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群雄割拠の後払い決済 ──各社のサービス・戦略とは?

 1-1.jpg通販・ネット販売の商品代金の支払い手段として、後払い決済の注目度が高まっている。すでにネットプロテクションズやスクロール360、ニッセンなどが後払い決済サービスを展開しているが、さらにヤマトグループで金融事業を手がけるヤマトクレジットファイナンスが1月20日から、「クロネコ代金後払いサービス」の展開をスタート。後払い決済は商品を確認してから支払いができる顧客の安心感に加え、通販事業者も代金の未回収リスクがなくなるなどのメリットがある決済手段だが、圧倒的な知名度を誇るヤマトグループの参入で認知度が高まり、通販の定番決済手段として地位を確立する可能性もある。参入事業者が相次ぐ後払い決済サービスの基本的な流れや主要な後払い決済サービスの特徴、利用動向などについて見てみる。

顧客・事業者の双方にメリット

 通販に対応した後払い決済サービスとしては、すでにネットプロテクションズの「NP後払い」、スクロール360が子会社化したキャッチボールの「後払い.com」のほか、ニッセンやGMOペイメントサービスが展開している。

 料金体系や決済上限器楽の設定などの詳細はサービスごとに異なるが、サービス提供事業者が通販事業者に顧客の商品購入代金を立て替え払いした上で、顧客に商品が届いたことを確認してから請求を発送、顧客はコンビニや郵便局などで代金を支払うというのが基本的なスキームになる。

 では、後払い決済にはどのようなメリットがあるのか。まず、顧客側についてみると、注文した商品を確認してから代金の支払いができることが挙げられる。例えば、聴きなれない事業者の通販を利用する場合、顧客は注文した商品が届くのかといった不安がつきものだが、後払いであれば、安心して商品を注文できるわけだ。別の見方をすれば、通販事業者の新規顧客の獲得ツールにもなり、独自に後払い決済を行うメーカー系通販などの場合、請求書発行や督促などの付帯業務負担の軽減にもつながる。

 後払い決済の特徴をみると、顧客と通販事業者双方にメリットがあるサービスと言え、導入事業者の拡大に伴い、顧客の利用も増えているようだが、消費者の認知度が低く、クレジットカードや代引きのようにメーンの決済手段になりきれていないというのが実情。

 だが、ここにきて状況が一気に変わる様相を呈している。その要因のひとつがヤマトグループの後払い決済参入だ。関係者によると、一般紙にヤマトグループの記事が掲載された直後、ソーシャルメディアで「後払いという支払い方法があるのか」といった書き込みがあり、後払い決済の注目度が高まっているとの見方をする。

 「宅急便」や「クロネコヤマト」として圧倒的な知名度を誇るヤマトグループの後払い決済の参入は、同様のサービスを展開する事業者にとって脅威とも言えるが、逆に消費者の後払い決済の認知度を高め、後払い決済市場拡大の起爆剤になると見る向きもある。


"後払い元年"顧客利用促進

 「NP後払い」を展開するネットプロテクションズ(NP)は、ヤマトグループの後払い決済参入を前向きに捉える1社。

 ヤマトグループの「クロネコ代金後払いサービス」を単にライバル視するのはなく、後払い決済市場全体への波及効果面にも着目しており、知名度のあるヤマトグループの参入で後払い決済自体が認知され、後払い決済市場が拡大すると予測。これに伴い、自社サービスの導入事業者や利用顧客も増えると見る。

 およそ10年前から後払い決済サービスを手掛けてきた同社としても、「ヤマトというビッグネームの参入は、それだけ後払いのニーズが高いということの裏付け。今年は後払い決済元年になる」(秋山恭平マーケティンググループマネージャー)と期待する。

 一方、「NP後払い」の利用動向についてみると、毎月の利用件数が約120万件で推移。今期第3四半期(13年4~9月)では、取扱件数、決済金額とも、前年比40~50%程度の純増となっており、昨年12月の取引件数は、単月で過去最高の125万件超となった。この好調を支えるのは、メーカー系を中心に売り上げ規模の大きい有力通販で「NP後払い」導入が増えていることだ。

 また、取扱商品としては、定期購入型の健康食品や化粧品などが中心で、決済金額のボリュームゾーンは5000~6000円。健食や化粧品での利用が多い請求書の商品同梱では、商品単価の関係から別送よりも若干低い傾向にあり、利用中心客層は、30~40代女性になるという。

 依然、「NP後払い」は好調を維持している形だが、NPによると、最近になって、売り上げ規模の大きい有力通販事業者が、本業への専念という戦略的な狙いで同サービスを導入するケースが出始めているという。

 この傾向が強いのは、自社で後払い決済を行っているケースが多いメーカー系通販。後払い決済の付帯業務をアウトソースし、商品開発やマーケティングなど売り上げのための体制整備も急務となっており、本業に専念するための人員を確保する狙いで「NP後払い」を導入する事例が散見されるようになっている。実際、「NP後払い」導入で売り上げを伸ばしている事業者もある状況で、今後、本業に専念できる体制の整備を主眼に同サービスを導入するケースが増えていきそうだ。

 一方、NPが現在、戦略的に最も取り組みを強化しているのが顧客のサービス利用促進。これまで、導入事業者の利便性向上が取り組みの中心だったが、「ユーザーの視点に立ち、よりショッピングを楽しんでもらえるようにしていくことを考えている」(同)。

 その一環として昨年から本格的な展開を始めたのが、会員制ポイントプログラム「フフルルポイント」。現在、会員数が約30万人にまで拡大しており、会員の「NP後払い」利用比率も、毎月1、2%ずつ上昇。もうすぐ10%に届く水準になっているという。

 後払い決済に参入する事業者が相次いでいるが、サービスの特性上、軌道に乗せるまでには時間が掛かるのが実情。先行するNPとしては、ポイントを足掛かりに顧客に「NP後払い」を選んでもらえる流れを作り、優位性をさらに高めていく考えのようだ。


総合的な提案力で展開の拡大へ

 一方、ヤマトグル―プは、金融事業を手掛けるヤマトクレジットファイナンス(YCF)が1月20日に発売した「クロネコ代金後払いサービス」で後払い決済に参入。手始めに試行的にサービス提供を行い、10月からの本格展開を計画する。「宅急便」と情報連携やグループ各社が保有する機能を絡めた提案で、他の後払い決済にはない展開を目指す構えだ。
 今回の「クロネコ代金後払いサービス」は、多様化するtoC分野の決済手段への対応を狙ったもの。ヤマトグループグループの長期経営計画「DAN―TOTSU経営計画2019」では、ノンデリバリーの拡大を盛り込むが、「代金後払いサービス」は「ノンデリバリー分野の中でも、新しい市場を創造しながら顧客企業の要望に応えていく機能になる」(YCFの樫本敦司社長)という。

 サービスの発売とともに始めた今回のテストは、ヤマトフィナンシャル(YFC)の決済サービス「宅急便コレクト」の利用契約を結ぶ通販事業者を対象に展開。YFCが、サービス提供主体であるYCFの販売代理店となって営業活動を行っており、2月初め頃までには実際のサービス利用事業者が出てくるようだ。

 基本的なスキームは、他の後払い決済と同様だが、強みとなるのは「宅急便」と連携した展開。後払い決済は、顧客に商品が届いたことを確認してから請求書を発送するのが基本だが、中には商品到着前に請求書が顧客に届けられるケースもある。これに対し「代金後払いサービス」では、グループのデリバリー機能を担う「宅急便」の配荷情報をもとに請求書を発送するため、「商品の到着前に請求書が届くということはない」(同)。つまり、他の後払い決済よりも質の高いサービスが提供できるわけだ。

 また、スタート時点では請求書を商品と別送する形のみでの展開だが、4月から請求書の商品同梱サービスの投入を計画。請求書の同梱は、健食や化粧品通販のニーズが高く、これまでの営業活動でも通販事業者から要望が多かったサービスで、通販事業者のシステムに対応したカスタマイズなど「仕組みをいかにスムーズにできるか」(同)がカギになると見る。

 後払い決済は、商品を確認してから代金を支払えることが顧客のメリットだが、「代金後払いサービス」では、顧客は購入した商品がしっかりとしたものなのかという前提に立って、サービスを利用するとの考え方に基づき、事業者側が扱う商品の内容も重視。

 この部分では、すでに代引きの展開でYFCがスキームを保有しており、換金性の高い商品や公序良俗に反する商品は基本的に審査が通らない形になっているが、「代金後払いサービス」でも、この仕組みを活用し顧客がより安心して利用できるサービスにする。

 また、通販事業者にとっては、代金の未回収防止や請求業務に関わる手間を軽減し、本業に専念できる体制を作りやすくなるなどのメリットがあるが、「代金後払いサービス」の展開では、決済機能の提供だけではなく、グループ各社が保有する機能と合わせたサービス提案で、通販事業者のトータル的なコストダウンを支援する考え。

 YCFの「代金後払いサービス」は、後払い決済の中で最後発となるが、ヤマトグループの知名度や顧客事業者の基盤、総合的な提案力などを考えると、サービスを導入する事業者が急速に広がる可能性もありそうだ。


柔軟な対応力が差別化ポイント

 スクロールの子会社で通販支援事業を手掛けるスクロール360は昨年6月、後払い決済サービスの「後払い.com」を展開するキャッチボールを子会社化した。同サービスは決済上限を設けていないほか、月額固定費ゼロで決済額の4・8%を支払うプランがあるなど、他社に比べてサービス利用料金が安いことや、対応力などを強みとしている。

 スクロール360の高山隆司取締役は「さまざまな通販支援サービスを提供しているが、決済部分は弱く、その部分が補強できた。通販システム・プロモーション・物流・後払い決済をすべて当社サービスでまかなうクライアントも出てきている」と話す。後払い決済導入後に出荷数が30%増になったケースもあるなど「物流の増加にもつながっている」(高山取締役)という。

 一方、キャッチボール側は「上場企業の子会社になったことで、信用力が格段に増して大手企業との付き合いができるようになった」(キャッチボールの村上あらし社長)。6月以降は大口のクライアントが増えているほか、問い合わせも多いという。

 村上社長は「他社よりも料金が安く、機能面でも劣らないという位置を確立し、維持していきたい」と話す。まず、今春にも数秒で与信ができる仕組みを導入する予定だ。

 子会社になったことで、サービス強化に向けた資金面での不安がなくなったほか、スクロールグループの持つ通販関連のノウハウの導入を取り入れることができるようになった。村上社長は「支援サービスを提供してきたグループのノウハウが導入されたことで、顧客の要望にも柔軟に対応できるようになり、他社との差別化ポイントになっている」と話す。

 また、後払い決済にとって不払い率は重要な位置付けだが、スクロールの持つ顧客の与信に関するノウハウを取り入れることで「低い不払い率を維持しつつ、以前よりも審査のハードルを下げることができた」(同)。

 今後の課題は、スクロール360との連携強化だ。村上社長は「後払い決済をさらに普及させるためには、料金を下げる必要がある」と指摘する。そのためには顧客に請求書を郵送しない仕組みを確立する必要があるが、スクロール360の物流サービスを使っている場合は請求書の同梱が可能になるため、郵便料金が不要となる。将来的には、物流から後払い決済までをワンストップで利用できるサービスをパッケージ化したい考えだ。

 また、キャッチボールでは、自社ブランドで後払いサービスを可能とするOEMサービスも提供しており、「大口の案件が進んでいる」(村上社長)という。

 このほかにニッセンやGMOペイメントサービスなどが後払い決済を展開しているが、今後、認知度の向上とともに通販顧客の利用ニーズが拡大することを睨み、新たに後払い決済に参入する事業者が出てくる可能性もありそうだ。



1-2.jpg【決済に不安要因も】

 通販・ネット販売で定番となっているクレジットカードなどの前払い決済。通販事業者からすると商品代金を確実に回収する上で重要な決済手段だが、昨今、代金を支払った後に商品が届かない、注文と違う商品が届いたなど、消費者に前払い決済への不安を持たせるようなケースが増えているようだ。

 国民生活センターが昨年12月に公表したデータによると、ネット販売の前払い決済に関するトラブルの相談件数が2012年度から増加傾向が顕著となり、13年度の相談件数は4165件で前年比6倍超と異常な伸び方。問い合わせをしようにも、サイトに連絡先が表記されていないなど、確信犯的とも受け取れる事例もある。

 前払い決済は、通販・ネット販売でメーンの決済手段だが、こうしたトラブルの回避策として、後払い決済に対するニーズが高まることも考えられる。


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