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健康食品の新表示制度、企業の懸念募る

011.jpg 健康食品業界にとって長年の悲願であった機能性表示制度の検討が進む中、新制度で求められる安全性確保や機能性評価のハードルに事業者の懸念が募っている。条件をクリアしても米国制度で可能な身体の部位の表示は認められないかもしれず、安倍内閣の成長戦略の一環として注目された健食の規制改革が、骨抜きにされようとしているからだ。新制度の検討が佳境を迎える中、健食通販の実施企業やその周辺企業56社のアンケート回答をまとめた。(アンケート回答の詳細は本紙に掲載)

「対象成分の範囲」7割の企業で制度漏れ成分

013.jpg アンケートは、健食通販を実施する企業47社のほか、一部、健食の受託製造など健食通販支援を行う企業からの回答も得た(回答を受けた企業の一覧は本紙に掲載)。

 まず、食品の新たな機能性表示制度(以下、新制度)の枠組みについて。消費者庁では、新制度の「対象成分の範囲」を「主要な成分が測定できること(活性成分=機能を発揮する成分)」としている。ただ、天然物から抽出されることが多い健食素材は、必ずしも機能性成分が特定されず、複数の成分が複合的に機能を発揮する場合もある。ローヤルゼリーやノコギリヤシのエキスに代表されるように、健食素材の多くが新制度に参加できない可能性もある。

 こうした消費者庁の方針に対し、「妥当でない(厳しいと感じる)」(32社)とする回答が57%を占め、「妥当」(9社)とする回答は16%に留まった(「どちらとも言えない」は15社で27%)。「根拠のない成分を認める必要はない」とする声があった一方、多くの事業者から寄せられたのは、「健食本来の長所であるホールフーズの概念を損なう」、「活性成分が特定されていなくても一定の方法で素材が規格化され、科学的検証がされれば対象外とするのは合理的でない」、「機能を発揮する成分にこだわることは医薬品との識別を危うくする」、「一部の商品のためだけにある制度なら意味がない」など、天然物を中心とする健食の特徴に理解を求める声だった。

 実際、そのような対象成分の範囲から「既存製品の中に対象にならないと考えられる成分はあるか」という質問には、「ある」(41社)と答えた企業が7割超に上り、「ない」(5社)と答えたのは1割に満たなかった(グラフ)。

 米国のダイエタリーサプリメント制度では、必ずしも機能を発揮する成分を特定する必要はなく、天然物から抽出したエキスに含まれる特定の成分を"指標成分"とし、健食素材の同一性を保てるように規格化することで、制度に取り込んでいる。

 アンケートでも「天然物は漢方薬もOTC薬でも『活性成分=機能を発揮する成分』を明らかにできない場合が多く、素材そのものを機能性の単位と考えるのが一般的」、「活性を有する植物抽出物の90%以上が多成分(=複合成分)系。その抽出物そのものを活性成分として品質の再現性を確認する科学的手法は確立されている」といった声がある。成分の特定を必要とする消費者庁の方針に「妥当」と答えた企業にも「成分量を測定するための『指標成分』が明らかであれば良いと理解している」といった声があった。健食素材の多くが新制度に参加できなくなれば、新制度の活用が進まず、今後も市場にイメージ広告で訴求する"いわゆる健康食品"があふれる懸念もある。

「表示可能な範囲」表示規制継続で「活用せず」6割

012.jpg 新制度の最大の争点が機能性表示の「表示可能な範囲」。米国制度では、関節や目など身体の部位に言及した"構造機能表示"が認められる一方、日本では特定の部位を表現したものは薬事法規制により医薬品とみなされる可能性がある。

 消費者庁は5月30日に行われた新制度の検討会で、「トクホで書ける限界が医薬品と食品の境界。『部位』の表現は原則、薬の世界。その境界は新制度でも変わらない」との見解を明らかにしている。厚労省の事前チェックを受けることが必要なトクホで、これまで認められた身体の部位の表示は、「歯」「骨」「お腹」の3つだけだ。

 「トクホが限界」とする消費者庁の方針について聞いた質問では、これを「妥当でない」(38社)とする企業が68%を占め、「妥当」(6社、11%)、「どちらとも言えない」(12社、21%)を上回る結果となった。「トクホ並みの表示だったとしても何も表示できないより幅が広がり、お客様に分かりやすく伝えることができる」と、肯定的な意見もみられたが、「米国のような表現が可能になると期待していただけに落胆が大きい」、「トクホ並みであればそもそもこの表示制度は必要ない」など、落胆の声が相次いだ。「部位の表示は、消費者庁が厚労省と調整すべき」、「結局は薬事法の壁。本来は厚労省が制度設計する必要があった」といった声も聞かれた。

 安全面のハードルに対応しても、表示が限定される可能性があるが、「新制度を活用して機能性表示を行う予定があるか」という質問では、「ある」(26社)と答えた企業が46%に達し、「ない」(19社、34%)、「わからない(検討中などを含む)」(11社、20%)を上回っている。

 だが、「米国制度で認められるような"構造機能表示"を行うことが認められなかった場合、新制度を活用するか」と聞いた質問では、「活用しない」(34社)が約6割に増え、「活用する」(11社)としたのは約2割に留まった。企業からは「トクホレベルの表示に興味がない」「構造機能表示ができなければ新制度を利用する意味がない」といった声が多数寄せられた。

 新制度は、トクホ並みの安全性確保を求められる一方、機能性評価では、個別製品ではなく、成分ベースの研究レビュー(文献調査)による実証が可能となるといった面もある。だが、その結果として、身体の部位などに言及できないのであれば、魅力もない制度となってしまう恐れがある。

安倍内閣の評価、成長戦略「評価せず」7割に

014.jpg 最後に、健食の規制改革を巡る安倍内閣の成長戦略の評価について。政府は、昨年6月に健食を含む食品の機能性表示の容認を閣議決定し、新制度の検討が始まった。

 閣議決定では、米国制度を参考に企業の自己責任で機能性が表示できる制度とすることを決定。これを受け、同月には安倍首相が成長戦略スピーチを行っている。

 安倍首相は当時、スピーチの中で「健康食品の機能性表示を解禁します」、「(現行のトクホは)お金も時間もかかります。とりわけ、中小事業者にチャンスが閉ざされています」「目指すのは世界並みではありません。むしろ世界最先端です」などと話した。

015.jpg これに対し、「新制度の方針は、安倍内閣の閣議決定に適合していると考えるか」を聞いた質問では、「適合しない」(44社)と答えた企業が78%に上り、「適合する」(11社、20%)を大きく上回った(「わからない」は1社で2%)。さらに、「新制度の方針は成長戦略スピーチの内容に沿っているか」を聞いた質問では、「沿っていない」(50社)と答えた企業が約9割に達する。企業からは、「現行の規制と変わらないどころか、むしろハードルが上がっており、安倍内閣の方針に沿ったものと思えない明らかな規制強化」、「トップの指示を行政が無視するのではなく、閣議決定通りの制度を作ってもらいたい」といった声が寄せられた。

 これまでに明らかになった新制度に対する消費者庁の方針を受け、「安倍内閣の成長戦略を評価するか」を聞いた質問では、「評価しない」(38社)が約7割を占め、「評価する」(14社)は25%に留まる。

 消費者庁で行われている検討会は、6月26日の第7回会合を含め、残すところ2回。企業からは、「中小企業の参入障壁が高くなりすぎないよう考慮してほしい。今のままでは『第二トクホ』になる」、「米国制度との決定的な違いは『教育』の部分。適切な情報発信や消費者教育を含め、新法を念頭に議論されるべき」、「部位を表現することで消費者もわかりやすくなる」といった要望が寄せられている。

 多くの企業、商品が参加し、安全性や品質に問題のある商品と区別できる価値ある制度とするため、新制度は一定の「義務」と、企業の活用を進めるための表示という「権利」のバランスが重要になる。企業による新制度の活用が進むことで、消費者にとっても分かりやすく、選択しやすい制度になるだろう。

消費者庁、成分ベースの評価「トクホにない」

 消費者庁は、対象成分の範囲で機能性成分の特定が必要な理由を「有効性、安全性では最低量と上限量があるが(機能性成分が分からないのに)機能を発揮するための成分量を管理できるのかと考えている」と話す。

 構造機能表示は、「書きぶりにもよると思うがトクホ以上は実績がないので分からない」。部位の特定のみをもって規制されることにならないかは、「厚労省が判断されることなので意見が言えない。こちらが決めることではなく手を出せない」と話す。表示できない場合、制度を活用する企業が限定される可能性には、「全く活用されない制度では意味がないと思うが、何でも言えるようにするつもりはない」とする。

 トクホとの明確な違いは、最終製品でなく、成分ベースの研究レビューで機能性を実証できる点。「トクホのようにヒト試験を自分達でやる必要がない。そこが一番のネックではないかと考えた」という。また、許可制でないため時間的な制約も緩和されると考える。

 制度を活用しないことでいわゆる健食が市場に多く残り、消費者が商品選択の際に混乱する可能性には、「今は十分な科学的根拠があるか分からないものもある。むしろそこが明確に分けられることになる」と話す。

 安倍首相による表示「解禁」の宣言と新制度の方向性が異なるとの指摘には、「日本の法体系の中で米国と全く同じにはいかない。米国で問題がある部分は同じ問題が起きないよう考える。解禁とは何でも良いということではないと思う。今まで表示は(許可制のトクホなど)国が全部規制していたが、自己責任でできるので、そこが解禁ではないかと考える」とした。





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