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ニッセン、セブン&アイの子会社に、ネット技術やカタログを評価、さらなる業界再編も

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セブン&アイ・ホールディングスは12月2日、ニッセンホールディングスを買収すると発表した。TOB(株式公開買い付け)の実施とともに、第三者割当増資を引き受ける予定で、買収額は最大で約177億円となる。ニッセンでは、増資で得た資金を、借入金の返済のほか、サービス強化などにあてる。総合通販企業のトップ企業が流通最大手に買収されたことで、通販業界ではさらなる再編が進むことになりそうだ。

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セブン&アイ・ホールディングス(HD)では、中間持ち株会社のセブン&アイ・ネットメディアがニッセンホールディングス(HD)にTOBを実施する。3日から来年1月22日まで行う。TOB価格は1株410円で、直近1カ月間のニッセンHDの平均株価317円に約29%のプレミアムを付与した。すでに筆頭株主のユーシーシーホールディングスなど大株主上位3社と、議決権ベースで計30・01%の株式の取得について合意を得ている。TOBで50・01%の株式を取得した場合の金額は約126億円。筆頭株主だったUCCグループとの業務提携は同日付で解消した。

 TOBで50・01%に達しない場合は、第三者割当増資を引き受ける。買収額は最大で約177億円となる。ニッセンHDでは第三者割当増資で調達する、約100億円の使途を明らかにしており、通販サイトの使い勝手向上やポイント機能回収など、ネット強化のためのIT投資に約20億円、プロモーション費用などの新規顧客開拓費用に約15億円、商品のコンビニエンスストア受け取りやセブン&アイグループ各社との業務受託・委託など、IT・物流投資に約15億円、金融機関からの借入金返済が約50億円となっている。来年3月から順次これらの施策を進める計画。

 なお、TOBで株式を30・01%以上取得した場合、割り当てられた株式の全部、または一部について払い込みがない可能性もあるが、セブン&アイグループから資金援助を受ける予定としている。セブン&アイグループでは、代表取締役を含む役員3人を派遣する予定だが、ニッセンHDの上場は維持する。

 ニッセン買収の目的について、セブン&アイHDの村田紀敏社長は「あらゆる販売チャネルを連携させた『オムニチャネル』を目指すために必要だった。ニッセンのカタログ販売やネット技術を高く評価しており、新たなシナジー効果が生まれると判断した」と説明。一方、ニッセンHDの佐村信哉社長は「セブン&アイグループはイトーヨーカ堂、赤ちゃん本舗、そごう・西武などで多岐にわたる商品を扱っており、これらを当社の顧客に販売できる。また、セブン―イレブンの店舗でニッセン商品の受け取りが可能になるなど、サービス面の向上も期待できる」などとグループ入りのメリットを語った。

 まず、セブン―イレブンやイトーヨーカ堂の店頭にニッセンのカタログを設置する予定。グループ入りによるニッセンの売り上げの押し上げ効果については「今すぐに数字として出せるものではないが、商品・顧客層が拡大するほか、サービス力が強化されるため、間違いなく効果はある」(ニッセンHD・佐村信哉社長)とした。

 セブン&アイグループでは、通販サイトとしてセブンネットショッピングを運営しているが、今後のニッセンとの住み分けについては「最終的には一元化したい」(セブン&アイHD・村田紀敏社長)という。

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 今後、ニッセンはセブン&アイグループでどのような位置付けを占めるのだろうか。あるカタログ通販会社の社長は「ニッセンの機能が必要に応じて分割されながら、グループの通販やネット戦略のプラットホームと化していくのではないか」と推測する。

 つまり、カタログとネットを主力とした、ニッセンのビジネススタイルはすでに限界に達しており、セブン&アイグループが今後ネット販売を拡大していくにあたって、ニッセンがこれまで培ってきた、通販に関するノウハウやインフラなどをフルに活用していくというわけだ。

 5兆円を超える売上高を誇るセブン&アイグループにとって、単純に売り上げだけでみれば、約2000億円(2013年12月期見込み)のニッセンHDをグループに加えることのインパクトはさほど大きくない。今後、グループ全体で通販の底上げを図る上で、ニッセンがどのような役割を果たすかが注目される。

通販業界の反応は?
手詰まりの通販、買収続くか

流通大手であるセブン&アイ・ホールディングスによる総合通販最大手であるニッセンホールディングスの買収。師走に入り、通販業界を驚かせた買収劇に関して、通販各社の反応は様々だが、"当然の成り行き"と見る声が圧倒的だ。

 「通販ノウハウが欲しい流通と手詰まり感のある通販企業。資本提携は自然の流れ」(A社)、『総合通販がビジネスモデルとして時代遅れ』という中で、各社とも従来の総合通販モデルを維持するのは難しい。ニッセンは財務体質が弱く、経営がうまくいっていないようだし、こうした事態になることはある程度予想していた。株主としてファンドも入っていたし、いろいろな戦略を出してきたのだろう」(B社)との声も。

 そうした声が多いのも業績の維持・拡大で"手詰まり感"を抱える通販各社、特に総合通販各社にとって今回の件は他人事ではないからだ。

 「業界全体の問題であるのは確か。各社カタログとネットの融合を目指しているが、それが付加価値を生み出していない。カタログだけやっていては縮小していくのは必然だが、ネットはその落ち幅を少なくしているだけ。ネットから新規顧客を取り込めていない。なくなるかどうかは別として、将来的には各社ともに今のビジネス規模を維持するのは難しいだろう」(C社)と現状の閉塞感を打破するためこうした選択肢は十分に考えられる。

 そうしたことから今後もオムニチャネル化を進めるため、通販を強化したい大手小売業者による通販企業の買収は増えそう。「総合通販が終わった商売というのではなく、流通最大手が興味を示すというという観点では悪いニュースではない」(D社)が、それが通販企業にとって幸せなことかどうかは別の話だ。「ニッセンのビジネスモデルが将来的によみがえると見込んで7&iが子会社にしたということではないのでは。通販をやるためのインフラを持っており、そこに興味があるのだろう」(E社)、「ニッセンと7&iが合うのか。7&iはニッセンの客が取れるが、ニッセンにとって7&iの経営資源がもたらす効果は良く分からない」(F社)との声も。

 業績の維持・拡大に向けて"手詰まり感"に悩む通販各社と、アマゾンに代表されるネット通販専業への対抗やオムニチャネル時代に対応すべく通販事業を早急に本格化したい流通大手を始めとした有力企業の思惑は完全に一致している。このことを象徴するような今回の総合通販トップの買収劇により、今後、一気に通販企業の買収が加速し、「数年後には今年が通販業界の"分水嶺"だった、と振り返る時が来るかもしれない」(G社)が、その分水嶺が業界にとって良い境目であることを願いたい。

村田・佐村両社長に聞く、資本業務提携の狙い
「オムニチャネル時代に対応する」

12月2日に、資本業務提携の締結を発表したセブン&アイ(7&i)・ホールディングスとニッセンホールディングス。提携の狙いや背景、今後の展開などについて、7&iHDの村田紀敏社長およびニッセンHDの佐村信哉社長の両氏に聞いた。(12月2日開催の記者会見での本紙記者を含む報道陣との一問一答から、一部を要約および抜粋して掲載)
 今回の資本業務提携の背景は。

 村田「これからの消費マーケットはIT技術の進歩により、お客様はインターネットを駆使して、あらゆる販売チャネルに接続・連携し、多様な購買活動を行ういわゆるオムニチャネル時代になってくる。

 当社グループはこのような消費マーケットの変化に対応し、グループのあらゆる販売チャネルをシームレスに連携させ、よりお客様の要望に応えていきたいと考えている。この考え方の下、ニッセンHDと協業の可能性について協議を重ね、これからの消費マーケットの変化に対応するためには(両社で)強固な関係を持つことが必要だと確認し合った。我々はニッセンHDのカタログ販売やインターネット技術を高く評価しており、当社グループのリアルな店舗という強みと融合することで、新たなシナジー効果が生まれることと判断し、提携させて頂くことにした。

 また、ニッセンHDの誠実な商売の社風が私どもの社風に相通ずるところがあった。そういう点でも話がトントン拍子でまとまった」

 佐村「私どもは40年以上、通信販売をやってきた。現在、会員数は3200万人以上となっている。また、最近ではネットの会員も増え、1200万人までに増えている。今回の提携でそうした当社のお客様、また当社子会社のシャディのお客様に対し、当社がこれまで持ちえなかった(7&iグループの)色々な商品をこれから販売できるようになり、非常に品ぞろえの幅が広がる。例えばイトーヨーカ堂の戦略商品や赤ちゃん本舗のベビー・マタニティ商品などだ。

 また、セブンイレブンをはじめとした各店舗での販促・顧客獲得。加えて、例えばセブンイレブン店頭で当社の商品の受け取りが可能となるなどのサービスの向上、物流面でも(7&iグループと)一緒に効率を上げることができそうで、ニッセンにとって非常に大きなメリットがあると感じている。

 今まで私どもには『店舗』はなかったが、今回の提携で我々が今までやってきたカタログやウェブでのビジネスを7&iグループの店舗網と融合させることで、互いのメリットを活かせて、大きな成長ができると考えている。7&iグループの力を借り、"大化け"するような何か新しいビジネス展開もできるのではないかと思う。(7&iHDの)オムニチャネル構想の中で、我々はその一翼を担うような存在になれればとワクワクしている」

 提携の話はいつからあったのか。

 村田「2、3年前から互いの業務に興味があり、話し合いはしていた。話が煮詰まってきたのは私が(ニッセンに)訪問した今年7月前後だ。その時、佐村社長と会い、話をして、互いに意気投合したこともあり、今年9月から具体的に詰め始め、それから今日までの2カ月でほぼ方向感が一致したというわけだ」

 7&iHDには通販子会社の「セブンネットショッピング」がある。また、通販企業はほかにも多くある。その上で7&iHDが提携先にニッセンを選んだ決め手は。

 村田「繰り返しになるが、オムニチャネル時代ではお客様が自由に色々なチャネルに入ってこられ、買い物されるわけだが、私どものグループはまだまだネット分野について技術的な部分で弱いところもある。その点に対して、ニッセンHDが今までニッセンが築いてきたネット技術は魅力的で私どもはこれを高く評価している。

 それと商品開発力。あとはやはり、先ほども話した通り、社風だろう。どちらが上だとか下だとかではなく、社風が似ているところでないと一緒に新しいものを作り出せない。お互いにパートナーシップがとれることが重要だと考えている」

 ニッセンのカタログ通販の評価は。

 村田「カタログを作る技術がある企業というのは素晴らしい企業だと私どもは思っている。カタログそのものは当然、時代の変化とともに変わってくるだろうが、"カタログを作る技術"というものはネット社会においても私は生きてくるものだと思っているからだ」
 セブンネットショッピングとニッセンのグループでの棲み分けは。

 村田「ニッセンの株式は当社グループのITサービスの中心的な持株会社であるセブン&アイ・ネットメディアが持つことになるわけだが、その下に『セブンネットショッピング』や『ニッセンHD』が入り、互い協業し合って、新たな形になっていくと思う。もちろん、最終的に(通販事業は)一元化するというのが私どもの考え方だ。具体的に(一元化の方法をどうするかは)これからじっくり検討する」

 提携後のシナジーだが具体的にはどこにどの程度、出てくるのか。

 村田「顧客開拓や物流、販促、商品開発など色々な面があり、具体的にはこれから詰めていく。私どもとニッセンHDで委員会を作り、1つ1つ検討をしていく」

逆にニッセンが7&iHDと資本業務提携を結んだ理由は。問題意識はどこにあったのか。

 佐村「色々な面で今回は私どもにとって大きな意思決定だと思っている。もちろん、商品の幅も広げたい。販路も広げたい。サービスアップもだ。そして大きいのはやはり店舗の存在だ。我々としてもカタログやウェブだけでなく、我々の商品をお客様が店舗で受け取ったり、そこで返品できたり、サイズ直しをしたりできればよいなと考えており、店舗に対しては非常に魅力を感じた。また我々はデータベースマーケティングをずっとやってきた。お客様個々に最適な商品を提供しようとデータをためてきたが、我々のデータはカタログやネットを通じて年間、数回買って頂いた際のデータであり、我々だけでデータをためるのは正直、限界があると感じていた。今回、7&iグループとの提携で、これまでの何十倍、何百倍という情報が入るのではないか。無論、データ活用についてはまったくこれからで具体的なことは言えないが、もしもそういう情報を活用できれば非常に大きな成果が現れてくるはずで期待している」

 他の流通大手との提携の検討はなかったのか。

 佐村「今回は7&iHDだけで他社と比較して云々ということはしていない。(7&iHDは)オムニチャネル構想をまさに今、進めようとされていて我々の力を活かせる部分もあるのではないかと思った。また、当社の前会長で創業者の川島達三(故人)が以前から7&iグループを尊敬し、私も若い頃から『勉強にしよう』と盛んに言われていた。そういったこともあり、(提携の話を)前向きに考えることができたこともある」

 筆頭株主のUCCホールディングスとは昨年に資本業務提携を行ったばかりだが、UCCとの関係は悪かったのか。

 佐村「UCCホールディングスには、(UCCHDから買い取った)シャディの経営をサポートしてもらったりしていたが、その部分はある程度、メドが付いたので、資本を移しても大きな問題はないと考えた。(コーヒーなどの)取引関係は継続しており、関係は良好だ」

 7&iグループに入るわけだが、競合となるアマゾンの物流業務を一部、子会社が行っている。どうするのか。

 佐村「我々としてはやめる必要がないので基本的には継続する予定だ」

 7&iグループが採用している電子マネー・ポイントは「nanaco」だ。ニッセンは「Tポイント」導入を決めているがやめるのか。

 佐村「我々は(Tポイント導入を)やると意思決定をしている。7&iHDにも伝えている」

 7&iHDとの提携でニッセンHDでは業績面でどの程度のプラス効果を見込んでいるか。

 佐村「何%とか何億円という具体的な数字はまだ測り兼ねているが、商品面や販路の拡大、サービス力は確実に強化される。さらにカタログに関しても強化が見込める。当社でもネットの売上割合が直近で60%程度まで達しているが、50~70代の方には『ネットよりもカタログだ』と言って頂けるお客様はたくさんいる。そういったカタログの技術を7&iグループのお客様の中のそうした年代の方に提供できれば、間違いなく効果はあるはずで、非常に可能性があると考えている」

 効果が出てくるのはいつ頃になりそうか。

 佐村「これから色々な分野で検討していくので何とも言えないところだが、来年後半くらいから効果を出したいと思う」

 アマゾンや楽天などネット専業の小売業が売り上げを伸ばしている。今後、7&iHDとしてそういったところとどう差別化を図るか。

 村田「日本でもこれからオムニチャネル時代を迎える。それを踏まえ、当社グループでもオムニチャネル戦略をこれからやっていこうと今年9月にアメリカに視察にいってきた。アメリカでもアマゾンなどがネットを駆使して大きな売り上げを上げている状況だが、そのアマゾンからアメリカのセブンイレブンに『アマゾンロッカー』(※私書箱のような専用のロッカーを利用して購入した商品を受け取ることができるサービス)を置いてほしいという要望があるという。その背景は『ラストワンマイル』、つまり、最後にお客様にお手渡しするところが重要で、お客様に手渡す最後の1マイルが勝負を決めるようだ。日本で考えた場合は恐らく200メートルの距離感が非常に重要になってくるのではないか。我々は今、セブンイレブンを含め、1万7000以上の店を持っており、それら店舗を活用することでこれからのネット社会では、非常に有効になっているのではないか。単にモノを売るだけでなく、同時に商品面や店舗での接客やネットを使った説明だとかを含めたブランド力が重要になるだろう。セブンイレブンやヨーカ堂、そごう・西武、またニッセンというブランドがお客様にとってよりよいブランドになるように、磨き上げていきたい」




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