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「機能性表示食品」販売始まる 新制度で市場は拡大するか?

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6月からいよいよ「機能性表示食品」の販売が始まる。制度が始まって2か月、目立つのは消費者団体による制度不備の指摘やネガティブな報道ばかりだが、制度の要諦は、企業が自ら"機能表示"できる新制度の導入が、産業の活性に寄与するか否かだ。「目」や「関節」「肌」など、身体の部位に言及できる製品の登場を中心に、市場は様変わりすることが予想される。新制度により市場は拡大するのか。複数の業界関係者の見方を踏まえ、市場形成に影響を及ぼすポイントを追った。

1号案件、アサヒ除く全社が発売

 6月2日時点の届出は、206件に上る。消費者庁はこれまで27製品を受理。第1号案件は、4月に受理された7社8製品だが、アサヒフードアンドヘルスケアが「未定(当初は1日に予定)」とした以外、全社が販売を始める。

 キユーピーは、12日から「ヒアロモイスチャー240」を通販で展開。キリングループは「パーフェクトフリー」を16日、「食事の生茶」を23日に店販で展開する。同じタイミングでCMも投下する。ファンケルも「えんきん」と「健脂サポート」を19日に発売。「えんきん」は今期の重点強化製品と位置付けており、年間12億円の広告宣伝費を投下。前年比70%増の売り上げを目指す。ライオンも予定通り、30日から「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」を新製品に切り替える。

 安全性問題が浮上するのはリコムの「蹴脂粒」だが、「9月から自社通販で検討する」(同社)。

「目」「関節」「肌」部位表示に注目

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 27製品のうち、注目度が高いのは、やはりこれまで健康食品では認められなかった「身体の部位」を表示した製品だ。中でも、業界関係者を驚かせたのは、「関節」訴求で受理されたキューサイ。評価が分かれる点はあるものの、「製品の臨床試験に1億円はかかったはず」「疾病との境界が難しいカテゴリでよく受理された」といった声が聞かれる。ほかにもキユーピーとアサヒフードアンドヘルスケアが「肌」に言及。トクホでは、資生堂の「素肌ウォーター」が肌訴求で審査中だが、これに先駆けて"肌の保湿"をうたう製品が生まれた。

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 「目」に対する機能をうたうのは4社。ファンケルの「えんきん」(画像㊤、左が旧製品)、「(複数成分で)目のピント調節機能や肩の負担に言及できるのは、この制度ならでは」「パッケージのイラストがユニーク」という評価。八幡物産の「めばえ」(画像㊦、左が旧製品)は中堅通販のチャレンジを評価する声が聞かれるほか、パッケージには「受理された成分以外強調できないため、訴求力がどう変わるか」という声がある。

 新制度で可能な表示は、健康の維持・増進の範囲。肌の保湿、目の健康など疾病領域から遠いものなら表現しやすい。一方、グルコサミンやコンドロイチンで知られる「関節」は変形性膝関節症、ノコギリヤシでイメージされる「頻尿」は前立腺肥大症など疾病との境界域の線引きが難しい。それだけに、キューサイの製品が注目されるが、これら製品に市場はどう反応するか。

新制度の表示は訴求力を生む?

 米国は機能性表示が可能になった94年以降、20年で市場が4倍(約3兆円超)に拡大、成人の半数以上が利用する。ただ、日本も市場規模はすでに1兆8000億円(トクホを含む)、利用経験は6割と成熟しつつある。とはいえ、届出に向けた各社の熱気から「拡大する」との見方が大勢。新制度の下で生まれた表現が訴求力を生むか、一つのポイントは、表示の分かりやすさだ。

 例えば、ライオンの「―ラクトフェリン」。「BMIの改善に役立つ」という表示だが、「ダイエットを気にしている人の中に潜在的に『BMI』を意識する人がいれば、トクホにない表示ができているため面白いが、"BMIが高いから数値を下げよう"と、体重的な見方をするかどうか」との見方がある。

 八幡物産の「めばえ」は「黄斑部の色素量を維持し、ブルーライトの刺激から保護、コントラスト感度の改善で目の調子を整える...」という表示だが「非常に難解」という評価も。届出の苦労が窺えるが、訴求力のある表現を生み出すにはひと工夫必要か。森下仁丹のビフィーナシリーズは「腸内フローラを良好にし、便通を改善」。最近、メディアが盛んに取り上げる腸内フローラが消費者に浸透しているかがカギになりそうだ。

 ただ、新制度が従来のトクホや健食と違うのは、機能性や安全性情報をガラス張りで見せる必要が根本にあること。「制度の背景には消費者に正しく情報を伝えるため、さまざまな留意点がある。そうなるとトクホ以上の情報量を見せる必要がある」との指摘にあるように、市場の健全発展には、適切な情報提供を踏まえた上で、分かりやすさを追求する必要がある。

 また、トクホとの棲み分けの問題もある。すでにトクホ領域の商品が複数存在するが、「トクホでないこれら製品を消費者がどう受け止めるか気になる」、「"トクホまがい"のものもある。国の許可制度と、かたや自己責任の制度だが、その差が分からなくなっている」など、トクホ市場との網引きも顕在化。ほかに受理件数の少なさからドラッグストアではコーナーを設けることができないといった課題、中小企業の活用が少ないなどの課題も市場形成に影響を及ぼす。

グラフや体験談企業判断割れる

 一番のネックは"広告"の問題だ。「機能性表示食品」の広告を巡っては、広告の自主ルールもなく、業界8団体で構成する健康産業協議会が策定に着手したばかり。一方、考査を行う媒体社では、大手5紙のうち、回答を得た日本経済新聞社が「(新制度に応じた基準を)検討しており、(トクホの広告自主基準の)準用も検討」、朝日新聞社が「対応を検討中だが具体的内容は公表を控える」。判断が定まらない中で、複数の企業が「(日本健康・栄養食品協会の)『特定保健用食品適正広告自主基準』を準用する」との考えを示す。届出段階にある製品を含め、多くの企業が先行して広告制作に取り組むが、従来の広告から大幅な変更を行わないなど慎重は判断が少なくない。

 難しいのは、例えば「試験データ(グラフ)」の扱い。健食では機能をイメージさせる試験データは景品表示法や薬事法に抵触する恐れがあった。トクホの自主基準では「条件付きで可」。15~30秒の短尺CMでは使用を差し控えるべきと定められている。素直に理解すれば「機能性表示食品」で使用は可能だが、どの程度許されるか線引きがあいまいなため、使う企業と判断が分かれる。背景には、制度開始以降、消費者団体やメディアによる厳しい指摘が相次いでいることも影響しているようだ。

 ニーズが高いのは、「機能性表示食品」自体を強調する広告。消費者庁に"正式に"受理された機能性表示食品です、といったものだ。事実ではあるものの、"厳しい基準をクリアして"など、あまり強調がすぎると「国のお墨付き」との誤認につながるため注意が必要だ。似たものでは、「日本で初めて受理された」といった表現。1号案件でなければうたえないが、「『○○系機能性表示食品(で)』などとカテゴリを作れば行える」といった判断もある。今後は、体験談も受理された範囲内で健食より表現できる幅が広がるとみられる。ただ、「BMIが改善」「内臓脂肪を減らす」など一部の指標の改善をもって「体重が下がる」をイメージさせるなど拡大解釈するような表現は今後も厳しく取り締まられることになる。
 制度開始以降、消費者団体の指摘やネガティブな報道ばかりが目立つ。だが、必要なのは市場が2兆円に迫る中、消費者の商品選択に資する制度の確立に向けた建設的な議論。機能のある食品をいかに扱うか、その入口に立っている。

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届出製品「安全性問題」の行方は?

新制度の導入で市場の活性化が期待される一方、連日、報道を賑わせているのは、安全性問題だ。リコムの「蹴脂粒」は、同様の成分を含むトクホ申請製品に食品安全委員会(食安委)が「安全性を評価できない」と報告したことから、騒動が広がった。消費者庁は今後、消費者委員会での審査を受けて受理の是非を判断することになる。リコムは届出の取り下げなど指導を受けた場合の対応は「まだ分からない」とするが、9月には発売の予定。「制度に沿った形で安全性試験を行っており、自ら取り下げる考えはない。トクホと異なる制度であり、トクホ審査が影響するなら、届出製品すべてトクホと同様、食安委の審査を通さなければならない」(同)と主張する。
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 過去にトクホ申請が却下されたものはほかにもある。例えば、富士化学工業は過去にアスタキサンチンのトクホが却下されており、現在、「機能性表示食品」で届出を行っている。ただ、当時、問題になったのは「剤形」。「機能性、安全性に問題はなかった」(同社)として、別問題との認識だ。

 キユーピーも過去にヒアルロン酸でトクホ申請しているが、「機能性の根拠」が認められなかった。今回、同様の製品で届出が受理されおり、ネットメディアがこの点を指摘しているが、「トクホは生活習慣病に罹患、もしくは境界線上の方を対象にしており、『肌の乾燥緩和』は生活習慣病ではないためトクホとしてはマッチせず、認可されなかったと考えている」とする。

 リコムは、ネガティブな報道を受けて週刊新潮(6月11日号)に広告掲載するなどしているが、「(食安委の報告を見て)作用機序の問題はやはり危ないという印象」など、やはり安全性に係る問題は業界内からも厳しい指摘が多い。
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 トクホとの相克に関わる問題以外では、キューサイの「ひざサポートコラーゲン」に対し、消費者団体が疑義情報を公表している。論文を掲載する学術誌が査読なしであることなどを指摘したものだ。この点に対する見解は、「査読はあるとの理解」(同社)と平行線。もう一つ、機能性評価に使った論文の被験者が病者ではないかという指摘が業界内からある。

 届出資料を見ると、被験者(※)は「膝関節に痛みはあるが整形外科等で治療を受けていない」「『ケルグレン・ローレンス(K―L)分類』でグレードⅠ~Ⅱの治療が必要ないと専門医が判断したもの」となっている。「K―L分類」とは、膝関節の状態を示す度合いで、グレードが高いほど症状が重い。これに「グレードⅡであれば軽く膝関節の変形が起こっている。かつ痛みがあるとなるとうちなら病者と判断。医師の判断で病者でないとしているが、今度、届出を行う上でどこまで被験者として認められるか左右する問題であるため注目している」「上手くやっているという見方もできるが判断は微妙。行政の判断を注視したい」といった声がある。

 キューサイは「制度上、被験者として扱える範囲であると考えている」とする。ただ、当初、6月20日に発売を予定していたが、これは「現段階で未定」とする。

 ※新制度における製品の臨床試験で、被験者は原則、疾病に罹患していない者から選定する。広くコンセンサスが得られた診断基準がある場合は、これに基づき判断。基準がない場合は、"医師の判断"でよいとされている。ただし、具体的なスクリーニング方法を示すなど条件がある。(被験者に対する考え方のうち一部を抜粋)






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