

「1年ほど前から、お客様に変化が見られた」。千趣会は、今回の取り組みの端緒をこう語る。もともと同社の顧客はこだわりを持つ層が多いが、家具・インテリアについて、より高品質で長く使える商品の要望が目立っていたという。
このため、グループインタビューなどを通じ、顧客の声を収集。その結果、生活が成熟化し、より良いものを欲している顧客の像が浮かんだ。
こうした顧客は、千趣会の中でもまだ少数派だが、デフレに伴い価格志向が強まる一方で、価格ではなく質を求める本物志向の顧客は着実にいる。高単価商材でも価値に見合った値ごろ感があれば、受け入れられると判断し、具体的な施策に乗り出すことにした。
天然木使用商品を巻頭ページで展開
高品質・高価格家具・インテリアの取り組みを始めたのは、今年1月に発刊した家具・インテリアカタログの「ライフスタイルインテリアブック」の春号から。
おしゃれ感やデザイン性のある商品をメーンに掲載する同カタログの場合、高品質・高額商品とも親和性があり、春号では、「With Furniture(ウィズファニチャー)」として、天然木のオーク材とウォルナット材を使用したカントリー調のリビングキャビネットやテレビ台、リビングテーブル、ブックキャビネットなど10商品を掲載。価格は2万9990~8万9990円で、誌面上では、原材料へのこだわりや長く使える商品であることなどを訴求した。
従来、「ライフスタイルインテリアブック」では、オリジナルの雑貨ブランド「ミニラボ」などかわいいイメージの商品を巻頭に掲載していたが、顧客の間で広がりつつあるニーズを踏まえ、春号では高品質・高単価商品ページを巻頭に掲載した。
5月発刊の夏号でもこの形を踏襲し、巻頭で「WHITE INSPIRATION(ホワイトインスピレーション)」と題したページを設け、アンティーク調の46商品を展開。ダイニング周りのインテリアや食器、ラグなど掲載商品のバリエーションを拡充している。
価格帯としては、小物関係では数千円台からの商品もあるが、インテリア系ではレンジ台が4万9990円、7万9990円、キャビネットが4万4490円、5万9990円など、高価格帯に属する商品も掲載。商品を配置した部屋のカットを使いながら、商品の落ち着いたイメージや質感を訴求している。
専用ページ新設しネットでも展開へ
千趣会によると、これまでの展開では、好調と言えるほどの売れ行きを見せているわけではないもよう。顧客の間でもまだ少数派のニーズに着目した取り組みであることや商品特性などを考えれば、これからというのが実情だが、一方で着実にニーズがあるとの手応えは感じているようだ。
その一端をうかがわせるのは、「ベルメゾンネット」で扱っている高品質・高価格家具のネット限定商品の動き。販売数量は大きくはないが、「意外に反応がある」(同社)とし、ネットでも高額商品が購入される兆しが見え始めているという。
このため千趣会では、7月をメドに「ベルメゾンネット」内で高額インテリアのカテゴリーページを新設する考え。国内メーカーの中級以上のプロパー商品を扱い、スタート時で約600商品の展開を計画する。平均価格は5万円強となる見込みで、40万円前後のベッドや、20万円前後の収納インテリアなどの高額商品も扱うようだ。
ネットでの高額インテリアの展開で特にポイントとなるのは商品の在庫。カタログの場合、自社で在庫を持たなければならず、欠品によるチャンスロスや商品が売れ残った場合のリスクは大きかったが、カテゴリーページ新設の取り組みでは、メーカー直送の形とすることで在庫リスクを解消。また、サイト上で顧客が在庫数量を確認できるため、数量限定商品も扱いやすいなど、展開手法の広がりが期待できるなどのメリットもある。
カテゴリーページを通じた高品質・高額インテリアの展開はテスト的なものだが、千趣会では協力メーカーの拡大を進める考え。定期的に新商品を投入し、将来的には1200商品以上の品ぞろえを目指す。
アクティブシニア層の開拓も視野に
高品質・高額インテリアの取り組みは、顧客の中で見え始めている高品質で長く使える商品に対するニーズを出発点としたものだが、このタイミングで取り組みに着手した要因にはマーケットの環境もある。
特に同社が着目しているのは、消費税増税前の駆け込み需要や住宅着工件数の増加など。「今の通常の生活の中で買い替えを促すのは難しいが、家の新築に合わせ、新しい家具・インテリアを買い揃えたいというニーズがあるはず」(同社)と見る。
また、今回の取り組みでは、より質の高い商品の提案を通じたアクティブシニア層の開拓も視野に入れる。本物へのこだわりという点で、既存のベルメゾン顧客に通じるものもあるが、経済的な余裕があり、今後の生活を楽しみたいという層にアプローチする。さらにインターネットを使える層の年齢が上昇し、ネットで高額商品を購入する傾向が進むことも追い風と見ているようだ。
もともと千趣会には、価格以外の部分でのこだわりを持つ顧客が多い。その変化を見極めながら高品質・高額の家具・インテリアを提案し、新な展開につなげるという施策は、同社ならではのものと言えるだろう。
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