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【ヤマトHD・木川眞社長に聞く】 高付加価値サービスの展開加速へ

 1-1.jpgヤマトグループ各社が通販事業者および顧客向けのサービス展開を加速させる。9カ年長期経営計画「DAN―TOTSU経営計画2019」の第2次3カ年中期計画のスタートを受け、これまで取り組んできた物流ネットワーク改革をもとにした関東・中部・関西圏での「宅急便」即日配達やローコスト分散在庫の仕組みの提供などを計画する。通販などの荷主にとってコストアップ要因とにもなりうる「宅急便」サイズ別適正運賃収受の要請が話題となる中、どのようにして荷主が納得できる付加価値を創出していくのか、ヤマトホールディングスの木川眞社長に話を聞いた。(聞き手は本紙編集次長・後藤浩)
新しい物流ネットワークの構築推進

──前期で終了した第1次3カ年中計の取り組みについてお聞きしたい。
 
 「中心となるのは新しい物流ネットワークの構築だ。将来、『宅急便』の取扱個数が20億個の時代がきても、コストが上がらず品質も劣化させないことを目指した。また、通販市場の拡大に伴い、『宅急便』の取扱数量は順調に増えている。けん引役は大手のEC事業者だが、中堅・中小のEC専業、リアル店舗やメーカーなど兼業ECも拡大している。我々の立ち上がりよりもEC市場の成長スピードが速く、この3年間で消費構造の変化につながるような動きが加速した印象がある」
 
1-2.jpg──第1次中計の取り組みの進捗状況は。
 
 「計画に盛り込んだ施策はほとんど着手している。ネットワーク構造の改革では、日本とアジアの結節点となる『沖縄国際物流ハブ』、国内主要都市間の当日配達を実現する『厚木ゲートウェイ(厚木GW)』(=㊨写真)、物が流れる中での高付加価値の提供を実現する『羽田クロノゲート』の稼働などすでに形が見えているものがある。グローバル展開の部分では、沖縄国際物流ハブを活用し、香港向けの『国際クール宅急便』もスタートした」



高付加価値ビジネスモデルの創出へ

──今年度から始まった第2次中計の取り組みの方向性は。
 
 「第2次中計の柱になる施策は、高付加価値のビジネスモデルの創出だ。第1フェーズでネットワークを作り、それを有機的につなげ新しい物流改革の高付加価値ビジネスモデルを作るのが、昨年打ち出した『バリュー・ネットワーキング』構想の考え方で、今回の中計では物流改革モデル、グローバルに広がるビジネスモデルを創出していく。新しい物流ネットワークを使い、いかに狙い通りにコスト構造を低減できるような仕組みに作り上げていくかがカギになる」
 
──厚木GWのほかに中部と関西にもGWを設置し、関東・中部・関西圏で「宅急便」の当日配達を行うことも公表している。
 
 「GWは、愛知県で建設準備を進めており、関西でも早晩着手する。2016年度中には関東・中部・関西圏で当日配達を始める計画だ。そこまで行けば、数量が増えてもコストが過大に増えず、品質も管理できる仕掛けができる。通販事業者様も各地で相当数を持たなければならなかった在庫を極力抑えることができ、さらにそれをスピード配送することで返品率が下がるという好循環が生まれる。ここは、我々が提供できる機能のセールスポイントで、通販の物流最適化、スピードと品質の点で大きなインパクトがあるだろう」
 
──計画ではネットワークを活用した「分散型在庫スピード通販」も標ぼうしている。
 
 「分散在庫型スピード通販についても第2中計で展開を始め、事業規模に関係なく様々な通販事業者が利用できるようにする。事業者側の倉庫で商品を『宅急便』にして出荷をする今の仕組みでは在庫を持たなければならず、出荷コストもかかる。だが、分散型スピード通販であれば、我々のネットワークの中に最小限の在庫を分散して置き、売れた分だけ商品を補充すればいい。事業者側はピッキングなどの作業が不要となり、スピード配送もできる。究極的には、ベンダーに直結して我々がその日に必要な商品をトータルピッキングして運び、その中で『宅急便』化をするということもでき、通販事業者様は倉庫が不要になる。また、同じお客様が注文した複数の通販事業者の商品を同梱して届けることもできる」
 
──商品同梱については、過去に通販事業者の間で模索する動きがあったが、立ち消えとなった。
 
 「思想としてはあっても技術的に難しく、また、競合他社の商品と一緒にされることに抵抗感もあると思う。だが、お客様の側の立場になって考えると、違う通販事業者様の商品でもひとつにまとめて届けられる方が嬉しいはず。通販事業者様も送料を負担し合うことでコストを削減できる。そのためには受注データをリアルタイムで共有し、出荷のタイミングをコントロールすることなどが必要で、情報のフルデジタル化が不可欠になる」
 
──今後の展開を考えると、情報のフルデジタル化がカギになると。
 
 「新しいネットワークを通じ、従来ない付加価値の創出を考えると、サイズも含めた荷物の流れを正確に把握し、それを先送りすることがカギになる。すでに荷主のデジタル化率は、かなり高まっているが、出荷側のデジタル化だけでは不十分。受け手のお客様のデジタル化を進める必要がある。それにより、例えば荷物の到着予定情報のメール自動配信サービスの利用が広がり、不在時の荷物の持ち戻り率の低減、ひいては通販商品の返品率の低減にもつながる。ヤマトグループでは個人会員制度の『クロネコメンバーズ』があるが、そうした仕組みがないとコスト構造を劇的に下げ、サービス品質を上げることは難しい」



グローバル事業、アジア展開を加速

──グローバル事業の展開では、どのような取り組みを進めるのか。
 
 「アジアでの『宅急便』ネットワークの拡大を計画している。すでに台湾や中国・上海、シンガポール、マレーシアなどで『宅急便』ネットワークがあるが、さらに他のアジア地域でも早期に展開を始めたいと考えている」
 
──「国際クール宅急便」についてはどうか。
 
 「昨年10月から香港向けで展開を始めているが、第2次中計では台湾とシンガポールへの拡大が明確に視野に入っている。できるだけ早いタイミングで始めたい」
 
──上海郵政EMSと組み、今年4月から中国消費者の個人輸入商品などを中国全土に配送する「チャイナダイレクト」の展開も始めた。
 
 「日本の通販事業者がこれまで手を出しにくかった中国向けビジネスをサポートする仕組みとして非常に面白いと思う。すでに数多くの引き合いも頂いている」



今が通販の物流のあり方を考える時

──「宅急便」のサイズ別の適正運賃収受の動きが通販事業者の間で話題になっている。
 
 「通販事業者様を少しお騒がせしているが、単に我々の採算を改善させる考えでお願いしているのではない。通販を中心に増加する荷物を的確に運ぶためには、対応能力を考えながら必要な機器や人員を効率的に配置する必要があり、そのためには荷物のサイズを把握することが不可欠だ。だが、実はその情報が十分に取れておらず、サイズ別運賃が適正に運用されていないことが一因になっている。荷物の増加に備え、本当のサイズの荷物がどれだけ流れているのかを把握するため、改めてサイズ別の適正運賃の収受をお願いしている」
 
──だが、コストアップ要因と捉える通販事業者は少なくない。
 
 「確かに、"運ぶ"という機能だけを考えると、通販事業者様にとってコストアップ要因になる。それでは納得して頂くことが難しい。だが、トータルの物流の仕掛けを大きく変えることで、品質が格段に上がりお互いがコストメリットを享受できる状況は作れるであろうし、作るべきだと思っている。これは『バリュー・ネットワーキング』構想の取り組みにも通じる」
 
──どのようにして通販事業者とのコストメリットを追求していくのか。
 
 「商品の仕入れからロジスティクス、出荷、配達、資金回収、あるいは返品対応など一連の業務の中で通販事業者様は解決しなければならない課題がたくさんあると思う。その課題を解消する物流改革をお手伝いする。それによって我々も運賃以外の収益源ができ、通販事業者様のトータルコスト削減、さらにお客様に高品質サービスを提供することにつながる。お客様の満足度を高めることは、通販市場に参画する全てのプレーヤーに共通した課題だと思う」
 
──物流問題を考える上で通販事業者との連携も必要だと。
 
 「通販事業者様と我々運輸事業者がイコールパートナーとなって通販市場を支えるという原点に戻るべきだと思う。運賃引き下げの流れがいつまでも続けられるはずはない。それを放置すれば品質劣化が起き、受け手のお客様にご迷惑をかける。通販事業者様にも"本当の値上げ"をお願いせざるを得なくなるだろう。こうした悪循環は断ち切る必要があるだろう。その意味では、通販市場のプレーヤーが集まり、知恵を出し合ってロジスティクス全般の最適化を考える時代になっている。これは我々ヤマトグループにとっても大きなテーマだ」
 
──今後の抱負をお聞きしたい。
 
 「通販市場の拡大に向けたあるべき物流の姿を作っていくためには、運輸事業者だけが頑張っても限界があり、やはり通販事業者様と一緒になって考えていかなければならない。そうしなければ、物流が健全な通販市場の成長を阻害するボトルネックになる恐れがある。我々も適正運賃収受をお願いするだけでなく、より効率的なロジスティクスの仕掛けをプラットフォーム化して提供する。事業規模などに関わらず、そこに乗って頂ける方にはどんどん乗って頂くことが、通販事業者様のトータルコスト削減や受け手のお客様の利便性向上につながるはずだ。通販市場がこれだけの勢いで伸びているのは素晴らしい。この勢いを止めないためにも、プレーヤーが一緒になって物流のあり方を考える必要がある。経済が上向いている今が、その時だと思う」

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