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健康食品表示制度創設へ、消費者庁・機能表示検討会、論点の分散化に懸念も

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健康食品の表示制度創設に向けた議論が始まった。消費者庁は12月20日、「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」(座長=松澤佑次大阪大学名誉教授)の初会合を開催。これまで「医薬品」と「食品」の亜狭間であいまいな範疇に置かれてきた健食に、明確な位置づけが与えられることになる。ただ、検討の対象が、生鮮食品から錠剤・カプセル形状の健食まで幅広い範囲に及ぶことから、議論の分散化も懸念される。委員には大局的な見地から制度の大枠を議論していくことが求められそうだ。

検討課題、安全性確保など10項目

 初会合で消費者庁が示した新制度の目的は、「消費者の誤認を招かず、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」をつくること。そのために、検討会では「安全性の確保」「機能性表示の表示を行うにあたって必要な科学的根拠の設定」「適正な表示による消費者への情報提供」という3つの課題を満たすための議論を進めていく。

 検討が必要な論点は全部で10項目(=表)。まず、安全性の確保に関する検討から行い、すでに民間の調査機関に委託する「消費者意向調査」を待って機能性評価、表示のあり方に関する検討を行う。

 消費者意向調査は、表示に対する誤認率が高いと想定される高齢者や病者、妊婦、乳幼児の保護者、未成年などを対象に実施。米国で使われている製品ラベルの和訳版などを提示して消費者の読み取りに関する実態を調べる。消費者庁ではこれをもとに、表示案のたたき台をつくる。

7月めどに結論15年3月制度化

 初会合では、消費者庁から参考とする米国のダイエタリーサプリメント制度の概要が説明された。

 米国で企業の自己責任による表示が許されるのは、「○○に使用している原料は、関節の健康を促進することに寄与します」など働きかける部位を特定する「構造機能表示」まで。機能性評価は、FDA(米食品医薬品局)のガイドラインに基づき行う。

 その科学的根拠は(1)表示の意味、(2)表示とエビデンス(=科学的根拠)の関連性、(3)エビデンスの質、(4)エビデンスの総合性(肯定的・否定的研究の偏りを排除すること)の観点から判断することが必要。だが、米国で最近行われた調査でも事業者が提出したヒト研究557件のうち、(1)4つの観点全て考慮したものは1件もなかったこと、(2)否定的研究は4%で、約半数は製品の摂取が想定される集団とは異なる集団を対象にしていたことなど問題点が複数発生していることが説明された。

 消費者庁では、報告書策定のめどを「遅くとも7月、6月だとなお良い」(食品表示企画課)とする一方、「(そのぐらいにまとめなければ制度実施までの)その後のプロセスが相当厳しくなる」としており、予断を許さない状況。6カ月で8回の会合という短い日程で、結論を導き出していくことになる。

 結論を得た上で、消費者庁では消費者委員会に諮問。パブリックコメントの募集を行い、法改正を進める。新制度が食品表示法に規定されるか否かは未定。新制度の説明会を開催して周知した後、2015年3月に制度を実施する。

生鮮から健食「整理が必要」

 初会合では、会を円滑に進行する上で重要な指摘もいくつか出された。


 まず、検討する対象である食品の範囲について。

 今回、検討の対象は生鮮品から錠剤、カプセル状のサプリメントまで多岐に渡る。
 委員からは「(表示は)農産物の差別化にはなるが、反対に"ビタミンCを多く含まない"と売れないと農家の人は思う。こうした新制度に対する知識をどう広げるか(消費者庁は、農家を束ねるJA、食品研究の公的機関などがサポートして制度運用すると回答)」(相良治美委員)という生鮮品寄りの意見から、錠剤・カプセル状のサプリメントの機能性評価、安全性確保に関する意見まで各分野の専門家が、その見地からさまざま意見を述べた。

 これに対し、「食品の定義は生鮮品からサプリメントまで幅広く整理が必要」(合田幸広委員)、「カテゴリを整理しないと安全性、機能性の議論をしても全てブレる」(宮島和美委員)など、複数の委員から議論の分散化を懸念する指摘が上がり、松澤座長も「対象とする食品によってルールが変わる可能性がある。カテゴリ別にやらないと全然違うことになる」と同調した。

 食品の形状や目的によって求められる安全性や機能性のレベルは大きく異なる。米国のダイエタリーサプリメント制度でも、対象とする食品形状は錠剤、カプセル、粉末、ソフトジェル、液体などのサプリメントに限定しており、今後、議事を円滑に進行する上で、その整理が必要になりそうだ。

消費者教育との一体推進求める

 また、検討課題の一つになっている「消費者に誤解を与えない情報提供のあり方」でも要望が出された。

 健食の安全性確保に詳しい梅垣敬三委員は「表示は教育と連動していないといけない」と発言。
「健食の問題は病気が治るイメージで売られていること。安全性は製品の問題だけでない。まともな製品も病気の治療に使うなど、使い方に問題があると適切な医療にアクセスできなくなる」(同)とし、安全性確保と消費者教育が密接に関わっていることを指摘した。

 消費者庁は「三度の食事、ほどよい運動で健康になるのが大前提。その上で商品選択の際に間違わないようにしたい」としている。

 消費者に誤認を与えない表示を目指す上で、その目的を明らかにし、表示に盛り込む検討も必要になりそうだ。

JADMA・宮島和美理事の発言要旨

「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」に日本通信販売協会(JADMA)を代表して出席した宮島和美理事の発言要旨は以下の通り。

 宮島氏は、「新制度は決して企業のために作るのではない。この国の生活者が商品を選択する上で誤認を与えない制度とすることが重要であり、生活者の立場に立って議論する必要がある」と発言した。

 この考えは1962年、米国のケネディ大統領が示した消費者の4つの権利(安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利)に基づくもの。健食の表示制度を巡る議論に必要な視点とする。現行の表示制度では、これら消費者の権利が担保されていないと考える。

 今回の新制度の検討で対象となる食品が生鮮品から健食まで幅広い範囲に及ぶことにも、その整理を求めた。

 「期間も短く、カテゴリを整理して議論しなければ安全性、機能性の議論をしても全てぶれてしまう」と、議論の論点が分散化してしまうことにも懸念を示した。

 成分を濃縮するなど、加工する錠剤・カプセル形状の健康食品と、生鮮品ではその機能性評価の手法、安全性確保のあり方にも違いがある。

機能表示検討会の行方は?

検討会初会合では、生鮮品から健康食品、その生産現場から販売者、研究者に至るまで各分野の専門家が集まった。だが、委員の意見の中には、その専門的見地に固執したものも少なからずあり、議論は拡散気味だった。

 まず、学術分野の専門家の意見から。

 東京大学大学院薬学系研究科特任教授の津谷喜一郎氏は、医薬品の臨床研究から代替医療まで幅広い分野に精通する。教授の目に止まったのは、資料における「科学的根拠」という用語の使い方。欧米制度を紹介する部分では科学的根拠を示す用語として「エビデンス」という言葉が使われているのに、閣議決定では「科学的根拠」と、日本語のニュアンスで記載されている。「『科学的根拠』と言わなければいけないのか」と質問した。

 国立医薬品食品衛生研究所薬品部長の合田幸広氏は、天然物に関するレギュラトリーサイエンスが専門。科学的根拠が4つの観点から判断されていることに「(海外で成分の)崩壊性(=体内における溶解の程度。成分の体内効率に関係)はどう判断されているのか」と、細部にこだわった。
 確かにこうした観点も重要かもしれない。だが、検討課題が幅広いだけに、細部の技術的な話にこだわると、収集がつかなくなる可能性がある。

 委員間の知識の差も大きい。

 消費生活コンサルタントの森田満樹氏は、科学的情報を背景に消費者視点から食品表示に切り込むライターとして知られる。関心を持つのは、新制度で可能になる表示の一方で重要視される行政の監視体制。消費者庁が表示適正化に向け景品表示法による監視強化を図っていく方針を説明すると、「景表法による監視を強化しても、新制度が食品表示法に規定された場合、健食に適用できるのか」と質問。当然、景表法はすべての商品、サービスの表示をカバーしており、食品も対象になる。

 松澤佑次座長は、大阪大学名誉教授で「メタボリックシンドローム」の提唱者としても知られる。ただ、当の座長も会冒頭のあいさつでは「必ずしも機能性食品には今まで造詣がなかったけど...」と、話していた。

 消費者庁は、検討会設置を前に「前回の検討会(=健康食品の表示に関する検討会)は、表示を巡る課題を整理する探索的な要素が強いため議論が拡散した。今回は方向性は明確でコンパクトにまとめることができる」としていたが、専門家らしからぬ発言が相次いだことに若干、人選には不安も残る。
 検討の対象範囲は多岐に渡るものの、その中で健食の表示は大きなテーマの一つ。こうした知識の差をいかにコントロールしながら議論を進めるかも重要なポイントとなるのではないだろうか。

 検討会は、健食業界の歴史に残る重要なものだ。各委員は、食品、健食分野のエキスパートでもあるが、大局的観点にたった議論に期待していきたい。




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