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広がる日用品EC市場、需要増も競争激しく

 1-1.jpg日用品をネットで購入する消費者が増えている。ケンコーコムや爽快ドラッグといった既存事業者が売り上げを伸ばす一方、BtoCに進出したアスクルや実店舗が強い西友が勢力を拡大。集客力はダントツのアマゾンも強さを見せている。価格競争も激しくなっており、実店舗から徐々にではあるものの、シェアを奪いつつあるようだ。ただ、薄利多売になる上に求められるサービスレベルが高いことから、まだ「勝者」のいない分野でもある。今回は西友とケンコーコムの取り組みを中心に探った。

 西友では、ディー・エヌ・エー(DeNA)と協働で、2013年6月から「SEIYUドットコム」を運営している。同サイトでは、西友の店舗で商品をピッキングして発送する「ネットスーパー」と、配送センターから出荷する「SEIYU倉庫館」という2パターンの販売手法を用意。ネットスーパーは近隣の西友の店舗から配送するため、近隣に在住している消費者が対象だが、SEIYU倉庫館(宅配便)は全国配送に対応する。

 一昨年6月以降、売り上げや会員数は1・5倍に拡大した。ドットコム事業本部ディマンド・クリエーション・シニア・ダイレクターの野村佳史氏は、同サイトの強みについて「価格に対する信頼性が大きい」と話す。

 西友の特色は「エブリデー・ロープライス」。もともとは親会社である米ウォルマートが打ち出した戦略だが、セールを売りにするのではなく、顧客に対し「店舗にいつ来ても他店より安く商品を買える」安心感を与えるというもの。SEIYUドットコムでもこの戦略を進めており、「価格への信頼」がリピートにつながるという考えだ。

 ネットスーパーは税別5000円、宅配便は同1980円が送料無料ラインとなるが、これを超える価格の注文が多いという。「店舗で好評な施策はネットでも展開する」(野村氏)。例えば、生活必需品を安い価格で固定する「プライスロック」。近年、さまざまな製品が値上がりする中で、価格を維持するプライスロック商品が好調に推移。価格に敏感な消費者が増えたことから、店舗だけでなくネットでも良く売れており、対象品目は2割増の売り上げになっているという。

 オンラインでの価格は基本的に店舗のそれと同じ。野村氏は「店舗とネットでサービスに差があったら、消費者は不思議な気がするだろう。ドットコムを使っている人は西友店舗の顧客である可能性が高く、いつどこで買っても安いという信頼を築く必要がある」と語る。

 1-2.jpgネットスーパーの場合、送料無料となるラインがやや高いことから、購入点数は必然的に高くなる。そこで同社では、より効率的なピッキングを目指し、ウォルマートグループの英アズダが利用しているハンディターミナルを昨年末に導入。野村氏は「ハンディターミナルの導入により、ピッキング効率は20%以上上がった。ピッキングする人がベテランでも新人でも、効率面で平準化できている」とその効果を語る。

 また、同じくアズダが展開する、商品受け取り用のロッカーも設置した。建て替えのため一時閉鎖している「西友元町店」(長野県松本市)の駐車場に試験的に導入。近隣店舗から出荷した商品はロッカーに入れられ、指定した時間内に顧客が取りに来る仕組みだが、利用が順調に伸びていることから、他店への導入も進める計画。受け取りニーズの多様化にあわせてサービスを強化する方針だ。

 生鮮食品も買えるネットスーパーの方が利用は多いものの、全国どこからでも注文できる配送センター便のニーズも根強い。ただ、他社との競争も激しくなる。「生産性や効率を上げていきたい。また(対象地域の人には)あわせてネットスーパーも使ってもらうための工夫が必要だ。現在取り組んでいる最中だが、ネットスーパーの利便性や品揃えを周知していきたい」(野村氏)。

 4月には「auショッピングモール」に出店。宅配便のみの展開となるが、モバイルユーザーが85%を占める。ドットコム会員は西友の店舗近隣在住者が多いのに対し、au店はこうした偏りがない。「売り上げは想定通りだが、モール主導のセールに合わせて伸びるのが特徴」(同)。特に、西友のプライベートブランド商品が良く売れているという。

 今後の課題はサイトのさらなる知名度向上。店舗での露出度をさらに高めていく。野村氏は「西友ユーザーの中にもサイトを知らない人は多い。使ったことのある人からは『すごく便利』という声をたくさんいただいており、西友ユーザーをもっと取り込んでいくとともに、サイトの利便性を高めていきたい」と話す。



 1-3.jpgケンコーコムでは、仮想モール「楽天市場」内で、日用品や食品の売れ筋商品を扱う「楽天24」を出店している。もともとは、親会社の楽天が、楽天市場に出店する複数店舗の商品をまとめて販売するサイトだったが、去年1月から現在の販売形態に変わっている。

 2015年3月期の同事業売上高は、30億1300万円。ケンコーコムとの物流・システム統合を受け、取扱商品数の拡充を進めたことなどが奏功。当初目標としていた100億円は大きく下回ったものの、期中に下方修正した目標値である30億円は上回った。

 事業を担当する、ケンコーコム執行役員の笈沼清紀リテール事業本部長は、昨今の日用品EC市場について「マーケットは拡大しているが、価格競争が激しくなっており、『品揃えが豊富』なだけでは厳しい。もっと差別化し、『アマゾンではなく当社サイトで買ってもらう』ためにアピールしないといけない」と語る。

 とはいえ、「単純なシェア争いよりも、まずは収益性を維持することが大事」(笈沼事業本部長)。同社の場合、楽天24やケンコーコムの自社通販サイト、さらには仮想モールの店舗といった「リテール事業」以外にも、自社サイトで取引先メーカー・卸の商品広告掲載などを行うメディア事業や小売事業者向けにECの機能を提供するドロップシップ事業なども展開、収益性を高めていくための体制を整えている。笈沼本部長は「例えば薬剤師を揃えているのは大きな資産だし、バイヤーもかなりの人数を抱えており、他サイトにはない売れ筋商品を見つけてくる力もある。安売りするだけにはならないようにしたい」と話す。

 楽天24の大きな特徴として挙げられるのが、楽天市場トップからの流入やモール内検索からの流入が多いこと。また、楽天が手掛ける他事業と連携できることも大きな強みとなる。

 価格戦略に関しては「売れ筋商品については競合の価格はかなり意識しているが、収益性が問題になる」(笈沼本部長)。「楽天スーパーセール」などの大型キャンペーンを実施している際は、売れ筋商品の比率が高くなることから、「強気な価格を設定しないといけない」(同)。ただ、キャンペーン時以外は適正価格で販売するようにしているという。価格比較については「市場内の他店と比較をしているのは確実だが、他サイトと比較をしているかどうかは分からない。ただ、楽天は20~30代女性が多いため、ロハコなどとは顧客層がやや異なるのではないか」(笈沼本部長)。

 また、笈沼本部長によれば、ケンコーコム本サイトと楽天24の顧客層や売れている商品の構成は異なるという。「今後は両サイトの差別化をさらに進めていくことが必要。本サイトについては、当社ならではの医薬品にフォーカスしたり、既存客に対するプロモーションを強化したりしていく必要がある。自前でサイトを構えているからこそできるプロモの自由度は、本サイトの方がずっと高い」(笈沼本部長)。売れ筋に絞った楽天24以外にも複数サイトを構えている強みを活かしながら、早期のリテール事業黒字化につなげる。


1-4.jpg【勝ち抜くためのポイントは?】
「配送強化もカギ」


 日用品を販売する、主要な5サイトで販売するソフトドリンクや水、日用品、食品の価格を調べたのが右の表だ。サイトごとに注力している商品が異なるため、これだけでは「どのサイトが安い」ということはできないが、価格競争が激しくなっているのは間違いない。最近は、ヨドバシカメラも飲料品や日用品の販売を開始。ポイントを10%付与しているのが大きな特徴だ。

 ただ日用品の場合、実店舗で購入する人がまだ多数を占める。価格面でも、ドラッグストアやディスカウントストアなどで、ナショナルブランドの2Lペットボトルのお茶が100円で売っているようなケースもあるわけで、競争相手は「実店舗」とみることもできる。

 DeNAでは近年、西友やサンドラッグといった企業と共同で通販サイトを運営することで、日用品ECを強化している。自社が取り組む通販としても、食品や日用品などを販売する通販サイト「エブリマート」を運営していたが、今年4月にサービスを終了した。

 EC事業本部オンライングロッサリー事業部の久我剛人事業部長は「今後大きく売り上げを伸ばしていくことを考えた際に、収益性を保つのが厳しかった」と閉鎖の理由を説明する。同サイトは仮想モール「DeNAショッピング」に出店する店舗の売れ筋商品を集め、DeNAが販売者となっていた。安さをコンセプトにしていたものの、「他サイトより2円安くした程度では集客が難しかった。かといって、さらなる値引きを日常的に行うのは厳しい」(久我事業部長)。

 水や米といった重量のある商品をまとめて買う場合、ネットは実店舗に対するアドバンテージがある。ただ、重い商品を買う際は別途手数料が必要なサイトがあったり、あるいは配送までの日時がかかったりすることもある。薄利の商品にも関わらず、価格面でどう対抗するかだけではなく、サービス面やサイトの使い勝手にも気を配る必要がある。

 ヨドバシカメラや楽天が注文から短時間で届けるサービスを開始するなど、「リアルから市場を奪う」ためのサービス合戦が続きそうだ。

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