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【特別インタビュー】ファンケルの池森賢二会長 3年で「根本から作り変える」

 2-1.jpgファンケルでは今年4月、創業者の池森賢二氏が会長に就任し、現場復帰した。新体制の下、ファンケルでは持株会社体制への移行や店舗スタッフのベースアップなど、矢継ぎ早に経営改革を実行。再成長に向け始動した。化粧品分野における「無添加」、健康食品分野における「価格破壊」など、パイオニアとして通販業界をリードしてきた池森会長が見据える"次の時代"の展望はどのようなものか。池森会長に聞いた。(聞き手は本紙記者・佐藤真之


到達目標明示し10倍速で改革
 
──代表に復帰された経緯は。

 「上場している以上、業績が悪化し、株価が下がってくる中で株主に対する責任がある。再登板しなければならないのは不幸な出来事と感じるが、創業者として放置はできなかった」

──リブランディングの成果がおもわしくなかったということもある。
 
 「前年比2~3%の伸びはあったが、前の年が東日本大震災の影響を受けたことを考えると実質的にマイナス。残念だが戦略が間違っていたと思う。そうした経緯で前社長から相談があり、戻ろうと決断した」
 
──復帰後の社内の変化は。
 
 「進む方向がはっきりせず、社員が戸惑っているのが分かっていたので、方針を明確にしなければいけないと考えていた。そこで"健康食品と化粧品はまずこうする"という到達目標を設定した。どこに向かって走れば良いか、社員も分かるようになった。今、社員の平均年齢が38歳。65歳を定年とすると約30年ある。私は3年しかやらないと言っているから10倍のスピードが必要だ。だから"スピードを上げることができない社員は社員じゃない"と叱咤している。緊張感が必要だ」
 
──今後、後継者の育成や従業員教育をどう行っていく。
 
 「会社を作り直すという感覚に近いが『ファンケル大学』を作り、根本的な教育を始めている。事業展開の中で、社員の"ファンケルマン、ウーマン"としてのレベルが相当落ちてしまった。例えば店舗では、『売れないからノルマを課す』、『ノルマを課すからスタッフが辞める』、『辞めるから新しいスタッフを入れる』『教育が追い付かず、サービスなどの質が悪化する』という悪循環に陥り、それが顧客の不満につながっていた。もう一度、ファンケルの社員を根本から教育し直さなければいけない」


ブランド再構築「方向性違った」
 
──リブランディングの評価は。
 
 「私がいなかった10年間、戦略らしい戦略を立てずに成り行きでやってきた。唯一、戦略を立てたのが4年前に始めたリブランディングだった。売り上げを3割強伸ばす目標で相当な投資も行い、全社集中して"無添加化粧品でも格好良くいこう"と、昨年3月にスタートした」
 
 「確かに化粧品は格好良くなったと思う。ただ、顧客層は50代以降も多い。そういう方には全く合わない化粧品を作ってしまった。パッケージ一つとっても、横文字の細い字や白いトーンで統一した。お客様からすれば逆に見分けがつきづらくてどれを買ったら良いか分からない。下期にパッケージは変える。ただ、長年処方を研究した製品で中身は素晴らしい。少し手を加えるだけで化粧品は大丈夫だと思う」
 
──化粧品では初めて強いイメージキャラクター(吉田美和さん)を打ち出した。
 
 「今後は従来のスタンスに戻す。女優やモデルをイメージキャラクターにすると、誰であってもその世代の化粧品とのイメージがついてしまう。『ファンケル化粧品』はすべての世代に使っていただける製品だから、私は意識的にモデルを使わないようにしてきた。イメージが逆になってしまった」
 
──リブランディングでは、スキンケアを軸にした顧客コミュニケーションを展開していた。
 
 「8月からは洗顔パウダーを軸に展開していく。製品のリニューアルを行い、新たな広告も予定している。中高齢向けの製品は弱い部分があるので充実させていく」
 
──健康食品の事業規模が、化粧品のブランドイメージに悪影響を与えているとの指摘もある。
 
 「来年4月にはホールディングス体制に移行し、化粧品と健食の経営をはっきり分ける。化粧品店舗で健食を売らず、健食の店舗で化粧品は扱わない。大きな店舗であれば壁で仕切り、店長も2人配置する。ただし昔から指摘されていたことだが、本来、美しい肌を保つにも健康であることが必要。イメージが崩れるという考え方は違うと思う」
 
──ブランディングを明確にしていく。
 
 「そうなる。ただ化粧品でも肌を美しく保つために必要な『ビューティーサプリメント』は扱っていく」


全く違う会社として生き残る

 
──過去に代表を務められていた頃と比べると化粧品の競合他社も増え、ECの事業者も台頭してきた。市場の変化をどう感じている。
 
 「まさか医薬品や食品会社から健食や化粧品を扱う企業が出てくるとは思わなかった。世界の小売業を見ても、アマゾンが出てきた頃から通販の常識が変わり、今ではシアーズ・ローバックやJCペニーの苦戦が伝えられている。アマゾンは儲けの大半を、利益を出すことより規模の拡大、インフラ投資に注ぐ。全国に倉庫を持ち、5000万点もの商品を扱っているわけだから手ごわい。これから企業が生き残るとすれば、頭をフル回転させて他社が真似できない、世の中を変えていくような製品をつくっていかなければならない」
 
──メーカースタンスでないと勝てないと。
 
 「そう思う。思い上がった言い方をすれば、それだけ強い製品を持っていれば"気に入ったところでないと売らせない"とできる。アマゾンのような強敵が相手となると、今までのやり方では無理だろう」
 
──どう対抗していく。
 
 「3年で今までのファンケルと全く違うファンケルに根本から作り変えてしまう。違う会社として生き残っていく感じになると思う」


健食、化粧品とも「オンリーユー」に
 
──まず、健康食品事業の展望を聞きたい。

 「サプリメントという言葉は私が最初に使い、爽やかな原辰徳さんを広告に起用して、胡散臭い印象のあった健康食品業界に新風を吹き込み、市場を拡大した自負がある。しかし、今では多くの会社に業績面で追い抜かれ、社員も忸怩たる思いを持っていると思う。パイオニアである私自身が抜き返す方法を示さなければならない。幸い私が社長だった頃に仕込ませたものがようやく陽の目を見るところに来ている」

──どういった製品か。
 
 「一つは、医療機関向けブランド『クリニケード』で展開し始めたもの。今、私が私財を投じて設立した『健康院クリニック』でテスト販売している。一見ふつうのドリンクだが、キャップ部分にはマイクロカプセルに閉じ込めた機能性成分が仕込まれている。飲む時にキャップ部分からカプセルを押し出し、ドリンクに溶かして飲む設計になっている」
 
 「利用者の血液や遺伝子を調べた上で、必要な成分をカプセルに閉じ込めるため『オンリーユーサプリ』になる。また、これまで1回に10錠飲む必要があった人も"一剤"で済ますことができる。将来的には体内効率を高めるため、カプセルの厚みを調整して体の各器官で溶かすことができる技術開発も検討している。大衆化には価格面で課題があるが、技術的に難しく、他社でも容易に真似できないと考える」

──化粧品では、どういった取り組みを進めているのか。
 
 「角質から個人の肌質を分析し、その方向けの化粧品を作る研究を進めている。送られてきた角質をどう分析して製品化するかなど確立できていない部分はある。ただ、『ファンケル銀座スクエア』のリニューアル後、実験的に展開したいと考えている。いずれにしても顧客の肌の状態を知った上で、その人にあった化粧品を作るという方向に持っていく」
 
──化粧品の考え方自体が変わってくる。
 
 「そういう時代がくると思う」


専門家養成で売り方も差別化
 
──店舗事業はどうテコ入れする。

 「店舗を専門家集団に変え、売り方でも明確に差別化していきたい。健食の店舗は薬剤師や管理栄養士を配置し、『オンリーユーサプリ』であれば、顧客の血液や遺伝子、食習慣を調べた上で医師の監修の下、配合成分を決める。従来のようにただ来た人に売るのではなく、相談やカウンセリングを重視する。化粧品も皮膚生理学やメークアップアーティストなど専門性の高いスタッフを起用する。おそらく他社とは全く違う店舗になると思う」
 
──信頼性は高まる。
 
 「そう思う。そうなれば『オンリーユーサプリ』もあるし、"あなた向けに処方されたサプリはこれですよ"と言える」
 
──業態としてそういうものが求められてくる。
 
 「そういう時代に入ってきていると思う。生意気な言い方だが、戻った以上"次の時代はこうだよ"ということを示したいと思っている」
 
──技術的な問題もあるが、これらの取り組みが実現するタイミングは。
 
 「今『ファンケル銀座スクエア』の改修工事を行っている。3~5階に化粧品、6~8階に健食のモデル店舗を作る。10月に完成するが、これをモデルに全国に新型店舗を展開する。健食は各都道府県に1つのイメージ、化粧品の店舗はある程度整理していくことになる。店舗は売り上げより通販のショールームという考えで展開する」
 
──売り上げ計画は。
 
 「世の中でやっていないことをやるわけだから、売上予測は未知数。リスクはあるが、新しい取り組みにどれだけお客様が反応してくれるか、通販自体"啓発販売"の側面があるが、まさしく啓発していくことになる」
 
──通販事業の課題は。
 
 「一番の課題はコストパフォーマンスが落ちていること。『お試しセット』で接点を持ち、2回目の本商品注文で、初めて継続的な関係を構築できる『お客様』になる。ただ、これまでは1回目の『お試しセット』注文を一つの指標にしていた。魅力あるものにしようとポーチをつければ注文はくるが、本注文につながらない。複数回の購入を通じて本当の『お客様』になってくれたかまで目が届かず、社員にもそういう考えが根付いていなかった」
 
 「一方、通販や店舗の見直しを行う間、流通(卸やOEM)のスタッフも増やして力を入れていく。業績が悪化しているとはいえ、ファンケルというブランドに強い魅力を感じてくれている小売業の方も多い。直販部門だけでなく、流通でもしっかり売り上げていきたい」

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