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「使ってもらう」工夫がカギ、アプリユーザーを通販誘導

011.jpg スマートフォンでの買い物が当たり前になった昨今、専用のアプリをリリースしているネット販売企業も多い。しかし、多様なアプリがある中で、ユーザーにとって「買い物アプリ」の優先度は高くないのが実情ではないか。今回は「使ってもらう」「アンインストールされない」ためのさまざまな工夫を施しながら、ネット販売への導線を探るアプリを紹介する。いずれもネット販売を主目的としたアプリではないが、「集客」や「アクティブ率向上」へのヒントが見えてくるかもしれない。

東急ハンズアプリ、店頭で〝ブックマーク〟

012.jpg 東急ハンズでは11月25日、同社のハンズクラブカード会員向けの新しいアプリとして、「東急ハンズアプリ」の提供を開始する予定だ。ポイント管理など、これまでの会員カードに代わる機能だけではなく、同社の店頭で気になる商品をバーコードでスキャンして「ほしいものリスト」に入れ、後日通販サイトから購入できる機能や、店舗在庫の確認、アプリで店舗の商品を「取り置き」できる機能などを設けた。

 アプリのコンセプトの一つは「オムニチャネル購買のサポート」だ。同社の長谷川秀樹執行役員オムニチャネル推進部長は「3つの顧客の購買行動をサポートしたい」と話す。まず、1つ目は「パソコンやスマートフォンなどで取り置きをして、後日店舗で購入する」というもの。実は、店舗にかかってくる問い合わせのうち、70%程度は「目当ての商品の在庫があったら取り置いてほしい」というものだという。これを解決するわけだ。

 2つ目が「うけたまわり機能」。これは、行った店舗で扱いのない商品を取り寄せるというもの。長谷川執行役員は「問屋や他店からの取り寄せなど、今までは店員がアナログでやっていた部分をテクノロジーで代用するということ」と説明する。

 3つ目は「"一目ぼれ"をサポート」。店舗で「いいな」と思ったとしても、その場で買わないというのは良くあるケースだが、それをカバーする。つまり、ネット販売に良くある「欲しい商品のブックマーク機能」を店舗でも実装したというわけだ。

 長谷川執行役員は「家電量販店などが、バーコードをスキャンして検索し、他店と価格比較する機能を持つアプリを出しているが、それとはコンセプトが違う」と話す。店頭でブックマークしても、ハンズの通販サイトから買わず、より安い価格の競合サイトで買われてしまうケースも考えられる。

 東急ハンズは基本的には値引き販売をしていないこともあり、「『買い物をする際に価格が最優先』という消費者は、そもそもあまりハンズには来ないのではないか」(長谷川執行役員)。目当ての商品を見るために、電車賃や時間をかけてハンズに来るくらいなら、最初からネットで検索した方が手間はかからない。「(ブックマークした商品が他社で買われてしまうケースは)ゼロではないだろうが、まず自社の会員を大事にする必要があると思っている」。

 アプリにはGPS機能がついているので、店舗の近辺に来た際にクーポンを発行することも可能。また、購入金額や来店頻度、年齢などによる、顧客の細かいセグメント分けに基づいた販促ついては「今後の課題」(長谷川執行役員)だ。

 長谷川執行役員は「買い物スタイルを変えていく足がかりにしたい」と意気込む。店舗での利用が前提のため、来店頻度の高い人にとっては便利なアプリだが、悩みは「どれだけ使ってもらえるか」ということ。

 「起動してもらうための"クセづけ"をした方がいいのだろう。例えばコンテンツを配信するやり方もあるが、小売りのやるべきことなのかという気もする」。プッシュ機能によるセール通知やクーポン配信なども「マス的なものではなく、自分に合ったものを配信する」(同)ことが「アプリを消されない」ために重要となりそうだ。

ヴィニカ、定期購入で〝活性化〟

013.jpg 価格比較サイト大手のカカクコムは10月8日、ワインの写真を投稿するだけで銘柄情報が自動登録されるアプリ「Vinica(ヴィニカ)」において、コーヒーと輸入食品の店「カルディコーヒーファーム」を運営するキャメル珈琲と提携し、ワイン2本セット(税別5000円)を届ける定期購入サービスを開始した。

 ヴィニカのスタートは2013年2月。同社の主力事業は価格比較サイト「価格.com」だが、パソコンや家電といった耐久財の情報については強みを有するものの、衣料品や食品などの消費財は耐久財ほどの強さはない。管理本部財務経理部長兼企画室長の中島花絵氏は「消費財はまだまだ伸ばせるはずで、これまでとは違ったアプローチの事業を立ち上げることで成長の一助としたいと考えた」と振り返る。

014.jpg ワインのラベルを撮影するだけで銘柄が表示されるアプリとしては、すでに「Vivino」というデンマーク製のアプリが存在するが、比較するとコミュニティー機能を強化しているのがヴィニカの特徴だ。ラベルだけではなく、ボトル全体や料理など、ワインを楽しむ空間そのものが写真として多数掲載されており、「ワインを介したユーザー同士の交流」がやりやすくなっている。

 現在のユーザーは約3万1000人で最近は急成長。今年に入ってからは、ユーザー同士が実際に会ってワインを楽しむ「オフ会」が開催されており、ヴィニカ主催のものやユーザー主催のものも含め、最近では毎週開催されているような状況で、中島部長も良く参加するという。

 定期購入について、中島部長は「当初からアイデアの一つとしてはあったが、自分が全国のワイン好きと会えてすごく楽しかったことがサービス実現の動機になっている」と説明する。オフ会では皆が同じワインを飲むことで交流が生まれるわけだが、ワインを販売すればオンラインでも同じことができるのではないか。ヴィニカで生まれた、ユーザー同士の交流をさらに活性化するための手段が定期購入サービス、というわけだ。

 ワインの定期販売を手掛ける会社に話を持ち込んだものの、共同事業で利益をシェアする形になることや、ユーザー層の違いもあり、色よい返事は得られなかった。転機は中島部長がオフ会で、ヴィニカのヘビーユーザーであるキャメル珈琲の社員と会ったこと。アプリ内でユーザー同士がワインでつながることの意義を理解してもらい、商品提供が決まったという。 ただ、10月末現在ではまだ申し込みは少ない。申し込み用のページに遷移するための導線が分かりにくいことも原因となっており、今後は他のユーザーが投稿した写真が表示される、アプリのフィードに情報を表示させることも考えている。

 特設ページから月末までに申し込むと、翌月10日前後にワインが届けられる。中島部長は「ワインの品質は高いし、サービスが始まれば、『このワインにはこんな料理やグラスが合う』といった話題がヴィニカで盛り上がるはずで、そうなれば申し込みが増えるのではないか」と期待する。

ハッカドール、〝おすすめ〟機能強化へ

015.jpg ディー・エヌ・エー(DeNA)は8月、アニメや漫画、ライトノベルといった"オタク向けコンテンツ"に関する情報に特化したアプリ「ハッカドール」をリリースした。ユーザーの好みに合わせて学習し、配信する情報を出し分けるのが特徴で、公式の美少女キャラクター「ハッカドール」も用意。ダウンロード数が数十万に達するなど、人気アプリとなっている。

 漫画やアニメ、ライトノベルが大好きという開発者のビジネス開発統括部メディアディベロップメント部の岩朝暁彦シニアプロデューサーは「私自身は漫画やアニメにすごく詳しいという自負があるが、オタクでも皆がそういうわけじゃないし『隠れオタ』もいる。そういう人たちに『この作品が好きならこれもおすすめ』などと教えてあげられれば世界が広がるんじゃないか」と開発の動機を語る。ユーザーにマッチングした情報を届けるメディアは「これまでリーチできなかった消費者」の取り込みにつながり、コンテンツ提供側にもメリットが出てくる。

<1面写真5.jpg ニュースの配信は1日3回。フィードに表示されるニュースは、ニュースサイトやブログ、まとめサイトなどをクロールし、アプリ側が取捨選択する。記事の開封率などをもとに学習し、次第に好みにあうものが配信されるようになる。

 アプリにはキュレーションによる情報配信だけではなく、登録したキーワードに関する記事を配信する「ウォッチリスト」があり、キーワードに関連した商品も表示される。商品ページから、提携サイトの「TSUTAYAオンラインショッピング」に遷移する。

 岩朝氏は「漫画やアニメに関する記事を読み、そのまま関連商品が買えたらすごく便利。アプリとしてレコメンドする形を実現できたら」と話す。現状はニュースがメーンであり、ウォッチリストからの購入はほとんどないという。フィードに商品をたくさん表示させるやり方は「アフィリエイトブログみたいで反感を買いそう」というが、例えばユーザーの好みを分析してハッカドールたちが漫画をおすすめするなど、理想は「友達が勧める」というようなイメージのレコメンドだ。

 ただ「一般的な併売分析を使ったレコメンドはちょっと違うじゃないかと」(岩朝氏)。ある漫画の最新刊を購入した人に、既刊や同じ作者の各作品をおすすめしてもあまり意味がないのでは――というわけだ。もちろんユーザーの趣味嗜好にあわせたレコメンドは必要になるわけで、岩朝氏は「例えば、アニメ業界を描いたアニメ『SHIROBAKO』が好きな人には、出版業界が舞台の漫画『重版出来!』を勧めるようなイメージ」と話す。

 通販への誘導と外部からの広告出稿がマネタイズの柱となるが「プライオリティーは高くない。ユーザーにとって必要な情報や体験を提供することが最優先」(同)という。レコメンドについても、ユーザーに合った商品を勧めることでアプリ名の由来(渉る)と同じく「捗った」と感じてもらうのが目的だ。岩朝氏は「規模拡大は大事だが、『正しいユーザー』をつかむことはもっと重要。ユーザーの大半が漫画を読まない人だったら意味がない。ウェブサービスだとKPIを気にしがちだが、数を追いかけるのは必ずしも正しいとはいえないのでは」と話す。


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