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【健康食品の規制改革】 どうなる?健食表示の新制度

 1-1.jpg政府が「規制改革実施計画」を閣議決定し、健康食品の機能性表示に向けた制度議論が動き出す。これまで医薬品と食品の狭間であいまいな位置づけに置かれてきた健食は、ついにその形を得る千載一遇のチャンスを手に入れた。だが、消費者団体の強い反発、制度化を巡る多くの課題を解消していくのは容易ではない。健食を巡る消費者庁、厚生労働省、農林水産省と3省庁間の縦割り構造も制度化に向けた議論をより複雑にしている。消費者選択に資する新制度は実現するのか。 

1-2.jpg"縦割り行政"で制度議論複雑化


消費者庁、国の関与に及び腰

 終盤まで「消費者庁との見解の相違が埋まらない」(規制改革推進室)としていた今回の規制改革会議。一転、表示制度創設が閣議決定に至った背景は何か。同会議関係者が振り返る。
 
 「消費者庁が規制改革に抵抗しているように見えるが実際は早々にやる気をなくし、"自分達が絡むくらいなら『米国型』が良い"と、民間に任せようとした。それはあまりに無責任だと引き留めるのに時間がかかった」。「米国型」とは、企業が自己責任で表示を行う米国の「ダイエタリーサプリメント」のこと。国の関与は最小限であり、自由度が高い一方で多額の損害賠償に発展するケースがあるなど企業責任が極めて重いものだ。その"国の関与の度合い"を巡ってはいまだ両者は合意に至っていない。

「米国型」か「第三者認証」か

 消費者庁は「企業責任の下で一定の範囲で表示できるようにする。制度を使い各企業がどう試験なりして表示するかは企業側の話になる」と、「米国型」を念頭に置く。

 一方、規制改革会議や業界団体が提案するのは「第三者認証型」。規制改革会議の森下竜一委員は「日本健康・栄養食品協会がやると言っているから、これを中心に(森下委員も所属する)日本抗加齢医学会と協力して機能性評価の枠組みを作るのが良いのでは」と話す。ただ、業界の関与の強い認証には「団体が加盟企業を認証しては消費者団体の納得が得られない」(業界関係者)、「聞こえは良いが、業界側の学識経験者で組織するなら公平性を欠く」(別の関係者)と、業界内からの
指摘もある。

 「第三者認証型」を採用した場合も国の関与の度合いはさまざま。例えば、品質管理基準ではあるが、GMPは厚生労働省の通知を拠り所に、任意の取り組みとして運用。一方、隣国の韓国では国が機能性を評価し、規格基準を定める第三者認証制度を運用する。どの制度が有効なのか。

厚労省、制度化に「漫然とした不安」

 国際情勢に詳しいグローバルニュートリショングループの武田猛社長は、「韓国のような許認可制度は、政治力のある企業の製品が通りやすいなど不正の温床になりがち。米国型は問題も多いが最新の科学をいち早く取り込める点で優れ、国際競争力がある。GMPも義務化されて安全面の取り組みも進んでおり、より大人な制度」と評価する。ただ、実際の導入には「日本の文化に米国型は馴染まず、国や第三者機関が規格基準を作るのが現実的」と判断する。

 厚労省は「消費者庁と機能性表示に関するスタンスに違いがあるとは思わない。ただ『米国型』もノールールではない。事業者が色んな工夫をする中で様々なことが起こると想定される。論文があれば良いとなれば歯止めが効かず、薬事法の観点から規制が必要かもしれない。今でも論文、研究の質は玉石混交。むしろ石の方が多い気がする。消費者の信頼が得られる仕組みになるか、漫然とした不安がある」(監視指導・麻薬対策課)とする。

農水省、「JAS規格」を有効活用か

 一方、規制改革会議終盤で議論に加わってきたのが農林水産省だ。

 「農水省は消費者庁が手を退いて空白地帯ができたので入りたいと言ってきた。機能性表示にはかなり前向き。何らかの公的な仕組みは作ろうとしている」(前出の会議関係者)。

 農水省は、2015年度まで3カ年で取り組む「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」に20億円の予算を計上。これまでも食品の機能性研究に取り組んできた。だが、これまでその出口戦略を見出せず、そこに浮上したのが今回の規制改革であり、「JAS規格」の有効活用だ。

 前出関係者は「農水省は"機能性JAS"のようなものを作っても良いと言っている。ただ、(健食を含む)加工食品までは厳しいかなと言っていた。業界が不安に思うのであればそこに乗っかるのも一つの手段。検討の余地はある」と話す。

 「JAS規格」は、食品等の品質規格を定めた「一般JAS」のほか、「有機JAS」など特定の食品等を対象にした規格もある。農水省の定めた規格を第三者機関が運用。公平性の観点からも業界団体によるお手盛り感を払しょくできる。

 ただ、その場合も農林水産物と加工食品(錠剤・カプセル状の健食)を同じ枠組みで議論するのは難しい。今回の「規制改革実施計画」では、未承認医薬品と「明らか食品」の区別を求めており、農林水産物は薬事と離れた部分で制度設計できる。ただ、薬事も絡む健食は消費者庁、厚労省と調整次第になる。

 当の農水省は、健食など加工食品のJAS規格活用に「可能性はある」(表示・規格課)とするが、具体的な制度設計は「消費者庁がやる。積極的に協力するが、作ることが決まったという断定的な話ではない」(同)と話すに留める。

厚労省、「中身見て通知改正を検討」

 薬事法との調整も必要になる。現状、機能性表示は、食品衛生法第19条(表示および広告)付帯の内閣府令で「保健機能食品と紛らわしい名称、栄養成分の機能および特定の保健の目的が期待できる旨の表示をしてはならない」と制限されている。「消費者庁でこの府令の改正を検討する」(規制改革推進室)としており、そうなればGMPのように通知を拠り所とするか、現行の健康増進法への規定、新法制定など選択肢はある。

 ただ、いずれも薬事法上の「無承認無許可医薬品の指導取締りについて(46通知)」との調整が必要。厚労省は「トクホは46通知の適用を除外している。整備された中身を見てそのような運用が行えるか検討する」(監麻課)とする。


規制改革巡る行政・識者らの反応
 
■内閣府規制改革推進室
 「民間の知見を活かす部分は消費者庁と共有できているが、こちらが第三者認証である程度国が関与する形を想定していたのに対し、消費者庁は米国型を念頭に置いていた。そこは今後の検討課題。また、制度設計では、ヒト介入試験を行う特定保健用食品が一番上位の表示制度という認識はあるが、新制度とトクホ、栄養機能食品の調整も必要になる」

■消費者庁食品表示課
 「今トクホの許可を得なければ表示できないものを企業責任で一定の範囲で表示できるようにする。その制度の下で各企業はどう試験なりをして表示するかというのは企業側の話になる」

■農林水産省消費・安全局表示・規格課
 「JAS規格は消費者ニーズや事業者要望を受けて定期的に行っており、(規格の活用の)可能性はある。農林水産物と(健食を含む)加工食品は特性として違うところもある。そこを含め消費者庁の考えを聞きながら調整していくことになる」

■厚生労働省監視指導・麻薬対策課
 「米国型も論文の精査の仕組みなどをきちんとしないまま規制だけ変えてしまうとあまり幸福な結果にならないような気がする。第三者認証も選択肢の一つ。企業が勝手にというより、どこかがオーソライズするほうが受け入れられやすいかもしれない。しかし、運用の難しさもあり、どこが認証するかという話も一筋縄ではいかないと思う。ただ、食品表示は消費者庁の所管なので、その根幹に口出しできるとは思わないし、そこを消費者庁で検討する思いうので、中身に応じて通知の対応を検討する」

■厚生労働省新開発食品保健対策室
 「具体的な制度の枠組みはこれから検討するようだが、機能性表示の有無に関わらず、引き続きGMPの推進をサポートしていく。GMPの義務化や統一は今のところ話は出ていないが今後の検討次第と考えている」



■梅垣敬三国立健康・栄養研究所情報センター長
 「表示は消費者が選択できるようにするためのもの。消費者に分かりやすい表示は何かと言えば、『効く』か『効かない』か、『安全』か『危険』かというもの。ただ、全員に安全なものはないし、全員に効果のある食品もおそらくない。そうしたことが理解できない段階の表示では混乱が生じる。消費者教育とセットでなければいけない」
 「単に機能があるから表示すれば良いというのは非常に短絡的。例えば『セレン』という成分は有用な科学的知見が世界中に多数ある。ただ、それは『不足している人が摂取すれば』というデータ。海外にはセレンが不足している地域がある。一方で日本人は十分なセレンを摂取しており、そのような状況で摂取すると健康被害の恐れがある。だから栄養機能食品の許可対象にもなっていない。なんでも海外の制度を参考にすれば良いのではなく、議論が必要」

■武田猛グローバルニュートリショングループ社長
 「そもそも健食がどういう目的で使われるべきものか、定義など前提を差し置いて表示議論だけが先行している。また、健食は歴史的にうさんくさいもの、悪質商法の代名詞のように見られてきた。それを払拭しなければいけないし、送りつけ商法も問題になっている。現状は誰でも売れるから全体的なモラルが低くなる。日本通信販売協会が行う登録制のようなものを活用するのは一つの手段。中小の別なくある程度、志の高い企業が販売できる仕組みも必要」


【市場の裏側】

 長年の悲願である機能性表示が実現すれば、市場も健全に拡大していくことが期待される。ただ、制度化議論には個々の事業者の販売活動も影響を与えることになるだろう。

 消費者庁は、規制改革議論に先立つ今年2月、庁内に「食品表示担当班」を発足。7月には「食品表示対策室」に格上げし、調査官も増員して健食の広告表示の監視にあたることを決めた。活動が本格化する時期は、制度化議論の時期と重なる。

 また今年5月には、国民生活センターが健食の「送りつけ商法」に関する相談が1万4000件超(12年度)と前年の5・2倍に急増したことを発表。通販でも一部の事業者による違法な販売行為がいまだ横行する。

 一方で、消費者団体の反発も相次いでいる。主婦連合会はすでに意見表明し、他団体も追随の構えを見せている。大同団結する可能性もあり、検討時期に事業者の不祥事が相次げば、これら消費者団体に付け入る隙を与えることになる。

 健食業界にとって今回の規制改革はまたとない機会。行政との交渉は日本通信販売協会や日本健康・栄養食品協会が中心となり、業界の総意を伝えていくことになるだろう。だが、個々の事業者の広告表示に関するコンプライアンス意識も結論を左右する重要な要素となる。総力を結集して臨む必要があり、業界にとってこれからが正念場と言えるだろう。







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