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ヤマト運輸・長尾裕常務に聞く サイズ別運賃要請の背景とは?

 2-1.jpgヤマト運輸が通販などの荷主企業に対し、運賃収受のあり方を見直す打診を行っている。荷主が出す荷物のサイズを把握しサイズ別の運賃を収受するというもので、荷主側にとっては、従来の数量ベースだった契約運賃が引き上げられることになる。ここにきて何故、数量からサイズベースの運賃収受への見直しを行うのか、同社の長尾裕常務執行役員に話を聞いた。(聞き手は本紙編集次長・後藤浩)



──通販などの法人荷主に対し、「宅急便」運賃の引き上げを打診している。概要をお聞きしたい。
 
 「荷主のお客様が出される荷物のサイズ(容積)を把握し、それに応じた適正な運賃を収受させて頂くことをお願いしている。昨年の『クール宅急便』の不適切事案を通じて、当社が改めて気づかされた教訓は、お客様に信頼頂ける品質を継続的に提供しなければ、社会的インフラとしての責務を果たしたことにはならないということだ。これまでは、宅配便業界はシェア争いの様相を呈し、荷物のサイズ(容積)に関係なく1個いくらの世界で運賃を計上する流れになっていた。輸送している荷物の容積ベースでの実態が見えなくなり、実サイズに対して行き過ぎた値引きも一方であった。品質を維持し安定的にサービス提供するために、車両や機材を増やして品質を維持できる輸送キャパシティー(容積)を広げることは引き続き行うが、お客様にも荷物の容積を把握するためのサイズ計上とサイズごとの適正な運賃の収受に、ご協力を頂きたい」
 
──今までの法人荷主の運賃設定は。
 
 「基本的には1個いくらの形だった。見積でサイズ別の運賃単価を提示していても、実際には荷物の大きさに関係なく一番小さなサイズの運賃を適用するケースがあった。競合の関係もあり、損益が出る範囲で営業店に運賃の適用を判断させていたのだが、競合対策で値引きをするにしてもサイズを正しく評価して対応しなければならない。大きな荷物であれば、容積を使いコストも掛かる。その分運賃も上がる。本来あるべき姿に戻すようお客様にお願いをしていく」
 
──このタイミングでサイズに応じた運賃交渉を行う背景には、「クール宅急便」の温度管理問題もあるのか。

 「『クール宅急便』の温度管理問題では、予め荷物の総量を把握し、確実に対応できる荷物の取扱量をコントロールする善後策を打ち出している。これに伴い荷物の取扱状況の調査を行ったのだが、同じ荷物運搬用のボックスでも、荷物のサイズによって積載できる数がかなり違った。従来のように数だけを追っていると対応能力を見誤り、荷主のお客様や受け手のお客様にご迷惑をかけてしまうことにもなりかねない」

──「宅急便」でも同様の課題があるのか。
 
 「実は、昨年12月、大型の荷物の取扱が急増した。他の宅配便事業者が大型の荷物の引き受けを断る動きがあるためで、普段は取り扱いが少ない大型の荷物が当社に集中した。何とかやりくりはしたが、荷物のサイズをしっかりと把握しなければ、今後、こうしたイレギュラー対応が難しくなることも考えられる」

──通販関連の荷物の取り扱いが増えていくことを考えると、荷物のサイズを把握する必要性はありそうだが、サイズに応じた運賃収受は、通販事業者にとってコストアップにもなる。
 
 「確かに、運賃だけで考えればコストアップと思われるかも知れない。だが、当社が考えているのは、運賃だけではなくお客様のトータルコストを下げることだ。この部分では、すでに物流や決済、システム構築などヤマトグループとしてのソリューション機能がある。総合的な提案力によりお客様のコストダウンを図ることは『バリュー・ネットワーキング』構想の要諦でもある。この価値の部分を上手くお伝えできていない面もあるが、顧客満足度の向上にもつながることを説明していきたい」
 
──荷主に対する説明の進捗状況は。
 
 「今年1月から説明を始めた。当初は、現場が急ぎ過ぎて説明の主旨が上手くお客様に伝わらない面もあったが、一度仕切り直しをして丁寧にご説明するようにしている。説明に回る対象の荷主企業のうち、大部分を占める小口のお客様の9割近くは、すでにサイズの把握とそれに対応した運賃の計上をお願いした。中口・大口に当たる一部の百貨店や大手ネット販売のお客様にも話をしている」
 
──荷主の反応は。
 
 「小口のお客様については、一番小さいサイズの運賃のみを適用していたところが難色を示すケースもあるが、理解を示すお客様は少なくない。すでに説明を終えた一部の中口・大口のお客様でも理解をして頂いているところがある」
 
──荷主への説明は、いつ頃に完了するのか。
 
 「4月の早い段階で完了させたいと考えており、これから中口・大口のお客様の説明に入っていく」
 
──荷主側がサイズ別の運賃体系を受け入れた場合の適用開始時期は。
 
 「お客様によって異なってくる。年度の切り替わりや半期の終了など切りのいいタイミングで新たな運賃体系を適用するケースもあるだろう。個別の状況に応じた段階的な導入も考えている」
 
──従来にない大規模な「宅急便」運賃見直しの打診になるわけだが。
 
 「『宅急便』は社会的なインフラとして認知され、イレギュラーな事態が起きた際にも継続的にサービスを提供できるようにすることが重要になっていると思う。だが、その責務を果たそうと考えると、従来の荷物の取扱数量予測だけでは成り立たなくなりつつある。特に、輸送業界では人手の確保が各社共通の問題となっており、荷物が集まっても、人手不足で車両を確保するのが難しいのが実情だ。その中で効率的かつ的確に車両を確保するためには、荷物の数だけではなくサイズを正しく評価して受けることが不可欠になる。確かに、お客様にとってサイズ別運賃体系の導入はコストアップ要因になるが、当社としては、サイズ別運賃収受で得た原資をもとに、荷物の取り扱い拡大に対応したキャパシティの拡大やサービスの強化などに取り組むつもりだ。また、幹線輸送の協力会社にも適正な委託料金の支払いという形で還元できれば、人員確保などに役立ててもらうことにもつながる。通販のお客様に理解をして頂けるかがポイントになってくるが、ご理解を頂けるよう丁寧にお話をしていきたい」

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