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【アスクル×ヤフーのEC】  注目の「ロハコ」、次の一手は?

 1-1.jpg「ECで圧倒的なナンバーワンになる」──。アスクルとヤフーが資本業務提携を結び、日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」を昨秋に新設して鳴物入りで競合ひしめくBtoC通販に参戦してからまもなく1年が経過する。日本最大のポータルサイトとオフィス用品通販最大手がタッグを組み、ECでアマゾンや楽天に真っ向勝負を挑むという動きは注目を集めた。しかし、スタート後はなかなか計画通りには進まず、初年度の業績目標には大幅な未達という結果に。注目される「ロハコ」の現状と今後とは。

机上の数字は達成ならず

 「机上の数字だった。実際にやってみると計画通りにはいかなかった」。アスクルの岩田社長は「ロハコ」の初年度の業績についてこう感想を漏らす。

 「年商180億円、黒字化」を初年度の業績目標に掲げて昨年10月に、アスクルの物流力を活かした当日・翌日配送といった速配などを強みとした日用品通販サイト「ロハコ」を立ち上げた。年商180億円と言えば、日用品ECではトップのケンコーコムの年商を上回る数字。また、アスクルの決算期は5月のため、実際には「初年度」は半年ほどしかない。

 そうした中で当初から「本当に(目標を)達成できるのか」と業界関係やアナリストなどからは懐疑的な意見も確かにあった。ただ、日本最大のポータルサイトを運営し圧倒的な集客力を持つヤフーと法人向けオフィス用品通販最大手で商品力や配送力に大きな強みを持つアスクルという両社タッグによる共同通販事業への期待値は高く、アマゾンや楽天に匹敵する規模感を有した新たなメガ通販サイトの登場が期待されていた。

 しかし、蓋を開けてみると「ロハコ」の初年度(13年5月期)の業績は売上高が21億円、営業損益は13億円の赤字に。日用品ECという競合ひしめく市場で、かつ事業スタート半年で21億円の売上高達成は通常であれば誇ってよい実績だろうが、非常に高かった期待値と目標とのあまりの乖離ぶりによって、業界内では「正直、肩すかしをくらった感じ」との声も少なからず出たようだ。


品ぞろえや集客で見誤り

 では、なぜ目標に対し大幅な未達となったのか。これについて、「ロハコ」事業を管轄する同社のBtoCカンパニーCOOの吉岡晃氏は「個人向けのECにふさわしい品ぞろえや価格になっていなかったことは、やっていて、ひしひしと感じた。また『検索エンジン対策』が苦戦するなど集客面での見誤りもあった」と率直に反省点を口にする。

 トイレットペーパーや水などの日用品の品ぞろえに関しては、本業の法人向けオフィス用品通販でも年間ですでに400億円程度の売上実績があり、それが個人向けになったとしてもある程度の自信があった。「(まとめ買いの)"業務用"という形でドンと紹介すれば、個人向けでも一定量は売れるだろうと思っていた。ただ、やってみるとキッチン回りや風呂回りの商品など個人で使われる消耗品などの品ぞろえがまったく足りていなかったことが分かった。これだと買い回りが起こらず、購入頻度も伸びて来ない。価格も当初は競合の通販サイトを意識していたが、ドラッグストアやスーパーなど実店舗を見るべきでお客様からは『安くない』と思われてしまうなど価格戦略にも課題があった」(吉岡氏)という。

 集客面に関しても、ヤフーのポータルサイト経由の集客は想定通りの効果を発揮したものの、集客のベースとなる検索エンジン対策で苦戦。「リスティング広告も精度のところで課題はあったが何よりSEOは効果を出すまでに時間がかかる。検索対策による集客効果をフルに見込んでしまったことも見誤りだった」(同)とする。

 このほか、そもそも主力のPCサイトの立ち上げが昨年11月となり当初より2カ月程度、遅れたことや、サイト内で商品を探しにくいなどサイト内検索の精度や商品検索から適切なランディングページに誘導できていないなどサイト内導線の課題、決済面でもヤフーユーザーには便利な「ヤフー!ウォレット」を全面に打ち出したが、他の決済方法が少なく、買いにくい状況などがあったようだ。「スタートを"爆速"で立ち上げたために、走りながら様々なことチューンナップする必要があった」(岩田社長)ことが目標未達の大きな原因だったようだ。


「この事業は勝算あり」

 スタートダッシュに失敗した「ロハコ」。様々な理由があったにせよ、年商は当初計画の9分の1にとどまったのは事実だ。やはり、アマゾンや楽天などの強力な競合がすでにひしめき、「アマゾン、楽天で買う」ことが習慣となっている人々に"買わせる"ことは容易なことではない。個人向けECは勝ち目のない勝負なのか。

 しかし、「我々はこの事業は勝算ありと判断した」と岩田社長はあらためて「ロハコ」への期待感を口にする。岩田社長曰く「勝ちパターンはすでに見え、すべきことは分かっている」ためだという。このため、今期は「レッドオーシャン(競争が激しい既存市場)に飛び込んで、その先に見えている魅力的な大陸を目指す」(岩田社長)とする。どういうことか。

 アスクルは前期末となる今年5月の大型連休明けにヤフーと"ある実験"を行ったという。「非常に強い商品」を「非常に強い場所」に露出して、どの程度まで売れ行きが伸びるのか。「要はどこまでやったら、どこまでいけるのか、を知りたかった」(吉岡氏)として、2リットルのミネラルウォーター3本セットを171円、徳用800グラム入りの売れ筋シリアルを698円など数点の人気商品を格安で販売。これをヤフーのポータルサイトトップのセンターバナーで「爆安スペシャルセール」と題して露出した。

 この結果、この水の5月度の販売点数は4月度比で3・6倍に、シリアルは同2・4倍まで拡大。5月の全体の売上高も同1・7、8倍程度の7億円強となった模様だ。「当たり前の話だが、皆様が必要としている商品を競争力のある価格で、目立つ場所で露出すれば、全国からお客様は確実に集って下さる」(同)ことを確信したという。これは当然の話と言えようが、年商2000億円規模のオフィス用品通販事業で培った商品調達力を持つアスクルと、日本最大のポータルサイトを運営するヤフーが展開しているからこそ実現可能なことと言え、誰もが真似できるものではないわけだ。

 また、主力事業の法人向けオフィス用品通販で培った物流力を活用して「ロハコ」では特別料金は徴収せず(購入合計額が1900円以上で送料無料)、首都圏と大阪圏では当日配送、翌日配送はほぼ全国で実施している速配サービスが、有料もしくは年会費が必要な「アマゾン」など競合サイトとの差別化要素になっているようで、「リピーターも確実についてきている」(吉岡氏)と自信を見せる。


新物流拠点稼働品ぞろえ拡充へ

 こうして見えてきた「成功パターン」などを踏まえて、むしろ、今後はさらに攻めの姿勢を強化していくことが重要と判断。そこで今期からは「さらなる品ぞろえの拡充」「定番商品の価格戦略」「徹底した集客」を進め、「ロハコ」の強みを磨き、シェア拡大を優先。将来的な収益化につながる「購入の習慣付け」を促進してアマゾンなど競合の牙城を切り崩していきたい考えだ。

 ヤフーとの資本提携などで調達した資金など約200億円を投じて新設した東京ドーム1・5倍の広さを誇る同社最大規模の新物流拠点「アスクルロジパーク首都圏」が7月末に稼働し始めたことで、当日・翌日配送可能商品の在庫を従来の3万SKUから5万SKUまで拡充。さらにまだ余力を残しており、最大7万SKUまで保有できることから、一気に「ロハコ」の品ぞろえの拡充を加速させる。

 8月6日には「ロハコ」の大規模なサイト刷新を実施して、ビジュアルにこだわりつつ、買い回りを誘発させるサイト構成に改めた。そしてこれを機にメーン商材であり、買い回りや購入頻度向上など「購入の習慣付け」のカギを握るパスタや調味料などの食品や水、お茶などの飲料、ティッシュペーパーなどの売れ筋の日用雑貨の大幅な拡充に並行して、キッチン用品や健康食品、デザイン家電、ペット用品などを新たに追加・拡充した。さらに「無印良品」「DEAN&DELUCA」「タリーズコーヒー」など有力店舗の商品の取り扱いもスタートし、刷新したサイト内には専用コーナー「ブランドモール」を設置した。

 購入頻度の高い生活必需品などの定番商品やペット用品などリピート購入を促す商品群は、「集客カテゴリ」として、アマゾンなどECの競合にはもちろん、ホームセンターやドラッグストアなどリアル店舗に負けない価格競争力を適時、セールなども行いながら徹底的に維持する一方で、キッチン用品や「ブランドモール」の商品などは粗利のとれる「収益カテゴリ」として位置づけ、「集客しながら収益を出す形」を作り上げていく考えだ。

 「"ロジパーク"の稼働で従来の倍以上の最大7万SKUを当日・翌日に配送できる体制が整った。新しいカテゴリで回転の速い売れ筋をどんどん在庫し、『ヘッド』を立て、一方でそれを軸に、他の商品への買い回りを促し、収益が作れる仕掛けを進める」(同)とする。


年間1・3億人を集客する

 品ぞろえの拡充を進める一方で、新規顧客獲得策を強化する。今期は「月にすると1000万人、年間ベースで1億3000万人を集客できる予算」(岩田社長)だと試算する前年の2・5倍程度の金額となる約13億円を広告宣伝費として計上。検索エンジン対策を軸に、ヤフーと連携した広告展開などWEB回りの広告展開を強化する。「検索対策にかなりの金額を割こうと思う。品ぞろえを増やすことでリスティング広告で『使える玉』も増える。また、前期はSEMも試行錯誤していた部分もあったが、効果のあるなしを見極め、商材やキーワードを絞ってやっていく。当然、SEOも強化するし、ヤフーのトップページバナーによる集客ももっとやっていく」(吉岡氏)。

 さらに「都内や大阪市内在住で30~40代の働く男女」という主要な顧客属性を踏まえて、7月には実験的に新宿や渋谷、池袋、横浜、大阪で「ロハコ」で販売する主要商品と価格を掲載し「注意:朝ロハコで買うと、あなたが帰宅するよりも早く届いてしまう可能性があります。」とコピーを付けた「駅貼りポスター」を掲示する試みを行った。今後も例えば「ロハコの利用者には子供がいる家庭が多い。例えばだが、赤ちゃん雑誌と組んで広告を行うなど、ネット以外でもターゲット層にリーチするには何が効くのかという視点で様々な実証実験を行っている」(同)とする。


今期は年商100億円へ

 こうした施策により、競合他社で買い物する消費者を「ロハコ」の顧客に取り組み市場シェア獲得を推進。その結果、今期も営業損益は23億円の赤字を計上するものの、売上ベースでは初年度の5倍となる100億円の達成を見込むという。「品ぞろえを大幅に増やし、価格も見直し、買い回りを促進していくわけで(初年度のような机上の数字ではなく)最低限、達成しなければならない現実的な数字だ」(同)とする。

 「我々が目指しているところはもっと高みにある」。出遅れた初年度を経て、飛躍を誓う今期こそ思惑通りの結果を出し、来期以降の収益化、すなわち「成功」につなげられるか。

 個人向け通販では過去に何度も失敗して辛酸をなめてきたアスクルにとっても、アスクルと資本提携してEC小売業への参入やアスクルを使った物流代行事業などで仮想モールのテコ入れを目論むヤフーにとっても「ロハコ」の失敗は許されない。正念場を迎えた「ロハコ」。今後の展開が注視されそうだ。



1-2.jpg【医薬品ECの展開は?】

薬局以上の親切なサービスを

 今期から本格的に品ぞろえの拡充を図っていく「ロハコ」。中でも注目される商材が紆余曲折を経て先ごろネット販売が"解禁"となった医薬品について。「ロハコ」事業を管轄するBtoCカンパニーの吉岡晃COO(写真)が「ロハコ」での医薬品の今後の販売戦略について語った。(7月の決算説明会より一部抜粋



 我々はもう10年間にわたって病院や調剤薬局など医療施設向けに行う医療材料の通販事業の中で物品管理や倉庫の管理などプロ向けの品質管理を行っており、安全性には自信を持っている。これらの経験や実績は(医薬品ECにも)そのまま生かせ、我々とって非常にアドバンテージがあると考え、医薬品の販売を進めている。医薬品については6月から第3類医薬品(目薬や湿布など)の販売を開始しており、一定の実績がついてきているが、今後は第1、2類医薬品についても取扱いを開始したい。

 ネットで買いたい医薬品というのは様々なニーズがある。ある調査によると、ネットで購入したい薬の上位は育毛剤や妊娠検査薬などだ。実店舗では薬剤師になかなかアドバイスを聞きにくいものだ。また、薬用酒など重くてかさばるもののニーズも高いようだ。

 これを踏まえて、我々の医薬品ECは「品揃えは日本最大」「ターゲット価格はリアル店舗価格」などはもちろん、「サービスで徹底的に差別化」にこだわっていきたい。薬のネット販売が解禁になったからと言っても、一般商品のように検索してずらっと商品が出てきて、レビューなどをもとに薬を買って頂くことが正しい売り方だとは思わない。人それぞれでアレルギーを持っていたり、既往歴も違う。併用薬などもあるだろう。そこをある意味でリアルの薬局以上に親切なサービスでフォローしたい。

 具体的には薬剤師によるネットを用いた懇切丁寧なサービスを展開したい。薬剤師が電話やチャットで24時間いつでも症状に適した薬のアドバイスを行う。

 また薬剤師を介さなくても調剤薬局が使用している信頼性の高いデータベースを基に、利用者が自分の症状のほか、既往歴、アレルギーを打ち込んでいくとおすすめの薬が表示、飲み合わせで問題がある場合などには禁忌メッセージも出すというような仕組みも考えている。




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