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楽天に「行政処分可能」との声

 1-2.jpg楽天は4月25日、同社のECコンサルタントが「楽天市場」の出店者に対し、元値を不当に釣り上げる「二重価格」を指示していたことを明らかにした。従来、仮想モール事業者は景品表示法の対象にはならないと解釈されてきたが、今回の事態を受けて、消費者庁が楽天に対し、何らかの動きを起こす可能性が出てきた。さらには「現行法でもモールは措置命令の対象になりうる」とみる弁護士も。楽天市場と景表法をめぐる動きを探った。

1-1.jpg楽天、「二重価格」関与認める 
調査精度に疑問の声も


 楽天が公表した資料によると、不当な二重価格の「提案」を行ったECコンサルタントは、調査対象となる661名のうち18名。当該社員がこうした提案を行った店舗は合計28店舗で、2010年以前から行われていた。一方で「組織的な指示があったことを示す事実がない」とし、対象となる社員18人の所属と提案の時期などにばらつきがあること、ECコンサルタントへのヒアリング調査でもこうした事実がなかったことを理由としてあげている。

 処分としては、役員の減俸処分こそあるものの、不当表示の提案を行った社員18名の処分については、報道によると処分は行わない方針という。

 今回の調査は楽天市場の全出店店舗にメールで行った。そのため、「正直に答えると、 楽天から目を付けられるのでないかと心配」「サーチから削除とか上位に来ないようにとかの嫌がらせがありそうな気がする」などといった声が結果公表前からあがっていた。

 今回の調査結果について、楽天市場に詳しい業界関係者は「18人が関わっていたにしては、提案を行った店舗の数が少ない」と首をかしげる。ECコンサルタントは、1人が約100店舗を担当するため、平均すると1人あたり2店舗にも提案していないことになる。

 ある出店店舗は「店舗名記載を前提とするのは非常識。ECコンサルの提案を受けて、不当な二重価格を行ったことを正直に書いたら退店させられかねない。提案に従わなかった店舗や退店覚悟の店舗しか答えられないのでは」と指摘する。

 楽天では昨年の騒動時に「17店舗が日本一セールの開催に際して審査プロセスを経ることなく元値を大幅に引き上げ、不当な価格表示により商品を出品し、お客様に混乱をきたした」となどと説明、あくまで「楽天のあずかり知らぬ形で」不当表示が行われたものとしてきた。

 その上で、不当な二重価格を防止するため、元値の種類を「当店通常価格」と「メーカー希望小売価格」に限定したほか、メーカー希望小売価格については、消費者が確認できる元値の根拠資料の掲載を義務付けた。

 こうしたやり方に不満を持つ店舗もいる。商品数が多いと証拠を出すだけでもかなりの負担になるほか、ナショナルブランドの商品ならこうした証拠は提出しやすいが、海外からの並行輸入品などは事実上不可能。メーカーや日本の正規代理店から証拠掲載の承諾を得られないからだ。「法を守って表示してきたのに、『証拠がないと国内でのメーカー希望小売価格は元値に使えない』というのはおかしい。二重価格を記載させないルールを強制することで問題を回避するやり方は納得できない」(並行輸入品を扱う店舗)。そもそも、二重価格表示自体は違法ではない。こうした安売り店は、二重価格で消費者に安さを伝えてきただけに、表示ができなくなればダメージは非常に大きい。

 店舗へ負担をかける形で「表示の適正化」を進めている楽天。「店舗が暴走して違法行為をした」という「錦の御旗」があったわけだが、社員の関与が判明したことでそれはなくなった。消費者を騙す行為を店子に勧めていた社員に処分がないというのでは、「スケープゴートにされた」店舗の不満は溜まるばかり。コンサルの営業スタイルそのものに問題があった可能性もあるだけに、「組織的ではない」と判断するのは早計ではないか。

 なお、当該社員への処分を行わない理由や、記名調査の是非などについて楽天に問い合わせたところ、「貴社とは係争中のため、問い合わせ等への回答は差し控えます。貴社の取材に基づいた事実確認を十分に行い、誤った報道を行わないよう留意することを申し添えます」との返答があった。



消費者庁に対応求める 景表法の立法趣旨背景に


 楽天が不当表示への関与を認めてもなお、現実的に景品表示法で行政処分に持ち込むのは難しい。景表法は原則として、商品を供給する事業者が対象となるためだ。モール運営者が規制対象になるには共同表示・販売の事実認定が必要となる。だが、「楽天が現実的に共同表示・販売を認めるとは考えにくく、現実的に景表法上の対応を行うのは難しい」(景表法執行担当OB)という見解が一般的だ。

 消費者庁の見方もこれに沿っているようだ。表示対策課の片桐一幸課長は今回の問題に対し、モール運営者の管理責任を11年に行ったグルーポン・ジャパンに対する要請を例に説明する。

 消費者庁はクーポン発行者による不当表示に措置命令を行う際、サイト運営のグルーポンに管理強化を要請。クーポンサイト運営者をモール運営者と同じ"場所貸し"と見ており、「これは"場所貸し"を行う事業者全体へのもの。不当表示を無くす努力が必要というメッセージは楽天にも伝わっているはず」(片桐課長)とした。だが、結果として、不当表示を根絶することはできなかった。

 楽天にも再発防止を求めることが可能で、すでに消費者庁は楽天に対する「要請」を検討している。問題は要請の事実を社名公表するかどうか。片桐課長は「社名公表が与える影響は大きい」とする。一方で同じ「場所貸し」のグルーポンの場合は「クーポンを販売していた」(同)事実を鑑み、公表に踏み切ったと明かす。楽天も「単なる場所貸し」とは言えないだけに、法的拘束力は伴わずとも、より強い方法で消費者庁が「要請」することは理屈の上では可能だろう。

 楽天の会見を受け、景表法の執行を担当していたOBは、「消費者庁設置の目的は、消費者利益を守ることであり、何らかの対応は必要。公正取引や弱者救済を目的とする立法主旨からすれば、消費者に対する信用失墜行為を行ったという意味で行政指導を行える。(自分が担当者であれば)行政指導を行う方向で考える」とする。

 別の景表法の執行担当官OBも「モールでの値付けは各出店者の自由。(私なら)余計なことをするなと(楽天に)言う。出店者に正しい表示を教えてあげる立場ではないかと指導する」と話す。

 一方、「現行法でもモール運営者は十分、措置命令の対象になる」とするのはインターネットの消費者問題に詳しい壇俊光弁護士。"場所貸し"を行う事業者に対する措置命令は、02年、百貨店に対して行われたケースはある。ただ、百貨店がテナントに対し販売する商品の売り上げに一定の比率を乗じた額を"仕入額"として支払う契約書があり、これが「共同販売」を裏付ける1つの根拠となっていた。原則、景表法の措置命令の対象は商品の供給事業者、つまり一義的には「商流」に関与した販売者などとされている。

 しかし、壇弁護士の見解は、「商流」ではなく、消費者視点から見た「実態」で規制する対象者を判断すべきというもの。「景表法上の対象となる事業者は実態的に見るべきという考えが学識経験者間でも支配的。モール運営事業者は実態的に見て単なる『運営者』以上の立場になりうる。出店者との主従は逆転しており、消費者も楽天市場で買うという意識があると考えれば措置命令の対象になる。特に『楽天日本一セール』は楽天が積極的に関与しているものでもある」と指摘する。

 ただ、景表法による行政処分に関しては消費者庁が考える「事業者」に楽天が当てはまる可能性が低いため、難しいのが実情。とはいえ、「事業者の定義を広げるべき」とする法曹関係者がいるほか、壇弁護士のような見解も存在する。片桐課長は「運営事業者の自助努力が第一で、法改正などは最終手段」とするが、消費者庁が定義する「事業者」が実態に即していないとする見方は根強い。「事業者」をどう解釈するか、さらには法律の改正も含めて積極的に議論すべきだろう。多くの関係者から楽天の管理責任を問う声が上がる中、消費者庁は何らかの対応を検討する必要があるのではないか。


背景に楽天の「無関心」  是正依頼も「個別店舗に」

 楽天市場の二重価格表示問題は、起こるべくして起こった問題と言える。行政処分を受ける事業者から逮捕者まで、楽天市場は昔から悪質事業者の温床となってきたためだ。問題の根は、自らを利する一部の出店者を除いた出店者に対する楽天の「無関心」にある。

 出店者による違法行為は昔からある問題だ。2006年にはニコチンがビタミンに変化するとうたった健康グッズの販売事業者が、08年には納豆菌によるカビ防止製品を売っていた事業者が景表法の排除命令を受けた。

 最近でも、放射能排出をうたう健食を販売していたウェストインペリアル(11年)や、緑内障の治療剤をまつげ育毛剤として売っていたクリエイティブシンキング(12年)が薬事法違反で摘発を受けている。一義的に販売者の問題だが、11年の事件において、当時の楽天は「特に何か対応を検討することは考えていないが、(違法表示を)排除できるよう頑張りたい」とコメントするにとどめ、法令順守に対する認識の甘さを露呈していた。

 こうした楽天の姿勢に対し、景表法の執行を担当していたある行政担当官OBは、「無責任。現役の時、出店者の不当表示改善を楽天にお願いしても"出店者に言って"の一点ばり。出店者は"楽天が管理しているから直せない"と言うし、結局、ボールの投げ合いをしていた」と、無念さをにじませている。

 消費者団体関係者も「いつもお願いしかできず、実際に周知したか確認できないまま」と嘆く。これまで楽天は"文句は店舗に"というスタンスを頑なに崩さず、それがまかり通ってきた。

 モール運営者の管理責任は過去に司法の正式な判断として指摘されている。12年、キャンディー「チュッパチャプス」のロゴを利用した商品を販売していた出店者に対する楽天の対応を巡り、商標権を管理するイタリアの企業が楽天に損害賠償を求めた訴訟だ。

 訴訟を担当した知財高裁は、結果として請求自体は退けている。ただ、「出店者から出店料を受け取り、支配・管理しているモール運営者も、侵害を知った後、合理的期間内に是正しなければ商標権侵害の責任が生じる」と、モール運営者の責任に言及した。

 これら行政OBや司法の指摘、出店者が起こした数々の問題に正面から向き合わってこなかったことが今回の問題を引き起こしたとすれば、楽天は長年に渡り、消費者からの信頼を裏切り、まじめに取り組む出店者の利益も損なっていたことになる。

 景表法を執行した経験を持つ行政OBは、「商売をするならせめて景表法を勉強して出店者を正しい表示に導くべき」(前出OB)、「出店者をチェックする義務があるのに逆に不当表示を指示するのはあるまじきこと。商売は消費者にできる限りの情報提供を行い、長く適切な関係を築いていくことが重要。企業姿勢を問われている」(別のOB)と、楽天に商道徳を説く。

 楽点の三木谷浩史社長は2012年、出店者などが加盟する新経済連盟を組織。これまで積極的に政策提言を行ってきた。だが、規制緩和には義務や責任が伴うもの。医薬品ネット販売規制や課徴金導入に提言を行う前に、行うべきことがあるのではないか。


編集部より:通販新聞では「二重価格問題」など、楽天のECコンサル関連で取材させていただける方を募集しています。取材源の秘匿は厳守いたします。連絡先は楽天特別取材班 電話:03-3815-7635、メール:info@nethanbai.jp です。

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