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通販各社の幹部育成策 次代担う人材教育に各社注力

011.jpg 事業の根幹を担い、進むべき正しい道を決める存在。通販事業者に限らずだが、どの企業にとっても組織の核となる"幹部"は重要だ。高い業績を上げる企業には必ず優秀な幹部がおり、また、次代の幹部の育成にも力を入れている場合が多い。有力な通販事業者を中心に各社の幹部候補育成の現状について見ていく。


部長候補と経営陣の意識をシンクロ

 マガシークは部長候補のチーム長が中心となって事業戦略などを考える「井上塾」を2009年から不定期で開催している。塾の一番の狙いは、ポスト部長職のスタッフと経営陣との意識をシンクロさせることだという。

 約20人のチーム長は3カ月をかけて会社の次期戦略を作り経営陣を前にプレゼンをする。何度もダメ出しされてブラッシュアップしたものをチーム内のメンバーに自分の言葉で伝えるところまでがプログラムだ。

 社長が考えた事業戦略をチーム長が単に共有するのではなく"自分事"としてかかわるとともに、各チーム長が自分の言葉で会社の戦略を語ることで、一人でも多くの従業員が会社経営に関心を持つようにしている。

 井上塾では、マーケティングの考え方やプレゼンの仕方、資料作りなど、部署によっては慣れていない社員もいるため、こうしたトレーニングも兼ねているという。

  また、同塾はテーマによって対象となる社員も異なり、最近では全社的に新規事業のアイデアを募って、各自が考えたビジネスの収支計画や3~5年後の姿を描 かせたりもしている。同社のファッション通販サイト「マガシーク」で今春から取り扱いを始めた子供服も、井上塾に寄せられたアイデアがベースになっている という。

 新規ビジネスは、若手から役員まで30以上のアイデアが出たが、すでに事業化した子供服についてはアイデアを出したスタッフが実際にキッズ担当となって活躍しているようだ。

  一方、同社では井上塾とは別に各種研修も実施。例えば、チーム長や中堅社員は新入社員の指導役を務めることから、新人を指導するための研修も年に4回程度 実施している。伊藤忠商事の研修も手がける講師を呼び、指導計画の作成やコーチングスキル、部下との信頼関係の作り方などを身に付けるという。

  マガシークでは、座学による研修だけを行っても「営業マンとはこうあるべき」などと一般論に終始してしまうことが多いことから、「学んだことを自分に置き 換えることが大事」(井上直也社長)としており、塾と研修制度の両輪でチーム長などのスキルアップや積極性の向上につなげたい考えだ。

 井上塾については、参加した社員の成長などで「手応えを感じている」(同)ため、今後も年1回程度は開催したい意向で、とくに、夢を持って入社した若手がチャレンジできる場としても活用していく。

「個人力」から「チーム力」へ

  JIMOSも幹部育成を含む社員教育に積極的に取り組む1社だ。同社によると3年前から本格的な取り組みを開始し、多面的に社員研修に本腰を入れ始めてい る。さらに今年に入り、大手企業などで豊富なキャリアを積んだ津藤裕美氏を人事部長として招聘し、「個人力」だけでなく、「チーム力」のアップや本格的な 幹部育成の推進などにつなげていきたい意向だ。

 同社が実施する社員研修はマネージャーや部長などの「役職者」、「一般中堅社員」、「若 手社員」といった4階層に分けて、それぞれに合致した研修と全社員が受ける個人研修を実施している。幹部候補と言える役職者向けの研修では「360度評価 をして『何ができていないのか』『何が得意なのか』を話合い、把握して業務遂行能力を高める」(津藤人事部長)などだ。全社員向けの研修で特徴的なものは 「意思決定メカニズム研修」。これはJIMOSが独自に開発した研修でケーススタディを通して「意思決定」を実際に体験して学び、「上長が意思決定をしや すくするために、どうコミュニケーションをとり、どのような情報を提供すればよいかを知る」こともできるプログラムだ。

 同社の田岡社長 の肝いりで、一昨年から特に社員研修の強化を図ってきており、「階層別、個人別と横軸縦軸の研修制度は整ってきた。また、研修の効果も見え始めている」 (同)とするが、今年からより効果的な社員研修へと制度改革を進める意向のようだ。「個人力」の強化に続く「チーム力」の強化だ。

 同社 によると、これまでは階層別や個人別の研修にしても個人のスキルアップにより注力した研修だったという。「確かに『個人の力』は高まってきたという実感は あり、それぞれ優秀な社員もいる。知識もある。次はその個人の力をどう所属部署に落とし込み、より効果的に展開していくか。そのために今年は『チーム力』 を高めていきたい。その上で来期からは本格的に""幹部育成"にも取り組んでいきたい」とこれまで大手企業で社員育成など豊富なキャリアを積み、今年1月 にJIMOSからの招聘を受けて入社し、同社の社員研修制度の改革を任せられた津藤人事部長は言う。

 そのため、今年から早速、社員研修 制度を刷新。例えば昨年から実施していた「管理職研修」は360度評価をしつつ、「マネジメント行動の改善と職場へのフィードバック」に重きを置くことに した。また新たに設置した「チームビルディング」という研修では「自身のチーム課題を理解し、チームの中でのマネジメントや連携を高め、仕事のスピード・ 質・正確性を強める」という目的で社員研修を行う。このほかにも論理的思考を磨く「クリティカルシンキング」「報連相・PDCA」など幹部だけでなく、一 般社員、新入社員向けの研修なども充実させた。

 今年は全階層で「チーム力」を強化しつつ、ベースを作り、今後は役職者の中から有望な人材に対し、MBAの取得を含めた幹部育成策を展開していく考えのようだ。

社内MBAで経営幹部育成

  千趣会では社内MBAのカリキュラム(選抜型・公募型、いずれも座学形式)を導入した幹部社員の教育研修を行っている。論理思考や経営戦略、マーケティン グなど、次代の経営幹部候補として必要なスキル習得を目的としたプログラムで、上級管理職(部長、部長代理)の一層の組織マネジメント力を高めるため、 ヒューマンアセスメントを活用したマネジメント力強化研修に力を入れている。マネジメント力強化の取り組みについては任用後早々に行うようにしており、今 後も継続して実施していく予定だという。

 また、対象となる社員については、入社年数や職務経験内容などは不問。一部、選抜・指名型で実施するカリキュラムもあるが、基本的には階層別に公募をする形になっているという。

 研修の成果としては、「論理思考力の全体的なボトムアップが図れたと感じられる」(同社)と指摘。半面、長期的な視点での経営戦略力やビジョニング力、変革志向力については、必ずしも充分とは言えない部分があるとの認識で、対応を図っていく考えだ。

  今後の幹部社員育成の新たな取り組みとしては、部長、部長代理、マネージャーなど管理職について、今まで以上に自組織におけるイノベーションを推進してい けるような人材を育成するための施策導入を検討。これについては、長期的な取り組みと位置付け、複数年の研修期間を想定。通常の座学による知識主体のイン プット型とは異なるアプローチの施策を検討しているという。

 約60年の社歴を誇る同社だが、目まぐるしい商環境の変化に対応した組織のマネジメント力とイノベーションの推進力を重視した幹部社員の育成に取り組んでいると言えそうだ。

「社長塾」で視野広げる

 ベルーナでは、2012年5月に次世代の経営幹部を育てることを目的とした「社長塾」を設けた。隔年で実施しており、原則として月1回の開催。参加人数は約50名、平均年齢は35・5歳となっている。

 主に幹部人材として期待される社員を抜擢。幹部育成のほか、競争意識を持って切磋琢磨(せっさたくま)する文化をつくること、業績向上につながる道を探ることも目的だ。

  塾では、幹部人材として必要な考え方を鍛えることを中心にカリキュラムを組んでいる。有識者の講演や泊まり込みでの研修も実施。外部講師は、ビジネスの世 界で成功している人や、専門領域で活躍している人を呼んでいる。受講者からは「視野が広がった」「高い視点でのものの見方に気付いた」などといった声が聞 かれるという。

 受講者は、女性社員の比率が高いことが特徴。これは、女性社員の抜擢・活用を進めるため。設置成果は「少しずつ出てきて いる」(経営企画室)としており、ライン役職にあまり興味がなかった女性社員の考え方が変わり抜擢されたり、男性でも部門長や本部長クラスへの抜擢が進ん でいるという。

ベテラン社員から学ぶ

 フェリシモでは社員の研修制度として「フェリシモ大学」を設けている。不定期開催 だが、基本的に隔月で実施。参加者は20~30人で、参加後にはレポートを提出する。事務局が選んだテーマで勉強するというものだが、最近は「ベテラン社 員から学ぶ」という内容で開催している。

 社員がこれまでの取り組みや思いを話したり、成功事例・失敗事例を語ったりという内容。「部署 が違えば、こうした機会がないとベテラン社員の話を聞くことはできない。過去の体験談からも学びや気付きは多いだろう」(広報グループ)。当時の苦労話を 聞いて、現在の仕組みができた理由が納得できた、といった感想もあるという。



 どの企業にとっても次代を担う幹部は欠かせない存在だ。いかに当該企業をけん引する優秀な幹部を育成していくか。各社とも試行錯誤は続きそうだ。


高まる〝即戦力〟へのニーズ、転職市場も「EC系」は不足


 自社の教育によって社員を幹部に育てようという取り組みの一方で、外部から"即戦力"として優秀な人材を採ろうというニーズも多いようだ。そうした企業の需要を踏まえ、通販やECに特化した転職支援や人材派遣のサービスも増えている。

 通販向けの広告代理事業を行うアドブレイブは昨年10月から通販向けの転職サービスを開始した。人材コンサルティンググループの松井達郎マネージャーは「企業からは今、EC系の人材を求める声が多い」と述べる。

  特に必要とされているのは、受発注、顧客対応、商品管理、在庫管理、財務といった具合に業務を全般的に管理できる"マルチプレーヤー"で、さらに「若く て、(給料が)安い人を欲しいといった要望が傾向として多い」(松井氏)とのこと。もっとも、そうした人材は、対象となり得る人が限られるため、そう簡単 には見つからない。

 さらに他の転職エージェントも優秀な人材を常に探しているため、条件の良い人には応募があちこちから殺到する。例え ばメールなどによるスカウトの数は通常、一人当たり20、30件程度だが、ウェブ関連の有能な人にはスカウト数が100件や200件と桁が1つ増える。そ うなると、高い収入や手厚い福利厚生を提示でき、ブランド力もあるような大手企業が有利になる。

 このようにEC系の人材を求める動きが活発化する中で、良い人材を採用するのは決して簡単ではないようだ。

  通販向け販促支援のファインドスターは4月から子会社のニュースターを通じて、無料求人サイト「EC通販転職ドットコム」を始めたが、ニュースターの寺田 勝人社長によると「転職市場に最適な経験者がいないと思うくらいでいい。実績ではなく、採用してから伸びそうなポテンシャルを持った人を見つけるのも大 事」と指摘する。

 大手総合通販企業の人事担当者なども「良い人が全然採れない」と漏らすが、採用の基準として「経験者に限っている」という。仮に小売りの経験者であっても「通販を知らない」と選考の枠からこぼれてしまう。

 しかし、ピンポイントで幹部となり得るような人を見つけて、採用するには一定の時間とコストがかかる。であるならば、「まずは一つでもスキルを伸ばせそうな人を採用して教育を行い、欲しかった人に"育てていく"という環境も必要」(松井氏)になりそう。

  また、他社に先駆けて通販業界に特化した転職サービスを手がけてきたジェネシスの根岸良策社長は「募集する際に年齢の幅を持たせると良い人が集まりやす い」とアドバイスする。例えば35歳までという年齢制限を設けて36、37歳の求職者は除外するが、そうなると「すでに狭い幅が、さらに狭くなる」(根岸 社長)。ECは新しい業界のため、年齢に余裕を持たせて採用を検討してもらいたいという。

 一方、事前に企業の要望に合わせたスキルを教育させてから人材を派遣するサービスも登場している。

  企業のウェブ運用などを請け負うメンバーズは5月1日に、ウェブクリエイターに特化した人材派遣子会社「メンバーズキャリア」を設立。同社の嶋津靖人社長 は「技術は仕込むもの」と述べる。嶋津社長によると、「ウェブマーケティングは高度化が進み、複雑化している。とにかく圧倒的に足りない」という状況。そ こで専門特化型の教育が必要になるという。

 同社では基本的に中途採用の人材を確保し、企業の要望を踏まえて新たなスキルを教育して身に付けさせて派遣するという流れだ。

 外部から人を入れて教育を行うか、教育された人を雇うのか、会社によって方針は分かれるところだが、いずれにせよ各社が人材不足に悩む中で"即戦力"を獲得するのは容易ではない。となると一層、社員の育成ということが今後重要になってくるのかもしれない。

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