Home > 特集企画 > オルビス  「ポイント制度」を導入へ、"価格依存"から脱却へ

オルビス  「ポイント制度」を導入へ、"価格依存"から脱却へ

1-1.jpg 「一つのオルビス」から「一人ひとりのオルビス」へ──。オルビスが、顧客との関係性の再構築に乗り出す。今年9月、通販事業では初めてポイント制度(新販促制度)を導入。これまで購入金額に応じた「即時割」をベースとしてきたが、ポイント制度では顧客のロイヤリティに応じた「ステージアップ制」を軸にした。狙いは、顧客との"つながり方"を変えること。ブランド再構築の新たなステージに入ったオルビスの動向を追う。


「価格」以外の価値で結びつく

 「お客様との"つながり方"を変えたかった。『価格』以外の価値で結びついていくべきだと考えた」。オルビスの岩永利文取締役は、今回の制度刷新の狙いをこう話す。
 
 オルビスが2007年以降、段階的に取り組んできたブランド再構築の柱は2つある。1つは「商品価値の向上」、もう1つは「コミュニケーション変革」だ。
 
 1-2.jpg「商品価値の向上」では今年2月、これを象徴する新スキンケア「ORBIS=U(オルビスユー)」(右画像)を発売した。"肌に優しい"だけのイメージからの脱却を図り、より機能感、効果感を追求。11月末時点で、スキンケアシリーズでトップシェアを誇るブランドに成長している。
 
 また、価格戦略の見直しも行った。数年前から新商品の「割引価格表示」を止めていたが、今回の新販促制度と同時に既存商品も「割引価格表示」を止めた。そして「コミュニケーション変革」の要として導入したのが、新販促制度だ。


「即時割」から「ステージ制」に


 これまで、オルビスでは購入金額に応じた割引率を適用する「ボリュームディスカウント(即時割)」を中心に運用していた。税込5400円以上の購入で「10%」、税込1万800円以上の購入で「20%」をその場で割り引くものだ。ほかに、商品ごとの施策として「割引価格表示」や、キャンペーン時には「商品券」の提供も行っていた。

 今回、あらゆる販促施策を"ポイント"という一つの概念に整理。将来的には、すでにポイント制度を運用する店舗との連携も視野に入れる。

 新販促制度(=上表)では、税込5400円以上の1回の購入金額に応じて、次回購入から使えるポイントが10~25%の範囲で付与される。
 
 この「基本還元率」に加え、さらに直近1年間の累計購入金額に応じてポイント還元率が1~5%プラスされる「ステージアップ制」も導入した。例えば1回の注文が税込2万1600円を越え、年間購入金額が5万円を越える会員であれば、30%のポイント還元が受けられる仕組みだ。
 
 また、これまで顧客に明示していなかった5つの販促施策を「特典ポイント」として明示した。
 
 このうち、誕生日月に1000ポイントをプレゼントする「お誕生日月ポイント」と、年1回ポイント還元率が5%アップする月を顧客自身が設定できる「特典月ポイント」は、新たに導入したもの。ほかに「割引価格表示」に似た施策として"ポイントプラス"マークのついた商品を購入すると、その商品ごとに設定したポイントがもらえる「ポイントプラス」などがある。
 
 新販促制度に対する不安を払しょくする狙いから、制度は従来の割引率を下回らないように設定している。一方、「ステージアップ制」の各ステージは、さまざまなラインで顧客の購買行動をテスト。購入点数や購入回数が1~2回増えることで達成でき、ステージアップに動く顧客が多いラインに設定した。


顧客との多様な"つながり"に対応

 新販促制度の狙いは、コミュニケーションの多様化を実現し、顧客との関係性を再構築することにある。

 オルビスではこれまで、年間累計金額や継続年数、購入商品、購入のタイミングや消費サイクル、取引状況、顧客ごとの利益率など数十項目に渡る多様な軸で顧客をセグメントしていた。「化粧品」や「食品・サプリメント」「ボディウェア」など事業ごとにセグメントの数はざっと100グループ以上。販促施策ごとにセグメントに使う軸を変え、例えば、新規客や休眠顧客限定で商品の特別セットを提案したり、欠品で商品を買えなかった顧客に対して再販予告を行うなどしてきた。

 顧客のロイヤリティは、1~3カ月の消費サイクルの商品が多いため、基本的に「半期(6カ月)」の取引状況を見つつ、年間の継続率や購入金額、利益率、販促施策実施から注文までの期間など「貢献度」で分析。ただ、単に売り上げ貢献度の高さだけでなく、例えば"値引きの時しか買わない"といった取引状況の顧客の場合は、購入金額が高くてもロイヤリティは低いと判断するケースもあった。「友達紹介の有無」や「紹介人数」「アンケート回答率」といった軸もロイヤリティを判断する上では重要な指標となっていた。ただ、こうした分析を顧客が知ることはなかった。

 「ステージアップ制」の導入でその一部を公開することにより、企業としての"意志"を明確にし、1to1の取り組みをさらに進めていく。


営業利益率、中期に3~5%増


 「特典ポイント」にも"つながり"の変革を意識した考えは反映されている。

 例えば、新たに導入した「誕生日月」や「特典月」。これには年2回、顧客が自律的に購入する月を定めてもらうことで、顧客の側からオルビスに向いてもらう機会を増やし、継続性を高める狙いがある。

 「ポイントプラス」も個別商品ごとにポイント還元する意味では、実質的に従来の「割引価格表示」と言えなくもない。だが、違うのは、ポイントプラスで得たポイントはほかの商品にも使えること。商品ごとの直接的な割引きを止めることで顧客から見た商品価値の見え方を変えていく。

 新販促制度への移行に伴い開示した「特典ポイント」はごく一部。「例えばある商品を愛用されるお客様だけに『ポイントプラス』を展開したり、将来的に、一人ひとりのお客様を見ながら、販促施策を変えていく」(岩永取締役)とする。

 「即時割」を止めたことで「ポイント還元」のコストは販促費に含まれ、業績は一見、売り上げが押し上げられることになる。ただ、その上でオルビスでは営業利益率でも中期に3~5%の向上を目指す。導入以降、1、2年は制度定着に向けたマーケティング投資を行うが、将来的にロイヤリティの高い顧客へのケアを厚くし、従来のような顧客との均一な関係構築から変化させることを志向するためだ。年間平均購入単価も5%以上高めることを目指す。



 新販促制度の導入から3カ月。顧客からは「分かりにくい」「複雑になった」といった声が一部で寄せられている。割引施策など、これまで"価格"に魅力を感じていた顧客からは「定価で購入してくださいということですね」という辛辣な声もあるという。

 痛みを伴う改革を乗り越え、価格に依存しがちなつながりから脱却できるか。顧客との新たな関係構築に乗り出すオルビスの取り組みが注目される。



【各社の囲い込み策の動向は?】

 「1to1」は、多くの通販企業が認識する概念だが、これを可能にするにはシステムや人材へのさまざまな投資が必要になる。オルビスの「ステージアップ制」を軸とするポイント制度もこれを具現化し、顧客との多様なコミュニケーションを実現する手段の一つだ。

 オルビスの販促施策の基本は自立性。単に購入を促すオファーを展開するのではなく、商品価値やサイクルに合わせた推奨提案で、顧客と「価格」ではなく「商品(ブランド)価値」で結びつくことを志向する。目指す顧客との関係構築のため、制度も独自の考えで設計されている。

 例えば、還元率。最高ランクの「プラチナ」と「ゴールド」は、ほかのランクに比べ還元率に開きがある。ほかのランクは平均追加1品(1回)の購入が目安だが、「プラチナ」の達成には、追加2品(2回)の購入が必要になる顧客が少なくないという。年間平均購入単価は、非公表だが2万5000円以下。これを越える「ゴールド」の顧客にとっても「プラチナ」は高いハードルになる。

 これも、より強固な関係を望む顧客に対し、還元率で差別化し、さらなるオファー施策の展開に努めることで、企業と顧客が互いに良い関係を築くことを目指すためだ。



 オルビスに限らず、通販大手によるコミュニケーションの改革は相次いでいる。健康食品ではあるが、ファンケルヘルスサイエンスでは今年9月、全商品を対象に定期購入サービス「健康・得楽便」を導入した。「まとめ買い割引」をはじめ都度購入を中心とした販売戦略を転換し、単品訴求、定期サービスで囲い込みを進める競合に対抗する。

 これまで青汁など一部商品のみで導入していた定期サービスは、ボーナスポイントが対象外になるなど、「まとめ買い」とどちらが得か分かりづらかった。「健康・得楽便」は、まとめ買いより高い割引率で提供。「ポイント倍増」など、販促施策、ポイント制度も対象にすることで"最も利便性が高く、分かりやすいサービス"として提案する。

 定期サービスを導入する企業は、投資回収を念頭に複数回の継続が必要になるなど一定の"縛り"を設けることが多いが、定期利用の心理的ハードルを下げるため、「休止・解約」や「配送サイクル」の自由度も充実させた。



 化粧品で定期サービスを展開する企業は少ないが、継続利用による肌トラブルの解決を目的に展開するドクターシーラボも9月に「定期トクトク便」としてサービス内容を変えた。

 これまでは肌の調子に合わせて商品変更できるほか、全商品20%割引、1~3カ月の配送サイクルや日時指定できる内容だった。これに加え、「定期購入毎」「年4回」「3回の配送毎」にポイントを付与する特典や、「定期会員限定グッズ」とポイント交換できるサービス、会報誌で行うプレゼントキャンペーンにも自動的に対象として組み込まれるようにした。

 これまで「3カ月毎」の配送サイクルを選ぶ顧客とのコミュニケーションが希薄になりがちだったが、新たに発刊する定期顧客向け冊子「定期便だより」で新商品やリニューアル情報、季節性や肌悩みに応じた商品ラインアップの提案を行うほか、定期顧客限定イベントの実施など、よりサービスを厚くして接点を増やしていく。



 競争が激化する中、ここ数年売り上げが頭打ちとなっていた大手も継続性を念頭に顧客との関係強化に動き始めている。

 ただ、これら販促施策は顧客の購買行動に大きく影響し、企業側の意図もより明確に顧客に伝わりやすい。販促に偏重すれば、顧客とのつながり方を変える諸刃の剣ともなる。

Trackbacks:0

TrackBack URL for this entry
http://www.tsuhanshinbun.com/mtos-admin/mt-tb.cgi/2776
Listed below are links to weblogs that reference
オルビス  「ポイント制度」を導入へ、"価格依存"から脱却へ from 通販新聞

Home > 特集企画 > オルビス  「ポイント制度」を導入へ、"価格依存"から脱却へ

Amazon出品サービス
Search
Feeds

△ ページtopへ