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"越境EC"で世界をめざせ

 1-1.jpg「越境EC」で海外に打って出る企業が増えている。日本にいながら、リスクを少なく世界中に商品をネット販売するというものだが、物流、決済、顧客対応など海外販売での様々な問題点をクリアしながら、世界各地の消費者を開拓している。例えば日本カルチャー愛好家向けのサイト運営やきめ細かい顧客対応で規模を伸ばす企業のほか、実店舗を絡めた取り組みも出てきている。EC専業大手らも中国をにらんだ戦略の強化に動いている。活気づく越境ECの現状について見ていく。

寿司1万貫、海をわたる

 「僕らが思っている以上に海外の人たちはいろいろなものに興味を持っていて、その瞬間に買える場所があるのが大事」。

 外国人向けに日本のアニメやゲームのキャラクターグッズなどを取り扱う自社サイト「オタクモード・ドットコム」を運営するトーキョーオタクモードの共同創業者で執行役員の秋山卓哉氏はこう話す。

 1-4.jpg例えば、同社で販売している寿司の形をした靴下「スシ・ソックス」。最初は見た目のユニークさから世界各国のメディアやブロガーが注目し、雑誌、ウェブサイト、料理専門のケーブル番組などで取りあげられた。結果、クチコミで広がり注文がどんどん入った。会員制のオーガニック食品を販売しているスイスの会社がロイヤルカスタマーにクリスマスギフトとして贈りたいからと大量の注文が入ることもあった。

 同社でも想定外の状況で、昨年8月に発売してこれまでに累計で5000足は売れているという。秋山氏は「1万貫の寿司が海をわたった」と笑う。
 
 こうしたヒット商品にも恵まれ同社の売り上げは右肩上がりに拡大。昨年12月の年末商戦では月商で過去最高の1億円近くまで売り上げた。


買いやすい場所がなかった

 トーキョーオタクモードは主にフェイスブック(FB)ページを活用して日本のポップカルチャーの情報を発信している。FBページでは1700万「いいね!」を獲得。そのうち99%以上が外国人で、ユーザーが若いのも特徴。

 集まるユーザーは日本のオタク文化の愛好家が多い。しかしFB経由で商品情報について発信しても「リアルでもネットでも海外のユーザーが買いやすい場所がなかった」(秋山氏)という。

 もちろん「アマゾン」や「イーベイ」といった売り場はあったが、限定品が手に入らなかったり、CtoC向けだと本物の保証がない。正規品の販売であっても海外対応をしておらず日本語で書かれているためわからないなど、海外のユーザーが気軽に買えなかった。「そこを解決すれば、よりファンに喜ばれるのではないか」(同)。こうして2013年夏にECをスタートした。

 最初のうちは商材が集まらず苦戦したものの、徐々に品ぞろえを増やし、今では予約商品なども含めSKUで2万弱程度を扱う。商品単価は100円~60万円と幅広い。平均購入単価は約7000円で、日々購入者が増えている。

 購入先は米国・カナダ・オーストラリア・フランスなど欧米圏が多い。ちなみにFBページのファン層はインドネシア、フィリピン、インド、マレーシアなどアジアが多いのに対して、ECでは完全にGDPの高い先進国がメーンとなっている。


海外向け発送作業を内製化

 トーキョーオタクモードの越境ECでは梱包にも気を配っている。

 パッケージには自社のロゴを入れたオリジナルの段ボールを使い、商品は日本の新聞紙で包む。こうした作業は同社が千葉県内に借りている倉庫で行っているが、2月に倉庫を移転したタイミングで物流業務を内製化した。
 
 というのも海外向けの発送では、長い距離を移動するので段ボールなどの資材も強度が必要になるといった具合に、独自のノウハウが必要になるためだ。配送手段はEMSを利用しており、出荷実績では100カ国を超えているという。

 サイトの翻訳チームは7、8人の体制で、全員が外国人。アメリカ人が多く、イギリス人もいる。各自が現地に住みながら翻訳をしている。

 越境ECについて秋山氏は「モノが届かないなど日本の常識では考えられないことも起こる」としながらも、「可能性はある」と語る。


中国人スタッフがきめ細かく対応

 「夢は北海道のものを世界へ売ること」。

 山ト小笠原商店が運営する「北海道お土産探検隊」は、楽天の「ショップ・オブ・ザ・イヤー2014」海外販売部門で大賞を受賞した。

 同社は2012年に楽天の海外販売ページを活用して越境ECを開始。初年度の月商は20万円、年商300万円程度だった。

 その後中国人スタッフを採用し、メールなどの問い合わせに対応する体制を整えていく。13年に年商3000万円。14年には年間の売上高が1億円になった。「白い恋人」など日本と同じ定番商品が売り上げの半分程度を占めているという。

 顧客の7割は中国から。あとは米国・台湾・香港の順だという。今は中国人スタッフ3人を起用し、中国語・英語・日本語できめ細かく顧客対応を行っている。

 同社の小笠原航社長によると、配送や問い合わせ対応など、越境ECに取り組む前は不安な面もあったが、トラブルは少ないとする。「越境ECはマーケットが大きい。まだまだ売れる」(小笠原氏)と今後も強化を進めていく。


外国人来店客に帰国後も購入を

 東京・御徒町に紫色のビルがそびえたつ。ディスカウントストア「多慶屋」の店舗だ。年間43万人の観光客が海外から来店する。国で見ると圧倒的に中国が多く、ほかにもタイや台湾などアジア圏が多い。店舗を運営する多慶屋では今年2月から、こうした訪日外国人向けに帰国後のリピート購入につなげる取り組みを行っている。

 同社は以前から「お客様に『多慶屋』で継続的に買い物してもらうような環境を作らなければと考えていた」(ネット通販部)という。そこで海外向け転送サービスを行う転送コムが提供する代理購入サービス「バイイー」と連携し、「バイイー」内に越境ECサイトを作成した。

 1-2.jpgそれに合わせて店舗では外国人の顧客が免税手続きをする際にチラシ(㊨画像)を渡す。チラシには英語と中国で、自国でも商品が買えることが記されており、専用サイトのURLとQRコードが記されている。このように「多慶屋」の実店舗で商品を購入した訪日外国人が帰国してからも引き続き購入できるように導線を作った。


 「バイイー」内の店舗では手数料(価格の10%)を加えた金額で販売。決済や海外への配送、カスタマーサポートについては転送コムが対応する。多慶屋は受注があれば、国内の転送コムの倉庫に商品を配送するだけ。


 多慶屋では「海外の知らないお店よりは、実際に買ってきたお店であれば、安心感からお買い求めいただける可能性は高いのではないか」(ネット通販部)と期待を寄せている。





中国向け日用品EC、課題は物流コスト

 越境ECを考える上で、最も有望な市場のひとつが中国。現地で法制度が整備されるなど越境ECを行うための事業環境が整いつつある中、爽快ドラッグでは4月初旬に、中国の越境仮想モール「天猫国際(ティーモールグローバル)」に「爽快官方海外旗艦店」を開設し、日用品や健康食品、化粧品などの中国消費者向けの越境ECを開始する。

 展開に当たっては、親会社の住友商事が11年に上海市に設立した現地ネット販売事業会社・住商電子商務と連携。住商電子商務は、「品店(ピンディエン)」のブランド名で自社通販サイトを運営するほか、仮想モールの「天猫(ティーモール)」などに出店し、日用品のネット販売を行っており、爽快ドラッグの中国向け越境ECでは、住友電子商務が顧客対応や商品情報の中国語翻訳、返品対応、サイト運営を担当。「ティーモール」での集客方法や商品の見せ方、顧客対応など住商電子商務が持つノウハウを活用できるのが強みだ。

 開設当初の「爽快官方海外旗艦店」の取扱商品数は約500品目。受注商品は事前に一括輸出し、中国の保税区倉庫に在庫したものを発送するほか、爽快ドラッグがEMSを使い日本から発送する仕組みで、メーカーに対し、事前に商品を越境ECで扱うことを確認するほか、越境ECの販売実績と国内ECの販売実績を分けて提供するなど、取引先との関係作りにも注力する。

 爽快ドラッグがこのタイミングで中国向け越境ECに乗り出すのは、個人輸入物品の税率の明確化や越境EC向け自由貿易試験区の拡大など、現地の環境整備が進んだため。特に「保税倉庫を使った個人輸入の仕組みができた」(小森紀昭社長)ことが大きいとする。また、訪日中国人観光客が日本で購入した商品のリピート需要での越境EC利用が見込め、越境EC仮想モールの新設の動きが出始めていることも大きな要因だ。

 爽快ドラッグでは、「爽快官方海外旗艦店」の売上高について初年度数億円、次年度で20億円を計画。今後、他の越境EC仮想モールにも出店していく考え。「今後、価格競争が進むと思うが、その時に、どれだけの物量を動かし、効率化が図れているかが勝負。コストコントロール力で利益が出せると思う」(同)とする。

 1-3.jpg一方、ケンコーコムでは、13年9月、「ティーモールグローバル」に「kenko海外旗艦店」(㊨画像)を出店し、日用品や化粧品などの中国向け越境ECを開始。約200品目でスタートした取扱商品は、現在では700~800品目で、主要客層は30~40代の女性。売上高の詳細は公表していないが、順調に成長しているようだ。

 商品の販売動向としては、紙おむつなど一部の人気商品に注文が集中する傾向があり、全体の1割程度の商品で売り上げの半分程度を作るイメージ。また、日本の場合、ロングテールの品ぞろえで顧客が買いに来るのを待つプル型のスタイルだが、中国では、「広告出稿やメールの配信など、プッシュをしないと売りづらい」(植田厚副社長)という。中国は売れるものが売れる市場。そのため、ロングテールの発想はなく、現段階では、商品数を増やすにしても売筋の1000~2000品目程度とみているようだ。

 中国向け越境ECの展開拡大に向けケンコーコムがポイントとみているのは、やはり物流コスト。取扱商材の特性もあり「物量を回し、物流のコストコントロールができなければなかなか利益は出ない」(同)とする。

 また、現状、中国向けの越境ECは「ティーモールグローバル」がメーンだが、新たに越境ECの仮想モールが出てくる中、今後、複数の越境EC仮想モールに出店し、各モールの顧客にきちんと商品を届けるという流れが進めば、仮想モールに複数出店してきた日本でのノウハウを活かせるとみている。

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