Home > 特集企画 > 健康食品の新制度  消費者庁、"裏トクホ"を構想か、対応方針に落胆、「規制強化」と認識

健康食品の新制度  消費者庁、"裏トクホ"を構想か、対応方針に落胆、「規制強化」と認識

1-4.jpg
健康食品の機能性表示に関する新制度に、早くも懸念の声が上がっている。1月に行われた第2回会合で消費者庁から示された安全性評価の対応方針が政府の閣議決定の内容とかけ離れていたためだ。その内容はまさにプチ・トクホと呼べるもの。新制度の下、健食はトクホと同様、「関与成分」を特定し、場合によってはトクホと同等レベルの安全性評価も必要になる。事業者に大きな負担を強いる内容に、業界からも懸念の声が相次いでいる。
健食の安全評価"トクホ並み"要求

1-1.jpg
 「健康食品の機能性表示を解禁する」。昨年6月、安倍首相は成長戦略スピーチでこう高らかに宣言した。が、政府が閣議決定した健食の規制改革は早くも有名無実化しようとしている。まず、消費者庁の示した対応方針を振り返りたい。

 対応方針では、新制度の対象を「関与成分を特定した食品」と定義。安全性は、(1)関与成分を中心とする食品そのものの安全性、(2)関与成分と医薬品等の相互作用――で評価する必要がある。

 (1)では、まず「食経験」の評価を行い、不十分な場合、「トクホの安全性評価」を参考に評価する2段階で行う。(2)では、「関与成分と医薬品」、関与成分を複数含む場合は「関与成分同士」の相互作用の有無を確認する必要がある。これは文献などからすでに知られているものを確認する。
事業者の7割「妥当でない」

 だが、この対応方針に業界関係者から懸念の声が上がっている。

 本紙が健食の販売、製造業者を中心とする26社から回答を得た調査では、トクホと同様に「関与成分」を特定し、トクホ並みの安全性評価が求められる可能性のある対応方針に73%(19社)が「妥当でない」と回答。その大半が方針を「規制強化につながる」と捉え、安全性評価に至っては「緩和」と捉える事業者が皆無だった。

 不満の多くは、新制度の骨格が「まるでトクホ」(回答事業者)であるため。背景にはどのような問題点があるのか。

政府の閣議決定有名無実化

1-2.jpg
 一つには、その対象を「関与成分」を特定したものに限定していることがある。これは機能性を評価する上でもその対象範囲を決定づける重要な部分。閣議決定はその対象を「保健機能を有する成分を含む加工食品...」としており、解釈の飛躍が指摘されている。健食には青汁やローヤルゼリーなど複数の成分が複合的に作用して機能を発揮する原料が多いためだ。関与成分という言葉から単一成分の特定が必要との理解が広がり、事業者の混乱を招いた。

 この点、消費者庁は、「トクホの(有効性、安全性を評価する際に尺度になる)『関与成分』と同じ。複合成分を含む原料も"同一性"が保たれるなど品質が一定に保たれるのであれば認めることはあり得る」としている。

 確かにトクホでも複合成分を含む原料が関与成分として認められた例があり、米国でも複合成分を含む原料が用いられている。ただ、「関与成分の範囲は決定事項ではない」(消費者庁)とも話す。対象範囲が絞られることになれば、健食の多くは新制度から漏れる。

「ヒト対象試験マストでない」

 もう一つは、安全性評価のレベル。まず、「食経験」だが、健食の中には長期に渡り、数万から数十万個単位で飲み続けられている製品もある。これに消費者庁は、「(そうした事例を食経験とみなすことは)あり得るが、何をもって線引きをするかは難しく、十分な年数や規模を示せない。制度化にあたり事業者が困らないようにはしたい」と話す。ただ、多くの健食は食経験が十分とは言えず、トクホを参考にした安全性評価が必要になる可能性がある。

 トクホでは、その製品の毒性を動物試験などで評価する必要があるほか、ヒトを対象にした過剰摂取試験(3倍量、4週間)や長期投与試験(12週間)を行う必要がある。

 一方、新制度は「関与成分」ベースが基本。消費者庁は、"プチ・トクホ"との指摘に「食品の安全性評価はいくつか段階がある。新制度は文献等で関与成分同士の相互作用が問題ないと立証できれば製品の安全性に留意したとなる。一方のトクホは製品でヒト試験による安全性評価がマスト。トクホと同じでは新たな類型をつくる意味がない」と違いを強調する。

製品ベースで評価必要な場合も

1-3.jpg
 ただ、対応方針の中で評価の留意点として「なお、成分での評価か、成分を含む食品での評価であるかに留意」と触れられている点に注目したい。消費者庁はここで言う「食品」は「製品」に読み替えることができると話す。一成分なら問題ないが問題となるケースは、複数の関与成分を含む製品。要は、関与成分同士の相互作用に留意し、製品として安全か、確認が必要ということになる。

 だが健食の多くは天然成分が由来。独自成分での差別化は難しく、成分同士の組み合わせ、配合量など処方の工夫で独自性が追求される。その場合、成分同士の作用は千差万別。製品評価の必要性が触れられているのだ。健食の特性から言えば、結果としてトクホに近い評価が必要になるとの感はぬぐえない。

 そもそも、これまでトクホを取得できるレベルになかった健食で、"自己責任"の下、表示するとなれば絶対条件でなくともトクホ水準を意識せざるを得ない。そうなればトクホの前捌き程度の役割しか果たさない制度になりかねない。

政治、米国関係者も不満を蓄積

 不満を募らせるのは事業者ばかりではない。昨年10月、日本健康・栄養食品協会の要望を受けて発足した議員勉強会(幹事長=鴨下一郎議員)は、検討会を伴走すると意気込んでいる。第2回会合後には消費者庁担当官を交えた勉強会を開催。「すでに業界で健食原料の安全性自主点検は行われており、『機能性表示を検討すべきなのに、なぜまた安全性を議論するのか』といった指摘があった」(会に出席した関係者)として、会の進行に注文をつけている。

 海外事業者も動向を注視する。米商工会議所(ACCJ)に近い関係者は、「米国の制度化は専門家がいかに健全に産業発展に導くかを念頭に置き、専門的知見を結集して進められた。個人的見解だが検討会は、委員の各々の立場に寄った発言が多い。一定の負担はやむ負えないが米国の制度化議論と大きく異なる。何を目標に検討会が立ち上げられたか、"表示を解禁する"と言った安倍首相の発言を改めて確認したほうが良いのではないか」と指摘する。

 安倍首相は成長戦略スピーチの中で健食の規制改革について「アメリカでは国の認定を受けていないことを明記すれば機能性表示ができ、国へは事後の届出をするだけ」「(日本は)お金も時間もかかる。とりわけ中小企業、小規模事業者にチャンスが閉ざされている」と、新制度のメリットを強調していた。

 事業者が"規制改革"との認識の一致を得たのも安倍首相の思いを忖度し、法執行力強化など「強化」と「緩和」の両立を受け入れたためだ。かけ離れた議論に落胆の声が相次ぐ中、消費者庁は軌道修正を図る必要があるのではないか。

検討会の運営は?
議事録いまだ公表なく

「どんな内容か全く分からない」。消費者庁の検討会を巡り、何度かこうした声を聞いた。通常の検討会であればすでに示されているであろう議事録がいつまで立っても公表されないためだ。

 議事録の公開には一定期間を要する。行政側の事務局が記録した内容に、検討会委員の承認が必要なためだ。そのプロセスで発言の真意について、修正や削除が行われる。

 検討会第1回会合は昨年12月20日に行われている。その際、委員には後日、議事録が示され、すでに確認が行われている。だが、2月も後半を迎えようとする今になってもいまだ第1回会合の議事録は公表されていない。確認が行われたにもかかわらず、公表に2カ月かかるのは過去の検討会を例に見れば明らかに"異例"だ。

 ある検討会委員は「第2回会合はまだ議事録の確認作業すら始まっていない」という。開催は1月31日。こちらもすでに3週間が経過しようとしている。業界関係者から注目される検討会だけに「傍聴に漏れた」という話をよく聞くが、多くの関係者は検討会の内容すら満足に把握できない状態が続いている。これでは、消費者庁が検討会の議論を中心に活発化する事業者の意見を封殺しようとしていると疑われても仕方がない。

 消費者庁は「業務が立て込んでいるため遅れているが出さないという話ではない。2回目の議事録もおそらく委員にもう送っている」とする。

 事業者にとってもいち早く新制度の方向性を読み、事業活動に反映させたいところ。業界の命運を左右する検討会だけに、消費者庁には適切な会の進行が求められる。

Trackbacks:0

TrackBack URL for this entry
http://www.tsuhanshinbun.com/mtos-admin/mt-tb.cgi/2424
Listed below are links to weblogs that reference
健康食品の新制度  消費者庁、"裏トクホ"を構想か、対応方針に落胆、「規制強化」と認識 from 通販新聞

Home > 特集企画 > 健康食品の新制度  消費者庁、"裏トクホ"を構想か、対応方針に落胆、「規制強化」と認識

Amazon出品サービス
Search
Feeds

△ ページtopへ