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消費者庁・健食表示検討会 「身体部位」表示巡る攻防へ

012.jpg 「機能性表示ができない機能性表示制度」――。消費者庁が検討する健康食品の新たな表示制度を巡り、事業者からそんな落胆の声が挙がっている。最大の争点だった「表示可能な範囲」に対し、消費者庁の答えは"トクホが天井"とする事実上の「ゼロ回答」。米国制度で認められているような"身体の部位"に言及した構造機能表示は行えない可能性が高くなっているためだ。厚生労働省が頑なに守る薬事法の岩盤規制を打破しなければ、新制度は価値のない制度となってしまう。


〝トクホ水準〟に事業者落胆

消費者庁「特保が天井」のゼロ回答

 「(新制度の下で)構造機能表示は行えるのか。(身体の)部位を表現できるのか」。5月30日、消費者庁の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」第6回会合は、業界を代表する宮島和美日本通信販売協会理事の問いかけから最大の山場を迎えた。

 争点は、機能性表示の「表示可能な範囲」。消費者庁は、これまでその範囲を「健康維持・増進に関する表現」としていたが、その具体的範囲は示さず、身体の部位を含む構造機能表示が対象
となるか注目されていた。

 だが、消費者庁の回答は、「トクホが書けている限界が医薬品と食品の境界。『部位』の表現は原則、薬の世界。その境界は新制度でも変わらない」というものだった。

業界反発、消費者サイドも同調

 この争点をめぐり、議論は紛糾。業界サイドが「お客様が商品を選ぶ際に分かりやすい表示を考えるとあいまいな表現はいけない」(宮島委員)、「全くの同感。普通の人が普通に読んで分かる表示が望まれる」(関口洋一健康食品産業協議会会長)と反発しただけでなく、消費者サイドの委員も同調。「(部位を)表示をできると思っていた。安全性、機能性でこれだけ厳しいハードルを設けている。トクホと違う表現ができないとイメージ広告の(氾濫から)健全化を図れない」(森田満樹消費生活コンサルタント)、「どこまで部位を示せるか、もし厳しいルールをクリアするなら、それをどんな表現で消費者に伝えるか丁寧に考えても良い」(河野康子全国消費者団体連絡会事務局長)とし、松澤佑次座長が「臓器(=部位)が出てきたら一発で駄目というわけではない?」と消費者庁に確認する実態に発展、結論は次回に持ち越された。

米国は容認、特保は3つだけ

 消費者庁の「ゼロ回答」の背景に何があるか、まず「構造機能表示」を巡る状況を整理したい。

 現在、部位に言及した表示は薬事法上、医薬品的効能効果を暗示しているとみなされる可能性が高く、行われていない。そのため、事業者は身体のどこに対応した商品か説明できず、健食はイメージに訴えかける広告表現が氾濫。消費者の誤認を招いてもいる。

 例えば、「グルコサミンは○○(軟骨)の健康を維持します」といった表示例。仮に身体の部位を表示できないとなれば、商品の特徴はさっぱりわからない。

 一方、米国制度は、部位表示が可能。トクホも許可を受ける際に厚生労働省の事前チェックを受ける前提で薬事法規制を受けず、部位に言及する表示が一部認められている。ただ、これまで認められた部位は、「歯」「骨」「お腹」のみ。その範囲は、米国にはるか及ばない。このため、米国を参考にした新制度は、部位に言及した表示への期待が高まっていた。それこそが、安全性や機能性の厳しいハードルという「義務」に対する「権利」と理解していたためだ。

薬と食品の境界「たらい回し」

 だが、医薬品と食品の間に存在する「構造機能表示」の境界域を巡る行政の見解は、消費者庁が「(部位表示が可能か)能動的に答えられず、厚労省の所管」(竹田秀一食品表示企画課長)と言えば、厚労省は「こちらは疾病領域なので(ある表現が)駄目とはいえるが、部位が良いかは食品(行政)の人が言う立場」(赤川治郎監視指導・麻薬対策課長)と言う始末。互いに明言を避けるあいまいな状況だ。

 消費者庁は、トクホで認められている「歯」「骨」「お腹」に部位の表示を限定しているわけではなく、「トクホ審査で厚労省に照会をかけ、これまで許可を得たのがたまたま3つだっただけ」という。だが、厚労省の赤川課長は検討会後、「評価指標を確立し、健康な人で検証するのは非常に難しい。実態として(部位が)書けない分野はそうした背景がある。簡単な話じゃない」と、見解を述べている。実質的に、健食でトクホ以上の部位表示を認める気はないということだろう。

 検討会では、「身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する旨」の表示ができるトクホの範囲を例に「現行のトクホで許可されていない範囲の部位表示も科学的根拠があればできる」(清水俊雄名古屋文理大学教授)との意見もあった。だが、トクホは46通知で"薬事法の規制外"と規定されている大前提がある。例外措置もなく、厚労省の事前照会もない新制度の下、清水委員の言うように"自己責任"でトクホ以上の表示をする強者が現れるだろうか。

「明らか食品」のための制度


 では新制度は誰のための制度なのか。前段で森田委員が「部位表示ができると思った」と発言した理由に着目したい。これは5月2日の第5回会合で農林水産省が示した資料を根拠としている。

 農水省はこの会合で緑茶に含まれる「メチル化カテキン」という成分を例に、「花粉が気になる方の目や鼻の調子を整えます」などの表示を例示。そこに目や鼻など部位が含まれるため、森田氏は"なぜできないのか"という疑問を口にした。

 ただ、この指摘は正確ではない。46通知ではトクホとともに、「野菜、果物、菓子、調理品等その外観、形状等から明らかに食品と認識される物」も、その規制対象外としているためだ。要は、成分を濃縮したカプセル、錠剤形状の健食は薬事法規制を受けるが、新制度のもう一つの対象である生鮮食品、加工食品など"明らか食品"はたとえ部位を表示しても問題視されにくいのだ。

 そもそも、今回の規制改革は、明らか食品の機能性研究の出口戦略を見い出せずにいた農水省が積極的な姿勢を示したことで前進した経緯がある。このまま政府の成長戦略とは別の思惑で健食はずしが進めば、新制度はなんら価値のない制度になるだろう。



 規制改革を巡り、安倍首相は成長戦略スピーチで「健康食品の機能性表示を解禁する」と宣言した。医薬品と食品の狭間に置かれてきた健食に明確な役割が与えられると思えばこそ、事業者は厳しいハードルに応える覚悟を示してきた。

 だが、その結果がトクホ並みの成分を使った、トクホ並みの制度では、多くの健食は"鬼子"のまま。それこそ、消費者の商品選択に資する制度と逆行する。消費者庁は早急に軌道修正を図る必要がある。

重要争点の行方は?「やっぱりプチ・トクホ」、政府の成長戦略、揺らぐ根幹

011.jpg 「やっぱり"プチ・トクホ"」。新制度の制度設計を巡り、そんな認識が事業者間に広がっている。それもそのはずだ。表示範囲だけでなく、「対象成分の範囲」「機能性評価手法」いずれも、"トクホ水準"のオンパレードだからだ。



 「表示可能な範囲」とともに、新制度で注目されたポイントが「対象成分の範囲」だ。というのも天然物から抽出されることが多い健食素材の場合、必ずしも機能性成分が明らかなものばかりでないためだ。グルコサミンやアントシアニンといった成分であれば"成分ベース"で機能が特定できるが、ローヤルゼリーや青汁、黒酢といった素材は必ずしも機能性成分が明確でなく、「エキスに含まれる複数の成分が複合的に作用して機能を発揮している」場合が多い。第6回会合では、消費者庁から初めてその対象成分の具体例(=図右)が示された。

 だが、その範囲は、「成分が測定できる」か「主要な成分が測定できる」ことが条件。「主要な成分」とは、「活性が強い(=機能を発揮する成分)」を指すという。この考えは、トクホの「関与成分」の考え方を踏襲している。



0133.jpg 一方、米国では、必ずしも機能性成分を特定する必要はない。

 例えば、イチョウ葉エキスの場合。「テンペルノイド」や「フラボノイド」それ以外の成分も含むが、必ずしもこの2成分が機能性成分とは明らかになっていない。ただ、エキス全体で発揮した機能を表示できている。

 というのも事業者が、原料に使うエキスが産地や季節で変化が少なく、毎ロット同じであることを確認する「原料同一性試験」を行っているためだ。その際、事業者は「テンペルノイド」と「フラボノイド」を「指標成分(原料の同一性を確認するために定めた成分)」として規格。2成分が毎回、一定濃度含まれることをもって原料が同一であると確認している。

 だが、新制度は品質保証を図る健食GMPの課題もあり、原料同一性試験を取り入れることができていない。このため、ローヤルゼリーなどエキス全体で機能を発揮するような素材は新制度から漏れる可能性が大きい。



 「機能性評価」でも問題が浮上している。

 今回、トクホと異なる最大のメリットは"成分ベース"のレビュー(文献調査)で機能を評価できることだった。複数成分を含む製品の場合、消費者庁は、安全性は成分同士の相互作用を評価する必要があるが、機能性は相互作用を評価せず、成分ごとに調査すれば良いという方針を打ち出していた(表上)。この点は製品評価が必須のトクホと大きく異なるところだ。

 だが、検討会では、学識経験者の委員から「製品での確認が原則」「複数成分が入ると製剤過程でどう変化するか分からない」など安全性を懸念する意見が続出。個別製品の評価を求める声が相次いだ。だが、そうなればまさにトクホと同じ。新制度の大きな特徴でもある「レビューによる評価」が揺らげば、新制度はその意味合いがなくなってしまう。



 新制度の導入により、ある業界関係者は、「これまでトクホ審査は2~3年かかっていたが、早ければ1年程度で論文掲載し、機能性表示ができるようになる」と、そのメリットを話す。だが、新制度は、企業の自己責任により、"トクホ審査の迅速化"を図ることではない。健食の前に立ちはだかる薬事法の岩盤規制を打破できなければ、政府の成長戦略の根幹が揺らぐことになる。


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