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「アウトバウンド規制」 消費者委〝失笑〟事件が波紋、自民党部会で「規制反対」噴出

013.jpg 特定商取引法改正議論を巡り、規制強化の流れにあった「アウトバウンド規制」の風向きが変わりつつある。ことの発端は、6月の消費者委員会で起こった読売新聞東京本社社長に対する"失笑事件"。社長をバカにされた同社が即日抗議し、大きな騒動に発展しているからだ。消費者委とマスコミの対立は、自民党内の議論にまで飛び火し、「過剰規制反対」の一色に染まりつつある。訪販の「不招請勧誘」規制を巡るものだが、「アウトバウンド規制」にも影響を及ぼしそうだ。

突っ伏して笑う消費者委の委員

 7月2日の自民党「内閣部会・消費者問題調査会合同部会」(以下、部会)。ヒアリングに招かれた読売新聞東京本社の山口寿一社長(日本新聞協会理事)がスクリーンを使って流した動画には、特商法改正議論の消費者委会合に参考人として招かれた山口社長の発言を受け、机に突っ伏して笑う委員の姿が大写しにされた。

 「ヤジを飛ばすことはあるが、参考人の答弁に失笑することはない。非常に不快」「(消費者委の)任期ありきの議論は承服できない」。部会の参加議員からはこうした意見が相次ぎ、同席した消費者委の担当者が袋叩きにあった。まず、経緯を振り返りたい。

アウトバウンド規制にも影響

011.jpg 特商法の改正議論は3月、消費者委「特定商取引法専門調査会」(以下、調査会)で始まった。「特商法の執行強化」「虚偽・誇大広告への(契約の)取消権導入」などいくつかある争点の一つが、「不招請勧誘規制の強化」だ。

 対象は、訪問販売と電話勧誘販売。ともに消費者トラブルが多く(=表)、各業態への規制議論は、互いに影響し合う。

 また、電話勧誘は「1年以内に2回以上の購入がない顧客」に対する電話も含まれる。つまり、通販でも新規のサンプル購入者や休眠顧客に対する「アウトバウンド」はこれにあたり、規制を受けることになる。

 議論は、現状の「商品単位の規制(再勧誘の禁止)」維持を含め、「事業者単位の規制」「全面禁止」など規制の強度を5段階で検討する(本紙1514号既報)。そこで当事者を招いて議論を行うべく、6月10日の調査会に参考人として招いたのが山口社長だった。

「笑わないでください」


 事件は、消費者トラブルが多い訪販で、最も相談が多い「新聞」の再勧誘禁止に関する発言を巡って起きた。

 山口社長「(新聞)勧誘の現場ではさまざまな接触のやり方があって、断られたけれどもやはり取っていただくことも現実には多々あるんですね」

 石戸谷豊消費者委員会委員長代理「(笑いながら)今の話はあれですか?断わってもその意思を尊重していただけないわけですか?」

 山口社長「そうではなくて、断られ方もさまざまあって(一部委員笑い)、まぁ、笑わないでくださいね。まじめに話しているんですからね。明確な拒否があればまた違うと思いますよ。何か色々と笑われていますけど、当方としてまじめな商品を地道にやっているという風に思っていますので、ぜひ笑わないで聞いていただきたい」。

012.jpg 笑った方にも理由はある。現行法は、「再勧誘の禁止」を規定。断られた場合、相当期間、勧誘してはならない。にもかかわらず、山口社長自ら、再勧誘が行われていると受け取られるような発言をしたためだ。

 ただ、本来の真意は別にある。消費者の意思表示にも「考えておく」など明確な拒否と感じ取れないものもあり、これを「断られ方もさまざま」と表現したわけだ。

 だが、委員の態度に怒った山口社長は後日、山口俊一内閣府特命担当大臣、板東久美子消費者庁長官、河上正二消費者委員会委員長宛てに抗議書を送付。さらに、菅義偉官房長官にもことの顛末をしたためた書面を送り、「消費者委員会、消費者行政の公正性に今後、疑義をもたれることのないよう、適切な対応をお願いします」と言いつけたのだ。これを受けて、6月24日開催の調査会で河上委員長が釈明、山口社長にも回答書を送る事態に発展している。

自民党部会も「非常に不快」

 ただ騒動はまだこれで収まらない。それが冒頭の自民党部会だ。消費者庁や消費者委に検討状況を聞き、事業者8団体にヒアリングを行ったが、"失笑事件"を受け、参加議員からは「消費者、事業者の意見をきちんと聞くべき」「実態を精査し、健全な事業者が苦しむ過度な規制に反対」「悪質業者と一緒くたの規制は問題」など、訪販の不招請勧誘規制に反対する声が続出したのだ。

 当初、改正議論は消費者委メンバーが任期満了を迎えるため、8月の取りまとめが濃厚との見方が多かった。が、消費者委は"中間取りまとめような形になるのではないか"と、8月以降の継続議論を示唆。任期満了に伴い、消費者委メンバーも入れ替わることになる。

消費者不在の議論が招いた事態

 確かに、参考人として招へいした人物の発言を馬鹿にするのはマナー違反といえ、山口社長の気持ちも理解できる。だが、議論と直接関係ない官房長官にまで言いつけるのは解せない。そもそも訪販における「新聞勧誘」は過去5年苦情相談が1万件前後で高止まりの傾向にあるのは事実。14年度は、26%が「強引」な勧誘に分類されてもいる。実際、過去にしつこい勧誘を受けた記憶のある人も少なくないだろう。

 ただ、消費者委にも油断があったのではないか。「結論ありき」で議論を急いだのは、複数の業界関係者が指摘するところ。規制の必要性を示す膨大な根拠を背景に、緊張感に欠ける態度で議論に臨んだことが招いた失笑といえる。部会に出席した関係者は「(一連の騒動に)中身は何もない」と感想を漏らすが、つまるところ、互いに消費者を置き去りにし、真摯に議論に向き合わなかったわけだ。

 今回の騒動は、電話勧誘販売の不招請勧誘規制、いわゆる「アウトバウンド規制」にも影響する可能性がある。というのも、訪販の規制強化にこれほど反対意見が噴出しているにもかかわらず、電話勧誘のみ規制強化に踏み切るのは、トラブル数やその態様から著しくバランスを欠くためだ。

                               ◇

 7月7日、消費者委の後に行われた会見で、河上委員長は部会の要望に「あくまで(自民党)内部の議論で、それ以上に対応することは考えていない。消費者委は独立して審議する機関として淡々と職責を果たす」と話し、事態は収束したとの見方を示した。読売新聞は部会で河上氏の回答書に不満を漏らしていたが、再回答の必要性にも言及していない。

 だが、特商法改正案の成立過程で党のスタンスを議論する部会の影響力は小さくない。騒動を受けて消費者委の委員が萎縮するかもしれないし、日本通信販売協会が求める「1回でも購入のある顧客」を規制の適用除外にするなど、事業者の意見に耳を傾ける必要も出てくる。身から出た錆とはいえ、自らのつまらぬ驕りが消費者不在の議論を招き、当初描いたシナリオを狂わせつつある。(関連記事はこちら

〝失笑〟事件当事者の主張、「結論ありき」の姿勢に疑念

"失笑事件"を巡る関係者の主張は以下の通り。(一部抜粋)

日本新聞協会が6月22日付で山口俊一内閣府特命担当大臣あてに送った抗議書の内容

 「消費者委員会特定商取引法専門調査会の審議、議事運営に対し、強く抗議いたします」

 「消費者委員会は、消費者問題について、消費者だけでなく事業者からも幅広く情報を収集し、調査・審議を行い、意見表明することを本来の目的としています。(略)しかし、当日のヒアリングは、当協会出席者の発言中、座長や座長代理を含む複数の委員が何度も声を上げて笑うなど、説明を中断せざるを得ない事態が発生しました」

 「専門調査会の要請で出席したにもかかわらず(略)新聞販売の現状を丁寧に説明しようとする当協会の姿勢を侮辱する態度でした。不謹慎極まりないものであり、委員の一部は、特商法という行政処分や刑事罰を伴う重要法の見直しを審議しているという自覚、責任感を欠いており、消費者委員会に不信感を抱かざるを得ません。(略)消費者保護と健全な事業者の営業の自由を両立させるバランスのとれた議論を強く要望いたします」


河上正二消費者委員会委員長が山口寿一読売新聞東京本社社長あてに送った6月22日付回答書
 「ご発言中に笑い声が上がったと確認できたのは、(略)2回でございました(注・読売新聞は都合6回と部会で指摘)」

 「ご発言の前には、日本新聞協会販売委員会委員長(毎日新聞東京本社販売局長)の寺島則夫様から『一度営業に行きまして、もう来ないでねというところは販売店のほうで営業禁止ということで行かない』とのご発言があり、再勧誘の禁止を徹底する趣旨を明確にされたのに対し、山口様のご発言は、寺島様のご発言とは矛盾しているかのように受け止められたため、笑い声が上がったということと思われます」

 「しかしながら、引き続いて、山口様が『そのときは、考えておくという反応、これを先ほど断られたと、つまり契約に至らなかったということで言った』として、ご発言の真意を詳細に補足いただきましたため、各委員もそのご発言に真剣に耳を傾けておられたものと承知しております」

 「また、後藤巻則座長は、『笑っているということは全然ありません』と明言し、(略)公正な議事運営に努めておられたと考えております。(略)一部の委員の挙動もご指摘をいただきましたが、殊更に悪意をもったものではないと思われますが、ご不快な思いを与えたことは、大変申し訳なく存じます」


抗議や消費者委の議事運営に関する見解を聞いた本紙質問書に対する読売新聞グループ本社広報部の回答(7月6日付)。
 「民間事業者の代表を招いて真摯に意見を聞く場なのに、委員たちは、招かれた側の発言を馬鹿にするかのように笑い声を上げており、委員たちはヒアリングで各種業界の実情を知りたいわけではなく、最初から特定商取引法の規制を強化しようと『結論ありき』の姿勢で臨んでいるのではないか、との疑念を抱かざるを得ません。そんな委員たちに任せていて本当に公正で適正な審議が担保できるのか、政府としてきちんと考えてほしいとの認識から、(略)抗議書を送付しました」

 「ヒアリングは、新聞業界をはじめ7つの業界の代表が同時に招かれ、議論が詰め込みすぎになりました。これも初めから『結論ありき』『スケジュールありき』なのではないかと疑わざるを得ない理由です。(略)今後、政府、特に消費者委員会においては、7月2日の自民党内閣部会・消費者問題調査会合同部会の議論等も踏まえ、幅広い国民の意見を真摯にお聞きいただき、適切かつ賢明な対応を取られることを望んでいます」



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