対策を図っている。

 同社では組織づくりを強化するために「職種に関係なく事業のビジョンを理解し、目標に向かってチームでパフォーマンスを出す」(吉川社長)ということを重視しており、花粉症のケースだけでなく育児中の社員にもリモート勤務のノウハウを取り入れるなど、様々な形で社員の力を引き出す工夫を図っている。

部門間の連携を加速

013.jpg 化粧品通販を行うハーバー研究所は、役割の見直しを行い、連携しやすい組織作りを進める。あわせて、情報をリアルタイムで共有できるようにし、ユーチューブを使った動画配信や、社内のシステムのクラウド化を進めている。

 同社はこれまで、各部門が独立して実務を行っていたため、1部門だけで行う施策についてはスピード感を持って実行できていた。一方で、組織的な相乗効果は弱く、部門間を連携した施策を行うには、部門間の調整が必要になっていた。

 また、通販の実務がそれぞれ独立していたことで、責任の所在があいまいになっていたことも課題のひとつだった。以前は新規客の獲得は「宣伝PR」の部門が行い、継続客の育成は「通信販売」の部門が手掛けていた。「宣伝PR」は目標の新規客獲得数を達成すれば良く、顧客の転換率には関心が低くなりがちだった。

 これまで同社の売り上げが伸び悩んでいた原因については、継続客の育成に課題があったとみられる。だが、組織が分かれていたことで問題の原因について、顧客層にあるのか、オファーの内容にあるのかを検証することが難しかったようだ。

 このため、まずは組織を見直し、「宣伝PR」の役割を、ブランドや企業価値を発信するコーポレートコミュニケーションに定めた。「通信販売」部門が新規客の獲得から継続客の育成までをトータルで行えるように再編成した。

 これにより、新規客獲得に対する評価基準が変更。ウェブ広告を中心に美容オイル「スクワラン」を1000円で訴求するキャンペーンを実施する中で、継続客の引き上げの効率を踏まえて出稿する媒体を判断できるようになった。

 組織の見直しの効果はすでに出ているもようで、今期の新規客獲得は好調に推移している。「出稿できる媒体が増え、効率が良いところが分かるようになった。これにより、良いメディアに広告費を絞ることが可能になり広告の効率化につながった」(末広栄二社長)という。

リアルタイムの情報共有へ


 これと同時に、ユーチューブの活用やシステムの見直しを進め、社内の情報共有スピードを加速している。末広社長は「スピード感のある施策の実行は、会社の事業成長の加速につながると考えている」と指摘している。

 ユーチューブでは社内セミナーや会議の動画を、配信する試みを開始した。新商品の説明や、スキンケアのセミナーの動画などをアップし、社員がいつでも閲覧できるように工夫している。また、会議の様子なども動画で配信し、全ての拠点で同時に方針を共有できるようにした。

 今後はコールセンターの基幹システムを刷新し、クラウド化を進める。コールセンターに寄せられた顧客の声を全社員でリアルタイムに共有することを目指したもの。

 これまでは、顧客の声が集約され共有化できるまでに一定の時間がかかっていたため、情報の鮮度落ちていたという。通販の担当者はオファーの設計やウェブの制作などを行っており、業務の中で顧客に直接触れないため、実店舗やコールセンターのスタッフとの意識のギャップが生じがちだった。

 顧客の声をリアルタイムで閲覧し、把握できれば、オファーやCRMを設計する通販部門のスタッフの顧客に対する意識改革につながると期待しているという。

店舗向けにパソコン講習会

014.jpg 全国に眼鏡チェーンを展開しているメガネスーパーは、ネット販売やウェブ関連の業務を行うメンバーによるパソコンの講習会を社内向けに行っている。

 受講するのはブロック長やエリアリーダー、店舗スタッフなど。もともとは実店舗のスタッフからエクセルなどパソコン操作を教えてほしいという声が挙がったのがきっかけだ。

 店やネットなどあらゆる売り場をつなぐ"オムニチャネル化"を進めている同社にとっては、店舗スタッフであってもパソコンやネットに馴れるということは重要になってくる。

 講習会を行っている同社EC・WEBグループの彦坂祐次シニアマネジャーも「ITは投資することができるが、それを広めるのは現場の人たち」という思いがあり、今年3月から有志による講習会が始まった。

 月に5~8回程度の頻度で実施し、20~30人が参加。ミーティングの後や、閉店後の夜間に実施することもある。パソコンやエクセルの操作、あるいはパワーポイントを使ったプレゼンの方法、メールの打ち方など基本的な操作方法を1時間半から2時間かけて学ぶ。教える側は普段のミーティング時や参加者の反応を見ながら、悩んでいるポイントを見つけて、実務に役立つスキルなどを伝授する。

講習会の前段で理由や狙い説明

 講習会では毎回、冒頭に話すことがある。同グループの川添隆ジェネラルマネジャーによると、「なぜEC担当の我々が講習会をやるのかを説明する。つまり店があってECがある。店が売れていくほど、ECも売り上げが上がる。お客様側がオムニチャネルを求めているので、当社でもそれをやろうと前段で話す」と説明する。

 オムニチャネルが普及していない理由として、パソコンを身近なものとして活用してこなかったことが一因になっていると指摘、参加者に対してパソコンをもっと活用していこうと訴える。そして少しずつ段階を踏み、パソコンやウェブ関連の様々なツールが使えるようになることを目指す。

 こうした講習会を続けて行うことで一定の成果も見えてきた。複数回参加しているメンバーには問題意識が芽生え、パソコンを使って「こういう風にしたい」「こういうものを作りたい」など具体的な要望や質問が増えた。また、ホームページ経由の来店客が多いということに気付いた店舗側から、コーポレートサイトへの改善要望が入るようにもなってきた。講習会を開くEC・WEBグループでは「店舗スタッフの感度が上がってきた」(彦坂氏)と取り組みに手応えを感じている。


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