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夢展望 健康コーポの子会社に、円安の影響で債務超過の危機に

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夢展望は3月31日付で、健康コーポレーションの連結子会社になる。売り上げの不振を背景にした在庫超過と円安による原価率の高騰が重なり、上場からわずか1年半で債務超過の危機に陥っていた。夢展望がこれまで構築していたビジネスモデルと健康コーポレーションの傘下入りした経緯を踏まえて、再建の行方をみていく

第三者割当で7億円を調達

 夢展望は3月31日に、健康コーポレーションを引受先とする第三者割当増資を行う。390万株を発行し、7億4800万円を取得。これにより健康コーポレーションは夢展望株式の73・54%を保有し筆頭株主になる。岡社長の持ち株比率は10・11%となり、第2位株主になる。

 買収後も岡社長は続投し、健康コーポレーションから2人の社外取締役を受け入れる。「経営責任を業績回復で果たすべきと考えている」(夢展望)とした。手取概算額の6億9900万円の資金のうち、2億600万円を人件費や管理経費、商品仕入れなどの運転資金に充当。広告費に1億8800万円を充てるほか、短期借入先の返済に2億円、リストラなど経営の合理化に伴う損失を想定し1億500万円を確保する。

業績悪化で債務超過の恐れも

 夢展望が健康コーポレーションの傘下に入らざるを得なかったのは債務超過に陥る恐れもあったためだ。2014年9月期決算で自己資本比率が9・9%まで低下し、純資産は2億3000万円まで落ち込んでいた。15年9月期は増収と黒字転換を見込んでいたものの、第1四半期は引き続き売り上げが低迷。すでに金融機関からは14年3月に6億円の資金調達を行っていたこともあり、これ以上の融資は期待できない状態だった。

 また、同社が12年3月に結んだシンジケートローンの財務制限条項には「2期連続して連結で経常損失としないこと」などの条件があった。2期連続の経常赤字を計上する見込みとなり、このままでは債務不履行で一括返済を求められる危機的状態にあったわけだ。

 資金繰りがひっ迫する中で、同社では銀行以外からの資金調達手法を模索。財務状況や下落し続ける株価などを考慮すると、公募増資や社債発行も難しいことから第三者割当増資に絞った。昨年8月から10月にかけて、SMBC日興証券から20社程度の引受先候補先を紹介されたが、具体的な条件面の提示があったのは健康コーポレーションだけだったという。

円安で価格転嫁顧客離れ招く?

 資金繰りがひっ迫し市場価格より低い価格で買収されることになった夢展望だが、そうした状況に至った背景とは何か。

 同社は製造小売型ファストファッションをネット専業で展開する事業モデルを展開。3週間程度で商品開発を行い、新商品を毎週投入していた。在庫を薄く持ち、価格とデザイン性による衝動買いを促し短期間で商品を売り切ることで安値販売でも利益を確保してきた。このため、販売予測と実績を管理するシステムを自前で構築。最適なタイミングで発注や値引き販売を行い、商品の回転率を高めてきた。業績のピークにあたる13年9月期の売上高は9・1%増の67億6400万円、営業利益は3・6%増の1億6700万円。すでに損益分岐点を超えており、収益の安定化を実現していた。

 商品回転率の高さを強みとしたビジネスモデルによる低価格帯と品ぞろえの良さでギャル向けブランドとして一定の認知を得ていた同社の業績悪化した理由とは何だったのだろうか。

 1つには、円安の対応に遅れ。靴カテゴリーを中心に、現地工場との直接取引で仕入れを行っていたため、円安の影響で4割のコスト増が発生。この分を吸収できず価格に転嫁していた。低価格帯を強みにする同社にとって、優位性が低くなり顧客の離脱を招いてようだ。

 トレンドの変化もあった。これまで、ヒットの実績を持つロングブーツは取り扱いを定番化し在庫を積み上げていたが、流行がショートブーツへ変化。トレンドと品ぞろえのかい離が起こり、過剰在庫となっていたようだ。売り上げの伸長を視野に入れて積み上げていた在庫はセール販売や値引き率を引き下げるなど対応を強化。ただ、円安の進行によるコスト増を避けられない状況下において、売上総利益率の低下が経営を圧迫する要因になっていた。

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イメージ固定で新客獲得に苦戦

 新規顧客の獲得の苦戦も響いた。雑誌の廃刊などで20代のギャル層が減少する中、「ギャル向け低価格アパレルブランド」としての認知度の高さが"足かせ"になっていた(画像は2012年当時の通販サイト)。

 多様化する顧客のし好に合わせたカジュアル衣料品やナチュラル衣料品などのアイテムを投入していたが、消費者にとっては「ギャル向け」のイメージが強く、認知と品ぞろえにギャップが生じていた。このため、スマホをメーンとするウェブ広告の効率が悪化しており、顧客の流入が減少。1回の購入で1人あたりの獲得コストを回収できす、また、購買頻度を向上することも困難だった。

 ターゲットの拡大を図るため、昨年4月から、ギャルを卒業した層の獲得を狙った30代向けOLと、将来の主要顧客となる小学生向けアパレルなど新規ブランドを相次いで投入していた。これらは主要顧客の「ギャル層」との年齢が大きく外れるなど親和性が低く新規客の開拓に苦戦。期間限定で実店舗を展開していたが、外資系カジュアルブランドとの競争の中で、品質面での消費者の理解を得ることが難しかった。初動となる春夏アイテムの販売が苦戦し、昨年秋に取り扱いの休止を決定している。

リストラなどで経営を再建へ

 健康コーポレーションの傘下入りに向け、人件費などのコスト削減に乗り出す。3月末までの6カ月間で役員報酬を61%削減し、前年同期比2500万円を削減。加えて、3月31日を退職日とするリストラを社員50人を対象に行い、社員数を80~90人規模とする。

 また、倉庫面積の見直しを図り、月額350万円を削減。これまで、在庫過多のため商品保管庫以外の別倉庫を構えていたが在庫圧縮で倉庫を解約し、倉庫面積を拡張せずに仕入れを行う。また、東京に構える事業所を廃止し、月額200万円程度のコストを見直す。

 当座の資金は調達したが、「中国で生産して安値で販売する」という事業モデルそのものにほころびが生じているだけに、根本的な問題は解決していない。まずはMDの変革がカギになりそうだが、デザイナーの人数も減らさざるをえないだけに短期間での立て直しには困難が伴いそうだ。

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健康コーポ、買収の狙いは?

近年、積極的に買収戦略を仕掛けている健康コーポレーション。12日に公表した中期経営計画では、2017年3月期の連結売上高1000億円、21年3月期の連結売上高3000億円という高い目標を掲げている。今回の買収にはどんな目算があるのだろうか。

 健康コーポレーションでは、12年にマタニティーウエア通販の老舗であるエンジェリーベを買収(画像はエンジェリーベの通販サイト)。さらに13年8月には婦人服メーカーの馬里邑を、14年5月には若年女性向けファッションブランドを展開するアンティローザを子会社化しており、近年はアパレル事業を強化している。ただ、馬里邑とアンティローザは実店舗がメーンだけに、夢展望の買収でアパレル通販事業が大きく拡大することになる。

 今回の子会社化で、シンジケートローンの一括返済は回避できる見通し。健康コーポレーショングループの商材を夢展望160万人の会員へ販売していくことが期待できるほか、夢展望のブランドイメージを刷新するための広告も展開していく。健康コーポレーションといえば、トレーニングジム「ライザップ」におけるインフォマーシャルや車内広告といった大規模な宣伝が近年目立っているが、こうしたマス広告を夢展望でも実施することで、「ギャル向け通販」のイメージ一新を狙う。具体的には「春頃から始めたい」(夢展望)という。

 また、夢展望の持つネット販売関連ノウハウを健康コーポレーションに提供する。具体的には「サイト構築ノウハウや、海外向け通販サイト運営ノウハウを活用していきたい」(健康コーポレーション)という。さらに、夢展望は、通販売上高のうちスマートフォン経由が85%を占めており、スマホ対応に強みがあることから、「ライザップ会員向けサービスや、見込み客向けにスマホ経由でアプローチすることを考えている」(同)。ライザップでは、スマホ経由の問い合わせが急増しており、健康コーポレーションは、ライザップのスマホ経由売り上げ・集客を1年以内に2倍以上に成長させる計画だ。

 問題は、夢展望をどのように立て直していくのかだ。ある業界関係者は「健康コーポレーションは名簿が欲しかったのだろう。夢展望の顧客層の年齢も上がってきており、グループの商品を提案しやすい」と推測する。

 健康コーポレーションでは「(社長は変わらないが)当社の議決権比率は73%を超えており、経営に深く関与する。グループとして一体化を目指し取り組んでいきたい」と立て直し策を説明。ただ、12年に買収したエンジェリーベの場合、子会社化当初は坂本敏彦氏が社長を続投していたものの、業績不振が続き、現在はスタイライフ創業者である岩本眞二氏が社長を務めている。場合によっては早期のトップ交代もありえそうだ。
 上場から1年半で債務超過寸前まで追い込まれた夢展望に対し、業界からは厳しい声も出ている。ある通販会社の社長は「銀行経由で増資の話は来たが、長期に渡って存続できるビジネスモデルとは思えないので断った」と明かす。その上で「そもそも上場したこと自体が間違いで、マーケットを欺いているように感じる。あたかもうまくいっているかのようなスタンドプレーをして、無理やり上場したのではないのか。非常に後味が悪い」と手厳しい。

 確かに、「上場ゴール(上場することが目的)」と投資家から不信感を抱かれても仕方のない面はある。上場からわずか2カ月で業績を下方修正。13年9月期決算説明会で公表した中期経営計画では、新ブランド投入で16年9月期には売上高130億円を目指すとしたが、現状とのかい離は大きい。若年女性向けが行き詰まる中で顧客層拡大を狙ったわけだが、円安の進展や増税後の消費減退、競争激化などの予測はついたはずで、マルチブランド化による単純な売り上げ積み増しは見通しが甘すぎた感がある。

 安売りネット販売企業の弱点をさらけ出した今回の事態。「低価格帯商品はわずかな値上げが客離れを招く」(先の関係者)だけに、円安や原材料高が続いていることを考えると、再建への道のりは険しい。


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